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秘密結社シェアプリズム結集 シスイの覚悟


私(冥 シスイ)は、ヒノから、フィジャナーク王がこの世界に来た事、女神ゾアリアを降臨させる寸前だと言う事、世界を懸けて、私と一騎討ちしたいと望んでいる事を聞いた。


涙ながらに喋るヒノをなだめたかったが、正直凄く怖くて、聞くだけで精一杯だった。

ある意味、自分の最後を宣告されたみたいな話だったから……


ヒノは、話終わった後も、私の部屋でずっとずっと泣いていて、時間だけが過ぎ、私達は一晩中抱き合う事しかできず、一人じゃ抱えきれない不安を、二人のか細い腕で、どうにか抱えようとしていた。


しかし、そうする時間さえ、世界は余り残してくれてはいないので、私は幽明に連絡し、秘密結社シェアプリズムのみんなを集めて貰い、私とヒノで、全てを打ち明ける事にした。



----------------



メイド喫茶プリズムフィーユ――


私とヒノが来た時には、みんなは既に集まってくれていた。

全てを話すと、あまりにも時間がかかり過ぎるので、幽明が事前に、みんなにやんわり話を通してくれていたらしい。


店内は相変わらず、現代的でキュートな女の子を思わせる演出と、シュールな異界を混ぜたような、大胆で鮮やかな演出だ。

繁盛しているのだろう、店内は沢山の人で賑わっている。

トドリが貸し切りにしようかと?と言ってくれたが、毎回そうじゃ悪いから断った。もうすぐ終ってしまう、私なんかの為にと考えると、余計に申し訳ない。

きっと私は、ネガティブな思考に支配されている。


私達のVIP席の向こう側には、久しく見るドミノがいた。

こんな状況なのになんかすごく笑えた。

だって、もうすぐ私の人生が終わってしまうかもしれないなんてつゆ知らずに、物凄くヘンテコな雰囲気のやつらと、バカ騒ぎして、生を謳歌してるんだもん。

いいな、楽しそうだな……

ダメだ。

私には、あんな風な沢山の笑顔を守る責任がかかっているんだ。

逃げる事は絶対に許されない。


今日は、みんなにそれをはっきり伝えよう。





――




私とヒノが座ると、様々な髪色の、様々な考えの女の子達、シェアプリズムのメンバーがお通夜みたいな雰囲気で私を見た。


「どうしたいの?」

ミコトちゃんは、淡紫の瞳で一直線に私を見て、開口一番言い放った。


「どうしたいもなにも……選べないじゃないか」

私は包み隠さず、胸の内をさらけ出す。

諦めに近い感じで、アイスティーを呑んだ。


「みんなお願い、シスイを助けて……」

ヒノが、テーブルに両手をバンッとつき、みんなに訴えかける。

昨日、私の服が大雨みたいにびしょびしょになるくらい、泣いていたのに、まだそんなに涙出るんだ。


「とりあえず、落ち着こう。そう言えば、この前のルアナの件お疲れ様。よくやったね」

幽明の笑顔は、私にまだ道があるように思わせてくれる。


「血の占いぶりね。結構強敵だったでしょ?滝壺の異形」

ルリメアちゃんは、掌だけをくいくいっと私達に振り、暗い話から遠ざけようとしてくれた。


「よほほ!ピッカピカのゴーレムが、シスイにぶっちぶちにされてて、やばかったのっちゅ!」

ミレアは私とヒノを見て笑いながら言った。


こんな言い方あれだけど、あの旅楽しかったね。


「ミレア……それじゃ全然伝わらないよ」

トドリが、店長らしく、店内の状況を遠目に把握しながら、呆れたように突っ込む。


「私が代わりに言いましょう。おしっこがしたくなって、蕎麦を食べに行きました」

クオリアちゃんは、良い説明ができました!と、満足気な顔をする。

全部、自分視点じゃん。カワイイな。


「お前等、何しに行ってたんだ?」

キョウは、全部ドッキリなのか?みたいな、全てを疑うような目をした。


「あはは」

思わず私は笑う。みんなはそれを見て、少し明るい顔になる。


「ねー、マジな話ミコトちゃん、。前みたいなヤバめの奴で、どうにかしてあげられないの?あれ(トクト―ロガミ)と、みんなで全力でいったら、どうにかなるんじゃないのかなぁ?」

リョクが、私の寂しい笑顔を見て、ねぇ、みんなで助けようよ?と言い出してくれた。

すごい優しい子だな。時間さえあれば、もっと仲良くなれたはずなのに……


「それは、ダメ。心を鬼にして言うわ。灯ちゃんに聞いた話では、こちらが攻撃すると、遙に文明の進んだ異界の軍や神獣が、この世界に来るらしいじゃないの?

