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リョク救出大作戦

メイド喫茶プリズムフィーユ――




私、冥 シスイは現在、メイド喫茶プリズムフィーユのVIP席の大人数ソファーで、秘密結社シェアプリズムのメンバーと会合を開いている。


他のメンバーと同様に、とても困惑しながら……


何故なら、想像だにしなかった事態が巻き起こっているからである。


今や、この電気街を含め、私達の住んでいる地域は、ある異常な出来事でパニック状態となっている。


しかもそれは、この地域だけで、とどまる話ではなく、日に日に、恐ろしい速度で広範囲に広がっている。




その異常な出来事は、今や世界中に動画配信され、この周辺一帯は注目の的となっているぐらいだ。


何せ街中で、天の扉から出現した存在達と、禍々しい赤い目を持つ独特な獣達と、格の高い妖魔の軍勢が、凄まじい大乱闘が巻き起こしているからだ。


大乱闘を起こしている存在達は、人に危害は加えないが、建物や地面などは平気で潰したりする。


それはまるで、小さな箱庭で、ブロック遊びでもしているかのようだ。


自分達のちっぽけさと、世界の広さを痛感させられる。


では、そんな手に負えない状況なら、私達も逃げればいいって話でもあるのだが、そうとはいかない。


それは、私達が困惑している理由の一つでもある。


この大問題の発端の張本人は、秘密結社シェアプリズムのメンバーの一人、


万上 リョクだからだ。


恐らく、赤い獣達のボスが彼女なのだ。


彼女は、天の扉が執行する、調整の排除対象に選ばれ、必死に抵抗しているのだろう。


キョウの話を聞いたり、動画を見た私達の結論がそうだ。




動画内のリョクは、私達の知っている優しくて面白い彼女では無く、狂ったように赤い獣達を指揮して、SF映画でもまだ甘いような戦いを街中で繰り広げていた。


妖魔の大軍勢や、明らかに地球で争っていいレベルでは無い存在達に向かって、真っ赤に染まる凶暴な獣達をパレードのようにぶつけていた……







「今すぐみんなでリョクを助けに行こう。あいつは悪い奴なんかじゃ無い。誰よりも優しい奴なんだ」


キョウの琥珀色の瞳がギリギリと魔圧で燃えている。




「そうです、皆さん行きましょう。リョクさんに酷い事する奴等は許せません」


クオリアちゃんは、珍しく怖い顔をしている。




「ちょっと落ち着きなよ。君達も天の扉の存在達がどれぐらいヤバいか分かるだろ?


無暗に突っ込んだら、救出はおろか、全員やられて、お終いだよ?」


幽明が冷静に二人を止めてくれた。




「じゃあ何か!?見殺しにしろってのか!!!」


キョウが、溢れ出した感情で、机をバンッと叩いた。




「キョウさん落ち着いて下さい……幽明さんはそんな事言ってませんよ?」


響が、気持ちは分かります、と言う瞳で見つめ、キョウをなだめる。




「そうよ、ゴリラみたいに、あんたが一番心配してるのは分かるけど、みんなも同じなのよ?ここで敵作ちゃってどうするのよ?」


ミコトちゃんが、淡紫の三白眼でキョウを軽く睨んだ。




「そうですよ、キョウちゃん。みんなで落ち着いて考えましょ?」


ノウコさんも、キョウに言い聞かせる。




「……あいつ一人で、あんなやばい中に……ぜってーこえーはずなんだよ……」


キョウは、ほんの少し落ち着きを取り戻し出した。




「よほほ。私だってトドリがそうなれば、今のあなたみたいになるわ。でも、あなたには他の仲間もいるのよ?ちゃんと頼って、みんなで解決策を考えましょ?落ち着きなさいのっちゅ」


ミレアは、リョクが映る激しい戦いの動画を見ながら言った。




「どの道、この件については本当にどうにかしなければいけないしね。被害が信じられないスピードで広がっているもの。政府もあらゆる異形霊媒師を集めて、この件を収めようと必死だわ」


