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シスイの特訓 キュートな二人の師匠

「うわぁぁぁ!!!」


まだ二十歳にも満たない、か弱い女の子の私(冥 シスイ)は、神話に登場するような黄金の盾を構えて猛攻を受けている。

それも、キュートなアイドルやインフルエンサーみたいな見た目の可憐な女の子に。


この奇妙奇天烈な光景は、真昼間の河川敷で繰り広げられている――


私の黄金の盾に、ルミナスピンクのクリスタルのツルギが秒間数十発、乱れ打ちのように斬撃を放つ。

火花と言うレベルではなく炎そのものがエフェクトみたいに散り、ツルギの軌道には雷電が帯電し続け、時間差で大爆発起こし、私の盾に尋常じゃ無い重みを与える。


「待って待って待って待ってっ!!!ミレアたんまっ!!!」

私は、満面の笑みで容赦なく攻撃してくる、この特訓の師匠にあたる、円環ミレアに叫ぶ。

濃いピンクの髪を振り乱し、自分が発生させた雷撃爆発に、怪しくも蒼白の肌を輝かせている。



「よほほほほ!!!みんなを救うんでしょ?これぐらいで音を上げちゃだめよっのちゅー!」

そう言う、ミレアの口癖の「っちゅ」は、いつもよりとても狂気じみていた。

ミレアはピンクのパーカーで額の汗拭う。


まるで隕石や雷を直接受けているような重圧が、私の体にのしかかる。

普通なら耐えられないが、私は体に流れる魔のエネルギーを、黄金の盾に供給し続けて、防御力に最大限に高めているのだ。


ヒノが慌てて叫ぶ。

「トドリッ!!!ちょっとミレア止めてちょーだい!!!こんなんじゃ、私のお兄様(フィジャナーク王)と戦う前に、ダーリンが死んじゃうよ!!!」


流図トドリは、メイド服を可憐に着こなし、色白のか細い四肢を惜しげも無く私達以外誰もいない河川敷に披露する。

混じり気の無い艶やかな金髪と、クリアな黄金色の瞳を輝かせ、私の特訓を腕組みして見ている。

元トップアイドル、元私達シェアプリズムの敵、現メイド喫茶の店長で現シェアプリズムの大事な仲間だ。

そういえば最近、責任感のある顔になった。



「ミレアだめだよ、どいて」

トドリが強く言った。


はぁー……助かった。さすが店長だ話が通じる。


「よほ?」

ミレアは、ピタッと止まり、はて?と首を傾げる。

仕草だけはかわいいけど、やってる事は鬼だったよ?


「ダーリン危なかったね?」

ヒノはすかさず私に駆け寄って来る。


「うん。すでにタコ殴りされて気絶しそうだったけど……この盾でなんとか助かった」

私とヒノはミレアを見て、この子は何を考えているんだろうと言う表情になる。


そんな私達を傍らに、トドリは私を指差して、ミレアに説教しだした。

「もっと、早くて重い攻撃してあげなきゃ、実戦で全然対応できないよ?」


「え……?」

私とヒノは目がテンになる。


トドリは、可愛らしいフリルを揺らしながら、どしどし前に出てくる。

短いスカートもゆさゆさ揺れ、白磁の太ももに、妙にドキッとする。

ミレアがトドリの仕事中に急に呼び出したから、こんな状況なのだ。


眉を吊り上げ、武芸の達人のような気迫で近寄って来る流図トドリに、私は冷や汗をかいて後退りする。


「ダーリン頑張ってね……」

ヒノはそれから逃げる風に、お別れの挨拶を残し、そっと離れて行った。


「ヒーーーノーーー!!!」

私は、黄金の盾に体を隠しながら、置いて行かないでー!と叫ぶ。


「よほほ!本気で集中しないと死んじゃうよ?トドリ、ストイックな性格だから、修行とかには全く容赦ないの。ご愁傷様のっちゅ!」

ミレアは、バイバーイと言う風に手を振った。


「ご愁傷様のっちゅ!じゃないよ!二人揃って私をどうする気なのさ!」

私は、盾に隠れながら反抗的な態度をとる。


「決まってるじゃないか。君を最強に鍛え上げるんだ!」

トドリは、女の子らしい腕を、モリッと折り畳み、隊長みたいに笑った。


えー……こんなタイプだったの。


でも流石に、最悪ヒノが助けてくれるかもしれないし……


私は、ヒノを横目で見る。


!!!


