円環ミレアのだいちゅきが止まってくれないの?
聞いて!!!
私って最低なの。
よほ!
天の扉が開いて、シェプリズムの仲間達が大騒ぎしているのに、その原因の黒幕の男の子の事が超好きなの!!自分でも訳わかんないのっちゅ!
その男の子って言うのは、灯(幽明 灯)の使役している妖魔でね、ルオク君って言うの。恐らく神様。
どうりで、かっこよ過ぎるのっちゅ!
よほほ!
取敢えず幽明含め、シェプリズムのメンバーの何人かは、ルオク君を血眼に探してる。
私も、同じ雰囲気醸し出して探してる風だけど、本心はマジ付き合いたいのっちゅ!
おっほ!
モラルの無さに、自分の血が赤色か疑うわ。
でもね……女の子ならわかってくれるでしょ!?
だいちゅきが止まってくれないの!!!
よほーん。
悲しい程、好きなの!!!
もう、全部私の思い通りになれ!っのっちゅ!
私は、自分ちのマンションの屋上で、ルミナスピンクの髪を、勇ましい国の国旗のようにたなびかせながら、恋を叫んでいた。
よほほ!
そして……ある作戦を思いついたの。
それは、普通絶対使ってはいけないと言われている、禁断の魔術を使うって作戦!
そもそも、禁断の魔術を扱える存在なんて滅多にいないんだけど、私はちょっと
そういう才能があるんだ。
私のハートの魔術の特性を生かした秘術を持っているの。
クククッ……
私の気持ちは誰にも止められないわ!!!恋する蒸気機関車よ!っぽ!
ルオク君ですら、止める事は出来ない。
勝手にキスして、その後お預けなんて許さない……
あれ!?私、黒幕みたいになってるのヤバ過ぎるのっちゅ!!!
よほほ!!!世界がギラギラするわ!!!目がギュイーーーンて!
見てなさいっ!女の恨みの怖さ、私の魔術の才能全部駆使して、教えたげる。
ちょっとでいいから、私を見て欲しいのっちゅ!
キャーーー!ピュア過ぎーーー!
って、興奮した所で、そろそろお昼ご飯食べに降ーりよっと。
トドリ今日は何作ってくれてるのかしら?
ガッツリがいいわね。よほ。
それと、この野望には協力者が必要だわ。
よほほ。もう検討はついているの。
あの子、口硬いといいけど。
メイド喫茶プリズムフィーユ、テーブル席――
「やるわ!!!!!女の敵はボコボコにしましょ!!!」
ルリメアちゃんは、アメジストみたいなキラキラ艶のある濃い紫の髪をバサッと振り乱し、小さな拳をアッパーの様に突き上げて言った。
「しーーー声が大きいの!」
もう!バレるじゃない!トドリにバレたら私がボコボコよ!
ルリメアちゃんの深紅の瞳が、先走って狂気に滲んでる。
「でも、みんなに秘密ってのはリスクがあるから、報酬がほしいわ」
パタッと切り替えたわ。よほ!現金な子!
「何が欲しいの?」
私は両手に顎を置いて、淡いピンクの瞳を見せつける様に言った。
「あなたの血、愛で狂ってドロドロに甘い賢者の血」
子供みたいな顔でそのセリフ、なかなか痺れるわね。
後、急に吸血鬼でウケるわ。でも潔いのっちゅー。
「よほ。いいわ、先払いでいいかしら?」
私は、儀式のようにルミナスピンクの長い髪を耳にかけ、メイド服からニョロっと出ている蒼白な腕を、突き出した。
「うはぁっ!堪らないわ、これは贅沢な腕ね。ミレアあんた話早くていいわ」
よほ。ルリメアちゃん涎垂らしてる。ばっちい。
一度は、私とトドリに監禁されてたのにちょっと単純な子ね。
素直過ぎる、とても良い子……
紫血王ルリメアちゃんは、深紅な瞳を鋭く虚ろにし、ぷすりと私の腕に犬歯を刺して、ちゅーちゅーと血を吸ってくる。
「店内はえっちな事禁止ですよ?」
よほ!クオリアちゃんが、ビーム光線みたいな目で、私達の報酬の受け渡しを見てきてるわ。
「よほほ!先輩命令よ、あなたはあっちいってみんなの目を逸らしなさい。
そして、これは絶対秘密!言ったらここで、ドーナツの魔人召喚するから」
私は、皿に乗ってるドーナツをぶすりとフォークで突き刺した。
「ひぇ、言いません。スイーツ系の召喚なんて、可愛すぎて倒せません!!
