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【第19章‑8】 畿内、新しき風
京北の寺での対面を終えた久秀は、
その足で京の町を歩いた。
寺の門が開き、
商家の戸が開き、
国人衆の顔つきが変わっている。
(……変わり始めた。)
町の空気を確かめたのち、
久秀は再び寺へ戻った。
本堂では、
信長がすでに人々を呼び入れていた。
まず本願寺の使者。
次に公家の使い。
その次に町奉行。
信長は、
一つひとつ、
順に話を聞き、
短く指示を出していく。
久秀は、
その横で控えていた。
信長が久秀に向けて言った。
「大和の寺社、
どこがまず動く。」
久秀は即座に答えた。
「興福寺が先に動きましょう。
堺の商人衆が、
すでに興福寺へ文を送っております。」
信長は頷いた。
「では興福寺に使いを出す。
大和はそこから固める。」
夕刻、
京の空に風が吹いた。
その風は、
摂津を越え、
河内を越え、
大和へと流れ込んだ。
久秀は、
その向きを静かに感じていた。
(……畿内は、
もう元には戻らぬ。)
寺社が動き、
商人が動き、
国人衆が動いた。
畿内には、
新しい風が立っていた。




