トクトーロガミ
奇跡の子。数限りない人間に、そう呼ばれてきた私、花岡 命は鏡の前に立つ。
暗い部屋で鏡に映るのは、私の淡紫の髪。
少し、服を捲る。
軽くお腹が見えるくらい。
奇跡の子である、一つの理由としての証を見る為に……
まだ大人では無い、幼く弱い体。
何も知らない無垢白な肌。
今はいない、お母さんとの絆である、小さなへそ。
掌程の大きさの文様。
それは、十の頭を持つ蛇竜の文様。
……
おかしいって?
何もおかしくないわ。
私は、幼い体に背負った責任を、か細い指で、スッと撫でた――
十の頭は蛇に似ているが、もう少し人間っぽくて、ちょっと能面みたい。
昔、映画で見た、表情の無いエイリアンにも似てる。
それぞれが、別の色や文様をし、太い灰色の胴に繋がっている。
まるで、刺青みたいだけど、全然違う。これは、れっきとした盟約の証。
花岡家を継ぐ者としての覚悟の証。
日本の神話に、八岐大蛇と言う話があるけれど、これは、恐らく全く違う存在。
私の花岡家では、これを"トクトーロガミ"と呼んでいる。
花岡家では代々、理外を超えた"三の存在"との契約を伝承する習わしがある。
主に当主の話。
そして、現在の当主は、私。
三の存在とは、魔女シビャク、トクトーロガミ、オリツセカイコウ。
それらが、どれだけの能力かと言われたら、中々答えにくいのだけれど、
単なる異形霊媒とは、全く別種の次元だと思ってくれていい。
個人の戦い、組織の戦い、でなく、もう少し上と言う感じかな。
私の家系が、霊媒の名家であるのも、代々の当主が、三の存在や、類稀なる妖魔達を使役し、この国をイレギュラーな異界の存在から守ってきたからなのだから。
今日だってほら、ニュースで火山がどうだって、ひっきりなしにやっているけど、
真相を知る人間は、この国にほとんどいない。
私は、知る側の人間として、今からそこへ向かわないといけない。
私は、鏡で自分の瞳を見る。
灰桜色の三白眼が、少し生意気に、自分を睨んでいた……
スマホが鳴る――
ノウコからだ。
「もしもし」
(ミコト様、御準備が出来ました)
「ええ。行くわ」
私は、電話を切り、少し暗陰な巫女の格好に着替え、三の存在を奉る"無鍵の御堂"で一礼した後、外に出てノウコと合流した。
車内――
「ねぇノウコ、今から何が起こるか分かってる?」
普段とは違う、陽の感情が抜けた雰囲気の私に、ノウコは縮こまる。
「はい……」
皺ひとつ無い、綺麗な自分のスーツに押し潰されてしまいそうだ。
「じゃあ、なんで、その三人が、ここにいるのかしら?」
バックミラーから見る後部座席には、気まずさを少しでもいいから感じて欲しい程の、抜けた表情で笑っている三人がいる。
左の窓際から、幽明 灯、万上 リョク、慈十 叫だ。
灰汁が強く、体がデカめの女三人は、やっほーといいながら、前に座る私に手を振る。
ノウコが耐え切れず言い出した。
「大変申し訳御座いません、ミコト様。久々の顕現の儀に、私はミコト様の身が心配で居ても立っても居られなくなり、結果、こういう事態を招いてしまいました」
「……いつだって二人でやってきたじゃないの」
私はウィンドウから外を眺めて、素っ気なく言う。
私の言葉を聞いたノウコは、ハッとした顔をした後、涙を浮かべながら、私にお許し下さいと、何度も言いながら運転している。
「ミコトちゃん、あんまりノウコさんを責めないでくれよ?君の事、ちょっとおかしいんじゃないかって思うくらい心配してたんだから」
幽明が目尻を下げ、困った顔をする。蒼い髪がすっと首に落ちてる。
綺麗。
「それが、おかしいの。今、心配すべきは、私ではないのよ」
私は当たり前の事を言う。
今回の火山から出現した異形は、現在の日本国を揺るがす程の存在。
時折ある、人知の及ばないイレギュラー。
