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保育士、虐待観察にっき。  作者: みょんたま
武田ゆみ先生の場合。

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8/9

証拠は?

 東京のおじさんは、すぐに電話に出てくれた。


「ゆみちゃん!どう?奈良県は。もう慣れたの」

「おじさん、お久しぶりです。はい、慣れました」


 私はすぐに本題に入った。

 これまでのことを説明する。


「何だか虐待のような気がして…」

「うん、それは東京だったら即アウトだね。そこの園は監視カメラはついてるの?」


「つい、てたと思う。」

「じゃあすぐに通報するんだ。それも大事な仕事だよ。」


「でも、通報したら私、あれこれ大変なことになりそうで」

「いいじゃないか。大変だって。子どもたちが悲しい思いをするよりはマシさ。というか匿名で通報もできるはずだよ」



 私は、電話を切ったあと、すぐに検索をした。

 そして、匿名で通報できる公的なサイトを発見し、すぐに文章を打って、匿名で送信した。





 が、1ヶ月たっても、2ヶ月たっても何も変わることはなかった。



 そして、また目の前で嫌なことが起きてしまった。



 ーーーー

「あんた、頭使って食べてる?できないんやったら立っとき。」


 子どもたちの名前を徐々に覚え出した頃。

 その事件は起きた。



 指摘された子は発達療育に通う男の子で、指先の力が弱くお箸を持つことが難しい。

 でもこの園では、お箸は自分の家から持ってきたものではなく、園のものを使う。エジソン箸や握りやすいスプーンやフォークを使うことは許されていない。


 かと言って、お箸の使い方を練習する日があるかと言えば、ない。


 体幹が弱いから、椅子からも崩れる。椅子のパイプを先生が蹴る。揺れる。お箸が落ちた。その時放たれた言葉が、それだった。


「あ、落ちた」


 男の子、タイラ君は、一瞬悲しそうな顔をして、そして先生に立っときと言われて、泣き出した。


「た、食べるっまだお腹すいてます」

「あんったもう年長さんやろー!?そんなんで、どないすんねん!もう友達でけへんねー」


 心臓がぎゅっと痛む。

 行政は何をしているんだ。私の通報はどうなった?なぜ何も変わらないの?


 私はいても立ってもいられなくなって、席をたった。


「落ちちゃったね。洗いに行こうか」

「武田先生、座っとき。これは指導や」


「いえ、もう食べ終わったので大丈夫です。」


 会話になっていなかったが、それでも良かった。私はタイラくんの手を引いて、お部屋の外にある洗面台に向かう。


 ポロポロと落ちる涙。


「せんせ、ぼく、来年、一年生、友達できないね?」


 その言葉を聞いた瞬間、あ、もうだめだと思った。


「できるよ。大丈夫。」



 その日の帰り。

 私は意を決して、園長先生に直談判しに行った。


 初日に殴っているのをみたこと。

 靴を蹴っている人がいること。

 子どもに対して暴言を吐く先生がいること。


 他にもたくさんあった。

 給食を食べるときに椅子が足りなくて泣いている児童がいる。

 遅いとおかずが少なくなってしまう。

 一気に配った方がいいのではないか。


 延長はニコニコしながら聞いていた。 

 

 そして言われたのが、この言葉だった。




 「証拠は?」



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