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リリスとゾアの決断


リリス・パンクライヴとゾアリア・レードが復活して、感無量の再会を果たしてからは、結構忙しかった。

遊ぶこと、愛し合う事、現状を整理する事で、毎日が湯水の如く流れていた。

私とゾアの愛は常に沸騰していたが……

これぐらいは、惚気させておくれ、私とゾアを知る君達なら、きっと分かってくれるはずだろう?




朝起きたら、おはようから始まり、顔を洗って朝の食事の用意を一緒にしたり、

朝食を食べてからは、私達が住むこの大聖堂にある美しい庭園を一緒に散歩したりする。

その後は、まだこの世界に慣れていないので、テレビと言う物やパソコンと言う物で見分を広げたりする。

そんなこんなでお昼になって、また食事を作って、午後からは何する?とか話合いながら楽しく食事する。ゾアはこの世界の食べ物が好きらしく、料理やお菓子の本をよく読んで作ってくれる。

午後からは引き続き、見分を広めたり、ゾアとアーテマと三人で、これからについて会議したりもする。

私とゾアは、一体全体自分達がなんで復活したのか?とか、自分達は本物なのか?とか、この世界はどういう立ち位置の世界だとか?全然知らないままであるから、それをアーテマに話させたりする。

あいつは何故か、あまり言いたくないみたいだが、私達には聞く義務があると思う。

私達には、ただただ幸せでいて欲しいみたいな雰囲気だ。

そこに、深く考える必要性など無いと判断したのだろう。



それでも、一応問い詰めた事をまとめてみる。

ざっくり言うと、一度、私達二人は死んだらしいが、ゾアが女神として復活を熱望されてたらしく、結局それが遥かな時を超えて実現され、新たに当時のゾアと言う現象が生まれたらしい。

それに反応するべく、精神は終わりを迎えたが、万劫の棺の中、不死の体で宇宙の果てを彷徨っていた私も、その器に新たな現象として生まれたらしい。

ここで凄くややこしい事があるのだが、アーテマ曰く、私達の生まれ変わりが既に復活した世界にいるらしく、というか、私とゾアが復活して再会した場所にいたらしい。

冥 シスイという女の子が私の生まれ変わりで、クリシュマヒノという女の子がゾアの生まれ変わりらしい。

正直……物凄く話してみたい。未来に生きる私ってどんなのだろう?とか、ゾアの生まれ変わりなら、きっと凄く可愛いんだろうな、とか想像するだけでも楽しい。

でも、同時に存在するって、どっちが本物みたいな感じになったんだけど、私達的な結論では、どちらも本物であり、同じ私達でもあり、別人でもあるだ。

同じ直線上の流れを生きる、別の私達と言う方がわかりやすいかな?

過去の要素で生きる私とゾアは紛れも無く、自分達が本物だと思っているし、

未来の要素で生きる冥 シスイとクリシュマヒノは、今の自分達こそ本物だと思うだろう。


そして、未来の二人が生きるこの世界は、資源と創造性に富んだ、なかなかに住みやすい世界という事も分かった。

それ故に、他の世界に狙われている状況だったという事も理解した。

天の扉を開いた私達が言うのもなんだけれど……

でもあれは、侵略に対する、かなりの予防効果がある行為だったと私達は認識している。


まぁ、そんなこんなで話は逸れたが、午後からはそういう風な話をしたり、この巨大な大聖堂を二人で、バンダナ、マスク、エプロンをかっちり身に着け、大騒ぎしながら大掃除したりもする。

