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【第9章‑5】午後の文の整理

昼餉を終えるころには、

朝の冷たさは消え、

庭の松の影が濃く伸びていた。

久秀が座敷に戻ると、

宗久は書状の束を脇に置き、

静かに言った。

「午後も、手を貸してもらう。」

声は淡々としていた。

午前とは調子が少し違っていた。

久秀はうなずき、

宗久の前に座った。

宗久は書状の束を二つに分け、

片方を久秀の前に置いた。

「これらは、書き手の立場を見ながら整理せよ。」

言葉が縁側に落ちた。

久秀は一枚ずつ紙を手に取った。

午前より、文の調子が揃っていないものが多い。

ある書状は言葉が丁寧すぎ、

別の書状は急いで書かれ文字が乱れていた。

筆の勢い、

墨の濃さ、

文の切り方。

それらが紙の上に違う形で並んでいた。

宗久は久秀の手元を黙って見ていた。

久秀が一枚を置くと、

宗久が静かに問うた。

「その文は、どう見える。」

久秀は紙を見返し、

短く言った。

「……話が揃っていません。」

宗久はうなずいた。

「揃わぬ話は、そのままでは使えぬ。」

声は低く、

調子が変わらなかった。

久秀は次の書状に手を伸ばした。

午後の光が障子越しに差し込み、

紙の上に淡い影を落とした。

その影が文字の上に重なり、

話の不揃いな部分を際立たせた。

久秀は文の話を追い、

書き手の真意を確かめた。

宗久は久秀の仕分けを見ながら言った。

「おまえには眼がある。

それを曇らせるな。」

声は短く、

座敷に静かに落ちた。

久秀は深くうなずいた。


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