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ブラッドムーン・オールクロス 螺旋の道


私達は、赤い月の底点から頂点まで続く螺旋の道の中腹辺りにUFOを着陸させた。


螺旋の道の道幅はとても広く、UFOを止めてもまだ半分の道幅が有り余るくらいの広さであり、一体どのようにしてこんな規模の物体を召喚したのかと驚くぐらいだった。


UFOの展望デッキから見た限り、頂上辺りに、真っ黒に盛り上がる山のような形の玉座と人影が見えたので、恐らくあれがリョクだろう。


しかし、頂上付近はあらゆる存在の大激戦が巻き起こっているので着陸できず、私達は中腹から登っていくことにした。





「やっと着いたか……リョク、待ってろよ……」


キョウがそう言って、空間から琥珀に輝く聖剣を取り出した。


それに反応して、みんなは同じように武器や魔術を出したり、すぐさま戦闘に入れるように準備をしだした。




私も、ゼスパとルアナを圧縮した金属を取り出し、宙へ放り投げる。


巨大な白銀の鎌と、煌めく黄金の盾が空間に召喚された。私はそれらを念動で操り、


鎌は光速回転させ属性を纏わした光の円に、盾は二十メートル程に巨大化させ、皆の頭上を守らせた。


魔蔵視と未来視も駆使して行こうと思う。


魔蔵視に関しては、世界を純粋なエネルギーの流れで捉えられる、その場の霊脈を捉えて、自分の魔術に生かせたり、エネルギーの流れから相手が一体どう動くのか察知できる。なので、魔蔵視を使うと飛躍的に魔術の能力が上がる、しかし欠点として瞳が物凄く黄金に光っているらしい。


未来視に関しては、任意のタイミングでは出せないが、自分や仲間が危険なタイミングで発動する。未来視中、現在がスローモーションに感じ、無数の未来の中から、自分が望む未来を掴み取れたりする。


魔蔵視と組み合わせて、エネルギーの流れによる未来視を使えば、かなりの危機を回避できる。




「流石だねシスイ。これで襲来が怖いくない!」


幽明は、頭上にある巨大な盾を指差し、私の肩をポンと叩いた。








私達は、螺旋の道を登って行く。


しかし、頂上への道を守っているのだろう赤い獣達が、それをなんとしても拒むように襲い掛かって来る。


それは、黄緑肌で赤目の巨大なエイリアンだったり、血色にビカビカ光る糸のような生物だったり、機動力の高い近未来的ロボット型の獣だったり、体に古代魔術の文字が無数に刻まれた金ピカ兵士だったり様々だ。


厄介なのは、宙に浮く幽霊のような魔術師タイプ以外の兵士型タイプの赤い獣達も、反転重力のような魔術で、宙を浮かびながら飛来するとこだ。




よく考えれば、ゾアリアが天の扉を開門した時の、計り知れない大きさの異形や、


直視する事も困難な神々しい存在は、あまりここにはいない。


なので、天の扉の存在全員が、リョク達を滅ぼそうとしている訳でなく、ホントに極一部が争っているのだろうと私は思った。


もし、あれらが数パーセントでも押し寄せれば、リョク達は一瞬で壊滅していた事だろう……




近接的に襲い掛かってくる赤い獣達は、キョウやリリスやトドリ、ノウコさんが素早い攻撃でみねうちして気絶させたり、ミレアが真紅の鎖で拘束したりしている。


遠距離から襲って来る敵には、ヒノやフィジャナーク王、ゾアリア、クオリアちゃんが魔術で対抗したりする。


とても素早い敵には、キョウに血を吸わせてもらったルリメアちゃんがハイになり、大量の追尾の血の矢で追い詰めたりもしている。


ミコトちゃんに関しては、煌びやかな鉾を手に持ち、悠々と歩き、響と怪丘さんを守るように、光の糸で近づく敵全てを拘束している。


幽明も同じく二人を守るように、巨大なデジタルモニターのようなお札を出現させ、半透明なエメラルドグリーンの数字の0と1の形をした小さなビットのような物体を無数に放出し、それを様々な妖魔や異形の形に変形させて戦っている。


