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【序章-3】 静かな風の台頭
天文十五年(1546)。
長慶の力が、はっきりと伸び始める。
摂津での戦いに勝ち、三好家の名が広がった。
天文十六年(1547)。
河内でも勝利を重ねた。
長慶の動きは速く、無駄がない。
必要な場所にだけ、静かに力を置いた。
天文十七年(1548)。
和泉の情勢も三好に傾いた。
京都では、長慶の名を知らない者がいなくなる。
公家は、若い武将の冷静さを恐れた。
寺社は、彼の交渉の仕方に一目置いた。
商人は、判断の速さに驚いた。
「三好の若殿は、風のように動く」
そんな声が町に広がった。
だが、その風は荒れてはいない。
静かで、まっすぐで、余計な音を立てない。
ただ、畿内の空気を少しずつ変えていく。
戦が起きても、長慶は慌てない。
状況を見て、必要な手を打つだけだった。
その落ち着きが、周囲には不気味に映った。
まだ天下を名乗るわけではない。
だが、誰も無視できない存在になっていた。
この静かな風が、やがて畿内を大きく動かす。




