UFOの中の会話
私達、秘密結社シェアプリズムは、大切な仲間である万上 リョクを救出し、あらゆる争いに終止符を打つ為、例の山の展望台から、巨大なUFOに乗った。
目的地は、血星界の本陣である赤い月だ。
突如現れたそれは、昼間でも煌々と赤く光っており、まるでこの世界を新しく照らしだそうとしているみたいだ。
UFO展望デッキ――
UFOと聞いて、私が想像してたのは、薄い円盤の簡素なモノだったが、実際に目の前で見たり、乗ってみたりすると、大型施設がそのまま浮遊しているように感じた。
こんなモノを作れる文明があるのだと、私は、また世界の広さを知った。
現在この展望デッキには、シェアプリズムのメンバー、リョク以外全員とヒノのお兄さん、フィジャナーク王が乗っている。
クオリアちゃん曰く、ステルスでありながら、オートで目の前の対象を避けて、目的地まで運んでくれるそうだ。また転移機能やバリア機能に迎撃機能もあり、万が一襲われても、ほぼ大丈夫だそうだ。
「まさか、一度攫われたUFOに再度乗る事になろうとわ!」
響が地上を見降ろして、高めのテンションで言った。
「すみません」
クオリアちゃんが暗い顔で謝る。
かつて、このUFOを操作して響を攫ったのは、機械知能であるクリアと言う存在らしい。そして、目の前の魔法少女みたいな見た目のクオリアちゃんの正体は、そのクリアだったというから驚きだ。私達の目の前にいる可憐なボディは、あのユルルストクと言うホログラムに映っていたお姫様に作って貰ったらしい。
「いいんですよ!昨日の敵は今日の友です」
響がクオリアちゃんを抱き締めてガハハと笑う。
「でも、びっくりだよねー。クオリアちゃんがあの時のあの子だったなんて。私の事嫌いだったんじゃないの?」
幽明がホント驚いたよ、とクオリアちゃんの顔を覗き込む。
「はい、嫌いだと思ってただけで、その感情は好きと言う感情だったんです、恥ずかしながら。今思えばずっと幽明さんの事ばかり考えていましたし……」
クオリアちゃんの頬が真っ赤に染まる。
「そ……そう。言い争ってたのがなんか恥ずかしいね……これからもよろしく!」
幽明はクオリアちゃんの頬をツンと突っついて微笑んだ。
「はい!!!」
クオリアちゃんは心底嬉しそうだ。
「ねーすばるさん。くっつき過ぎですよ。割れたらどうするんですか」
トドリが、展望ガラスにべったりくっついてはしゃぐ怪丘さんに呆れている。
「だってー!!!UFOからの景色なんて滅多に見れないよ?目に焼き付けたいじゃない。あ、せっかくだからトドリちゃん、一緒に写真撮っとこ!?」
怪丘さんて、なかなか緊張感無い人だよなって時々思う。というより、好奇心が人一倍強い感じ。
政府の依頼で、呪われた小学校の捜査に行くんだぁ!って喜んでたぐらいだからね。
「一枚だけですよ?それと後で送って下さいね?」
トドリも撮りたかったんだろうな。
ミレアとヒノがこっちに来た。そしてミレアが私に言う。
「よほー。ねぇシスイ、好きな人がみんなから嫌われてたらどうする?」
二人は手をマイク代わりにして、私に言ってきた。
こんな時に恋バナかよ……
「私は恋人の味方かなぁ……だって、それが恋人だろうし、でも片思いならそれはちょっと重いかもなぁ」
真剣に答えちゃったじゃないか。
「やっぱダーリンならそう言うと思ったわ!ミレア、ファイト!」
ヒノはミレアを、闘志の籠った目で応援した。
「よほ。そうよね、好きってそういう事よね。良い事言うじゃないのシスイー、のっちゅー」
と言って、ミレアは本当に私の頬にちゅっとキスした。
「泥棒猫!!!!!」
ヒノがそう言って、ミレアをポカスカ叩いてる。ミレアは爆笑しながら逃げ回っている。
そんな時、キョウが隅っこで一人、赤い月を見ているのが目に入った。
ちょっと行って見よう。
「やっほ。大丈夫?」
「あぁ、シスイか……まあな」
きっといつもなら、こんなキョウの背中を、「どうしたの!?キョウちゃん」と笑顔でリョクが叩いていたんだろうな。
「きっと大丈夫だよ。みんなで頑張って、リョク助けだそ?」
「ありがとな。俺さえあいつの話をちゃんと聞いてやってりゃ、こんな事態になってなかったかもって思うと、自分がバカ過ぎて辛ぇんだ……」
キョウは、グッと拳を握っている。
私はその拳を、そっと上から両手で包む。
「そう思うなら、次頑張ろうよ。まだ終わってないよ。リョクはきっと今もキョウが助けてくれるの待ってるんだから」
キョウは、ハッとした顔で私を見た。
「そうだそうだ。暗い顔すんな!もっとパワフルにいきなさいよ!気持ちで勝つのよ気持ちで!」
ルリメアちゃんが、熱血ワードを吐きながらキョウの背中をビシバシ殴っている。
「ふふっ、そうだな……負けてらんねぇよな!」
少し元気が出て来たキョウの背中に、ルリメアちゃんが乗っかり楽しそうにしてる。
これでちょっと安心だ。
私は不意に他に目を向けた。
あ!フィジャナーク王が、外の景色見てるノウコさんに話しかけている。
なんなのさ……
なんか、ちょっかいかけたくなるじゃないか。
「やっほー王様。ノウコさんの事ナンパしてるんですか?」
私は二人の間にヒョイッと顔を出した。
「ちょっと!!シスイちゃん!!からかわないで下さい!!」
ノウコさんは頬が真っ赤になる。
凄く恥ずかしがり屋のノウコさん、ホント可愛い。
女子の特権使って、抱き着いちゃおうかな?