怪丘さんは、政府直属の刑事として既に動いてくれてるのだろう。


街中で、たまに異形に混じって戦っている人間がいるのは、そういう事か。




「俺は、いつでも手を貸すぜ、なんでも言ってくれ」


さらっと、男の声が混じる。


ドミノだ。前より覇気のある奴になったな。今回の件に協力してくれるらしい。




「助かるぜドミノ」


幽明が、ふふっと笑ってドミノの肩を小突いた。




「護衛でも何でも任せろ!」


ドミノ、ハハッと爽やかなに笑い、自分の掌に拳を打ち付けた。




「でも、あれだね。一体どうすれば、この問題を収められるのかな……?シスイはどう考えてるの?」


トドリは、理性的な目で私を貫くように見た。


全員も、こっちを見てる。




私は緊張をほぐすように、アイスティーを一口飲んだ。


「んー……リョクを説得するぐらいしか思いつかないかな。


天の扉の存在は間近で見たけど、到底敵いはしないだろうし……ありきたりな考えでごめんね……」




「それで、正解だと思うわ。天の扉の存在達も、リョクちゃんの赤い獣達の軍勢も、ホントに私達がどうにか出来るレベルを超えてるもの。唯一、話が通じるリョクを説得して、何処かへ逃がしてあげるしか方法は無いと思うわ」


ヒノが、私の考えを補完してくれるように言った。




「何処かってなんだよ……」


キョウが寂しそうに呟く。




「死ぬよりかはマシだと思うわよ?」


ルリメアちゃんが真紅の瞳を鋭く光らせ、キョウにそう言った。


いつもの浮足立ったルリメアちゃんでなく、数百年生きて来た風格がそこにはあった。




「ミコト……お前の召喚でどうにかできねーのか?」


キョウが、ミコトちゃんにぶっきらぼうに言った。




「できない。私がどちらかに肩入れすると、問題が遙に大きくなるわ。あなた達はさっきから二つの勢力について述べているけど、古来よりこの地に住まう妖魔達の軍勢もそろそろ黙ってはいないわ。彼らを怒らすと、もっと恐ろしい状況になりかねないわよ?仮に、最悪トクトーロガミを顕現しても、リョクを敵とみなす可能性も大いにあるしね」




「……」


キョウは黙りこくる。


従姉妹として、ミコトちゃんが言ってる意味が誰よりも分かるのだろう。




「キョウちゃん、ミコト様だって危険な位置にいるんですよ?」


ノウコさんは、もう少し周りを見なさいと軽く注意するニュアンスを含めた。




「悪かったよ……」


キョウは、素直に謝った。




「リョクさん……一人で泣いてないですかね?」


クオリアちゃんが、ジトっとした目を潤ませながら言った。




「なかなか難しい状況だね……」


幽明ですら策が尽きたような顔をしている。




「よほほ、結構厳しいのっちゅ……」


そう言うミレアの指には綺麗な指輪が光ってる。


あんなの着けてたかな?




