温泉行ってきます
私達、秘密結社シェアプリズムのメンバーは、温泉旅行に来ている。
激しく移り変わる世界での日々の疲れを癒すために、みんなで何も考えず旅行でもしようと、満場一致で決まった次第だ。
温泉街――
ここは、日本でも有数の温泉街。
温泉街の中心を流れる涼し気な川に沿って、レトロで情緒ある店がずらりと並んでいる。
地面は石畳で舗装されており、非常に趣深い雰囲気のある場所だ。
森林を背後にした湯煙漂う景観は、見るだけで癒される。
そして、私達全員が一斉に歩くとかなり目立つ……
「ダーリン!!温泉まんじゅうあったよー!」
ヒノとルリメアちゃんが、少し先でぴょんぴょん飛び跳ねてる。
「ちょっと二人共、目立つから、あんま大声あげないで」
私は声を抑えながらあげた。
「シスイ競争よ」
いきなりミコトちゃんが隣を走り出した。いつもノリが突発的だ。
「ミコトちゃん、せっかく温泉街まで来たんだからゆっくりしようよ」
と言った時には、既に遙先にいるミコトちゃんだった。
「ミコト様!こけちゃいますよー、待ってくださーい!」
ノウコさんが、長い足を生かしアスリートみたいに突っ走る。
「やれやれ騒がしいね」
幽明が私に向かって言った。
「幽明最近コンタクトだね、なんで?」
率直な疑問だ、眼鏡がトレードマークだったのに。
にしても、眼鏡外すと凛とした感じが増して、クールなご令嬢みたいになるな。
蒼い髪と銀の瞳って、ホント神秘的な組み合わせでかっこいい。
「それは……」
幽明は、顔を赤くして答えを濁し、ミコトちゃん達と同じように走って行った。
君もかよ。
横を歩いているキョウが土産屋を見ながら言った。
「見てくれよ、木刀あるぜ?俺買おっかなー」
「それ、持ち歩くの大変じゃないかな?」
後ろにいるトドリが、現実的なツッコミをする。
「腰に差してればいいんだ、ノウコ姉ちゃんみたいに」
キョウは、俺は天才だ!みたいな顔をしている。
「キョウちゃん絶対後で、あーこんなめんどくせーの買うんじゃ無かったなー、とか言うよ」
リョクが腕を後ろに組み、女の子らしい歩き方で言った。
「言わねーよ、最悪クオリアに持って貰うから!」
君、サイテーかよと私は心でツッコむ。
「よほほ!君、サイテーね!のっちゅ」
ミレアが言ってくれた。
「私、持ちますよ(もぐもぐ)」
クオリアちゃんは、いつの間にか買っていた、串団子を両手に持ちながら、まだ私は持つぞと宣言をした。
「キョウの不良みたいな見た目で木刀なんか持ってたら、旅館入れて貰えないよ?ふふっ」
私は、皮肉交じりで聞き分けの無い不良少女にそう言った。
キョウは私の肩に強引に腕を回し言う。
「言ってくれるじゃねーかシスイ」
「うぐ……」
力つよ、番長かよ。
「ピピー、乱暴禁止です!」
響が土産屋で買ったお面をつけながら、よくやる宇宙船の真似をして、キョウの周りをウロチョロしながら言う。
「うぉ!?なんだお前」
キョウが、突拍子の無い響の行動にたじろいだ。
どうだ?響の意味不明行為の耐性が無い人は、なかなかきついだろ?
