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秘密結社シェアプリズム結集 ヒノの告白


私、冥 シスイは秘密結社シェアプリズムの集会があるというので、会場の流図トドリと円環ミレアが先日オープンさせた、メイド喫茶"プリズムフィーユ"に来ている。


ヒノに一緒に行こうと誘ったのだけれど、用事があるから後から行くと言われ断られた。

最近、ヒノの表情が重い。心配だ。


私は、本日貸し切りの、プリズムフィーユでVIP席に着き、みんなが集合するのを待っていた――


可愛い内装だなー。

やっぱ、二人共センスあるよね。


壁紙は主にピンクを基調としながらも、デジタル感を取り入れた、今風な女の子に受けそうな感じ。そこに、キラキラ光る装飾があちらこちらに貼り付けられ、名前の通りプリズムをイメージさせてくる。

一見現代的だが、幻想的な世界も見事に演出している。

インテリアも、古代のアーティファクトみたいな雰囲気がありつつも、どこか可愛らしい小物が点々と置いてあり、視界を退屈させない。

そんな店内の座席は意外と広く、大人数が座れるVIP席に、テーブル卓が六卓、中央のカウンター卓が十卓程ある。

トドリ曰く、色が変えられる照明がお気に入りだとか。確かに、心地よい彩度の照明がアトラクションの中にいるような気分にさせてくれている。


私は、そんな店内に見惚れながら、先程、トドリが出してくれた、香り高いアイスティーをストローでズズーっと吸った。







「ねぇシスイ、ほんのちょっとだけ、ヘビの物真似してくれない?」


唐突だな、おい。

斜めから変な注文が入る。

名前を言う必要もないだろう、こんなお願いをする人間は限られている。

そう、ミコトちゃんだ。


「えー、やだ。ノウコさんにしてもらいなよ?」


「え!私ですか!?」

ノウコさんは、少し引きつった笑みを浮かべ、ミコトちゃんを見た。


「ノウコのヘビは、もう何回も見てるの。私はシスイのヘビが今すぐみたいの」


ノウコさんは、私に謝る様な顔をする。あなたが悪くはないんだが。

というか、ノウコさんミコトちゃんに何回もヘビやらされてるんだ……


「私がやりましょう!!!ガブブブブー!!!」

ミコトちゃんの隣から、突飛に奇声を上げる、響。

ミコトちゃんの肩を、ヘビの真似をした両手で、パクパクパクと食べている。


「あ・ん・た・のヘビはいらないの!あっち行って」

ミコトちゃんは、響の腕を掴んで抵抗する。淡い紫の三百眼が響を睨む。


「じゃあ私もやるわ!ニョロロロロローーー!」

さらに、響の横に座る、吸血少女ルリメアちゃんは、キャハっとメロついた大声を上げて、宙に腕を這うようにした後、響の腕にパクパクパクっと、し出した。

テーブルに大きな影が落ちる程の黒い翼膜と、血を流し込んだ様な瞳が、正真正銘ののヴァンパイアだと誰の視覚にも一発で認識させる。


「ぐあああぁぁぁ!!!まさか、この私がやられるとわー!!!強きヘビよ、名前を教えろぉーーー!!!」

響が、ヘビの王の様な声を出す。いつも通り、三文芝居が始まった。


「よくぞ聞いてくれたわね!私の名はヘビちゃん丸よ。ウザい事と、クサい事は大っ嫌いな美少女ヘビちゃんよ?」

なに、その設定……

ルリメアちゃんは、調子に乗り、さらに響をこしょばした。


「ぐふぇふぇふぇ!こしょばいの禁止です。ルリメアさん。ぐふぇ!ちょーっと!どこ触ってるんですか!そこはダメェ!うへ」

響が照明すら揺れそうな、大声を上げた。


中央で掃除をしているトドリが、見かねて言う。


「ちょっと、あんまり暴れないでよ。せっかく掃除してんのに埃立つじゃん。ソファーも傷つくし」

真剣なトーンで起こるトドリに、二人はグフフと笑いを堪える。


ミコトちゃんは、まだ諦めていないような目でじーっと私を見ている。

この子、結構気になった事に、しつこいからな。


「ヘビとしての我は終わった。我も生まれ変わって、コショコショマシーンとしての生を全うしよう」


まだ続くのかよ。

響は、やっぱりバカだ。

トドリ、そろそろ爆発するだろうな。


コショコショマシーンとなった響の腕は、再度ミコトちゃんを捉える。


「あははは……ちょっと……ははは……やめなさ……ははは……いよ……はは……やめなさいよっ!!!」


ミコトちゃんは、無表情だが、堪えきれない吐息が確かに笑っている。

しかし、最終的にはしつこい響に、マジ切れした。


そして――


「ムカムカー。シスイ、恨むからね」

私に、そう言い放った。