命令、遂行してきますから勘弁してくださいミレアさん」
よほ!なんて可愛い後輩なんでしょうね。
「早く行きなさい!!」
ビシッ!これぞ飴と鞭。
あ、走り方かわいいわね。
「てか、ルリメアちゃん飲み過ぎよ。トマトジュースじゃないんだから」
がぶがぶいくな!のっちゅ!
「あぁごめんね。こんな刺激的なの久しぶりだわ。血からミレアの想いが伝わって……私ちょっと泣きそう。あんた本当に大好きなのね……」
ちょっと気持ちを知ってくれたの嬉しいのっちゅ。
「そうなの。自分でもおかしいくらいにね」
よほーん。ちょっと切なくなってきちゃった。
「おかしくないよミレア」
ルリメアちゃんは、私の腕の血をそっと拭ってくれた。
「で、任務の話なんだけど、ルリメアちゃんの血の占いでルオク君探して欲しいの」
私はコソコソと回りの警戒をしながら話す。
店の奥のクオリアちゃんは、挙動不審でみんなからつめられてるわ。
「ごめんね……あれじゃ、ルオクは見つけれないよ?幽明にも頼まれたけど無理だったもん」
申し訳なさそうに言うルリメアちゃん。
「ふふーん。それができるのよ!」
私は、大きな胸を張る。
実はいっつもわざとやってるのちゅ!
「どゆこと?」
ふへっとルリメアちゃんは首を傾げた。背中から生える、蝙蝠みたいな翼膜と漆黒のマントが別の生き物みたいに動く。
「よほほ。私の鎖とルリメアちゃんの血の占いを組みあせれば出来るのよ。
私の鎖は、私が強く感覚を残した対象を追尾できる能力があるの。
でもルオク君の格が高すぎて、やっぱりブロックされちゃうの。だけど、あなたの天性の占い能力と組み合わせれば、きっと可能になるわ!」
これが、私の最強の計画!!
「ちょっと、あんた……なんでみんなに言わなかったの?」
ルリメアちゃんは、私の精神を疑う目をしてきた。
「よほ。逆に言える?みんなの宿敵に私恋してるのうふふ、追尾できるよーなんて?
それに見つけちゃったら、どうなるかわかんないじゃない、メンバーのみんなも……」
そうなのっ、禁断の恋のなの!理解してよのっちゅ!
「そうね……あたしあんたに同情するわ。そして女の子としては尊敬する。監禁してきた事はまだ根に持ってるけど」
……あはは、超うれしいような、怖い様な。
「その節は本当にごめんなさい。でも、監禁でした事って、こしょこしょの刑とか、目の前でケーキ食べるとかだったじゃない?怒り過ぎなのでは?のっちゅ」
あ、余計な事言っちゃった。
「そ・れ・わ!私にとっては凄く辛い拷問なのよ。実際にやってやろうか馬鹿野郎」
よほーん。マジに怒ったわ。
「よほほほ、反省します。偉大なる紫血王ルリメア様、今度お給料で、ケーキバイキングとパンケーキと回転寿司奢りますので、どうかどうかお許しを。よほほぬ」
さすがにサービスし過ぎ?
「もう大親友ったらぁ!なんでも私に頼りなさいよっ。ふんっ」
チョロさに、鼻血が出ます。
きっと目の前の子供吸血鬼は、ぺろんと舐めるでしょう。
「じゃあ、地図用意してるから私の部屋行きましょ?」
部屋片づけといてよかった。
「あんたの部屋って、この店の三階だっけ?」
この子アイスティーを、鷲掴みで飲んでます。氷もグシャグシャ噛んでる。
「そうそう、トドリに見つからない様に、コッソリ行きましょ?」
トドリごめんね。あなたは恋に疎いから、今回は不参加で。
大親友には変わりないよ。
「作戦実行ね!」
スーパーマンみたいに立ち上がるの止めて!気づかれるから。
タンタカターンのちゅ。
私達はこうして、ルオク君追跡計画を実行したの。
メイド喫茶プリズムフィーユ三階、私の部屋――
「お邪魔しまーす……って!!!ぐちゃぐちゃじゃないの!!?」
ルリメアちゃんは、翼膜をビクッっとさせて、のけ反った。
「よほほ。好きにくつろいでね」
そんなに汚いかなぁ……漫画とお洋服のせいね!