「ピピー、接触禁止です!」
ヒノまで、ホイッスルを吹くポーズでキョウに突撃する。
「ピピー、違反金として血を頂くわ!」
ルリメアちゃんまで群がって、もはやキョウは身動きができない。
「おい!お前らやめろ!頭おかしいのか!?」
キョウは走って逃げ回る、三人はとてもすばしっこく追尾し続けた。
風情ある温泉街が、私達のせいで喧騒で満ち溢れる。
「楽しそうだねキョウ」
当の私は、しめしめと言う顔で他人事だ。
「はーいみんなー!通行人の迷惑はやめましょうねー!」
怪丘さんが、ビール片手にほろ酔い気分で言った。
追尾していた三人は、イエッサと敬礼し直立する。
「よし!いい子達ねー。体力は残しておきなさい、今からたっくさん遊ぶからねー!!」
三人が一列に並び、既に見えてる私達の宿泊先の旅館へ宇宙船の如く向かった。
某有名老舗旅館――
私達は、到着するなり五つの部屋に分かれて、荷物を置いた。
部屋割りは、1、ミコトちゃん、ノウコさん 2、私、ヒノ、響
3、キョウ、リョク、クオリアちゃん 4、トドリ、ミレア、 ルリメアちゃん
5、幽明、怪丘さん。という割り振りだ。
部屋はかなり広く、隅々まで掃除が行き届いており、和の雰囲気一色でとても心地良い。
大きな窓から入る、山並み達の荘厳な景色と新鮮な緑の風は、なんとも解放感が溢れる。
私は、とびっきりの笑顔で、「やっほー」と叫んだ。
楽しい物語が始まる気がする。
部屋に用意されていたお茶菓子も、ヒノが「んー!!!デリシャスだわよー!」と、ちょっと癖のある表現をし、とろけるような創作ダンスをするぐらい美味しくて、これは晩御飯も期待できるなと、私はさらに上機嫌になる。
私は、なんやかんやで異形霊媒関連の様々な依頼をくぐり抜けてきたが、実はその報酬はあまり手をつけていない。
スマホのアプリから見る、ネット銀行の残高は、ネオメデュラの館の依頼をこなした後の段階から、4倍程に膨らんでいる。
額は想像にお任せする。うふふ。
誰の提案か、とにかくひとまずみんなで温泉に入ろうという話になったので、
私は、ヒノと響と一緒に、下着などの着替えやタオルを持ち、この旅館自慢の超特大露天風呂へ向かった。
脱衣所――
脱衣所には、私達以外は、もうみんな揃っていた。
着替えている真っ最中だったので、私は目のやり場に困った。と言っても下着なんだが……
それでも、正直すごくドキドキした。
さっきまで騒いでたシェアプリズムのメンバー達は、今はシーンと沈黙してお互いの目を警戒し、頬を赤くしながら、一切何も見えないように着替え、ササっとタオルを巻くのだ。
この状況を見るに、私達秘密結社シェアプリズムは、シャイの集まりなのかもしれない。ははは、ちょっと笑える。
私は、意外と平気だった。
この日の為に新調した、避暑地のお嬢様みたいな真っ白なフリルのワンピースを、そーろっと脱ぎ、お気に入りのピンクの下着姿に当然の顔でなる。
私の幽霊みたいな白い肌には、このピンクが結構色味的に合うのだ。
みんなはどんな風な感じの下着なんだろう?不意に疑問に思った。
そんな感じで、私は特に下心なく周りを見渡した。
んー……みんなやっぱり、自分の性格や容姿にあった色味を身に着けてるな……
こっそり実況するよ?誰に?私のメモリーに。
幽明はあれだな、男勝りな性格だけど、かなり女性らしいスタイルだね。
肌なんか誰にも触れられた事が無いみたいに純粋で、水色が良く似合っている。
トドリは、かなり可愛くまとまっていて、西洋のお人形みたいだ。妖精みたいに細くて白い。ファンシーな黄色の下着が如何にも彼女っぽいね。メイド喫茶の常連がこの姿を見たら、たぶん二度とトドリ推しを辞められないだろう。
ミレアは、なんというか……絵画とかのヴィーナスって感じで、かなり豊満。
蒼白な肌は赤みがかっていて芸術的。髪色と同じ、濃いピンクの下着が刺激的だ。あ!こっち見て笑った!魅了する気かこの野郎。
ノウコさんとリョクは、二人とも長い手足が特徴的でスタイルが似ている。
俗にいう女の子の憧れみたいなスラっとした感じで、下着だけでも全然様になる。
人間って綺麗につくられてるんだなーってちょっと感心する。
リョクは紫のフリルがついた下着で、ノウコさんはスポーティーな黒の上下だ。
あ、ノウコさんと目が合った。超恥ずかしそうに目を逸らされた……
私、もしかして見過ぎ……?