そうなったら、私達はとんでもない罪を負うわよ?罪を負う前に、生きていたらの話だけど……全面戦争だけは絶対NG」

すばるさんは、誰にもこれだけは譲れないと言う顔をしている。

当たり前だ、私も同じ考えだよ。



「何か良い作戦がきっとあるはずです。みんなが助かる良い作戦が……」

ノウコさんは私を見て、苦悩の表情をした。

この人はいつだって優しい。

公平にそっと寄り添ってくれる、穏やかな人だ。



響が、珍しく真剣な表情で言い出す。


「生意気ですが言わせてください。私思うんですが、もしかしたら敵なんていないんじゃないですか?ただお互いを誤った見方で捉えているだけで。だって、相手はヒノさんのお兄さんなんでしょ?ヒノさんがこんなに優しいのに、そのヒノさんを愛す兄弟がそんなに悪くなるんですか?自分の国の人達の為に、全てを捨てられる人なんでしょ?今回の条件だって、悪者なら提示なんてしないはずですよね?ねぇヒノさん」


驚いた。そういう視点もあるのか。

私以外のみんなも、そんな顔をしている。

この中で、一番戦闘能力を持たない響が、一番未来を動かす事を言った気がする。


「フィジャナーク兄様……フィジャナークはね、私より優しいよ?ホントに優し過ぎるくらい。自分を利用する奴等ですら簡単に信じようとするし、響の言った通り、他の存在の為に、惜しげもなく平気で命を懸けれるの。正直、王に向かない程に不器用ね。でもね……戦場に花があっても、軽々しく踏んだりしない奴なのよ。

だけど、その分、誰かを救う目的の為なら、想像もできない程に強い覚悟で成し遂げようとするわ。私は、それが怖い」


みんなはそういう事かと頷く。


「それは、厄介だな。そういうやつは、その場のポテンシャルのみで、理解出来ない能力以上を発揮してくるからな。っで、現実的な話、その堅物兄貴の、能力はなんなんだよ?」

キョウが、スカッシュオレンジの髪をかき上げ、ギッと虚空を見る。


「原初の属性は、光と闇も含めて全て扱えるわ。後、秘属性のプリズムも扱える様になったらしいの。そのどれを使っても、城だって吹き飛ばせるわ。魔術は主に、女神ゾアリアの直系の太古の魔術で、威力とスピードに関しては、私より遙に上かな……フィジャナーク兄様が負けた所を、一度だって見た事ないわ」


全員が、それ程までなのかと息を呑んだ。

リョクは相変わらず、ミコトちゃんを見ている。一体、リョクは何を見たんだろう?


私達の幾人かは、かつてトドリとミレアと対峙する前に、ヒノが見せた強大な力を脳裏に想像しただろう。

あれの遙上であるならば、もはや別の次元の存在だ。神格に近いかもしれない。


「ちょっと勝てそうにないや……」

私は正直に言う。


……


私達のVIP席だけ時が止まる。


その時を、ポンッと指で弾くようにミコトちゃんが言う。


「ヒノを人質にとる?」

ミコトちゃんが、ぼやっとヒノを見る。


「え?」

ヒノは、心が抜けた顔をする。


「ミコト様!」

ノウコさんが、すかさず割って入る。


「冗談よ。ふふっ」

ミコトちゃんは、アップルジュースをチューっと吸った。


「お前笑えねー冗談言うなよ」

キョウも少し怒る。


「いや、待ってくれ……ありかもしれない」

幽明が、目を光らせ、口に手を当てる。


ヒノは不安そうだ。


「ちょっと幽明まで。ヒノが可哀想だよ」

私はノーノ―と手を振り、ヒノの肩を抱く。



「そうじゃないんだ。この問題全てを俯瞰的に考えると、結局はヒノに行きつくんだ。女神ゾアリアの復活のカギを握るのもヒノ、フィジャナーク王が愛してやまず、何よりも執着しているのもヒノだ。そんなヒノが、命懸けでシスイを庇うのであれば、攻撃は出来ないし、精神的にも、フィジャナーク王は負けるんではないか?」