それを前に、私が大丈夫かなんて、物凄く馬鹿らしい心配じゃない。
「ミコト、お前の言いたい事は分かるぜ?でも、あんまつんけんすんなって。
俺達がいれば、お前が成し遂げようとしている事だって、成功確率上がんじゃねーの?」
キョウがいつも通り、お嬢様みたいな顔を、無理に男らしくして、自信満々に言った。
「まず、一つ言わせて。これは遊びじゃない。一切のふざける要素があってはならない、神聖な儀式よ」
私は、きっと心配してくれているだろう従姉妹のキョウを睨んだ。
でも、キョウはきっと理解してくれているだろう、そんな目だ。
当たり前か、同じ血を引いているのだから。
「では、こういうのはどうかしら?今日一日、私達三人は、崇高な儀式を司る、奇跡の巫女様に仕える巫女守になるわ。あなたの目的の為に最大に尽力する、絶対に儀式の一部として責務を全うすると誓う」
最近知り合った、キョウの友達のリョクがそう言った。
バックミラー越しから見る彼女は、眼帯では無いもう一つの怪しげな瞳で、紛れの無い意志を放っている。
驚いた……
この子は、今回の出来事の意味を完全に捉えている。
幽明とキョウも、彼女の言葉を聞いて、立場を弁える空気になったわ。
「……ふん、大袈裟ね。じゃあ、国の為に命を捧げれるの?……リョクだっけ?」
なんて言い返すのかな?
「無理よ」
え?みんなも彼女をマジか?って見てるじゃない。
「とんだ、逃げ腰の巫女守ね」
所詮そうだろう。
「そうね、国の為に命を捧げるなんて事は出来ないわ。でも、あなたになら捧げてみよっかな?それはちょっとありかも」
ほぼ初対面の私への狂った忠誠心。
それが、何処から湧き上がるかと言えば、単なる興味本位だから、よりイカれている。
とんだ、道化女ね。不気味だわ。
リョクは、べたーっと垂れた長い黒髪を、耳にかけ、手に顎を置いて、バックミラー越しに、じーっと私に視線を送る。
気づいて欲しい事を隠さない悪魔みたいに。
「馬鹿ね……せいぜい雑務でもしときなさいよ」
私は窓の外に視線を戻した。
視界にはもう、例の火山が見えている。今更、この三人と言い合ってる暇も無い。
一刻も早く向かわないと。
それにしても、このリョクって女……
後部座席からは、リョクを挟んだ、幽明とキョウが、やったな!とか、やるね!とさっきまでの緊張感を簡単に捨てて、はしゃいでる。やはり一般人の覚悟とはこんなものなんだろう。
隣のノウコを見る。
彼女だけは、私と波長を同じくし、これから起こりうる、現実を裏返す出来事に、
覚悟を決めた目をしている。
「ノウコ……今日の異形、詳しく知ってる?」
「異形霊媒御三家の集まりでは、火の世界の住人であるだろう、と言う話です。
純粋にエネルギーとしての世界、そこから生まれた化身だそうです」
「雨降らないかしら……?」
私は、晴れた空を見ながら、冗談では無くそう言った。
「えぇ、生憎、週末まで日本晴れです」
そういや、朝一緒に、お天気ニュース見ながら、ご飯食べてたんだ、忘れてた。
「ふーん、じゃあ降らすしかないわね」
「久しぶりに、零域竜を出すのですね」
「えぇ、イレギュラーの調整と言う点では、トクト―ロガミが適任だわ」
「……左様ですか」
火山前、山荘の駐車場――
私達は山の麓にある山荘に車を停めた。
普段は大人しいこの山は、変わり果てたかのように、地響きを立て、荒々しく、己の存在を誇示している。
私達は火山を見上げた――
夏でも無いのに、立ってるだけで、玉の汗が滲む程、この場の温度も上がっている。
火山の頂上には、何処まで伸びているのか、莫大な火柱がずっとずっと上まで放出されて、それが、際限なく続いている。
まるで、地球が大量の出血をしているみたいだ。
そして……
その周囲に、それを引き起こしてる問題の存在が見えた。