既に着替え終わり、しっかりタオルを巻いたミコトちゃんが私の前にやって来て一言。
「へんたい」
……
声も大きかったので、みんながチラッと私を見た。
下着姿の私は急に恥ずかしくなり、それに耐えられず、両腕で体を隠して一目散に露天風呂へ向かった。
これに関しては自分が悪いと思いながら。
でも……
うふふ。
絶景が見渡せる、特大露天風呂――
この露天風呂は本当に爽快で、広大な山並みの風が吹き抜ける高い場所に位置する。360度見渡す限り、青々とした山が見渡せて、桃源郷のように美しい霧が漂っている。
しかし、湯舟や、露天風呂内の足場に関しては、とてもしっかり管理されていて、秘島のビーチみたいなアクアマリン色のお湯に、足場は西洋の美しい石畳のようだ。
旅行ってやっぱいいなー、って言葉が湧いて来るような場所だ。
もう全員が揃って、お湯に浸かってる。勿論、全員しっかりとタオルを巻いて。
なんせ、シャイなグループですから。
「あーきもでぃいいい」
響がそう言いながら、犬搔きをしている。綺麗なポニーテールの黒髪と瑠璃色の瞳がカンカンと照らす太陽の陽射しに煌々と光っている。変な事さえしなければ、ホント美少女なのに。
「お前器用だなー」
キョウが響にそう言い、プカーと天に仰向けに浮かんでいる。キョウはかなりボーイッシュな子なんだけれど、肌とか目をよく見れば、実はかなーり女の子らしい。
オレンジの髪を黒く染めて、一つ間違えたならば、図書館に居座る女の子に見えるだろう。
「ねぇシスイ、後で貴方のワンピースのブランド教えてよ。あれ、ホントに綺麗。似合ってるわ!」
リョクが私の隣に来て言った。白磁な肌をにゅるっと惜しげも無く私に近づけて、露天風呂に似合わぬ、黒い眼帯でへへへと笑っている。
そして、妙に良い匂いするな、この子。お湯に浮かぶ、垂れ幕みたいな黒髪が発生源かな?
「いいよーリョク。実はあれ、ちょっとお気に入りなんだー。今度一緒に買い物、行ったりしてみる?」
私は、両手でお湯を掬い上げては捨てを繰り返しながら言った。
「行こ行こ!やったぁ、シスイたんと初デート決定。あたし嬉しいのだぁ!」
えー……反応、超可愛いじゃんかー
そうして、リョクはバイバイと手を振って、幽明の所へ行き、ツンツンと肩を突っついてる。ちと、あざといなお主。
「よかったね。初デート決まって」
ヒノが、お湯に頭だけを出してむくれてる。
「もぅ、すぐ嫉妬しないの」
私は、ヒノの顔にお湯をかける。
「きゃー、ひどい。私のダーリン、他の女に興味を持ってから乱暴者になったわ!」
ヒノは三文芝居をしながら、顔のお湯を腕で拭って言った。
「それは、ひどいわね。こっちへおいでヒノちゃん、お姉さんが慰めて、あ・げ・る・から」
怪丘さんが、大きく腕を開き、ヒノを巨大な胸元へと誘う。
「ダーリンばいばい……」
ヒノは、舞台女優みたくこちらに目配せして、怪丘さんに吸い込まれて行った。
……
これにノると長くなるから、ほっとこう。
私達はこんなやり取りを、一日十回以上してるんだ。
バッシャーン!!!