で、陽が落ちてきたら、私とゾアはこの世界の衣装に着替え、街まで行って日用品や夜の食事の買い物をしたりする。ついでにちょっとだけ、街をぶらついたりもする。

夜の食事については、アーテマに任せたりする時もある。

アーテマは料理がとても上手なのだ。

アーテマは、一応この大聖堂の一室に住んでくれて、雑務などしたりしてくれてもいる。

で、夜の食事を食べながら、今日の出来事や、明日の予定などを話して大体一日のほとんどが終わる。


後の残り時間は、そうだな……

詳しくは言えないけど……

私とゾアは、離れた時間を埋めるように、過去の悲しみを癒し合うように、今の奇跡を最大限に感謝するように、心行くまで愛し合っている。

誰の邪魔も無いこの巨大な聖堂の一室で。

まさに、至福の時だね……


きっと、私とゾアを知る人達は、私達について哀れみの心を抱いてくれていただろう、でも安心してくれ……


私達は今、本当に幸せだ――


そして、これからについても、全く悲観はしていない。二人で力を合わせて、どこまでも進むつもりだ。






大聖堂、庭園、ランチテーブル――


雲一つ無い快晴、鮮やかな花の香りが舞う庭園で、私とゾア、アーテマの三人はランチをとっていた。


「ダーリンあーん!」

ゾアが、フワフワのパンケーキを私の口に運んでくれる。


「あーん……モグモグ……うん、美味しい!格別だよ!やっぱりゾアは料理の天才だね!」

私がそう言うと、ゾアが頬を赤く染め、もっと言ってという顔をしてる。


「えー……そうかなぁー適当だよ?ちょっとだけセンスあるのかもねー私って。じゃあ次はダーリンの番!」

ゾアは大きく口を開けて、おねだりしてきた。


私は、パンケーキをプスリとフォークでさして、ゾアの口まで持っていく。


「んーーー!最高だわ!一体だれが作ったのかしら!?」

ゾアは演技っぽく、頬を押さえる。


「き・み・し・か・いないよ!ゾア先生」

私はゾアの額を撫でる。


ゾアは、両手を組んで瞳を閉じ、嬉しそうに、うーんと唸る。


こんないちゃいちゃを、私達は復活してからずっと続けている。


しかし……今日はアーテマの顔がとても暗い。

顔と言うか仮面だ、アーテマに肉体は無いから。


ちょっと、いちゃつきを見せすぎて、流石に、お腹いっぱいになってきたか?


「アーテマどうしたんだい?」

私はそう言い、プスリとフォークでパンケーキを突き刺し、アーテマに差し出す。

ゾアも真似して、同じくパンケーキを差し出した。


アーテマの仮面が、バツマークに変わり、首を振った。

私とゾアは顔を見合わせ、これは重症だねと言い合う。


「アーテマ、一人で抱え込まないで……あなたが辛いと私達も辛いのよ?」

ゾアが、コロっと表情を変え、悲しそうな顔をする。


「すみません……気を遣わせてしまいましたね……ちょっと問題が起きてしまいまして……」

思えば、この世界で出会ったアーテマは昔ほど明るくない。時折何かに怯えているような気がする。


私は一瞬、あのルオクと言う少年が頭に浮かんだ。

あの少年、というか神様の類だろうが、私達にとっては頭が上がらないぐらいの恩人だが、ちょっとだけ異様な気配がしたからだ。

それは、強さとかでなく、深い悲しみの気配……


「どんな問題なんだい?言ってみなよ」

私は、アーテマに微笑みかけた。


「……」

アーテマは沈黙してる。


「アーテマちゃん!めっ!言いなさい!」

ゾアはアーテマを母親のようにしかりつけた。


「では……」

アーテマは渋々、思い口を開く。


私達は、それでよしと微笑む。


「お二人は、血星界について覚えてらっしゃいますか?」

アーテマは、淡々と懐かしい言葉を放った。


「血星界?覚えてるも何も、忘れられるような奴等じゃなかったじゃないか。それに、私達は血星界の赤光の王と知り合いだったぞ?」

私は、何を当然な事をと言う風に返した。


「ええ、勿論覚えてるわ。私も赤光の王とは、何度かお茶したことだってあるのよ?」

ゾアは、結構色んな種族から気に入られていた。


「そうですか……では、話が早いですね。この世界にその赤光の王の生まれ変わりがいます」


「何!!!」

私は、交わってはいけない二つの世界の共通点に驚きを隠せなかった。


「なんで、そんな事がわかるの?」

ゾアは、不安そうにアーテマに聞いた。


「何故なら既に、ニュースや動画配信で話題になっているからです。勿論、この世界の住人は、血星界など知りもしませんが……」


私とゾアは、アーテマにスマホで動画を見せて貰った。


タイトルは、「都市伝説 赤い女王」と書かれており、まだ成人にも満たぬ黒髪の女の子が、街なかや、あらゆる場所で、血星界の獣達を使い、天の扉の存在達と激しく戦ったり、空に漂う真っ赤な月の様な物体に入って行く動画だった。

