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【第19章‑6】 将軍、京へ
三好の座が崩れたとの報せが続いたころ、
京の町から、
新しい風が大和へ届いた。
「松永様。
義昭様、
本日、京へお入りになったとのこと!」
使者は深く頭を下げ、
息を整えながら続けた。
「町の寺社、
商人衆、
国人衆……
皆、
動き始めております。」
久秀は、
机の上の地図をゆっくりと巻いた。
(……ついに、
京が“主”を得たか。)
家臣が問う。
「京の様子は、
どのようにございますか。」
使者は答えた。
「三好方の兵は、
すでに散り散り。
町の者ども、
義昭様の御成りを
道の両側で迎えたとのこと。」
「寺社の鐘も、
昼より鳴り続けております。」
久秀は、
その光景を思い浮かべた。
京の町が、
長い混乱のあとに
ようやく落ち着きを取り戻す姿。
その背後には、
織田勢の軍律が
静かに敷かれている。
(……信長公、
やはり速い。)
家臣が小声で言った。
「松永様。
これで、
畿内は……。」
久秀は頷いた。
「……向きが変わる。」
庭を渡る風が、
東大寺の森の葉を揺らした。
その揺れは、
これまでの混乱の揺れではなく、
新しい秩序の始まりを告げる揺れだった。
久秀は立ち上がり、
家臣に言った。
「京より、
いずれ使いが来よう。
その時に備えておけ。」
その声は静かだったが、
屋敷の空気を
確かに変える響きを持っていた。
将軍が京へ入り、
畿内の形が変わった。