手に取れる場所にあるの落ち着くのよねー
「あんた外ズラよくて本当良かったわねぇ」
呆れ顔の真っ白な少女。
「どういう意味?」
ハテナが飛ぶピンクの豊満なお姉さん。
「そのままよ。みんな見た目に騙されてるって事」
ルリメアちゃんは、意外とお姉ちゃんっぽいわね。
「ひどいわっ!ブッブー」
そんな事より、地図地図。
あっ!あったわ!昨日食べたカップ焼きそばさんの下敷きになっちゃってる。
私ってドジっ子のっちゅ!
「汚いわねぇ……」
よほーん。真剣なトーンで言われるとなかなかがっくしくるわね。
私は日本地図を広げてその上に、お箸程の太さの真紅の鎖を垂らす。
「じゃあルリメアちゃんお願い、私の鎖に絡ませる感じでね!」
融合技ってドキドキするわ。変な気持ちになるの。うふふ。
「りょーかい」
ルリメアちゃんは、親指をキッと噛み、地図の上に血をツーっと垂らす。
綺麗でサラサラとしたその赤い液体は、地図の上でピタッと止まり、無重力みたいに無数の血玉になった。
私は、ルリメアちゃんに手を伸ばす。
ルリメアちゃんも私に手を伸ばし、お互いの指を絡ませる。
よほほ、私の鎖が血玉を吸い取ってるわ。
チューチューってね。
私は、赤い霧のような病的な魔圧を放つ細い鎖を、日本地図の上で揺さぶった。
「よほほほ!これは感じるわ!」
ルオク君の気配と繋がった……えも言えぬ気配だわ。
「これ……って!今私達のいる辺りじゃない!拡大したページ開きましょ!」
ルリメアちゃんは少し感動した様に、地図のページを開いた。
よほ!拡大したあるページに鎖が反応したわ。
「ここ知ってるわ!普通電車で六駅ぐらいの場所よ!あはーん、運命かものっちゅ!」
「あぁ……そういう事ね。ここ、幽明の家の裏手の神社よ。一回泊りに行ったから、知ってる」
ルリメアちゃんは少し神妙な顔をしてるわ。
「まだ、近くから見守りたいって事かしら?可愛いわねルオク君」
ジェラシーは湧かないわ。むしろ、やっぱり優しい男の子って思うぐらい。理想の彼氏のっちゅ!
「たぶんそんな感じね、律儀な妖魔」
ルリメアちゃん、自分の親指の血をペロペロ舐めてる。ワンちゃんみたい。
「よほ。協力してくれてありがとねホント。全部終わったらまた血あげるから」
「期待してるわ。ちゃんと鉄分とっときなさいよ ふふふ」
ルリメアちゃんの弾ける笑顔は可愛いわね。
「うん。じゃあ行ってくるね」
私はもう、はやる気持ちを抑えきれないの。暴走機関車、シュッシュ!
「え?私も行くわよ!?」
なんでよ?と赤くあどけない目をまん丸にするルリメアちゃん。
「でも、来たらどうなっても保証できないよ……?」
ホントに。
幽明 灯まで裏切ってまで、天の扉を開く覚悟のあるルオク君が、私達に容赦するとは思わないもの……ちょっと怖いのっちゅ……
「なら、尚更よ。あんた一人では行かせないわ」
……何故?