とても意外なのは、幽明は青白い刃の短剣も持っていて、それにエネルギーを込めて、長さや属性を変幻自在に変え、エネルギー剣としてブンブンと振るっていた事だ。




我ながら、かなりチームワークがいいなと感心した。


恐らくは、赤い獣も一対一で勝負すればかなり手強い相手なんだろうけど、みんなで連携プレーをこなしているおかげで、大量に現れる赤い獣達も、どんどん薙ぎ払い先へ進む事が出来た。




あれが来るまでは……




私達がスムーズに進んでいる矢先、突如上空から、灼熱の大海でも降って来るような強大な気配が襲来した。




未来が視えた。


みんなを守らなきゃ――




私は即座に、皆を覆う盾に、体中のエネルギーや霊脈のエネルギーを全力で寄せ集めた。




「いかん!!!!!皆、全力で防御だ!!!シスイ何があってもその盾で皆を覆い続けろ!!!」


リリスがそう叫んだのも束の間、まるで天まで背丈のある巨人に全力で押さえつけられているような圧力が盾に走った。




「うあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


私はあまりの威力に、全細胞が悲鳴を上げ、喉が勝手に絶叫した。




幾人かが、私の盾の上に防御魔術を施してくれた。


それでも、ギリギリ耐えれている状況だ。


私は一体何が起きてるのか分からなかったが、あまりの未知の威力に考える暇も無く、ただ耐え続けるしかなかった。




その時だった――


私達が防御に重点を置いている隙をつかれ、ノウコさんが黄緑肌で赤目の人型エイリアン数体に、盾の外に連れていかれ、城壁に思い切り放り投げられた。




「ノウコォ!!!!!!」


ミコトちゃんが悲壮な大声を上げ、そこへ向かおうとする。




「外へ出るな!!!」


リリスが大声で叫んだ。




盾への重圧が続く中、私達の視界の範囲の空に、高層ビル程の大きさの超巨竜が現れた。


巨木みたいな無数の牙に、リョクの右目と同じまん丸な赤目、雰囲気に似つかわしくない巨大な天使のような翼が無数に生えたウミヘビのような奴だった。




「……ヒュードルグ」


ゾアリアが険しい顔で言った。




ヒュードルグと言う名のそいつは、小さな餌でも見る魚みたいに、巨大な顔を私達に近づけた。


そして、不穏な赤い息を吐きながら、ノウコさんに近付いて行った……




ミコトちゃんは光の糸で、宙を漂うヒュードルグの口を縛り付ける。


同じくミレアも加勢し、真紅の鎖でぐるぐる巻きに。


他のみんなも、盾内部から猛烈な魔術を、ヒュードルグに放っている。


ヒノとフィジャナーク王は、プリズムの魔弾を連携的に、顔や口など同じ部位に連射している。


ゾアリアやクオリアちゃんに至っては、禁術のような特大な一撃の属性魔弾を放っている。


空を漂うヒュードルグは、流石に身動きがとれず、ノウコさんから離れる。


みんなが防御魔術から攻撃に切り替える分、盾は、さらなる重圧が増して、私は、今にも押し潰されそうだった。


一体、この重圧はなんなのだろうか……?_


ヒュードルグは赤目をさらに血色にして怒り狂い、口の拘束を思い切り引き千切って、大きく口を開けながら、再度ノウコさんへと迫った。






「ルルムマスカートッ!!!」


フィジャナーク王が翼膜からカラフルな原色の焔を放出し、ほぼ瞬間移動でヒュードルグの顎まで向かい、強烈なフルスイングを叩き込んだ。


ヒュードルグは途轍もない唸りを上げる。


ゾアリアとヒノが、再度盾内部に入ろうとしてくる黄緑肌で赤目の人型エイリアン達に、プリズムの魔弾を連射し撃退した。




その時だった、急に私の盾への重圧が嘘のように消えた。




「あれ……」


私は戸惑う……




しかし私はすぐさま理解した、目の前で荒れ狂う超巨竜が二体に増えていたからだ。




「二体いたのか……」


私はそう呟いた。




「なかなかに不味い状況だな……こいつらを二体同時に相手など万の強兵でも無理だぞ……」