「なんで私なのさ?誰がどう見てもコショコショマシーンが悪いじゃないか?ねぇ、ノウコさん?」


「えぇ、そう……思います」

ノウコさんは、困った顔をして、響を見る。

それでも、懲りる事は無く、響とルリメアちゃんは顔を見合わせ、イシシと笑った。


そして、その小悪魔みたいなコンビは、せーのっ!と声を合わせ、蛇にした腕をお互い絡ませながら叫んだ。



「我等は悪くない!!!」




その瞬間、VIP席の隅から、その喧騒を上空からかっさらう鷹の如く、素早くエッジの聞いた声が走った。


「よほほ!!!ちょっと静かにして下さい!!!今、良い所なの!」

ミレアが、恋愛漫画を食い入るように読みながら、気難しそうに眉間に皺を寄せてる。


トドリが私の後ろに来て言う。

「最近ミレアずっとあーなんだ、ホント困るよ」


「へー、なんかあったの?」

私は、トドリに聞き返す。


「それは……」


トドリは、私の耳に口を近づけ、小声で言った。

彼女の舌使いまで聞こえる。


(また今度、こっそり話すよ)


ドキッとした。


ミコトちゃんが不機嫌そうに、私を睨む。


「ノウコ!頭撫でて」

ミコトちゃんは、ムスッと頬を膨らまし、ノウコさんに言った。


「はい、ミコト様」


ノウコさんは、ミコトちゃんの頭を、女神のように優しく撫でだした。


「赤ちゃんか!!!」


思わず私は突っ込んでしまった。


「赤ちゃんは、喋らないわよ。ふんっ」

ミコトちゃんは、そっぽを向いた。


……なんか正論っぽいけど、腑に落ちない。


相変わらず、響とルリメアちゃんは、タコ星人やら、悲劇のヒロイン、獰猛なカラスに腕が生まれ変わり、ずっとじゃれ合っている。


うん、今日も平和――


アイスティーの表面に映る、極彩色の反射を私はストローで、トントンと押して潰した。






その時だった――


カランカラン。


入り口の鐘が鳴り、幽明とヒノ、怪丘すばるさんが、現れた。


……


「お疲れーみんなー。あれ?新メンバー三人はまだ?トドリ?」

幽明は、今日も暑いねーと言わんばかりに、手で自分を仰ぎながら言った。


新メンバーか……

幽明から、チラッと聞いたけど、ミコトちゃんの従姉妹と友達らしい。

ミコトちゃんのお墨付きだから、きっと良い子達なんだろうけど、なんか緊張する……


「あぁ、うん。たぶん、もう少ししたら来るよ。好きな所座ってて、今、冷たい飲み物出すから」


「ありがとー、トドリちゃん。良い店じゃなーい。ホントセンスいいわね」

怪丘さんは、そう言いながら、あぁー暑いとスーツのジャケットを脱ぎ、少し汗で濡れたカッターシャツ姿を露わにする。仕草一つ一つが刑事っぽい。ドラマみたいだ。


ヒノは、と言うと、元気が無さそうに、何も言わず、私から離れて座った。


なんで、隣に来ないのさ?


私はヒノを見る。


ヒノは私の視線に気づき、笑って手を振る。

でも、無理に笑っているのがバレバレだ。

本当にどうしちゃったんだろう。


「お待たせー、アイスティーだよー」

トドリが、今入ってきた三人組に、氷が沢山入った冷え冷えのアイスティーを配膳する。ここまで香りが漂うぐらい、香りの良い、本格的な紅茶だ。


三人はすぐに、グラスを手にとり、ゴクゴクと喉に潤いを流し込み、熱くなった体温を冷やす。


「くぁーーー生き返るーーー!!!」

怪丘さんは、ビールみたいに一気に飲み干して、グラスをどんっと置いた。


「うん、イケるね、この紅茶。トドリさすがだよ」


「えへ、そうかな。そう言って貰えると嬉しいよ」

トドリは、慣れた手つきで、店内を掃除しながら、照れたように笑う。

異形配信してた時より、全然幸せそうだ。


ヒノは、相変わらず元気が無いのだが、アイスティーに関してはゴクゴクと飲んで幸せそうに目を煌めかせている。

やっぱりヒノはヒノで、いつでも、食欲が感情の一番先頭に来る、そこがすごく可愛い。


「よほほほ!!!」


ミレアが、漫画を読みながら急に笑い出す。みんなは一瞬視線を向けたが、

そのまま放置。






「皆さん、昨日の怪奇現象スペシャル見ましたか?」

響が、隣に都市伝説の象徴の吸血鬼がいるにも関わらず、楽しそうに喋り出す。


「見たわ。あのデッカイ口がある池の奴マジ怖かった」

ヴァンパイア少女ルリメアちゃんがそう言う。


いや、見たんだ!この子の生活意外と普通なんだよな、今も、スマホめっちゃ触ってるし。


「分かります!あれ、絶対本物ですよね。トラウマ過ぎて、私池に入るのが怖くなっちゃいました」

響は、縮こまりブルブル震える。

そもそも、池に入るな!