そこには、かつて私が戦った、ヒュードルグという非常に厄介な血星界の獣も映っていた……


「これは……とんでもないことじゃないか……」

私は手で顔を覆う。


ゾアも表情が暗い。

せっかく掴んだ幸せな生活の矢先に、こんな事が起こると当たり前だろう。


「そして、もう一つ問題があります」

アーテマが研ぎ澄ました声で言った。


「なんだ?」

私はこれ以上の事があるのか?と、返す。


「この少女は、あなた方の生まれ変わりである、冥 シスイさんと、クリシュマヒノさんの御友人なのです……」


……


「そんな……」

ゾアが悲壮な声を上げる。

ゾアもあの子達が、私達の生まれ変わりだと当然に知っている。

ゾアは、生まれ変わりの私達が、常に一緒に行動し、さらには愛し合ってると知って、信じられないぐらい喜び、二人を見守りたいわと言っていたぐらいだ。


「きっと二人は、あの少女を助けに行くだろうね……私には分かるよ、私だからね」

私は、ゾアとアーテマに言った。


二人は、間違いないと頷く。


アーテマが私に言った。

「はい、既にそのように動いています。二人は、他の類稀なる能力者の御友人達と、近々、会合を開くようです」


「場所と日時は分かるのかい?アーテマ」

私は、ゾアがせっかく焼いてくれたパンケーキをプスリと刺して食べる。


「はい。……リリス様、行かれるのですか?」

アーテマは少し溜めて言った。


「ダーリン……」

ゾアは、私を引き留めたそうだった。

彼女としては、この世に問題は尽きないから、もう何もかも置いといて私と平和に生きたいんだろう。

でも、私達の生まれ変わりの二人も心の底から放っておきたくない……

そんな複雑な顔だった。


「あぁ、行くよ。どの道、赤光の王の生まれ変わりか、それに敵対する天の扉の一部の存在達を止めるかしないと破滅的な事態になるからね。私達やこの大聖堂だって巻き込まれても何らおかしくないし。最悪、血星界の存在が一気にこの世界に流れ込んでもしたら……」



「そうだよね……」

ゾアが、遠くを見るような目をした。

ゾアにこんな寂しそうな顔を二度とさせたく無かったのに。

私はこれを繰り返してはいけない。


「でもゾア、安心して。何が起きても君だけは絶対離さないから。それだけは約束する。最悪二人で逃げればいいさ。うん、どこまでも逃げよう。私はもう、終わりの無い戦いなんてする気は無いんだ」

私はゾアの手を強く握った。


「ありがと……もし、ダーリンが言う事聞かなくなったら、私が転移魔法使って、どっかに連れ去っちゃうからね?」

ゾアはふふふ、と笑い、優しく私の手を握り返す。


アーテマの表情が少し明るくなった。

「例の会合の場所と日時は後で伝えます。それと……私も、あなた方二人の幸せを最優先に望んでいます……」


「ありがとっ、アーテマは私達の子供みたいね、偉い子供!」

ゾアが笑いながら言った。

ちょっと無茶があるんじゃないかとは思ったけど、もう、家族といっても違和感の無い存在なのも確かだ。


「……子供ですか……妹が欲しいです」

ジョークが言えるようになって良かったな、アーテマ。


「もう、この子ったら、ねぇダーリン!」

ゾアは頬を赤くし、目をパチパチとさせて私を見た。


「じゃあ、アーテマはお姉ちゃんになりたいんだな!」

私は笑いながら言う。


「そうね!」

ゾアも同じく。


「え……」

アーテマは衝撃の顔をした。


「冗談だよ!!!」

私達三人は大笑いし、ランチの残りを平らげた。


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