キョウが言った。
「あいつだな……」
それは、惑星の様な姿だった――
この距離から見ても、大きいと思える程に巨大な水晶玉が宙を浮かんでいる。
その水晶の中には、碧緑の粘り気の強い炎が、グネグネとうねっている。
私はあれを知っている。原初の炎だ。
……にしても、とんでもない量だな。
その水晶玉を囲むように、等間隔に、至極真っ赤な極炎がぐるぐると、左右上下に何層も廻っている。
それを中心として、過去に生物の授業で習った、ヒドラという細胞のような姿を、極彩色の炎で展開し、がくんがくんと、火山の上を漂っている。
まさに、生まれたてと言う表現が近い。
放っておけば、この世界で細胞分裂のように成長し、火の世界での真の姿になってしまうかもしれない。その時、この世界がそれに耐えられる保証は無い。
「間違いなく、あれですね、ミコト様、どうなされますか?」
ノウコが私に聞く。恐らくもう何をするのかは知っているのだろうけど。
「行くわ。鉾を貸して」
私は、自分専用の異界の宝玉が散りばめられたお気に入りの鉾を渡す様に、ノウコに命令した。ほんのちょっと見た目重視。だって魔法少女みたいだから。
「私達はどうすればいいかな、ミコトちゃん」
幽明が聞く。
「何もしないで」
当たり前に。
「え……でも」
幽明は眼鏡を光らせ、それで大丈夫なのか?と言う顔をしている。
「ホントにいいの?」
リョクは笑いながら言う。何を考えているか分からない。
信じられない程優しくも感じる。逆も然り。
「せっかく、あんな大物、目の前にしてんだ。見てろってのは酷じゃねーかミコト」
キョウは、指をバキバキ鳴らし、自分が一番にあいつと戦いたいと言う表情だ。
ちょっと暑苦しい。
「キョウちゃん、そして二人共。失礼ですが、この場において、ミコト様の御意向以外は価値を持ちません。過去に起こった、これに似た出来事が全てそうだったように。ですので、もし、本当に"あの存在"からこの国を守ると言う意思が少しでもあるのならば、ミコト様の言葉に、ただ従って下さい」
ノウコはきっぱりと言いながら、気品のある黒筒から、私の鉾を取り出す。
「……仕方ねーか、俺達が勝手に割り込んだって感じもあるしな」
キョウはオレンジの外ハネ髪をボリボリ掻く。
「そうだね、悪い気もするが、見物させてもらうとしよう」
幽明は、ふっと笑いながら腕を組む。ダイヤを砕いたような彼女の瞳は、山の頂上を鋭く見ている。
「気が変わったら、いつでも言ってよミコトちゃん。お姉さん力になるよー?」
リョクは、うふふ、と人懐っこくペリドットみたいな透明な瞳で笑う。
なのに、ぬったりとした赤い泥を感じる……
その時だった――
火山の火柱を中心として、私達の上空を、かなり広範囲、一瞬炎の濁流が覆った。
悪魔が舌を出した、そんな雰囲気だった。
「やべーなあいつ。マジ大丈夫かミコト?」
キョウの瞳から、次第に冗談が抜ける。
「ええ。マジ大丈夫。じゃっ、行ってくるわ」
私は、あっさりとした言葉を地上に置き、ノウコに目配せした後、
魔術をかけた鉾の上に、サーフボードのように乗り、熱気溢れる上空を駆け抜けた。
火山頂上付近――
私は、火の世界から来た存在を、じーっと眺める。
灼熱の砂漠のような熱風に、最近少し長くなった髪をくゆらせながら、小細工など一切無く、一直線に対峙する意思を見せる。
奴から伝わる意思は、怒りでもなく悲しみでもなく喜びなどでもない。
純粋な成長欲。
むしろ、私にしっかりと見ていて欲しいと、一生懸命に、不慣れな演劇のように、極炎をみなぎらせている。
ごめんね……
ママにはなれない。
私は、胸の中で唱えた。
(トクトーロガミよ。太古から受け継がれし、我が一族との盟約、果たす時が来た、零から轟く均衡の咆哮、しかと、乱すモノに還し給へ……)
