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【第24章‑4】 久秀、断層を自覚する
利休が炉の前で手をついた。
席が終わったことを示す、
静かな所作だった。
久秀も膝をつき、
深く頭を下げた。
「本日は、
まことに……」
言葉の続きは、
茶室の暗さに吸い込まれた。
利休はただ頷いた。
躙り口をくぐり、
露地に出る。
利休は茶室の前まで見送ってきた。
その姿は、
席の中と変わらず静かだった。
「お気をつけて」
利休の声は小さかったが、
露地の空気にまっすぐ届いた。
久秀は一礼し、
飛び石を進んだ。
石の冷たさが足裏に伝わる。
茶碗の軽さが、
まだ指先に残っていた。
露地の出口で、
若い者が待っていた。
「こちらへどうぞ」
案内に従い、
母屋の脇を通って門へ向かう。
屋敷の中は静かで、
茶室の暗さと同じ色をしていた。
門の前で、
若い者が深く頭を下げた。
「本日はありがとうございました」
久秀も礼を返した。
門を出ると、
堺の町のざわめきが一気に戻ってきた。
その音が、
利休の席の静けさと
まったく繋がらなかった。
久秀は立ち止まった。
胸の奥に、
小さな違和感が残っていた。
名物の重さで人を動かす座。
名物を使わず、
人を座らせる席。
二つの間にある差が、
言葉にならないまま
胸の奥で広がった。
久秀は歩き出した。
その断層は、
まだ形を持たないままだったが、
消えることはないと
わかっていた。