「意味分かってる?危ないって事よ?」
「そんなの当然分かってるわよ。私達友達じゃないの?……違うの?」
……友達。
この子の友達の概念が薄いのかもね。
だけど、こう言われてしまったら、私は、ずっと友達だったんじゃないかとすら思っちゃうわね……
「よほー!友達よ。でなければ、あなたに血は吸わせませんよーだ。チューチューのちゅ」
「だよね!!!行きましょ!!!ヤバければ逃げましょ!!!」
笑顔満点だわね。超可愛いんだからあなた。
「そうね!!!逃げるが勝ち!!!」
私は逃げるおふざけポーズをとる。
「あはははは!!!」
二人して大爆笑。すんごい楽しい。
アカリの家の裏手の神社――
意外とこじんまりした神社だわ。
落ち葉だらけの境内、忘れ去られている様な本殿。
手水舎の水も止まっているし……
でも、周りを囲む林も神奈備みたいで、とても神聖な感じがするわ……のちゅ。
「へー……結構雰囲気あんじゃん」
よほ。ルリメアちゃん、マント翻して境内飛んでるわ。
「よほー。かなり古いわねー」
ここの何処かに、ルオク君いるのかな?
なんて言おうかな最初。
私は、星型を辿るように、点々と境内を指差す。
「見て!これ」
ルリメアちゃんもうちょっと静かに。見てるかもよルオク君。
「よへ?これわ……」
本殿の脇に、しめ縄と紙垂れが施された石碑があった……
なになに?読んでみましょう……
「特喜天王 累億」
ほほ!これは、未来のダーリンの名前よ!
「ビンゴねミレア。ルオクの根城よ」
ルリメアちゃんは探偵みたいな顔して、鼻を擦りました。
(呼びましたか?)
何もない空間から声がする。
!!!!!!
この声は!!!!!
「ルオク君!!!そこにいるの!?」
幽かに匂いがする。私の血が湧き立ってきてるわ。
「出て来なさい!!!女の敵!!!」
ルリメアちゃんはボクサーみたいなポーズをとってる。
ちょっと趣旨違うよー。
(心外だなー。ボクはみんなの敵ですよ。あ、天の扉の一件ならクレームお断りですよ。それと、アカリサマに場所教えたら必ず呪いますから)
「違うの!!!どうでもいいの天の扉なんて!!!私は、あの……その……えっと……」
よほーん。散々考えてた言いたい言葉が出ないよー……しくしく。
(どうでもいい?あなた正気ですか?)
「正気よ。ミレアはぶっ飛んでるんだから!」
ルリメアちゃん、ちょっと静かにしてよのっちゅ。
(それ、正気じゃないって言うんですよ?)
なんて言えばいいのかしら!
もう私の頭!
私が一番言いたかった言葉出して!
「よほほほ!私、ルオク君とキスした女の子です!!!結婚して下さいな!!!」
なんか訳わかんない事言っちゃった……
「おめでとうミレア……これでやっと結ばれるわね……」
うん……幸せになるわ。
(いやいやいや!!!女の子の妄想怖っ!!!勝手にハッピーエンドに巻き込むのやめてくれます!?それにボクがどんなやつかって聞いたでしょ?)
「よほ。聞いたよ。でも知らない。そんなの知らない。あの時、あなたが私の手をとって踊ってくれてキスしてくれた瞬間のあなたしか知らないのよ……私」
気持ちが溢れて涙が出ちゃった。
(あぁ……そうか、あなたあの時の。……喋り方、癖強いですね)
「ちょっとあんた何様!女の子が告白してるのに、インターホン越しに喋って!?ちゃんと姿見せなさいよ!!」
心強いわ……一人じゃインターホンも押せなかったかも。ピンポンのちゅ。
(神様ですよ!!まず、インターホン何処にあるんですか!?てか何この状況、ボク相当灰汁の強い二人に絡まれてません?一応ボス各なんですが……あぁめんどくさいなー……)
あ!
本殿の前が光出したわ!
……
!!!!!!
(これで、気がすみましたか?すんだらさっさと帰って下さいね)
あぁ!!!!!!
甘美!!!甘美な姿!!!
きゃーーーーー!
可愛い可愛いくぁわいい!かっこいいー!!!
ちょっと背が低い所が可愛い。
真っ白な所が可愛い。
グレーの髪がかっこいい。髪に星の文様があるのも素敵。
王様みたいな服もお洒落。宝石だらけで目が眩んじゃう。
目が真っ白なのも化け物っぽくてグー!