お菓子食べてるじゃん!!!


さっきの感じどこいったの!?

え?スポーツ観戦!?


あー駄目だ。


次のフィジャナーク王との決闘で、本気で命が懸かっているのに、こんなツッコミしている私は駄目だ。

ましてや、世界の命運すら懸かってるかもしれないのに、もはや本当に申し訳ない。


真剣にならなきゃ。

でも、わかっていても、現実味が湧かないんだ。


ヒノは、あんな感じだけど、冗談抜きで心が砕けそうな程心配してくれている。

ただ、お菓子で大好きで、ちょっとルンルンになってるだけだ。

一緒に流されちゃう私が問題なんだ。


て、考えてる内に……






来た――


「ぐあああああぁぁぁぁ!!!」


トドリの初撃は、私の甘さ全てを見透かした上で貫く、覚悟を見せやがれ!というパンチだった。

風圧だけで、臓器を吐き出しそうになる強烈なパンチだった。


トドリの拳は金色に輝き、体からも弾力のある黄金色の魔圧が溢れ、空間を歪ませている。


そしてこう言った。


「とりあえず1000発撃ち込める体力、私あるから、頑張って耐えてね」


……


え、聞き間違え?


1000?


私、新製品の試験機かなにか?


「ダーリンがんば!!!」

ヒノは、両手でグーっとして、応援してくれた。

お菓子食べて、ちょっと機嫌良くなってんじゃん。


「よほほ!ちゃんと盾の使い方考えないと、粉々になっちゃうよー!ゴーレムちゃんのっちゅー!」


なんだよ、粉々って!

なんだよ、ゴーレムちゃんって!

私を一体なんだと思ってるのさ!

私は私なのさ!当たり前だけど……


あーーーもう知らない!!!どうにでもなれ!!!


