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【第6章‑4】 三好家への出仕

鍛錬を終え、茶を飲み終えると、

宗久は帯を締め直した。

草履を揃えて玄関に置く。

志乃が台所から出てきて、

軽く頭を下げた。

「いってらっしゃいませ。」

「うむ。」

宗久は草履を履き、外に出た。

朝の空気はまだ冷たく、

屋敷の周りに薄い霧が残っていた。

篠原家は芥川の城下の外れにあった。

三好家の屋敷までは歩いて十数分ほど。

宗久はいつもの道を進んだ。

道の脇では、

農の者が畑へ向かっていた。

井戸端では、

早く起きた女たちが水を汲んでいた。

武家屋敷が並ぶ区域に入ると、

門の前を掃く若侍の姿が見えた。

城下の中心に近づくにつれ、

町人の店が戸を開け始め、

荷を抱えた商人がゆっくり歩いていく。

まだ賑わう前の時間で、

道の音は少なかった。

宗久はその横を通り抜け、

三好家の屋敷へ向かった。

門番が宗久を見ると、

軽く頭を下げた。

「篠原殿、今朝もご苦労さまです。」

「うむ。」

宗久は門をくぐり、

屋敷の中へ入った。

三好家の政務は、

戦がなくとも途切れない。

領地からの報告、

年貢の確認、

寺社との連絡。

細かな紙が机に積まれていた。

宗久は与えられた机に向かい、

書状を一つずつ開いた。

字は丁寧だが、

土地の争いや年貢の遅れが並んでいた。

「……また境のことで揉めておるか。」

宗久は筆を取り、

返答をまとめていった。

隣の机では、

別の家臣が寺への寄進の順番についての紙を広げていた。

「篠原殿、この件もお願い申します。」

「仕った。」

宗久は筆を走らせた。

部屋には紙をめくる音と、

筆の先が擦れる音だけが続いた。

昼前になると、

宗久は席を立ち、屋敷を出た。

昼の膳のために一度家へ戻るのだ。

外に出ると、

風が少し暖かくなっていた。

宗久は歩きながら、

午前中に処理した紙の内容を思い返した。

どれも小さな案件だったが、

机の上にはまだ新しい紙が積まれていた。

篠原家に戻ると、

志乃が玄関先で迎えた。

「お帰りなさいませ。」

「ただいま戻った。」

宗久は草履を脱ぎ、

縁側に腰を下ろした。

志乃が昼の膳を運んでくる。

午後もまた、

三好家での仕事が続く。

篠原家の一日は、

こうして静かに進んでいく。


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