「あーしが一番、お湯だらけだ!!!」
ルリメアちゃんが、突如水面から出現し、そう叫んだ。
湯舟が盛大に跳ねる。
蝙蝠みたいな大きな翼膜のせいで、かなり被害が大きい。
紅蓮の目をギラギラさせて何を考えてるか分からない辺り、流石吸血鬼少女だ。
「うわああぁぁ、私もお湯だらけになっちゃいました」
クオリアちゃんは、その隣で相変わらず天然な反応をする。
夕焼けのグラデーションみたいな髪が、白い肌に張り付いて、染め物みたいになっている。
「うわああぁぁ、私もお湯だらけになっちゃいました!」
でた、真似っ子。
ミコトちゃんはそっくりそのままクオリアちゃんの仕草や声を真似をして、
うふふと悪戯気に笑ってる。
そして、まるで私に見せたいみたいにチラッとこっちを見た。
スルーしてみよ。私は背中を向ける。
やけに静かだ。
振り返る。
いない……
「あぁぁ何!!??」
私は、大声で叫んだ。
誰かが、タオルの内に手を入れて、背中をつねってきたんだ。
振り返ると、お湯浸しのミコトちゃんがいた。
「ちょっと、なんなのさ。痛いじゃん」
わたしは、目の前の三白眼の無垢な少女を見つめる。
反抗的な目だ。
軽く頬をつねってやった。
「いた。なにすんのよ。私じゃないわよ。ぼーっとしてるから、ヘビにでも噛まれたんでしょ。八つ当たりしちゃって」
ミコトちゃんは紫の濡れた髪を、ツインテールみたいに両手で絞ってべーっとしてきた。
「へー、ヘビいるんだー、あ、ホントだ」
私は湯舟を指差した後、ミコトちゃんの腕を、つねりまくった。
「ちょ、ちょっとやめなさいよ。わたしに噛みつくヘビはここにはいないの!ノウコ命令よ、シスイをヘビの技でやっつけて」
なんて勝手な、自己解釈だ。
「はい。ミコト様。シスイちゃんごめんなさいね」
謝る速度早っ。
ノウコさんはそう言って、私の腕を羽交い絞めにした。
……ん。
ノウコさんのきめ細かな肌と、誰も触れる事が叶わぬ胸が、私に勿体無いぐらい密着してる。
これは……
得してるじゃないか私。
よし演技。
「あああぁぁぁひどいよぉーノウコさん!!!」
「そ……そんなに痛かったですか、ごめんなさい!」
そう言うノウコさんの両腕を、トドリとミレアが二人で掴む。
「シスイ応戦するよ!」
トドリ、そう言いながら気づいてたな?
このボーナスタイムに!笑みを隠しきれてないよ。
「ちょ、ちょっと二人共、辞めて下さい。これは任務なのです!あぁ……なんだか恥ずかしいです、こしょばいです!」
ノウコさんは、囚われた姫のような表情をした。
「よほほ!綺麗な肌!パクっとな!のっちゅ!」
ミレアはノウコさんの腕に、唇で噛みついた。
「これ、君達。湯舟で騒ぐんじゃないよ」
幽明が、お湯を滑るように、スーッとやって来た。
白銀の瞳をキョトンとして、青い髪先から綺麗な雫が落ちている。
「あたし幽明のコンタクト姿、すっごい好きだわ。だって可愛すぎるもの」
ヒノがバタ足で横切った。
幽明は、恥ずかしそうに頬を膨らます。
「私は残念よ。メンバーに眼鏡キャラが一人もいなくなっちゃったわ」
ルリメアちゃんが、心底しんみりして言った。
「私、そんな立ち位置だったの……」
幽明は、無い眼鏡をあげる仕草をした。
癖になっているんだろう。
それに気づいて、誤魔化すように髪を耳にかけてる。
「いい女だよな幽明って」
キョウがチャラい男のように言った。幽明の肩に手を回す。
ずるいぞ。
「うん、いい女ー」
リョクも、反対側の肩から手を回す。
これは、私もしていいムーブメントか?
「お、お前等やめろ!!」
幽明は堪らず真っ赤になった顔を掌で覆った。
「はい!すごく良い女でーす!!」
二つの声が重なった。
響とクオリアちゃんが、幽明の前方両脇の水面から出現し、幽明を飾るように、手をヒラヒラさせてる。
「あーもう……」
幽明はやれやれ……と、私に助けを求めるように見てきた。
「よっ良い女!」
私は、日々の彼女の苦労をねぎらうように、にっこり微笑んだ。
その気持ちが伝わったのか、幽明は嬉しそうな顔に変わり同じく微笑んだ。
賑やかに騒ぎながら、ほど良い温度の湯船でリラックスする私達に、涼しい山風が吹き込んだ。