私は、あろうことか、黄金の盾を持ちながら、トドリに突進した。

防御の訓練なのに、気が狂ったと思われたかもしれない。


「うおおおおおおおぉぉぉ」


「へー、そういうの嫌いじゃないよ」

トドリはステップを踏んで、アニメの強敵みたいにそう言った。


なんか好かれた。


次の瞬間――


千年樹が倒れて来たかのような衝撃が、私の体全体に響いた。

トドリのハイキックだ。

あぁ……ホントやばい。

体が揺れ過ぎて、意識が飛びそう。


私は、最初に突っ込んだ分の倍の距離を、簡単に吹き飛ばされた。

地面には、私の脚が抉った砂の盛り上がりが出来た。


こんなの1000発受けるなんて無理。

絶対無理。

嫌。

誰か変わって。

簡単に命懸けるとか、みんなを救うって言った事許して。


沸々と弱い自分が湧いて来る。

目の前の、圧倒的な現実に炙り出されていく。


今までは念動で、あまり労をなさず、攻撃も受けずに戦っていたから気づかなかったけど、実際に相手の攻撃を体に受けるって、こんなにも怖い事なんだ。


戦うと言う意味を知って、自分が今、どういう状況かを考えてしまった私は……



泣いてしまった――


号泣してしまった――



「ダーリン!!!ちょっとトドリ!強くやり過ぎよ」

ヒノは私の溢れる涙を見て、激怒した。


「よほ?貴方のお兄さんは手加減してくれるのかな?」

ミレアはヒノに笑って問いかけた。


「それは……」

ヒノは俯いた。


トドリは私だけを見て言った。

「泣くな!!!!!!相手から目を離すな!!!!!」


怖い。

トドリがすごく怖い。


次の瞬間には、トドリはワンステップで宙を舞いながら、私まで飛んで来る。


私の頭の中は真っ白だが、それでも視界は、火の鳥のような残像を残し、フルスイングを決め込もうとするトドリを捉えた。


盾から伝わる、感じた事の無い破滅的な衝撃――


私は空に吹っ飛ばされた。


余りの衝撃に体の全ての細胞は痺れ、視界が歪む。

目の高さが変わり、非現実感に襲われる。

意思も何も関係ない、圧倒的な衝撃の前では、そんなの役に立たない。

完全に気持ちも折られた。


あぁ、このまま気絶したら許してくれるかな……


無気力に空を見上げる私。

視界に入る、金色の死神。

トドリか……

綺麗だな。


トドリは雲を背景に、ふっと笑い言った。


「信じてるよ」


え。


信じてる?


こんな何もできない私を?


私の頭の中に、仲間の顔が次々流れた。


……


トドリは、十字のようなポーズで腕を伸ばし、その拳には揺らめく黄金の炎を持っている。

それは彼女の強い意思のようにも見える。

激しく燃焼して輝く意思。


トドリは、もう一度笑った。


その笑顔がトリガーだった。


……


……生きなきゃ、私。


圧倒的な恐怖に、生の欲望が沸いた。


みんなとの想い出がとめどなく流れ、その為なら命を懸けて本気で戦おうと思った。


世界は分からないが、私という世界を作ってくれたみんなを守りたい。


私は唇を噛み締め、盾をギュっと握り直した。

トドリは、それを覚悟と受け取った。


次の瞬間――


トドリは短い魔術を唱えた。

トドリと私の間に、薄く青い光の膜が出来る。

それは、カーテンのように涼し気に世界の色を変える。

トドリは、穏やかな速度の動作から、急激にビシッとポーズを決める。

激しく黄金に燃焼した拳が、私一点にロックオンした様に固まった。


間髪は無く発射。


目に目ない速度で、トドリの拳は膜まで到達する。

膜はスライムのようにトドリの壊滅の一撃を阻止する。

阻止では無い。拮抗されたエネルギーがその内に、激しい渦を巻いて溜まっている。


これが裂けた瞬間、世界が震えるだろう……


私はそう思考した。


しかし――


既に私は地面にいた。

その衝撃を知覚するまでに地面にいた。

観測できない速さで、次にあるのは倒れた状態の私だった。

でも、今考えれるという事は……

死んではいない。

ギリギリで。

本当にギリギリで。

上手くやり過ごせたのだろう……


観測できない速度で、地上に激突する瞬間、ほぼ無意識の念動でこの黄金の盾を変形させたのだ。

剣山のようにして、地面に突き刺した。

盾に受けた衝撃のエネルギーは、盾と同時に念動で操作し、全て地面に放出した。

エネルギー層を深く見れる魔蔵視が役に立った。

私の念動はそれを捉えさえすれば、エネルギーでも操作できる。条件はあるけれど。


薄っすら目を開けて周りを見た。

目線が低くなった。現実感が戻って来る。

私の周りの地面は巨大な岩柱が波状にいくつも隆起していた。


「……うぅっ……」

念動の使い過ぎで久しぶりに目の奥が痛い。


「ダーリン!!!」

ヒノが駆け寄ってきた。


「あぁ、ヒノ……よかった……また会えた」

私は、達成感で少し笑う。


「笑えないよ」

ヒノは、私の顔に涙を垂らして、頬を撫でてくれた。


「よほ!やるわねー!」

ミレアも私の顔を覗き込んで笑ってる。


「君の友達、やばいね」

私は、上空から神秘的な恰好で降りてくる、可憐な女の子を指差した。


「かっこいいでしょ?」

誇らしそうに友達を自慢するミレア。


もしかしてトドリ、過去に私と戦った時、手加減してたんじゃ……

私を傷つけないように……


「ねぇミレア……もうこのくらいにしてくれない?このままじゃ本当に……」

ヒノは、喋り終わる前に、グスングスンと泣き出した。


胸が痛くなった。


もし、私がフィジャナーク王に負けたら、今でこんなに泣いてるヒノは、一体どうなるんだ……?