よほほ!私の王子様!
性別を超えた美しさを持つダァーリン!!!
「最高過ぎます!早く結婚しなきゃ!アルティメットのっちゅーーー!ル・オ・ク・君!!!ちゅーきーだーよー!!!今すぐ二人で逃げましょ!!!」
もう!!私がもっと賢ければ、この気持ちを表す言葉を吐けるのにぃ!
「ちょっとミレア大丈夫……?なんか怖いわあんた……まぁ確かにイケメンだけどね。血もうまそうだし」
隠さないあたり、逆に友達として信頼できるわ!
「なんだかあなたたち……大事な部分欠けてません?」
肉体から聞く声も良いのよねー、ねぇなじって、早く、なじって!ねぇっ!!!
「よふふ!ルオク君が、私のフィアンセになってくれれば、欠けた所埋めてもお釣りだらけだぞっ!なんちゃって!のちゅ!」
「なぁ。ルオク付き合ってあげたら?どうせ、みんなに嫌われて暇なんだろ?」
ルリメアちゃんもっと応援して!
「君達には、狂気を感じるよ」
クールでかっこいいー。
一応真面目な女演じます、私。
「そういうルオク君は、狂気が無いのになんであんな事したの?」
「ホントだわ、矛盾してる」
ルリメアちゃんは、神社を吸血鬼の体でパタパタ飛んでます、意外と景色に馴染んでる。
「君達には分からないですよ。生きている尺度も、見てる尺度も全然違いますからね。恋なんて下らないですよ……」
「私のこの気持ちをバカにしないで!!!!!」
叫んじゃった。ルオク君をバカにされてるみたいで。
「……失礼しました」
謝ってくれるんだ。
「そんなけ長い尺度で生きてるなら、時間は一杯あるんじゃないの?ちょっとだけでもミレアの相手してあげなさいよ」
そう!その調子!もっと言って、ルリメアちゃん!
「そんな簡単な問題じゃないんですよ」
すごい寂しい瞳……
「ふーん」
興味無さすぎでしょ、ルリメアちゃん。
「よほーん。私、傍にいたらなんでも相談乗るよ?いい友達になれるのっちゅ」
まずは段階よね!漫画で読んだわ!
「スミマセン、本当にダメなんです。君は綺麗だし、ちょっと面白い、隣にいたら笑かしてもくれそうだ、あの子みたいに……。でも、本当に住む世界が違うんですよ……」
ルオク君は、諦めたように優しく歩く。
「そんな……」
まずまず好感度あるのね私……
「きっとこのまま話をしても、埒があかないだろうから、ボクはもう行かせてもらいます……さようなら、おかしなお二人さん」
「おい!逃げんなルオク!」
ルリメアちゃんが少年みたいに叫んだ。
「大丈夫よ……ルリメアちゃん」
「ミレア諦めるの!?」
「……もう準備は整ったから」
「え?」
「うへへぇ」
その時、ルオク君とルリメアちゃんは私の顔を見て、凄まじく戦慄して氷ついていた。
乙女にあるまじき顔しちゃってごめんねのっちゅ!
実の所、私はこの神社に入った時から、禁断の魔術を詠唱していたの。
勘の良い女の子なら気づいてたよね?
魔法陣のように、あらゆる的確な場所に私の真紅の鎖を出現させ、私自身の決意と覚悟を代償に、絶賛詠唱中でした。ちゃんちゃん。
盛大なラブのパレードを起こそうと、闇の組織並み目論んでいたの。
うっふふのふー。
女の子が簡単に恋を諦めたらりするもんですかっ!
