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【序章-2】 少年長慶
長慶は、静かな子だった。
1522年、畿内の混乱の中に生まれた。
十一歳の年。
一向一揆が起こり、父・元長が堺で討たれる。
首が晒されたと聞いても、長慶は泣かなかった。
泣くより先に、家中の空気を読んだ。
自分がどう見られるか。
何を求められているか。
それを考えた。
十二歳の頃。
和睦の席に、少年の姿があった。
大人たちの声が飛び交う中、長慶は黙って座っている。
必要なときだけ、短く言葉を置いた。
その一言が、場を動かす。
「この子は、ただ者ではない」
そんな声が、畿内に広がった。
長慶は、状況を読むのが早い。
誰が味方か。
誰が敵か。
誰が迷っているか。
それを静かに見ている。
戦の最中でも、長慶の眼は落ち着いていた。
その落ち着きが、周囲には不気味に映る。
畿内はまだ荒れていた。
だが、その荒れた土地の底で、長慶という新しい力が育っていた。
やがてこの力が、畿内を動かす。