「よほー……トドリ、スイッチ入っちゃてるからねー、難しいかも……私も喧嘩でトドリが、あーなった時は一日中逃げてるの」


「どうなったらそんな喧嘩なるのよ!」

ヒノは、私を抱きかかえて泣きながら、すかさず突っ込んだ。


「よほーん。思い出したら怖くなってきたわ。主に私がちょっとやり過ぎちゃった時とかかな。でも、私は……やっぱり悪くないのっちゅ!」


「それだよそれ。その態度で爆発するんだよ」

私は、イテテと言いながら突っ込む。


「私はわるくないのー!」

意地っ張りな顔をするミレア。


ヒノはクスっと笑って涙が止んできた。



トドリが、こちらに微笑を浮かべながら向かってくる。

守ってもらう事前提のような細く小柄な体。

それに似つかわしくない拳の握り方。

魔人か鬼人のような気迫。

気が乗ったから、君達三人まとめてぶっ飛ばしたい、とか言い出しそうな純粋な瞳。


私達三人は、ひょえーっと後退る。


「びっくりだなー、結構思いっきりいったのに」

その笑顔に少しサイコパスみを感じる。


「確かに……思いっきりきたよ」

私は、立ち上がって体の砂を払う。


「ちゃんと受けきった相手久しぶりに見たよ」

トドリは、黄金の盾を見て、上手く使えたねと笑っている。


ヒノは、どうしてももうトドリを止めたそうだ。

しかし、立ち上がった私と、真剣なトドリの会話を邪魔はしない。


「トドリ、そろそろお仕事戻らないといけないんじゃない?」

ミレアはチラッと私を見て、ウインクした。


「いや、まだいいよ。クオリアちゃん達に任せてるから」

トドリは、さらっと返す。


ごめんね、無理だったと舌をペロっと出すミレア。


……


ヒノが何かを言おうとした瞬間、トドリは私に言った。


「んで、シスイはどうする?もうやめとく?さっきの受けれたなら、まぁまぁ上出来だと思うよ」

トドリは、さっぱりと言った。


「もう少し付き合って」

私がそう言うと、三人は少し意外だったかのような表情をした。


「いいの?あれ以上の技の場合は、本当に容赦出来ないけど?」

トドリは今一度、私の覚悟を確かめるように言った。


「ダーリン、もう無理しないで」

ヒノは私の腕にくっついてきた。


ミレアも、辞めといた方がいいよと言う目線を送って来る。


「いいよ、思いっきりきて、もう生きる覚悟できたから。それに、さっきほんの少し掴めた感じがしたんだ」

私はヒノの頭を撫でて、大丈夫だよとなだめる。


この黄金の盾を私が扱うには、ゼスパと同じように変形させる事が大事なのかもしれない。

それと、念動によるエネルギーの流れの操作。

恐らく、この黄金の盾自体は、破壊不可の絶対強度と、あらゆる属性攻撃を無効化する能力がある。

でも、盾を介して透過する純粋な衝撃エネルギ―のみは、内側の私が引き受けないといけない。

でも、それすらさらに、念動で自分が接する別の空間に流せる事が分かった。

さっきまでは無意識に、足から地面に流したりしてたけど、今は操作できる感覚が掴めた。




「物覚えが早いね、流石だよシスイ。うち(メイド喫茶プリズムフィーユ)で働かない?」

トドリは、歓迎するよという表情をした。