「あれ、体が動かないですね……」
やっぱりね。ルオク君はギリ男の子だわ。
「うわわわぁ、なにこれぇ!?ミレアの魔法??」
ルリメアちゃんは、空間が変わっていってる事にとても驚いてるわ。
巻き込んでごめんね。
「よほほ!ピンポーン!ラブリーな魔術でしょ?」
私達三人は、さっきまで神社にいたのだけれど、今はドロドロととろけるハートの台座の空間。
それ以外は空の上みたいな亜空間。
私以外はマトモに歩けやしない、ピンク泥沼のキュートな空間。
「これは……禁術かい?」
ルオク君、冷静だね。
足も手首も首もハートの枷で繋がれてるのに。
「そう!実は私、ハートの魔女の末裔なの。だから、男にはめっぽう強いんだよ!?うふふのっちゅ。ここだけの話、この変な喋り方はハートの魔女の能力を受け継いだ呪いなのです。ちゅちゅのちゅ」
「ミレア、あんた……超やるわね!!!」
よほ!ルリメアちゃんグッドくれたわ。ノリが分かる友達っていいわね!
「ボクは相当厄介な子にちょっかいかけちゃったみたいですね。ハハハ。運が無い。
あなた達、このボクを動けなくするなんて、この機を逃すと二度と無いですよ?
どうします?世界の為にやることがあるんじゃないですか?
例えば、仲間の為にボクを倒しちゃうとか?」
毎日夢にまで見たあなたが、今私の手の中にいるわ……
「ミレアこの空間綺麗ねー、ゼリーみたいでドロドロでキラキラで素敵だわ」
そうなの、私もこの禁術の空間とても好きなの。いつか愛する人を連れて来るのが夢だったわ。
「ありがとのちゅ」
「聞いてます?」
ルオク君は、静かな顔で私達に再度尋ねた。
「確かにそうよね。でも、私何もしませんよ?」
人差し指を顎にくっつけて出来るだけあざといポーズ。
「え?」
ルオク君、目がテンですね。めちゃ可愛いのっちゅ。
「ミレアどういう事!」
「そのまま。私が大好きなルオク君を攻撃するわけないじゃない。大好きなルオク君に無理矢理迫ったりもしたくなんかないわ。私は予感がするの、大好きってだけで、ここまで自分を追い詰めた女の子に、きっとルオク君はすっごーいご褒美をくれるってね。だからそれまで待つの。うふふ」
遠回しなちょーだいです。
「あんた女の鏡よ!」
ルリメアちゃんは私の禁術の中に、勝手に骸骨やら何やら召喚して遊んでるわ。
「……確かに。ボクを追い詰めた存在は、限りなく久しぶりです。しかもその動機がボクへの恋ですか……先人達が泣きますね」
神頼みのご褒美待ちです。
「本当は物凄くキスしたいし、もう一度手をとって一緒に踊って欲しい、私の心が軋むぐらい抱き締めて欲しい。でも、そこにあなたの心が無いのは、女の子としてちょっと辛いもの。これが本音だよ?のっちゅ……」
「……」
「やばい素敵な女の子過ぎるよミレア」
えんえんって泣いてくれてるねルリメアちゃん。
「一つ聞いていいですか?ボクのどこが好きなんですか?」
ルオク君は虚空を見つめる様に言った。
「わかんない。でも、そのわかんないって気持ちこそが、自分では本当に好きになっちゃったんだなって思うの」
この想いを伝えれるこの世界が好き。
「ねぇルオク……」
よほーん。ルリメアちゃんは、しくしくと涙を流してます。吸血鬼の泣き顔ってこんなにも美しいのね。
「分かりましたよ……では、この枷を解いてください。本当にボクを信じてるのなら」
「ミレア駄目よ!こいつ何しでかすか分かんない奴よ!」
ルリメアちゃんは、舞台めいた叫び方をしているわ。
むしろ、舞台を盛り上げる為の演技っぽい。
「いいの。何しでかすかわかんないからこそ、あの時私に、気まぐれでキスしてくれたんだから」
あの時はホントにびっくりしたわ……
私の価値観一気に崩しちゃうんだもん。もうっ
「ボクのあんな行動にも意味があったって事か……全く世界ってのはホント分かんないね」
なんでそんな悲しい眼をするの?