リリスが心底危険な状況だと顔に匂わせる。




「俺が二体共ぶっ倒してやる……」


上空からの攻撃が消失したのを機にキョウは、フィジャナーク王の様に、外へ飛び出そうとする。




「ダメだよキョウ。あれは無理だ!!!君が死んだら何にもなんないだろ!!!」


トドリがキョウの手を掴む。




「後ろからも来たわ……」


怪丘さんが怯えた声で言った。




「……大軍勢ね」


ミレアは後方から迫る赤目の軍団に苦い顔をする。




「私が守らなきゃ……」


私は、か細く白いひ弱な両手を見て言った。




「ダーリン、私もいるわよ。一緒にやりましょ!!!」


ヒノは私を見て、「いつでも傍にいるからね」と言う顔でしてくれた。




そうだ、一人じゃない――




「うん」




私達は力強く頷き合った。


私とヒノは、即座に攻撃を展開する。




「はああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」


「あああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」




私は、二体のヒュードルグの尾の辺りに、光の円を限界の速度で滑らし、魔術で奴等の体に、百以上の激しく燃焼する隕石と空が真っ白になる様な極雷の嵐を撃ち落とした。


ヒノも二体のヒュードルグを包むような半透明青色の立方空間を出現させ、その中を濃いプリズムで充満させる。


そのプリズムは、灼熱、イカヅチ、絶対零度など、あらゆる属性に変化し轟轟と流動しだす。


まるで小さな世界の始まりのような神秘的な光景は、圧倒的な威力を持って、ヒュードルグに破滅的な魔術連撃を与えた。




それを見た、後ろから迫っていた奴等は、少し後ずさりする。




二体のヒュードルグの体は、かなりダメージを受けて、尾や羽はかなり損傷していたが、よろよろと飛空し怨讐の眼で私とヒノの事を睨んでいた。




次第に二体のヒュードルグは、絶海の荒波の如く暴れ出し、灼熱すらまだ冷たいようなおぞましい極炎のブレスを辺りに振り撒きだした。


即座にフィジャナーク王が私の盾の中に戻る。




「ノウコがいなかった……」


フィジャナーク王がボソリと呟いた。




「……」


ミコトちゃんの顔が、白く氷ついている。




みんなも同様に硬直している……


そんな最中も、わたしは限界を振り絞り、ヒュードルグ二体のブレスをガードし続けた。


気が遠くなる程に時間が長く感じた後、ヒュードルグのブレスが突然不自然に止んだ。


私は、上空に漂うヒュードルグを細めに見た。


ヒュードルグはユラユラと動き、私達では無く別の対象を見ていた。


その別の対象とは、とても意外な懐かしい存在だった。




「久しぶりじゃのう。化け物巫女」


大声でそう言って、こちらを見て飛んでいるのは、かつて都心の心臓部の巨大な橋でノウコさんと激闘していた、魔演王ルーレンジだった。


長身で筋骨隆々の真っ白な肉体と近未来的な鎧、見るからに宇宙人の魔王ような見た目だ。


ルーレンジは、ヒュードルグ二体の前で、多層からなる羽をパタパタと羽ばたかせノウコさんを肩に抱えて飛んでいる。


大宇宙艦隊のような魔圧と、堂々と余裕のある雰囲気に、ヒュードルグ二体はルーレンジをとても警戒して、様子を伺っている。





「あなた……」


ミコトちゃんがルーレンジを見上げて言った。




ルーレンジが、ほぼ瞬間移動で私達の目の前にやってくる。




「ほれっ、受け取れ。大した怪我ではあるまい」


ルーレンジは、魔術でノウコさんをふわりと浮かしこちらへ届ける。




しかし、ヒュードルグ達は、よそ見をしたルーレンジに一斉に噛みつこうと迫った。


一瞬私の感覚がスローモーションになる。


そのスローモーションですら、遅くない程の動きで、フィジャナーク王がヒュードルグ達の顎元に移動し、超爆発のようなアッパーカットを二連撃、一発ずつ食らわせ、上手く軌道を反らせた。


