王の輪廻
どれほど時が経ったのだろう?
私には、もう分からない。
宇宙の果て、異界の虚空で、万劫の星棺の中、目を閉じて懐かしい日々を思い出していた。
おどけるゾア。
笑うゾア。
甘えるゾア。
大泣きするゾア。
初めて出会った日から、最後の瞬間までを、何度も何度も思い出し、真っ暗な世界の中、心に温かさを灯していた。
虚空の棺の中、自分の意思で動けなくなった今、それだけが私が私である事を実感させてくれる。
君は、言ったね?
もし、私が何処かの世界、何処かの時代に生まれ変わって、つまらなさそうな顔をしていたら、翼を生やして迎えに来てくれるって。
……
今。
今、来て欲しいんだ。
どうしても会いたいんだ。
君を想うと、涙が止まらないんだ。
怖いよゾア。
お願い、助けにきて。
……
私は、いつも君を助けてる風に見えていたかもしれないけど、
本当は、私が君を頼りにして生きてたんだ。
君と言う光が、どんなけ心強かったか。
まだこの瞬間でも、幽かに残っているぐらい……
……
すごく寂しいんだ。
声が聞きたい。
ワガママでいじっぱりな声、とても楽しそうに、はしゃぐ声、心の底から私を愛しんでくれる声。
どんな声色でも私の胸を熱くする、騒がしい声。
ねぇ、ゾア。
お願い。
もう一度聞かせてよ?
ダーリンって。
……
私はゾアを想いながら、半ば意識が遠のいていた。
……
……
(ダーリン)
……
……
そうか……私はもう終わるんだな。
……
……
あらゆる異界の虚空を彷徨い、あらゆる星の戦いに巻き込まれ、
時には、英雄と呼ばれ、時には魔王と呼ばれ……
自分の意思など叶わないまま、数えきれない程戦わされた。
いくら終わりを繰り返しても、満たされる事など無かった。
最愛の人、最高の地位、頂点の能力、果てなき勝利、全てを一度は手に入れたが、
今になって考えると……
――私の人生は、ただ苦しみであったのかもしれない――
よく分からないけれど、たぶんそうだと感じる。
しかし……それでも。
私と言うモノがあったのならば、それを形作ってくれたのは、紛れも無くゾアリア・レ―ドだ。
彼女と出会わなければ、今苦しむ私も無かったはずだ。
それが、良い事なのか悪い事なのか分からないが、それが私なんだ。
苦しいのに、心からゾアをすごく離したくない。
私はきっと、無くなりたくないのだろう。
少し違うか……
私は変化したくないのだ。
途切れなく変化が続くこの世界で、よく考えると、終わるとはおかしな話だ。
……
……
もうそろそろ、最後だな……
この、不老の肉体と不滅の魔導機を残し、私の心は、きっと生まれ変わるのだろう。
……
……
眩しい。
……
……
そうか……また、人の子か。
未来の私よ、君だけが頼りだ。
私を、延々と続く暗闇から救い出してくれ。
今度こそ苦しみの終わりを見つけて欲しい。
……
……
最後に、紛れも無い私だけの気持ちを……
ゾア。
ありがとう。
……
……
我は、広大な世界の王だった。
……
だが、もうあまり覚えていない。
……
どうやら人というものに生まれ変わるらしい。
……
頑張ったつもりだが、業の赴くままに。
……
答えを見つける為に。
もう一度、生き抜く必要があるようだ。
……
今度こそ達成する。
……
何をだったか?
……
時が来た。
始まる。
――そうして私、リリス・パンクライヴは冥 シスイとして新たな命を受けた――
……
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地球、日本、現代、部屋、ベッド――
「ハァハァハァ……」
私(冥 シスイ)は、ベッドから飛び起き、汗と涙でぐっしょり濡れた顔を、手で押さえる。
「なんなのさ……今の……」
夢でないような気がする、確かな実感があった……
私は、気を紛らわす為にスマホを手に取る。
メッセージが一件。
ヒノからだ……
(ダーリン。明日ちゃんと来てね?来てくれなきゃ、街なかで羽広げて、ビュビューンて飛んで迎えに行くからね。みんな大騒ぎになっちゃうよ?)
ダーリン……
私は、いつもと何ら変わらないはずの、ヒノのメッセージを見ているだけなのに、
自然と瞳からポロポロと涙が溢れた。
スマホの液晶が濡れて光る。
一体、私どうしたのさ私。胸が狂う程に熱い。
私はメッセージを打った。
(絶対行くよ。絶対に行くから待っててね)
その時、私は確かに自分の指で文字を打ったんだけど、なんだかとてもそうじゃない気がした。
そして、暗い部屋の中、やっと大事な約束を果たせるような気持ちになり、安心して再度眠りについた。