「きっと女神様が、助けてくれますよ」


響がそう言って、手を組んで祈った。








その時だった――




貸し切りのはずなのに、店の扉がカララランとドアベルの音を鳴らし、突然開かれた。


みんなは一斉に振り向く。


このメイド喫茶の店長トドリは、すぐさまその音に反応して、カジュアルな服装をして入って来た二人の女性まで駆け寄り声をかける。




「すみませーん、本日は、貸し切り休業なんです…………」


トドリは、澄んだ金色の目をパチクリとして二人の女性を見た。




「やぁ、こんにちわ」


私と顔がそっくりで、背は私よりも高く、深紅の美しい長い髪の女性。


私はこの女性を知っている。


この人は、私の前世である、リリス・パンクライヴだ……





「やっほ!こんにちは!」


もう一人の女性。


ヒノに顔がそっくりで、私と同じ無垢白な髪を持つ女性。


人懐っこい笑顔は、ヒノそのもので、まるでヒノが仮装をしているみたいだ。


この女性は、恐らくヒノの前世、女神、ゾアリア・レードだ。


天の扉を開いた張本人でもある……




「わぁ……ホントに来た……」


響は瑠璃色の瞳をキラキラさせている。




「おいっ……こいつらまさか……」


キョウが席を立ち、目を見開いて言う。


当然だった、この二人の事をほぼ知らないキョウからしたら、リョクを巻き込んだだけの張本人達だからだ。





「待て、キョウ!……とりあえず待つんだ」


幽明が、分かってるからとにかく押さえろとジェスチャーした。




幽明は、静かでありながら堂々たる足取りで、二人の元へ向かった。


そして、私達に危害を加えに来たのではないか?と、二、三会話をしてからみんなにこう言った。


「みんなこの二人が……女神ゾアリア・レードと、始まりの王、リリス・パンクライヴだ……私達に話があるらしい」


幽明が重々しく私達に言った。




みんなは、突然の神話的存在の登場に、状況を理解出来ずに、困惑し警戒している。







その時だった――




「まー!美味しそうなドーナツ!一個頂戴!?」


女神ゾアリア・レ―ドが、響に向かって言った。




「いいですよ女神様。ドーナツお好きなんですか?」


響は、ニコニコっと微笑んだ。




「ありがとっ!うん、好きよ。穴が空いてるのがカワイイわ!」


ゾアリアは、ひょいっと響のドーナツを手に取り、パクっとおもむろに食べた。




みんなは固唾を呑んでその状況を見ている。




「んーーー!最高!リリスも貰いなよ!?これ作った人、天才だわ!」


ゾアはそう言って、興奮してジタバタする。


意外と子供っぽい女神だな。




「……そ、そんなにかなぁ」


トドリは恥ずかしそうに、頭を掻いている。


でも、その顔はとても嬉しそうだ。




「こらこらゾア、いきなり騒いだら失礼だよ」


リリスが、穏やかでありながら、真面目な顔で注意する。




私とヒノは顔を見合わせ、まるで自分達を見ているみたいだと目を丸くした。


みんなは、二人の予想外に優し気な雰囲気に、警戒を少しずつ解いていた……







しかし――




キョウが立ち上がって怒号を振り撒いた。


「おい!!!ふざけんな!!!お前らが天の門を勝手に開いたせいで、俺のダチは酷い目にあってんだぞ!?なんも悪いことなんてしてねーのにだ!!!そんな事しておいて、ドーナツが美味しいだぁ!?あんま舐めてんじゃねーぞ!!!」