「接客は苦手なんだ。でも……ちょっと面白いかもね」

私は、アメリカの映画みたいな言い方をした。


「よほー!また、強力カワイイ新人が!わたしもがんばらなくっちゃ」

ミレアは、オーイェスと手を上げて、飛び跳ねる。


ヒノが小声で言う。

「ダーリン、本当に無理してない?」


「無理はするよ、君の為だからね」

私は、ふふっと微笑みかけた。


「それに……私の直感が正しければ、もし掴めたこの感覚を上手く扱えたら、君のお兄さん……倒せるかもしれない」


私の、確信を交えた言葉にヒノは、ぐるりと瞳を輝かせた。

感動してるみたいだ。

「本当に……」


「うん。さっきまで視えなかった、倒せる未来が視えるようになったんだ」

私は偽りの無い表情で答えた。


「フィジャナーク兄様を倒せる未来……」

今、ヒノも同じ未来を視た気がした。



「じゃあ、希望が湧いた所で、そろそろ始めよっか。君が受けきれるか試したい技が二つあるんだよ」

トドリは、ピースして2と言う数字を強調する。


可愛らしい指がちょっと怖い。


「どんな技なのさ?」

私は、トドリに尋ねる。


ミレアが傍らから、心底楽しそうに見ている。まるで、子の成長を楽しむ親みたいだ。


「一つは、冥府に伝わる奥義だよ。威力と相手を選ばない使いやすさが定評の秘術なんだ。これを受けきれたら、まず防御に関しては申し分無いと思っていいだろうね。この技、なかなか耐えきれる人がいないから、個人的に、一回思いっきりやってみたいってのもあるけど」


トドリは目前に正拳突きをシュパッと打つ。その時どういう訳か、一瞬だけ肘から先が幽霊みたいに透明になった。


やっぱ私、試験機じゃないか。

それも、未知の衝撃測るやつじゃん。


「もう一つは?」

恐る恐る聞く。


「もう一つはねー……ちょっとミレア!」

トドリは、ミレアを呼んでコショコショ話をし出した。

見た目には可愛い光景だが、物凄いヤバイ話をしてそうな気がする。


「よっほ!それやばっ、トドリ天才のっちゅ!」


やっぱやばいって言った。

……気になる。


「OKお待たせ。もう一つはね、これから、もっと強力な異形が出現するかもしれないから、必殺が必要だと前々から思ってたんだ。それでちょっと考えた奴あるから試させて欲しい。私とミレア、最高に可愛いコンビの超必殺だよ。受けるのは勿論君が初めて。技名はそうだなー……"天墜竜瞳撃"って感じだね」



「テンツイリュウドウゲキ?」


リュウってあの竜か?トドリが竜って言い出すのは、なかなか怖いぞ?

というか、悪の帝王に打つみたいな必殺、一番最初に私に打つんだ……


「うん、仮名だけどね。未完成だから。でもざっくり試算した場合の威力はピカイチだよ?」


いやいやいや、確かに私はちょっと出来る気が湧いてきてるけど、

そのピカイチに、そうなのすごい!って返せるほど、まだ余裕はないよ!


「すごいね必殺なんて。その必殺に生きて辿り着けるように、まずは一つ目頑張るよ」

ほんの少し分からない程に皮肉を込める私。

トドリは天然だからきっと気づかないだろうが。


「偉い!コツコツは大事だもんね!じゃあ、一回目思いっきりいっちゃおうか」

やっぱりだー!どう言う原理なのさ!