そのまま、悠然と翼膜で飛行して、ルーレンジの隣につく。




「お主、やるでないか……」


ルーレンジがフィジャナーク王に言う。




「王であるからな……当然だ」




「ほぅ、奇遇じゃな。儂も王じゃ」




ヒュードルグ達は目の前の二人を睨み、血色の目から途轍も無い魔圧を垂れ流している。




「何故あなたがここに……?」


ミコトちゃんがノウコさんを抱き締めながら、ルーレンジに言った。




「なぁに、騒がしいから見よったら、お前等がおっただけじゃ」


ルーレンジはクククと笑う。




「ホントにありがとね……」


ミコトちゃんはノウコさんの顔に涙を落している。




それに反応したかのように、ノウコさんが目を覚ました。




「ありがとうございます……ルーレンジさん……やはり、お強いですね……」




「ふんっ。お主達の極限はまだまだ先にあるはずじゃぞ?」


ルーレンジは、ミコトちゃんとノウコさんを見て言った。




「……」


二人は沈黙する。




「生きて帰れよ」


ルーレンジはそう言い、超速で飛び立ち、片方のヒュードルグの羽を掴んで強引に私達とは離れた方向へ引っ張り出した。


それは、とんでもない力で、あの巨体がまるで大型犬のペットのように引きずられ、どんどん遠のいていく。


もう一体のヒュードルグは攻撃しづらそうにしながら、すぐさま、それを追いかけて行く。




その時、フィジャナーク王が言った。


「クリシュマヒノよ……友を守ってやるのだぞ」




「え……兄様?」


ヒノは、大きく目を見開き、フィジャナーク王を見つめる。




「お前の兄で良かった……ありがとう……皆……妹を頼んだぞ」


フィジャナーク王はボソッとそう言い、ヒノに、王では無く、ただ優しい兄のように笑った後、ルーレンジの後を追って、ヒュードルグの元へ向かって言った。




「兄様ーーーーーーー!!!!!!」


ヒノが手を伸ばす。


だが、その手は空しく虚空を切るだけだった……







ヒュードルグ二体は、完全に私達の目の前の空から消え去った――




しかし、気が付けば後方から、大量の赤い獣の軍団が、もう間近に押し寄せている。


その先頭にいる特段強敵そうなボス格であろう赤い獣が突如叫び出した。





「我が名はベルルデカス・ゾディア!!!誉れ高き血星の種の華麗なる超個体。


こちらは、ルルノルル・ギルデドール!!!彼女も同じく、稀なる存在。以後お見知りおきを……」


二人は、仰々しくペコリと挨拶してきた。




戦闘に立つボス格のような、人に近い種類の赤目の存在は二体いる。


一体は、長身で紳士みたいな服装の色白悪魔みたいな奴だ。


もう一体は、天使が人形になったような愛らしさの、小柄で赤目な色白の女の子だ。


二人共、真っ赤な日傘をさしている。




その二体と後ろの軍団を見て、私達一同は、警戒レベルを最大に引き上げた。


何故なら、後方にいる天の扉の存在達が負傷し撤退しているからだ。


薄緑の液体金属の存在は神々しい大剣を砕かれ、左右対称な幾何学模様のコードのような文字の存在は、辺りの空間を歪ませる程の力を持ちながらも、力なくユラユラとその場から離れて行ってる。




「まずいね……こいつら、魔女とか女神レベルかも……」


トドリが、冷や汗をたらしている。




「あぁ、こいつら気配すら隠してるね……」


幽明も顔を曇らせた。




その二体は、涼し気ににーっと微笑んでいる。







その時だった……




私達と、赤い獣軍団の間に、空間からふーっと一人の女の子が現れた。


朱色の着物で、おかっぱ頭の座敷童のような子だ。


その子は、振り返って言う。




「お嬢様、こいつらダメ」




「界守朱円、どうしたの?」


ミコトちゃんがその子に返す。




私達も、相手陣営も、その不思議な光景を眺めている。




「シューちゃんて呼んで……」


その子は寂しそうな声で言った。




「シューちゃん、今、大変なの。早く要件を言って」


ミコトちゃんは少し急いた様に言う。




「お前、カーマシュインか!!?フハハ。驚いたな。そんな所にいたのか!?