店内のライトがチカチカと点滅し、あらゆる物が震えだす。


一瞬で店内は、キョウの激しい怒りのオーラで埋め尽くされた。





キョウは、相手がどんな存在かなんて気にしてない。相手が下手な事を言えば、今ここで戦闘を繰り広げようとしてる。


それを理解した面々は、すぐに厳戒態勢に入った。





リリスとゾアリアが、静かな表情のまま、キョウに近寄る。


二人の神格の底知れぬ気配に、誰も制止できはしなかった……




激怒してオレンジの髪が逆立つキョウ、その傍らでクオリアちゃんも静かに睨んでいる。




すると突然、ゾアリアがキョウの前に立った……




「ごめんね。私のせいで」


真正面からキョウを真剣に見つめ、突如、泣きそうな声で深々と頭を下げた。




「すまなかった」


リリスも同じく。まるで王だったなんて想像出来無い程の謝り方だった。




キョウは、二人のあまりに誠実な態度に、たじろいだ。




「なんで……なんで……あんな事したんだよ!!?」


そして、先程とは打って変わり、琥珀色の瞳を涙で一杯にしている。




「わたしは、それが……みんなを守る手段だって思っちゃったから……」


ゾアリアは、何かを想いだすように、赤黒い瞳から涙をツーっと流した。




「……」


キョウは何も言わず、ただクソッと歯を食いしばり、拳を握りしめる。


テーブルには、ポタポタと涙が落ちている。




「本当に申し訳ない。私達は他の世界において、勝手に判断するべきでは無かった」


リリスは、キョウの涙を見ながら、心の底から紡いでるような声を出した。




キョウは、テーブルに座り顔を伏せた。




周りのみんなは、誠心誠意を尽くしてキョウに頭を下げた二人に対し、もはや完全に警戒を解いていた。




リリスが、突っ伏したキョウに力強い声で言う。


「私達が今日ここに来たのは、君のその大切な友人を助ける為に来たんだ……」




みんなの顔色がさらに変わる。希望を見出したように目を開いた。


もしかしたら私達は、この王と女神について、大変誤解していたのかもしれないという気持ちも含めて……




「……あいつを助ける為?」


二人を見上げるキョウの瞳も同じく。








リリスとゾアリアが、血星界の話や自分達の話を私達にしてくれ、少し時が経った――




「じゃあ何?このまま争いがひどくなれば、その血星界の軍勢が、世界単位でなだれ込んでくるの?」


ミコトちゃんが、リリスとゾアに聞いた。




「そうなの……おチビちゃん」


ゾアリアは真剣な顔で返すが、語尾がちょっと……




「おチビちゃんじゃない……」


ミコトちゃんは小さな拳を握りしめる。




「ごめんね!あなたすっごく可愛いから……」


ゾアリアは、慌てて謝る。




ミコトちゃんは、フンっとそっぽを向くが、頬は赤い。




「よほほ、どっかの誰かさんにそっくりね」


ミレアがヒノを見てクスクス笑う。




「だってご先祖様だもの、当たり前じゃない」


ヒノがそう言うと、ゾアリアは薄ら笑いで、じーっとヒノ見た。




「まぁまぁ似てるわね。私の方がやっぱり可愛いけど。ねぇダーリン?」


ゾアリアは、リリスにくっつき、撫でてと迫る。


みんなは、こんな存在でもイチャつくんだと言う顔をしている。




「私の方がカワイイし……ねぇダーリン?」


ヒノが悔しそうにボソッと私に言った。


私は頭を撫でてあげる。




リリスが、ヒノを見てちょっと恥ずかしそうに言う。




「そうだね、どっちも可愛いよ」


リリスがそう言う瞬間、私はたぶんそう言うだろうなと思った。


ゾアリアは、私だけって言いなさいと言わんばかりにリリスを揺さぶっている。




「でも、シスイさんとリリスさんも凄く似てますよね?なんでなんですか?」


響が考えも無しに言い出した。


ヒノに関しては末裔と言う前提があるけれど私には無いのだ。


勿論、私がリリスの生まれ変わりであると言う事など、誰も知らないはずだ……


中には勘づいている人もいるだろうが。




「うん、私も思ってたわ、ちょっと似過ぎよ。シスイどういう事?」


ルリメアちゃんも容赦なく突っ込んで来る。




「私に聞かれても……」


私はリリスに目を向けた。




「なにか縁があるのかもしれないね」


リリスは苦笑いしながら、大人な返しをしてくれた。


ちょっと、話が合うかも。私だけに……




「はいはい、そこまで。後でいくらでも話していいから、先にこれからどうするかを話そう。リリスさん、ゾアリアさん、先程、あなた達は助けて下さると仰られましたが、具体的にはこの状況下で、どんな風に助けて下さるお考えですか?」


幽明が話の軌道を戻してくれた、余りに関係の無い話をしていると、きっとキョウは怒って帰ると思ったんだろう。


本当によくできた私達のリーダーだ。




「そうだね、彼女のいる赤い月まで一緒に行き、君達が彼女を説得するまで援護しよう。恐らくだが、君達の気配を視た所、私とゾア、君達で取り掛かれば、彼女と誰かが話し合いをするぐらいの隙は作れるだろう」


リリスは、王である鋭い眼になり、明確な作戦を述べてくれた。




キョウが勢いよく立ち上がる。




「俺が話す。その役は俺にさせてくれ。俺ならあいつを引き戻せる。あいつは悪に堕ち切れるようなやつじゃねーんだ。何度も言うが、ホントに良い奴なんだよ。


もし、あいつが力に酔って調子に乗ってたら、ダチとして俺がぶん殴ってでも、


正気に戻すから……だから……頼む……みんな、力を貸してくれ……」


リョクはみんなに、深々と頭を下げた。




「かっけーなお前」


ドミノは呆けた声で言う。




「キョウ、よく言った。その役は君にしか出来ないだろう。みんな私からもお願いする」


幽明も続いて、深々と頭を下げた。




リリスが続いて言い出す。


「赤い月へ行くという事は、街中で巻き起こっている戦闘とは比較にならないレベルの場所に向かうと言う事だ、なので、無論、恐ろしい者は残るべきであると思う。その際は、私が惜しみなく、その者の分の力を発揮しよう。これでも、数多の世界を統べる王だったのでな。つまり……無理はしてくれるなという事だ」


きっと、みんなを安心させたかったのだろう。




ゾアリアは立ち上がり、目に力を入れて話し出した。


「今回の事、本当にごめんなさい……いつだって私は誰かを幸せにしたいって生きてきた、守りたいって生きてきた、ずっとそうでありたいとも願っていた。でも、私の考えや行動が、誰かを不幸にする可能性もあるという事をもっと考えるべきだった。私がした事に、言い訳は出来ないけど、でも、それでも私は、あなた達の友達も、この世界も本当に救いたいの。こんな私だけど、お願い手伝わせて」