トドリとミレアに羽交い絞めにされているノウコさんや、幽明を取り巻くみんなを眺めて、一瞬一人でぼーっとしている、ミコトちゃんの後ろ姿が目に入った。
「えい」
私は優しく抱き着いた。
「なによシスイ?暑いじゃない」
抱き着いて気づいた、この国を代表する異形霊媒の名家の当主は、こんなにもか細い女の子だったんだ……
私は、お母さんならこんな抱き締め方をするかな?と考えて抱擁してみた。
ノウコさんから、ミコトちゃんは、もう亡くなったお母さんの事が、大好きだったと聞いた事があったからだ。
「愛情の熱さだよ?」
私は守ってあげるわと言う風に耳元で囁いた。
「うそ、どうせ私の事、ちょっとうざいと思ってるくせに」
ミコトちゃんは、ほんのちょっと寂しそうにそう言った。
「何言ってるのさ、こんなに好きなのに」
私はそう言いながら、自分のこの気持ちが伝われと精一杯くっついた。
ついでに肩に顎ものせてみた。
「じゃあ今度……私もデートに……誘いな……さいよ」
物凄く勇気を出して言ってくれたのだと感じた。
「うん、すぐ行こ」
後ろからちょっとだけ見えたミコトちゃん笑顔は、年相応の女の子だった。
「よほほ!!!やめるのですやめるのです!この人変態なので皆さん注意してくださいのっちゅ!」
ミレアが、怪丘さんにくすぐられながら早口で叫んでる。
「前から気になってたのよー、ミレアちゃんの美貌の秘密。お姉ちゃんすっごく知りたいなーって」
すばるさんは、意外と筋肉質な刑事らしい体で、ミレアをくすぐり倒している。
トドリがこっちに来た。
「やっほー」
ブクブクと泡を作って遊びながら言うトドリ。
「やっほートドリー」
そういや、私とミコトちゃんは、アイドル時代のトドリを滅茶推ししていたんだ。
なんかこの状況不思議。
「トドリ、象の真似してくんない?」
ミコトちゃんが言った。相変わらず唐突だな……
いや、もしかしたらだけど、ミコトちゃんのこの意味不明な無茶振りは、愛情表現だったんじゃないか!?
「いいよー!パオーーーン!」
流石元アイドル!ファンサやばい!そしてクオリティ高い!超可愛いじゃん!!
「うふふふふ」
ミコトちゃん、超笑ってるし。なんか嫉妬だ。
「じゃあ次はツンデレしてみて!」
私も折角の機会だから、お願いしよう。
トドリは立ち上がり、一気に演技に入った。
「むーーーっ!!!変なとこ見ないでっ!!!私の目を見なさいよっ!!!こっちはずっと見てんのにさ……」
トドリは一瞬で頬を赤くしながらプクーと膨らませては、瞳をユラユラさせて寂しさを演出した。
神過ぎる。あり得ない程カワイイ……
「トドリ……いや、トドリさん!後でサイン下さい!!!」
私は拍手する。
ミコトちゃんは、ぼーっと見惚れて何も言わない。
生粋のアニメオタクに、今のトドリのツンデレは刺激が強すぎたんだろう。
そして……
「見るよ……」
あ、滅茶ちっさい声でミコトちゃんなんか言った。
「私もう限界!!!一足先にあがるわっ!フルーツ牛乳ちゃんが呼んでるの!!!」
ヒノが慌ただしく飛び出て言った。
「あたしも!フルーツ牛乳ちゃんの声が聞こえて止まないわ!」
ルリメアちゃんも続いて。
そんな風にして、私達は連鎖的に全員露天風呂から脱出して、涼しい世界へと戻っていった。
宴会場――
私達は、まだ体から熱気が立ち上がり、頬が赤いままに食事についた。
涼しい浴衣を着ていて、クーラーが良く効いた宴会場という最高のシチュエーションだ。
豪華絢爛な海の幸、山の幸を頂いているんだが、この温度差が中々に私達にリラックスをもたらし、最高の解放感を与えてくれ、料理が何倍も美味しく感じる。
全員が、生き返るー、という幸せそうな表情をしている。
新鮮で甘いお刺身や、サザエの炙りなどの大人向けな逸品、上品に煮つけた脂がのってるお魚、ジューシーで旨味が溢れるステーキ。どれも、頬が落ちる美味しさだ。
炊き立てのご飯によく合う。
冷えたグラスに注ぐ、冷たいジュースも、ぽかぽかの体にどんどん沁みていく。
私達全員は会話もそこそこに、夢中になって食べきれ無い程の豪勢な料理を堪能した。
宴会場、食後――