トドリは、私以外に下がってと促し、私の前で、サーフボードに乗る様な構えをした。


「ヒント渡しとくね。今から繰り出すのは"蒼界乱断拳"、肉体を持つ相手、幽体の相手関係無く攻撃が通る、滅茶凄い技さ。物質層、エネルギー層を行き来した時の

膨大な歪みを拳に乗せるから威力も凄まじい。それを高速で相手に乱れ打ちするんだ。分かりやすく言えば、防御不可の弩級の威力の奥義さ」


防御不可、弩級の威力……

並べちゃ駄目な二つじゃん。ましてや仲間に。



「ちょっと待ってね……」


取敢えず物理攻撃は、さっきみたいに盾で防いで、その衝撃は地面や虚空に念動で流したらいいかな。

でも、幽体に対する攻撃みたいに透過してくるエネルギー衝撃はどうしようか……

連撃ってのも厄介だな。一々、連発される攻撃をタイミングよく受け流すのは現実的じゃ無いし。


どうにかして、盾の内側までくる衝撃達を、二重防御みたいに、打ち消せればなー

……ん。

打ち消す……


「なんか気づいたみたいだね」

トドリは、相変わらず変な構えをしながら笑っている。


「うん、少しだけ」

私は、自信無さげに返した。


「大丈夫、少しの気づきが全てを変える事だってあるんだ」


良い言葉だな。


「じゃあ、そろそろ行くよ?」


私は、トドリを真剣に見つめて頷いた。




私は即行で動いた――

黄金の盾を変形させ、巨大な鐘のようにする。

それで体全体を覆い、死角からの攻撃を無効化する。

不格好だろう、でもこれでいい。

元より私は籠りがちの人間だったのだし。

変形した黄金の盾の内側を、自分のプリズムの魔力で一斉に満たす。

何をも入ってくるなと言う様に。

入って来る衝撃は片っ端から食い尽くす気持ちで。

さらに加えては、魔蔵視で、この場に流れるエネルギーを視て、それを念動で私の中に取り込み続ける。

これで魔力は無尽蔵に補給できる。その分、体力が消耗するが。


よって、私は超防御特化型の緊急避難場所の顕現に成功した。


外からトドリが何か言ってる。でも、聞こえない。

気配は分かる。

まだ、打ち込んで来てはいないが、トドリの気配が分身したように、四方八方に飛び交っている。

尋常では無い数。

100人ぐらいトドリがいるようだ。


次の瞬間――

変わった気配の色が視えた。

水色の火の玉みたいなオーラだ、トドリの倍の数だけある。

盾に、飛竜が噛みついたような鋭い衝撃音が走った。

水色の気配は、レーザー光線のように、素早いを通り越した速度で、ジューッと

中心の私に向かって突き刺さってくる。

それを片っ端から、私の魔力のプリズムが燃焼させてる。

私のプリズムに抗うように、無数の位置からの、無数の連撃が、重く鋭く破滅的に貫こうとしてくる。


なんて、技だ。生身で耐えられる存在なんているのか?