「ああ、冥 シスイか、ナンパとはなんだ?」
この人、何言っても詩的なんだよなー。
「ナンパっていうのは、仲良くなりたい人と話す事ですよ」
嘘は言ってないな私。
「ああ、そう言う事か。では俺はノウコをナンパしたい。ノウコよ、君は涼し気な花のようでとても綺麗だな。ついナンパしたくなる」
クククーーー!!!大成功じゃないか。
なんなのさ、この面白い展開。
よし、このまま放って置こう。
そうして離れた背後から、ヒノとフィジャナーク王の会話が聞こえた。
「クリシュマヒノよ邪魔するでない、俺は今ノウコをナンパしているのだ……」
「だから邪魔するのよ!こんな一大事に、妹の仲間をナンパするなんて、兄さまの神経疑うわ!」
ちょっとやり過ぎたかも……
うん。離れよっと……
あ!リリスとゾアリアがミコトちゃんと話してる。
珍しい組み合わせじゃないか、なんの話してるんだろう。
こっそり覗いちゃおっと。
「二人にはやっぱり、ぞうとへびの真似をして欲しいの。信頼の証として」
うわぁ……ミコトちゃん、やっぱりぶっこんでんなぁー。
「随分変わった証明だね……」
リリスは、ちょっとミコトちゃんのおかしさに勘づいてるな。
「わかるわ!そういうフレンドリーな行為って、仲良くなるには大切だものね……私、頑張ってみるわ!」
ゾアリアは、あまり他人を疑わないタイプなんだろうな。
それ故、誰とでも仲良くなれるって感じがする。
「うん、頑張って!もし、二人がやってくれたら、私も信頼の証に、さるのダンスを披露するから」
自分でハードル上げてるし……
ゾアリアは、ふぅーと息を吐き真剣な顔をした。
「にょろにょろにょろーーー……ど、どうかしら?」
ゾアリアが、二人の前で両手をくねらせ、顔を赤くしてる。
「うん。確かに信頼の証が確認できたわ」
監督からOK出ましたよ、女神様。
「はー!!よかった。次、ダーリン頑張って!!」
「え、えー……」
戸惑うリリスを、目を見開いて、下からグーッと覗き込むミコトちゃん。
「じゃ、じゃあいくよ?……パ、パオーン…………」
ゾアリアとミコトちゃんは、とてもニヤニヤしている。
「ちょ、ちょっと!!なんで二人は笑ってるのさ、これホントに信頼に必要!?」
リリスは恥ずかしそうにしながら抗議する。
「ええ大必要よ。でも、ギリギリ信頼の証は確認出来たから安心して。それではお礼に、私も一興……」
ミコトちゃんはそう言った後、恥ずかしげもなくサルのポーズをし、右に三、左に三とステップを踏んで、二人の周りを軽快に飛び回った。
二人は堪えきれず笑い出し、ゾアリアに至っては真似をして一緒に飛び回ってる。
今まで散々ミコトちゃんの無茶振りを断り続けて来たけど、これが正解のパターンなんだろうな。
そんな時、リリスが私を呼んだ。
「ねぇシスイ、君は友達に恵まれてるね」
リリスが私に優しい表情をして言った。
「前までは、いっつも一人だったんだけどね。最近はそうかな」
おかしな感じだ、まるで自分に話してるみたいだ。
「ふーん。じゃあ前より幸せ?」
幸せかー……
「楽しくはあるよ、前より全然楽しい。でも、幸せってのは難しいね、今から見れば昔はとても孤独に見えるけど、昔の自分は今を知らないからそれが普通だったんだよね。今も昔も、苦しい事はあるし」
「ほー……わかるかも」
リリスは、心底共感した顔をしている。
「だって私の前世だもんね、リリスは」
私は、悪戯気っぽく笑った。
「ハハハッ……やっぱり君も気づいていたか。そりゃ気づくよね」
あっけらかんと笑う、リリス。
「うん。夢に出て来た事もあるしね、今、目の前の顔とそっくりなまんまで。後、昔から心に浮かんでくる声と、リリスの声、全く同じだし。他にも色々上げればキリがないぐらいだよ」
私は、結構大変だったんだよ?と言うニュアンスで話す。
「万劫の棺から不死の体が勝手に発してた事もあるのかもね。それか君の中に眠る私だったのかもね」
そうか、リリスですらよく分かってないんだ……
「リリスはずっと何を願っていたの?私の心にはずっと、何かを達成してくれだとか、答えを見つけてくれって聞こえてきてたけど……」
まさか、本人に聞く機会が訪れようとは……
「何だと思う?」
「苦しみの終わりでしょ?」
私は当たり前じゃんと返した。
「ピンポーン」
リリスが掌を私に向けたので、私はパチンとハイタッチした。
「皆さんそろそろ到着です。ご準備お願いします」
クオリアちゃんが大きな声で、みんなに合図した。
一斉にみんなの目が、聖戦に赴く勇者のように鋭く変わった。