私の、腹の文様が、ギリギリと熱くなる。
この場所を起点に、街一体に時が止まったような、灰色の雨雲が爆発的に広がる。
真上には、この世界のデータがすっぽり消えたような、真っ黒な穴が出現した。
火の世界から来た存在は、先程までとは対照の意思に変わり、即座に私に向かい、
山の一部さえ簡単に溶かす様な強烈な火炎放射を吐いた。
だが――
私の目前に、灰銀の湿った外皮を持つ、世界樹みたいな竜の腕が現れ、それを遮った。
そして、そのまま私をやんわりと覆い、亜空間へ引き抜いた。
そこからの記憶はあまりない。
ただ、クリスタルの様なモノに覆われ、全身が見渡せ無い程の巨蛇竜に飲み込まれ、
その体内で、竜の目を通して、何が起こるかを見ただけだ。
ほんの少しだけ、私の意思も通じたが。
この顕現の間は、全てトクトーロガミの視点になる――
十の視点が同時に視える。
どの、視点から見ても、街も山も食べてしまえる程に小さい。
一つの長い首と、大きな頭だけで、この山なんて覆えてしまう。
相変わらず、その顔は、ぬべっとしたエイリアンか能面みたいで、蛇や竜種の鋭さはない。必要すら無いと言う顔だ。
十の首と、灰銀の太い胴、骨が茨のようにトゲトゲと突出した尻尾。
全て合わせれば、山と街の半分を覆う。
そんな、数段階上の次元の生物は、問題の火山をぎゅるりと絡みつく様に轟き、
十の頭で、火山の頂上の存在にキシャアとただ発する。
威嚇なんてくだらないモノでは無い。どちらかというと選定。
その、キシャアと言う声は、山も街もその先の海も超えて、ジュラ紀のように響いただろう。
きっと、この都市一体に住んでいる存在全てが、夢にこの音を思い出す。
生まれたての火の化身は、最初に、こんなどうにもできない不安を知ってしまったんだ。
それが、最大の不幸。
それが、あの子の生きたい欲望と繋がり、絶対にしてはいけない事をした。
ライターの火のような、ちっぽけな火をトクトーロガミに浴びせたのだ。
私は、乞うた。
どうか、どうか、その者だけで許して下さいと。
次の瞬間には、もう私ですら信じられなかった。
火を受けた、斑の首の頭は、ドゥパッと大きな口をあんぐり開け、青白い透明な液体を垂れ流し、火の化身と、火山の頂上から吹き出す炎の柱を、一直線に見れる位置に移動した。
当然、何の防御も無く、炎に身を焦がし続けながら。
灰銀の胴から伸びる、他の首はウネウネと自由で、久しぶりに見るこの世界を堪能している。
その内一体が、ノウコ達を、捉えている……
あの三人は、虚勢も何も、剥ぎ取られた顔をして、ただ私に祈っているようだった。
それ、確かに届いてるよ?
(トクトーロガミ。彼女達に何かしたら、あなたとの盟約は、私の代で強制で終わらすから。二度とこの世界に入れない様に、花岡家も私が隅々まで潰す。脅しじゃない)
その意思が届いたのか、ノウコ達を見ていた、螺旋の王冠の文様をした首は、静かに海の方を見た。
(良い子ね。ありがと。お洒落な文様だし)
斑文様の首は、焼けただれながらもその都度回復し、等々口から、先程より大分濃い液体を、狂った蛇口の様に吐き出した。
火山の火柱、火の化身が極炎に加えて新たに放出した、碧緑の炎が、正体不明の液流と拮抗する。
二つの炎は、最初は抗って、液をとんでもない音と共に蒸発させていたが、
次第に、粘り気のある莫大な質量に耐えられなくなり、あえなく沈下した。
奈落めいた闇青の液流は、それでも止まらず、山の内部に注がれる。
きっと、内部のマグマすら固めたのだろう。
火の化身に関しては、タダの巨大な水晶玉となって山を転がり、まだ内に寂し気な炎が残っていたが、トクトーロガミの残忍な尻尾の、のたうち一発で粉砕した。
これで終わり。
帰ろう。
(ねぇ、トクトーロガミ……私みたいな弱い存在に使われるのイヤ?)