確かに。

みんなも、そうだ!と言い出した。


「いえ、フィジャナーク兄様は、もう王になった。私なんて選ばないわ。間違いなく民をとる」

ヒノは少し寂しそうに言う。


「そうかなー?話聞くに、ヒノのお兄ちゃん、シスコン感半端ないけど?ちなみに、恋人とかいるの?ヒノちゃんに悪いけど、ちょっと異常だもんね」

リョクは半ば、ふざけた感じで言った。


「いないわ……ずっと」

みんなは、どう反応していいかわからない感じだ。

ほんのほんのちょっとだけ笑える。


「そいつわ、不健全だな。だからねじ曲がったんだ。俺らみたいによ」

店内の反対側に座っていたドミノがいつの間にか、私達の席にの近くに立ち、大きな声を上げて、仲間を指差す。

様々な冴えないニートのような男が四人程。


「ドミノあっちいけ。盗み聞きすんな。あと、王とニート共を一緒にすんな」

幽明は、信じられない程するどい視線で、ドミノを睨みつける。


「すんません……」

ドミノは席に戻って行った。


あいつやっぱり面白いよ。気分が晴れた。


「ドミノさんは相変わらず、愉快な方ですね」

クオリアちゃんが言った。


「面識あったけ?ドミノと」

幽明が聞く。


「いえ、間違えました」

クオリアちゃんも、やっぱ弩級の天然だな。


「ごめん。気になったから聞かせて、ヒノのお兄さんて、どんな顔?どんな人がタイプ?」

ルリメアちゃんが聞く。

ちょっと……

私の宿敵に、憧れ持つのやめて……


「んーーー……結構かっこいいよ。私に似てるかな。髪と瞳は、私が交換したいくらい凄く綺麗だよ。タイプは……わかんないけど、この中で言えば……」


ヒノは全員を見渡す。何人かは女の子の顔になってしまっている。


え?なんか恋バナの会議になってない?

私、結構切羽詰まってるんだけど……

でも……ちょっと気になる。


「ノウコさんかな。たぶんそう。少しお母様に雰囲気似てるし、ノウコさんっぽい人が描かれた戦乙女の絵画とか、集めてるし」


みんなは一斉にノウコさんを見る。それに反応して顔がポッと赤くなるノウコさん。


「え……あ……いや……やめて下さい!!!」

手で顔を覆い、ぶんぶんと首を振るノウコさん。


「ノウコ命令よ。結婚してきなさい。それで全てが丸く収まるわ。子供の名前は

ノウジャークよ」

ミコトちゃんがビシッと決めるように言った。


DQNネームじゃないか!!!


「これで、全て解決しましたね。ノウジャーク……それは後の、銀河を統べる、最強の戦士であった 完。」

響は、ナレーションの物真似をして言う。


「響、勝手に全てを完結させないで!!!甥っ子の名前はもっとかっこいいのがいいの!!!」


ヒノ、そこ!?

昨日と、さっきの涙何処行ったの?

ちょっと私、影薄くなってきたんだけど。


「もう、皆さん。シスイちゃんの気持ちも考えて下さい!」

ノウコさんは、大声で言う。

だが、まだ顔が赤い。


みんなは、ちょっと悪ノリが過ぎたと、私に謝る顔をした。


「話を戻すと、ヒノ、君はシスイとフィジャナーク王の一騎打ちの場面で、極限まで、シスイを庇うんだ。恐らくそれが、色んな意味で、フィジャナーク王にとって敗北をもたらす行為となるからね。その状況が出来れば、シスイの強さなら、勝てる可能性は大いにある。私は近くで君達を見て思うんだよ、君達に流れる縁は、想像の出来ない所まで繋がっていて、それは外部が割り込む障壁なんかじゃ到底邪魔しえない何かなんじゃないかってね……だから、今回だって私は君達が勝つ方が法則的に自然だと感じる」

幽明が漠然とした、小難しい事を言う。

私を含めみんなは、分からないけど、なんとなく分かると言う顔をしている。


「私は、シスイを全力で守る。最初からそのつもりよ」

ヒノは言い切った。


「ありがとうヒノ。そしてみんな。結局の所、私の覚悟は最初から変わって無いよ。

だから安心して。命懸けるよ本気で。フィジャナーク王が民に対して、そうするように、私だって、みんなや、この世界に対してそうするつもりさ。ただ……不安でみんなと話したかったんだ……」