やっぱり、プリズムを充満させておいてよかった。

これが無きゃ、この不格好な盾の中で、押し潰される所だった。

だからと言って、まだ安心できない。

水色の気配のレーザー光線の攻撃が、どんどん勢いを強めて浸食して来ている。


もう、あれだな。

後は……


気合いを出すしかない。


私は叫んだ。


「うおおおおおおおぉぉぉ!!!!!!」


この場の霊脈のオーラを根こそぎ頂くように、私の体の魔術センスが余すことなく発揮されるように、プリズムの密度を最大限に高める様に。

降り注ぐ、全ての脅威を食らいつくすし、私こそが脅威であるように。


気が付けば、私の魔圧は全てを飲み込み、盾より外の世界へ吹き出していた。

四方八方にあったトドリの気配が一点だけになり、盾の内側に浸食する気配は一つも無くなっていた。


そして――


コンコン。

盾を叩く音がした。

さすがに、罠という事はないと思う。


私は、盾を元の形に戻す。


三人が飛びついて来た。


「すごいわ!!!ダーリン!!!ホントにフィジャナーク兄様を倒せるかも!!!」

ヒノがルビーみたいな瞳を躍らせ、抱き着きながら言う。


「うん、本当にすごいよ。この技を本気で打ちこめたの初めてだ……そんな平気そうなのがとても信じられない。湧き出して来た魔圧も怖いぐらいすごかったよ……」

畏怖の念を込めたように、トドリは褒めてくれた。


「よほほ!亀の神獣を思い出したわ。あなた防御の才能ありありよ!お世辞じゃないよ?本気なんだからね!のっちゅ!」

才能ありありは、素直に嬉しいな。



「ありがとうみんな。そんな大したもんじゃないよ、生きるのに必死だっただけだよ」

私は、苦笑いで謙遜する。だって、本当にそうだもの。



「ねぇ、ダーリン思ったんだけど、もしその黄金の盾と、ゼスパを組み合わせたら

超強いんじゃない?」

ヒノに言われて気づいた。

そうだ、私は何をも切り裂く異形の鎌ゼスパを持っていたんだ。


「そうだね、防御の特訓って話だから忘れてたけど、組み合わせたら、より強力な防御が出来る可能性もあるね」

私は左右の掌に、スマホサイズの四角い塊に圧縮した二つの異冥府の武器を置く。

鋭い白銀の塊と煌めく黄金の塊。


「攻撃は最大の防御って言うもんね。でも、さっきの私の攻撃みたいな、隙の無い猛攻を仕掛けてくる可能性もあるから、完全防御を覚えておいた事は間違いじゃ無いよ」

トドリは武術の師範みたいに私に言った。


「うん、今までそういう接近戦に、かなり苦手意識あったから、ホントよかった」

未来視と完全防御を組み合わせたら、超速スピードの近接タイプにも全然対応できるな。嬉しい。


私は、念動で体サイズに、拡大した黄金の盾を宙に浮かせて、くるくる回してみた。


私意外の三人は、器用だねーと言う風に見ている。


「ダーリン、案外それ便利かもよ?」

ヒノが、宙を指差して言う。


「うん、私が衝撃を受けなくていいから。」

私は盾を、私達四人の前方に、念動で動かす。


そして――


ドスンッ!!!

私達四人を遙に覆える程の、巨大な壁に変形させてみた。

私達の視界はその壁に遮られ、影が出来て暗くなる。

黄金の部屋に入ったみたいだ。

今の所、可能な巨大化はこのサイズぐらいか。


「これはいいよ!超威力の大雑把な禁術とかする魔王級の異形って結構いるし、

これで、そういう絶望的な状況でも、みんなまとめて君が守れるかもしれないよ!」

トドリは自分の事の様に嬉しそうに言った。


「よほほ!禁断魔法を防がれたら、結構心も折れるだろうしね。気持ちわかるのっちゅ!」

ミレアは、泣き真似をする。


「ミレアって禁断魔法扱えるの?」

なんとなく聞いてみた。


「あ、ミレアはね……」

トドリが何か言おうとする。


「ひみちゅなのだー!」

ミレアはそう言って、豊満な体をトドリにくっつけ、口を押さえた。


へーんなの。


「どうせ、ちょっとぶりっこな魔法でしょミレア?」

ヒノはミレアを煽った。


「心外なのだ!」

ミレアは眉を吊り上げて、少し怒る。


「あながち、間違いでもない……」

トドリがボソッと呟いた。



「じゃあ、そろそろ最後の特訓やろっか?」

私は切り出す。

実を言うと、防御と言う行為が、少し楽しくなってきたのだ。

恐怖から楽しみに昇華するなんて驚きだ。

ついさっきまで、全て投げ出そうとしてたのに。

何事も変化するものなのだな。


「自分から言い出すなんて、なかなかの成長だね」

トドリは、メイド服で可愛くポーズをとりながら、感心するように言った。


「でも二人共、ダーリンは今日がこの盾を使うの初めてってちゃんと理解してやってね?あなた達が何年も積み重ねて来た集大成の合わせ技なんて、受けれなくて当然なのよ?」

ヒノが手加減してという風に、二人に忠告した。


「でも、敵ってそんな配慮してくれないよ?」

トドリが、戦いは遊びや練習じゃ無いよ?という顔をしている。。


「……そうだけど」

ヒノは少し食い下がる。


「ヒノありがと。逆にそれを私が受けきれたら、超凄いって事だよね?