「私は、窓から覗くツチノコおじさんがちょっと苦手です」


ノウコさんも会話に加わる。

意外だなー、そんなん見るタイプなんだ。


「最高だったじゃないあれ?」


ミコトちゃんは、ノウコさんになんで?という顔で聞き返す。

たぶん、君は蛇が好きなだけだろ?


「私はねー、寄生虫に乗っ取られた町かな?なんかリアルだったじゃない?」


すばるさんが、虫はダメなのーという顔で首を振っている。


てかさー、その番組、みんな見なきゃいけない番組かなんか?


「あ、そうそう。そう言えば面白いサイトがあってね、そのサイトに変なQRみたいなものがあるらしくて、それを見ちゃ絶対にダメ!なんだって、まだ怖くて、サイト開けれてないんだけど、今みんないるからやってみよっかなー……って、あれ……開けない……」


ルリメアちゃんが、スマホの画面をポンポン叩いて、そんな事を言っている傍らで、幽明が、にやりっと満足気に笑っている。

なんかあったのかな?






みんなが、怪談番組の話で盛り上がってる最中、ヒノが私の隣に来た。


私達は小声で話す。


「ねぇ、シスイ……今日ね、ちょっと話したい事があるの……」

息が詰まったような、不安な声。


「そんな感じしてたよ、大丈夫ヒノ?何があっても、私はヒノの味方だからね」


「ホント……?」


「うん。君がみんなの敵でも、なんでも」


ヒノは、私の言葉を聞いて、俯く。


「顔上げて、大丈夫だから」


ヒノは、私の胸の中にうずくまって、泣き出した。


みんなは、その雰囲気を察して、逆に賑やかに、そのまま話ていてくれた。





その時――


またも、店の入り口の鐘が鳴る。


それと同時に、三人の様々な女の子が軽やかに入ってきた。


「ちわーっす」

オレンジの髪の、ボーイッシュな女の子がドタドタ歩く。


「どもーーー」

高身長の、だらっと垂れた長い黒髪の女の子も、軽いノリで後ろに続く。


「おはようございまーす」

髪がグラデーションの、マリオネットみたいな女の子が最後尾に。服装がどことなく、魔法少女だ。



「三人ともおはよう。飲み物いれるから適当に座っててー」

トドリは、既に三人と親しい感じで話す。


「トドリ店長あざーす」

オレンジ髪の女の子は私の横に座り、ミコトちゃんに、よっ!と言っている。

ボーイッシュな見た目に反して、可愛い匂いがする。


「あ、ミレアさんどもーーー!」

高身長の、ちょっと影のあるお嬢様みたいな黒髪の女の子は、ミレアに挨拶した。


「よほ!やっほーリョクちゃん!」

ミレアは、漫画を読むのを辞めて、そう言った。

あー疲れた、と伸びをしている。

反った胸のラインがかなり大きい……

なんか、ずるいぞ。


「トドリ店長、何か手伝いましょうか?」

マリオネットみたいな女の子は、とても真面目そうで、着席する前に、トドリの所に行って、手伝おうとしている。


「クオリアちゃん大丈夫だよ。ありがとね。みんなと座って休んでて」


「はい、ではお言葉に甘えて」

トテトテと歩いて、幽明の前に座った。


「魔法少女みたいで可愛いね、クオリアちゃんだよね?始めまして、幽明 灯です」


幽明は、クオリアちゃんと言うその少女に、壁の無い笑みを浮かべる。


クオリアちゃんは、カバンを降ろし、幽明に返事をしようとする。


次の瞬間――


「ゆゆゆ、、、、ゆ、、、、ゆうみょう、、、、、あか、、あか、、、あかり、、さん!!!」


先程まで、ロボットみたいに無表情だった、クオリアちゃんは

幽明を見て立ち尽くした。

まるで奇跡や女神を目の前で見たみたい民衆みたいに……


みんなは、二人に視線を向ける。




「あ、はい……幽明 灯です。あれ?もしかしてどっかで会った事あったけ?」


「……いえ……御座いません。ですが、今、あなたに会えて、私はこれ以上に嬉しい事はありません」


クオリアちゃんは、ライムグリーン色の瞳をぎゅるぎゅると、びっくりするぐらい輝かせ、彼女の周りに花畑が見えてしまいそうに錯覚する程、多幸感を周囲に満ち溢れさせた。


「あ……うん、ありがと。すごく、情熱的なんだね、嬉しいよ。よろしく」


「はい!!!よろしくお願い致します!!!」

