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【第9章‑4】報告と宗久の沈黙
屋敷に戻ると、
宗久は縁側に座り、
庭の松を見ていた。
久秀が近づくと、
宗久はゆっくり顔を上げた。
「どうだった。」
声は短く、
調子が一定だった。
久秀は隣家の主人の表情、
声の硬さ、
言葉の間を思い返し、
静かに言った。
「……主人は丁寧でしたが、
言葉が少しだけ不揃いでした。」
宗久は目を伏せた。
久秀は続けた。
「書状を受け取るとき、
封の端を見て、
一瞬だけ止まりました。」
宗久は顎をわずかに引いた。
だが、言葉は続かなかった。
久秀は宗久の横顔を見た。
宗久の目は庭ではなく、
その先の一点に向いていた。
しばらくして、
宗久は息をついた。
「……そうか。」
声は低く、
調子が変わらなかった。
宗久は続けた。
「おまえの見たものは、そのまま伝えてよい。
色をつけるな。
だが……見落とすな。」
言葉は短く、
縁側に静かに落ちた。
久秀は深くうなずいた。