それって、君のお兄さんより凄い?」


「……まぁ……うん」


「じゃあ、やるよ。私は、ヒノのお兄さんに、私には敵わないって思わせなくちゃいけないからね」

みんなの前で意気込んでみた。


「よほ!偉い!気が乗っている内に、早いとこやりましょ?早く帰って漫画も読みたいの」

ミレアは、そそくさと私達から離れて行き、魔術を詠唱しだした。


「ミレアー、帰ったらお店手伝ってよ?いっつも遊んでばっかじゃん」

トドリは待ってよーっと、ミレアを追いかける。


「聞こえなーい、聞こえなーい」

ミレアは、穏やかに笑いながら詠唱する。


「ヒノ離れてて。私ちゃんとやり遂げるから」

私は、ヒノを真剣に見つめて、信じてと訴えかけた。


しかし、ヒノは私の背後から動かない。


「私も、一緒にいるわ。あなただけに命、懸けさせたくないもの。何があってもずっと一緒なんだから」


ヒノは私の背中に掌を置く。


「……本当にそれでいいの?」


「いいもなにも、私はずっとそう思ってきたよ?」

ヒノは微塵もふざける様子が無い。


「そっか、そうだよね。ごめん」


「うん、当たり前よ」


「じゃあ……行こうか二人で」


「うん……行きましょ一緒に」



気が付けば、私達の足元には赤い霧のような魔力の波で満ちていた。

ミレアが、見た事のないような研ぎ澄まされた表情で、魔法を唱えている。

魔女のようだ。

その後ろでトドリは、じっと直立し、こっちを見ている。


しばらくすると、ミレア達周辺の空間に、菱形のピンクのクリスタルが多数出現した。

それらは、雪の様に舞い降り、足元で霧になっている。

幾つかその中でも、格段に濃い色の光煌と輝くピンククリスタル達は、ミレアの手元に集まり、一つの物体を形成していく。


私とヒノは、幻想的なその光景に息を呑む。


何より、いつもとは違うミレアの、得体の知れぬ雰囲気に寒気が走った。

ミレアの手元の物体は、巨大なルミナスピンク色の結晶体となった。

その宝玉のような煌めく物質をミレア掲げる。

そして……

そっとキスをした。


すると――

その物体の中に、大きな瞳孔が出現した。

そこまできて分かった。

あのキュートな二人の師匠の必殺の名前の意味が。


トドリが空間を蹴って、体に黄金色のオーラを纏い宙に浮遊し出した。


私は盾をギュっと握る。


「ヤバそうね」

ヒノが私の背中にしがみつく。


「大丈夫だよ、私達だってヤバイタッグでしょ?」

私はヒノに笑って言う。


「うん、間違いないわね」

ヒノも笑って、背後でどっしり構えた。


そして、浮遊しているトドリのオーラが頂点に溢れ出し、雷鳥のように神々しい見た目となった。

ミレアがそっと、ピンクの竜の瞳を宙に浮かせる。

トドリはそれを片手でキャッチし、ジュイーンッと掌にオーラを集中させる。

すると、オーラ自体が、極雷で出来た魔人の腕のようになった。


竜の瞳を鷲掴みにし、極限まで弓を引くようにしなる、極雷の魔人の腕。


私達を一直線に見るトドリとミレア。


「ヒノ愛してるよ」


「シスイ愛してる、あなたより」


……



光は放たれた。


次に見た瞬間には、竜の瞳は放射状に大きな牙を生やし、その周囲全体を激しい閃光で包んでいた。


太陽みたい。


私がそう思考したと同時に。


ヒノと私は光の海にいざなわれた……



……


……



メイド喫茶プリズムフィーユ――


「でもさぁ、まさか跳ね返されるとは思わなかったよね?ミレア」

トドリが笑いながらソファーでアイスティーを呑む。


「よほほ!流石にね。どういう原理で跳ね返したの?」

ミレアは、本当に不思議だったわと言う顔で私達を見る。


私とヒノは顔を見合わす。


二人して笑った。きっと同じ事で笑って言る。


「ちょっと教えてよ、気になるじゃん」

トドリはどうしても教えて欲しいとせがむ。カワイイ師匠だ。


「そうよ。一体全体何がを起こったか説明しなさいっのっちゅ!」

ミレアはウインクしてビシッと私達に指を差した。あざとい師匠だ。


私達は隣同士、テーブル下で手を握り合う。とても暖かい。


私達は、まだ笑う。


目の前の二人は呆れる。


でも、きっと話しても信じないよ。


だってさ……


あの時――


ヒノと私が繋がったあの時――


能力が融合したあの瞬間――


一瞬時が止まって―


二人して、女神を見たなんてさ――


信じられるわけないよ。


私達二人以外は……


私達の握り合っている手を、この店の誰もが知れないように……

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