みんなは、覚悟の目を返してくれた。


「よほほ!!!あなたは負けないわ!!!負けない為に、あの盾も取りにいったんでしょ?一緒に訓練しましょ?私、とことん付き合うから。絶対負けないでのっちゅ!」

ミレアは大きく明るい声で言ってくれた。


「そだね。君は負けない。君と命懸けの勝負をした私は、そう感じる。

 君なら本当に世界を変えられる気がしたんだもん。だからこのチームについて来た。絶対に大丈夫だよ」

トドリは過去の異形配信の時のように、強い目をしている。しかし、その目の前には

視聴者では無く、仲間の私達がいる。


「私、一緒に行きたいです!一緒に命懸けたいです!そのくらいシスイさんが好きなんです!!だから、絶対にいなくならないで下さい。女神は絶対にあなたに微笑むはずです。微笑んでくれるまで、私は何度だってあなたがどんなに素敵かを女神に語りかけるんですから!!!」

響は前のめりになって私に訴えかける。


「そうね。きっとあなたは負けないでしょうね。あなたはまだ勘違いしてる。私の千里眼の血がずぅーっと言ってるの、あなたは宿命の覇者だってね。長い間生きて来たけど、この占いが出たの初めてなの。そしてこれが完成の占いと感じるわ」

ヴァンパイア少女がルリメアちゃん、犬歯をチラッと見せた。


「思いっきりぶっ飛ばして来いよ。ただそれだけだ。他の雑魚が暴れたら、

俺がまとめてぶっ飛ばしてやっからな」

とても頼もしい笑顔でスカッと笑うキョウ。


「何が起こっても、シスイのせいじゃないと思うよ?だってそんなの勝手に流れで起こって押し付けられてるだけじゃない?だから、逃げたくなったら、誰が反対しても私が助けてあげるから。一緒に思い知らせちゃおうよ?無理難題な現実と、それを吹っ掛ける奴等に」

リョクは、他の誰も見えてないように、私だけに話した。



「そうねー……魔女シビャクの攻撃止めたあなたって、本当に誰にも負けないと思うよ?悔しいけど」

ミコトちゃんは、当たり前だよ?みたいな顔で言った。悔しいは余計だ。


「確かに、シスイちゃんに背負わせ過ぎよね……もしもの時の、国からのバックアップは私から言っておくから、出来る範囲でやりなさいな、無理だったすぐ逃げて。こういうイレギュラーに対して、国は何もしていない訳じゃないのよ?後、まだそんな年なのに、簡単に命を懸けるなんて言っちゃ駄目よ?これから長いんだから」

すばるさんは、私に当然に未来が続く風に言ってくれた。


「私も一緒に行きます。怪丘さんが言ったように、あなた達は、まだ保護者が必要な年ですからね。お姉ちゃんとして無茶はさせません!何かあったら絶対助けます!」

ノウコさんが、ふふっと優しく微笑んだ。


「私も行くよ。みんなで行ったり、あまりに強力な気配の人が行くと、勘違いされるから、私と、フィジャナーク王のタイプっぽいノウコさんがベストかな。冗談で無く、タイプな相手がいれば案外気が散るかもよ?男ってそんなもんだから。母親に似てるってのもかなり大きいし。フィジャナーク王はきっと戸惑うだろうね。

だから、みんなは心配しないで、私が知能の限りを尽くして二人を守るから。変な出来事が無い限り……ね……達成してみせるわ」

幽明はそう言って、思わし気に宙を見た。


「ありがとう……みんな」

私は言った。

死にたくないな。だって、こんなに良い友達が出来たばっかりじゃないか。


「みんなホントにごめんね。私のせいで……全部ちゃんと私が守るから」

ヒノのその声から、フィジャナーク王の雰囲気が感じられた。


「それじゃあ、時間は待ってくれないから、私達は準備の為に、そろそろ帰るよ」

名残り惜しくなる前に行こう。

気が変わらないように、覚悟を燃やし続けるんだ。

これ以上いたら……


去り際、みんなは、ちょっと寂しそうな顔をしてくれた。


私とヒノは立ち上がり、店の出入り口へ向かう。



「またみんなの顔見る為に、頑張ってくるよ。じゃあっ、ありがと」


私は、泣き出しそうな胸の痛みを堪えて、みんなに手を振った。

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