真に呪われた超個体よ。あーおぞましいおぞましいぞ!!!皆、あまり見るなよ!?夢に出て血を吐くぞ!!!フハハ。なあ、ルルノちゃん?」


ベルルデカスが、さも楽しそうに傘を振り回しながら言った。





「はい、ベルル様。とても臭いです。臭い臭い……裏切り者の臭いがします」


ルルノルルは、手に持った、ぬいぐるみで鼻を押さえてる。見た目の割に毒舌な女の子だ……




ミコトちゃんはそいつらを冷たい目で睨んだ。




「お嬢様。おわかれ。お札、全部剥がして逃げて」


界守朱円と呼ばれた女の子は私達の近くまで、幽霊のようにスーっと移動してきた。


顔中がお札だらけで、表情は分からない。




「……」


ミコトちゃんは俯いたが、私達の方を見た後、決心したかのように界守朱円の顔のお札に手を伸ばした。




「それでいいよ。お嬢様は、おねぇちゃんみたいですきだった……」


界守朱円のお札は、ミコトちゃんの手によって、一枚一枚剥がれて行く……




「カーマシュインよ!お前は居場所を見つけたのだな!?あーずるいずるい。フハハ。我が同胞すら避けるおぞましい呪いのくせに。フハハ。その幸福、我にしかと見せて見ろ?臓物を吐き散らかす程に狂ったあの姿と共にな!なあ、ルルノちゃん?」


ベルルデカスは大声で笑いながらも、こちらに来ようとする軍団の兵をビシバシ殴って止めている。




「ベルル様、"あれ"が現れる前に消去しなくて良いのですか?私、不安です」


ルルノルルも、前に出ようとする軍団の兵を傘で叩いて止めている。




「良いのだ、我等超個体は、自由にしていいのだ。それが我等なのだ。兵になるなルルノちゃん」


ベルルデカスはにーっと頬を吊り上げいやらしくルルノに笑った。




「はい。自由が一番です。ベルル様」


ルルノルルが、あろうことか、仲間の軍団に魔術まで放ち出した。




「よほほ。なんか変わったやつらね……」


ミレアは沈黙の中、思わずツッコミを入れる。




「なんか、ミレアさんに雰囲気似てる……」


響が、こそっと言った。




「わかります、狂気的な所ですね」


クオリアちゃんが響に頷く。




「お仕置きのっちゅ!」


響とクオリアちゃんはミレアに軽く叩かれた。




界守朱円はミコトだけを見ている。




「お嬢様は、私の事すきだった?」


界守朱円の札は、後数枚だ。


少しだけ瞳が見える。


澄んだ赤い瞳だ。


綺麗な女の子じゃないか……




「ええ、好きよ。勿論今もね。シューちゃんは、昔から私の事、傍で守ってくれてたわよね……ずっと友達みたいに思ってたわ」


ミコトちゃんの淡紫の瞳は涙で濡れている。


そろそろお札が全て剥がれる……





「ふふ……すごくうれしい。……ノウコもありがとね」


界守朱円はノウコさんに言った。




「はい、こちらこそです……シューちゃん、ありがとう……」


ノウコさんは、神妙な顔をした後、界守朱円に優しく微笑んだ。




そして、とうとう界守朱円のお札は全て剥がれた――




界守朱円は、ミコトちゃんから離れて後退りする。


まるで、自分が穢れている様に……




「シューちゃん……ホントにありがとね」


ミコトちゃんの目からは涙がポタポタと流れている。




「うん、バイバイ。ミコトちゃん」


その座敷童は、澄んだ赤い目を嬉しそうに光らせ、盛大にニコッと笑った後、ベルルデカス達の方に、凄まじい勢いで飛んで行った。







同時に――




「走って!!!!!!」


ミコトちゃんが、全員に大きく声を張り上げ、全速力で螺旋の道を駆け上がり出した。


みんなは何かを察し、ミコトちゃんの後を追って、猛烈に駆け上がる。




後ろからベルルデカスの歓喜の絶叫が聞こえて来た。


「来るぞ来るぞ来るぞ!!!皆よ、歯を食いしばれ!!!お前達は今から、本物の呪いと対峙するのだ!!!光栄に思い、しかと戦い抜け!!!あーなんて日だなんて日だ、素晴らしい日じゃないか!?なあ、ルルノちゃん!!?」




「あーなんて日です、なんて日です!!貴方様についてると、いつもこんな日ばっかりです!!」


ルルノルルは棒読みで叫んだ。





少しした後、私は一瞬、後ろを振り返った。


奴らが居た場所は、死の霧のような、真っ赤な霧に包まれていた。


その霧から、未だ見た事の無い、巨大な悪魔のような何かが頭を出していた。


あまりの見た目に、私は見る事をすぐにやめた……


さらには、カサカサカサと、無数の足が尋常では無い速度で動いてる音がし、巨大な肉食動物が、荒々しく喉を鳴らし、涎の絡まった唸り声をあげるような音が聞こえた。


それ続くように、悲鳴と許しの懇願の混じった、絶叫が絶え間なく聞こえた……

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