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【第1章‑3】 静けさの美

堺の朝は人の声が続いていたが、

家の奥に入ると音が消えた。

祖母は茶会の支度をしていた。

湯が小さく鳴り、

香の煙が薄く漂った。

茶室の入口には深い影が落ちていた。

「入っておいで」

祖母が手をわずかに動かした。

久秀は畳の縁を避けて進んだ。

茶室は狭かった。

だが、影が広く見えた。

光より暗さのほうが強かった。

祖母は茶碗を畳に置いた。

湯気が静かに立ちのぼった。

その動きだけが部屋の中で揺れていた。

「美しいものはね、光るんじゃない」

祖母は湯気を見たまま言った。

「沈むんだよ」

久秀は言葉を受け取り、

茶室の影を見た。

影は壁に沿って深く沈んでいた。

祖母は茶杓を置いた。

小さな音が畳に落ち、

部屋の空気がわずかに変わった。

「影と余白が、美を作るんだよ」

祖母の声は静かだった。

久秀は茶室の隅を見た。

何も置かれていない空間が、

光より強く見えた。

茶室を出るころ、

外の光が強く感じられた。

久秀の中に、新しい見方が生まれていた。


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