私は、即座にルオク君の枷を解きました。
悲しみから解き放ってあげるように。
今ここにあるのは、ドロドロとしたゼリーみたいなハートの沼と、歪な三人だけ。
ルリメアちゃんは、悲壮な顔をしてるわ。
心配しないで、きっと大丈夫よ……
「油断しましたね」
ルオク君はすぐさま私の元へ飛んできて、私の首を掴んで押し倒した。
「……うぅ……いい匂い」
こんなにも近くにあなたを感じる。
あの時に戻ったみたい……
「ちょっとあんた!!!そんなの酷いよ!!!」
よ……ほ。
私はそう叫ぶ、涙で歪んで見えるルリメアちゃんに手を上げて大丈夫と伝えた。
「目を閉じて」
ルオク君が言った。
ずっと聞いていたい声。
私はそっと目を閉じる。
次の瞬間どうなってもいいわ。最後に触れてたのが貴方の手なら。
……
暗闇。
暗闇。
感触。
「きゃーーー!!!!!」
ルリメアちゃんの悲鳴が聞こえる。
とても恥ずかしそうな声、声だけで顔が赤いのが分かる。
これは恐らく……キスだわ。
だって……涙が止まらないもの。
うく……うく……うう……ちゅ。
感触が離れる。
「満足ですか?ミレアちゃん」
ルオク君は、私の顔に優しい吐息をかけながら、ホワイトオパールみたいな真っ白な目を青く光らしています。
「ううん。もっとちょうだい」
本音の本音。このまま壊して。
「ワガママだね……」
ルオク君はそう言って、私の唇に女の子みたいな柔らかい唇を何度も重ねてきた。
よほ。
意外に大胆。
かと思えば、恥ずかしそうに目を閉じてるのです。
うふふ。超可愛い。
ルオク君は止まりません。
私に夢中になっちゃってる。
うふふ。
まるで自己の存在を確かめるように、私を優しく探ります。
よほーーーーーーーーーーーーーーん。
なんという。
なんという。
ちっぽけな私達……
二人でとっても小さな光を探し合ってるの。
「ちょっと!!!私もいんのよ、程々にしてよね!!!」
ルリメアちゃんは、手で目を覆いながらも、隙間から食い入るように見てる。
「ミレアちゃん……結構かわいいね……君」
ルオク君の瞳は少しだけ人間ぽくなった。
頬が凄く赤い。
「女の子はかわいいが一番うれしいのよ?」
「そっか……」
ルオク君は再び、自己を確かめようとする。
私は……
手でそれを止める。
ルオク君は驚いた顔をした。
「よほほ。今日はこの辺りで満足だわ。またお願いね。寂しい時はいつでも呼んでね?傍にいちゃうんだから」
ルオク君は、我に帰り立ち上がる。
「……そうだね、ハハ。またダンスでも一緒に踊ろうか?」
「うん!!!!!それを楽しみ生きてくわ!!!!!」
私の瞳から大粒の涙が流れた。
ルオク君は、それを人差し指に乗せて、魔術で指輪に変える。
「ボク達の約束ですね」
そう言って、指輪を私の指に嵌めて、誰より優しい顔で微笑んでくれた。
「うぅーーー!!!やばいわ!!!超感動すんだけどぉ!!!」
ルリメアちゃんは、どうしようもない感情を、召喚した骸骨達にぶつけて破壊してる。
そうして私は禁術を解き、私達二人は元の神社に戻った。
よほ?
おかしいわね?
ルオク君がいない。
私の魔術空間は勝手に出れないはずなのに……
もしかして……最初から……
「ふぅー帰還帰還。あいつどっか行ったわね」
ルリメアちゃんは沢山遊んだと言う顔をしてる。
「そうね……」
もう寂しい。
「ねぇ、そんな悲しい顔しないの?超大成功じゃないの!?」
ルリメアちゃんは子供みたいな顔で、私の下から笑ってくれる。
「よほ!だよね!!!そうだよね!!!あたしったら贅沢のっちゅ!」
「さっ帰ろか。ミレア今日晩御飯奢ってね、あたしカレーライスがいいわ」
見た目と好みが一致しないわね。
何でも奢ってあげるわ、友達だもの。
「いいわよ。駅前の店に寄りましょ」
「やっほー」
私達は神社から出ようとした。
その時。
耳元で声が聞こえたの。
(また会おうね)
って。
多分、間違いじゃない。
私は、ルオク君から貰った指輪をそっと撫でた。
唇に残る彼の熱に耳を赤くしながら。




