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【第25章‑5】 大茶会・開幕
茶室の隣に、
広い談笑の間が設けられていた。
酒肴が並び、
堺の町衆たちが思い思いに腰を下ろしていた。
笑い声が低く響き、
杯が静かに触れ合った。
利休の席では見ない賑わいだった。
控えの者が声をかける。
「次の方、どうぞ」
客が二人、
談笑の間を出て茶室へ向かった。
茶室に入ると、
花があった。
大ぶりで、色の強い花だった。
花瓶は華やかな絵付け。
床には金銀の屏風絵。
利休の静とは違う。
だが、乱れてはいなかった。
久秀が座していた。
客が席につくと、
久秀は静かに一礼した。
その動きだけで、
座敷の華やかさがひとつにまとまった。
一服が点てられ、
客は茶を受けた。
言葉は少なかった。
華やかな座だが、
茶そのものは静かだった。
客が席を辞すと、
次の客が呼ばれた。
談笑の間では、
四郎次郎が別の席を設けていた。
こちらは四郎次郎が亭主を務める。
久秀の席よりも柔らかく、
しかし品は崩れない。
客たちは
久秀の“華”と、
四郎次郎の“整え”を
順に味わっていった。
茶室と談笑の間を行き来する人の流れが、
屋敷の中に静かな賑わいをつくった。
利休の静を知る堺の町衆が、
初めて見る大茶会だった。