「私もう食べれません……グプ」
宴会場のテーブルスペースの横に、広い空間があり、響はそこに大の字で寝ている。
「響、結構胸あんだな」
キョウが近寄って見ている。
「キョウさんハレンチです!訴えますよ」
響は胸をばっと隠す。
「連れねーこと言うなよ?仲間だろ?けしからん奴への天罰だー」
キョウはそう言って、いきなり腕十字を極めた。
「いでででで、どなたかこの乱暴者を成敗してください!!!」
響がジタバタする中、キョウは高笑いしてる。
「任せなさい響、この金無し乱暴鬼は私が退治するわ」
ミコトちゃんが、キョウの背中をポカスカ叩く。
「いたかねーよ、甘えん坊ちゃん」
キョウは、デリカシーが余り無い。
「ムカムカムカー」
あ、あれミコトちゃん結構怒ってる時のやつだ。
「やめなよ、また汗かくよ?」
リョクがうちわで自分を扇いで、高みの見物をしている。
「仕方ないわねー!」
すばるさんが、跳ねるようにキョウの元へ行き、流れるように膝十字を極めた。
「いてぇーーー!あんた何者だよ!?」
キョウが冗談抜きに叫ぶ。
私は隣にいた幽明に言う。
「怪丘さんって運動神経良いの?」
「あの人やばいよ。能力こそないけど、身体能力は人間じゃないねマジで」
幽明は、ちょっと誇らしげだ。
「そうなんだー、政府直属のエリート刑事ってやっぱすごいんだ。そんな気はしてたけど」
私は、ふーんと答える。
「それならあなたもですよ、シスイさん。なにせあなたは、様々な世界のハブ国家、
電脳都市の魔王を倒したんですから」
クオリアちゃんが急に私を称賛し出した。
「そう言われればそうか……って私、魔王じゃん」
自惚れでは無い。
「そうよ最高の魔王。ダーリンは一番強いのよ。私より強い兄様を倒したもの。一番強い私だけの王子様なの」
ヒノ目は、ハート一色だ。
「よく考えればやばいね」
幽明は、ふふっとかすれるように笑った。
「そういや、フィジャナーク王どうしてるの?」
私は不意に尋ねた。
「あぁ……兄様は、天の扉の件で、この世界に被害があまり出ないように、電脳都市をまとめてくれてるわ。たまにこっちの世界に来てるけど、見分を広げる為に」
ヒノは兄を誇らしそうに語った。
「ねぇ魔王ってどんな血なの?味見させて」
ルリメアちゃんが、子供みたいにしがみついて頼んできた。
「嫌。……痒そうだもん」
私は、頭をポンポンと叩いて拒否する。
「蚊みたいに言わないで!魔王になった途端己惚れちゃって!あー権力怖っ」
そんな言い方しなくても。
「いいわ。ノウコに吸わせてもらうから」
誰でもいいのかよ……
ノウコさんは断りずらそうにしてる。基本的にミコトちゃんみたいな幼女に弱いのだろう。
「だれか、こいつらどうにかしてくれー」
キョウが叫んでる。まだやってたんだ。
キョウは、左右の腕を、響と怪丘さんに極められ、足の裏をトドリとミレアにこしょばされ、腹にミコトちゃんが乗ってる。
ざまぁみろだな。
「今すぐに行きます!」
クオリアちゃんが走り出そうとした……
幽明がその腕をとり、抱き締める。
「君は私と遊ばない?」
「はい。幽明さん」
クオリアちゃんは天に上る様な表情で、王子様に出会った姫の如く抱き締めてもらっている。
「やっぱうまいわね、ノウコ」
ルリメアちゃんが言う。
え!今吸ったの!?
ノウコさんは、平然とした顔してる。
ルリメアちゃんが口を拭い、ノウコさんの頭を撫でている。
ノウコさんはちょっと満足気だ……
どんな取引だよ……
私は、再度全体を見渡した。
「ねぇヒノ……」
私はヒノに言う。
「何、ダーリン?」
ヒノはキョトンとしている。
「みんなで旅行って…………超楽しいね!」
「間違いないわ!」
ヒノはパァッと晴れた顔で私に答えた。
そんなこんなで夜中までバカ騒ぎは続き、その後は、日々の疲れをまるっきり忘れるようにグッスリと眠った。
翌朝の帰り際に、旅館の前でみんなで写真を撮ろうと言う話になった。
一枚パシャリ。
そしてもう一枚。
何枚も写真を撮った。
これからも色んな事があるのだろうけど、私はその都度、この写真達を見れば進んでいけそうな気がする。
いい旅だった――
仲間に感謝だよ――




