【第18章‑4】 三好家の混乱、屋敷に伝わる
国人衆の使者が去ったその日の午後、
東大寺の南にある久秀の屋敷に、
芥川城からの使者が駆け込んできた。
「松永様、
三好館より急ぎの知らせにございます!」
家臣が控えの間へ案内すると、
使者は息を整え、
深く頭を下げた。
「本日の評定、
またもまとまらず……
城内、騒がしゅうございます。」
久秀は静かに頷き、
続きを促した。
「義栄様をお支えするべきとの声と、
義昭様を迎えるべきとの声が割れ、
誰も収められませぬ。
長逸殿らも、
もはや一つにございませぬ。」
久秀は机の上の地図に目を落とした。
(……ついにここまで来たか。)
使者はさらに言った。
「河内の国人衆の中には、
織田方に通じる者が出ているとの噂もあり、
城中の者ども、
皆、落ち着きを失っております。
『松永殿はどう見ておられるのか』と、
長逸殿よりお尋ねがございました。」
家臣たちが顔を見合わせた。
「三好家は、
もう評定も開けぬのか。」
「義栄様と義昭様、
どちらを立てるかで割れているのだろう。」
久秀は使者に向き直った。
「……長逸殿には、
まず城中を鎮められよと申し伝えよ。
評定のこと、
こちらでも案を考えると。」
使者は深く礼をし、
屋敷を後にした。
廊下に残った家臣が、
小声で言った。
「松永様……
三好家は、
もはや……」
久秀は言葉を遮るように、
地図の上に手を置いた。
「……三好家は、
名だけになりつつある。」
屋敷の外では、
東大寺の鐘がゆっくりと鳴り始めた。
その音が、
三好家の混乱をさらに重く響かせた。
堺が揺れ、
国人衆が揺れ、
そして三好家が揺れた。
畿内の中心は、
確かに久秀の屋敷へと集まりつつあった。