そこで意識が途切れた――
後からノウコに聞けば、私は丁寧にクリスタルの中に守られ、上空からやんわり落ちて来たらしいのだ、私が地上に落ちた瞬間、役目を終えたみたいに、もろもろと崩れ去ったらしい。
「……様!!!……コト様!!!ミコト様!!!」
ノウコだ。
私は、うっすら目を開ける。
「聞こえてるわよ、もう少し静かに喋って……いたたた」
まだ少し頭が痛い。
なのに、ノウコは私の事、絶対離さないみたいに強く抱きしめる。
余計痛いよ。
「ミコト様、本日のご活躍、まさに神の御業で御座いました。世界を救い給う、あなたの言葉、今からはこの私が、何一つ漏れる事無く、完遂させます」
ノウコは、神に命を捧げる騎士みたく、私に言った。
「じゃあ、ちょっと話して。ホントに痛いの」
私はシニカルに言う。
「こ、これは失礼しました」
ノウコはあたふたする。
「悪かったよ」
キョウが、力を捨てた目で言った。
「お前が車で言ってた意味が分かった。ごめん」
キョウが頭を下げる。あの強情なキョウはここまで素直になれるんだ。
まぁ、傍から見てたら、たぶん……本当にやばい絵面だったんだろうけどね。
「やめて。キョウが謝ってんのなんか変」
キョウは、少し目を逸らした。力がありながら、花岡家と慈十家のしきたりから、逃げ出した負い目を、偶に私に感じている気がする。
「私もだよ。ごめんねミコトちゃん。私は君の使命を軽んじて考えていたのかもしれない。それに関しても心底謝らせてくれ。すまなかった。
今日だけは友達では無くなろう。類稀なる奇跡の方よ。あなた様に生かされた存在の一人として、深く礼をする」
幽明の顔もまるで変った。彼女が異形を見たときの知的好奇心な眼は無く、ただただ世界の広さに対する畏敬の念を浮かばせている。
「幽明、そんな畏まらなくていいよ。感謝される為にやってる訳でもないしね」
幽明は少し寂しそうだった。
「うん、私もありがと、ミコトッち。今、あなたは私の常識を潰してくれたわ。
あなたの尺度でみれば、私の呪われた一族って悩みも知れたモノね……これからは、手に持てる力、全てを私は惜しげなく使う。だって遠慮する程、私達は強く無いじゃない。ふふっ……すごく楽しみだわ」
なんかよく分からないけど、好かれたみたい。
凄く不穏だけど。
リョクは吹きすさぶ風に、暗黒の髪を立体的にうねらせ、影など無いこの時間に、
顔に陰を宿らせ、何かを喰らいそうな軽口で笑っていた。
「あなたは……自分を止めてくれる人達と居た方がよさそうね」
私は、その口閉じなよ、とリョクに視線を送る。
リョクは、そうだね。と心底納得した表情で頷いた。
「では、皆さん帰りましょうか。ミコト様を早く休ませたいので」
ノウコがそう言うと、みんなは了解と言う風に、車に乗り込んだ。
帰りの車内、私は奇跡の力を過剰に使用した眠気に、うつらうつらとしていた。
私はイメージを見る。
何も無い空間にベッドが一つ。
一人で私は眠っている。
もう、父さんも母さんもいない……
孤独すらない。
そんな場所で、私と盟約している三の存在や、使役している妖魔が私を囲んでいる。
私は、それに気づき、みんなを見る。
その時のみんなの顔は……