二人の言葉を聞いた、シェアプリズムのメンバー達の士気は最高潮に達していた。





「腕が鳴りますね」


クオリアちゃんが肩を回す。




「でも、赤い月までどうやって行くんですか?」


ノウコさんが、眉をハの字にし困ったような顔で言った。




「それは、私に任せて下さい。使えるUFOがあります!」


クオリアちゃんが、えっへんと立ち上がる。




クオリアちゃんが天然だと知っている私達は、脈略の無いその言葉に、白い目で見る。




「おい、クオリアふざけてる場合かよ。お前の意味不明なボケを拾ってくれるリョクはここにはいねーんだよ……」


キョウが三人の思い出を振り返るように寂しく言った。




「いや、マジかもしれねーぞ。……お前の気配……んで、UFO……お前もしかして、クリアか……!?」


ドミノがクオリアちゃんを見て、訝しげに言った。




そんなドミノを見て、リリスとゾアリアは、クロノ・アースがどうだとかコソコソ言い合っている。




そして幽明は、何故か驚愕の目でクオリアちゃんを見ている。まるで、サスペンス映画のどんでん返しを見たような顔だ。




「ピンポーンです。そしてマジです。ふざけてもいません。今ここで証明しましょう」


クオリアちゃんは、ポケットから紫色の宝石を取り出し、テーブルに置いた。




「殿下……貴方様のお力をお貸し下さい。やっと私は大切なモノに気づけました……」




すると、クオリアちゃんの宝石はビカビカと光出し、鮮明なホログラムのようになり、綺麗な少女を映し出した。




その少女は喋り出す……




「なんだ、クリアよ?いきなり呼び出しおって。我は今、デジタル世界の魔王を倒すべく、愉快な勇者一行と旅をしてるというのに」


ホログラムには、その少女と、背後で踊るひょうきんな勇者パーティーのような存在が映っていた。




「ユルルストク姫ではないか!!!」


リリスが前に乗り出し、大声を出した。




「ユルルちゃんじゃない!!なんで!?えっ!!なんで!?」


ゾアリアも同じく。目が飛び出そうな程の反応だ。




「あ、UFOで見た姫さんだ」


ドミノすら知ってる様だ。




「はい!私も覚えています!」


響も知ってるのか……メジャーだな。




ホログラムの女性は、目を大きく開けて言った。


「リリス!!!ゾア!!!本当にお前達なのか!?やはりかっ!!!やはり復活しておったか!!!これはすごいぞ、信じられん!……あぁ……懐かしき顔じゃ……ズルゴデモーネ討伐依頼か??ん?でも、なにゆえ、そんなとこにおるんじゃ…………あー、そうか……なんとなくわかったぞ。クリアよ、後でじっくり話を聞かせるのだ」




「はい、殿下。それでなのですが、あのUFO、皆さんの為に使ってもよろしいですか?最悪潰れるかもしれませんが。ですが、沢山の存在を救えるかもしれません」


クオリアちゃんはいつもの無表情で、心強い言葉を放った。




「よいぞ、あれはお主の戦艦じゃ。クリアよ、良く変われてるみたいじゃな……我は嬉しいぞ」


ユルルストクと呼ばれた少女は、感慨深そうに言った。




「私ちょっと感動かも、大好きだったユルルちゃんにまた会えるなんて……」


ゾアリアは、涙を拭っている。




「私もだ、ユルルストク姫は、数少ない心を許した友だからな……賢き姫よ、君はこの世界にはこれないのか?」


リリスは、ユルルストクのホログラムに会いたいと言う風に手を伸ばす。




「こっちの用事が片付いたら、いつでも参れるぞ?それまでせいぜい、可愛い我が子とその友人達でも助けてやっておいてくれ。礼は必ずするのでな。懐かしき友よ……おっと、魔王の幹部が来よった。なかなかの強敵じゃ、騒がしくて済まぬな。ではな……また会おう」




テーブルのホログラムはブチンとそこで消えた。




「という事です」


クオリアちゃんが、あっさりと締める。




中々の急展開に、みんなは消化不良気味だ。




「じゃあクオリアちゃん、私達は赤い月まで行けるって事で大丈夫?」


幽明が、まとめるように聞いた。




「ええ、赤い月でも、他の世界でも何処へだって行けます。タイムスリップは流石に無理ですが。あのUFOは、強力な魔術的ステルス機能があるので、敵にも感知されませんし」




「でかしたぞクオリア!!!」


キョウが嬉しそうに飛び上がる。




「人生でUFOに乗れる日が来るとわね」


怪丘さんは、超常現象マニアの子供みたいな目をした。




「ステルス機能は便利だね」


トドリの目も輝く。そういうの好きなんだ。




「私は、空飛んでる時にUFOよく見るぞ?」


ルリメアちゃんは、蝙蝠みたいな翼膜を指差した。




「じゃあ、後は行くだけって感じかな?」


幽明がみんなに確認した。




みんなは、そうだねとお互い視線を交わしながら、次第に真剣な表情を浮かべた。




少しの間、沈黙が流れる……




「大丈夫だよ。きっと私達なら」


私の口から、柄にも無い前向きな言葉が出た。




どうやらその何気ない一言が、みんなの決意の火を灯したらしい。

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