そのまま、ウキウキして居ても立っても居られないようなクオリアちゃんは、なんだかとても人間らしくて、子供らしくて可愛かった。


となりで、オレンジ髪の女の子が、もう一人の女の子と話している。


「クオリアの奴どうしたんだ?あいつがあんな風になんの、あんま見た事ねーぞ?」


「そうねー、後で聞いてみましょ」


なんとなくその会話に反応し、私はオレンジ髪の子を、隣で見つめた。


……


なんか見た事あるな。


その子も私をぐっと見る。


「おぉー、あんた……あの時居た、銀髪っ子じゃねーか……へー、結構可愛いかったんだな」


あぁ、倉庫で未知災の異形と戦ってた女の子か!!!

かなりヴァイオレンスな不良少女だったような……


「ちょっと、キョウちゃん!いきなり失礼よ。ごめんねー、私はリョク、よろしくね。あ!……でも、ホント超可愛いかも!」


「ありがと、嬉しいよ。私は、冥 シスイです。よろしくね」


不意にヒノに目を向ける。

寂しそうに一人俯いていたので、私は背中を撫でてあげた。

ヒノは私の肩に、頭をもたれかける。


リョクは、肘をつき、手に顎を乗せ、ふーんと私とヒノを見て笑っている。


「ありがと。冥 シスイです」

誰だ、私の物真似をしたのは。


ミコトちゃんが、にやりと笑ってる。


「やめろ。ドッペルゲンガー」


ミコトちゃんは、ノウコさんの懐に逃げるようにして、横目でこっちを見てきた。


「こいつ、意味不明なとこあるよなー」


キョウちゃんと呼ばれてる子が、私にこそっと耳打ちする。


「それ、すごいわかるー」


私も、こっそり耳打ちする。


「だろ?シスイだっけ?あんたとは仲良くなれそうだぜ。俺は慈十ジトウ キョウキョウって呼んでくれ」


キョウは、スカッとした笑顔を私に向けた。


「うん、キョウ。よろしく」


私は、意外と絡みやすいキョウとは、凄く仲良くなれる気がした。


「ムカムカー。タッグは禁止」


ミコトちゃんは、私とキョウを見て睨む。

ミコトちゃんだって、ノウコさんと二十四時間タッグしてるじゃないか。


少し離れた席から、こちらに声が飛んで来る。


「ねぇ、ヒノちゃん大丈夫?」


ヴァンパイア少女ルリメアちゃんが、とうとう、ヒノへの心配が限界を超えたみたく、声をかけてくれた。

囚われたルリメアちゃんをヒノが救出した時から、この子はヒノに、とてもなついている。


「うん……ありがと。ルリメアちゃん大丈夫だよ」


「ヒノさん……私は馬鹿ですが、あなたの為なら、真面目にも悪者にもなれますよ?

だから……何かあったら言って下さいね?親友じゃないですか」


響も、珍しく真剣なトーンで、ヒノに声をかける。


「うん、ありがとね響。あんたを見てるといっつも幸せになるわ。ホント大好きよ」


響は黙って俯いた。


「訳ありっぽいなー」

キョウが、アイスティーの氷をかみ砕きながら呟く。


その時幽明が立ち上がり、大きな声を上げた。


「はいはーい。みんなー注目!!!」


みんなは、幽明に視線を向ける。


「まずは、みんな、今日は忙しい中、集まってくれて本当にありがとう」


幽明は丁寧にお辞儀する。みんなは答えるように頷く。


「集まってもらったのには理由があるんだ。みんなに早急に話しておきたい、大事な話が二つある、少し長くなるが聞いてくれ」


幽明は、そのまま続ける。


「一つは、もう察してくれてると思うんだけど、秘密結社シェアプリズムに、新しいメンバーが三人加入した。ミコトちゃんの従姉妹の慈十ジトウ キョウさんと、その友達の、万上 リョク(バンジョウ リョク)さん、クオリアさんだ。はい、拍手!!!」


みんなは、三人を見て拍手する。柔らかな声援が飛び交い、とても良い雰囲気だ。

新しい友達に楽しい未来を想像し、ワクワクと歓喜しているみたいだ。


キョウが幽明に言った。


「それなんすけど、このグループって、ミコトから聞くには、異形討伐とか、世界平和が使命とか、超漠然としてるんですけど、なんかのボランティアとかなんすか?

なんかやらなきゃいけねー事とかってあるんすかね?」


他の新人メンバー二人は、キョウの言葉に、そうだそうだと頷く。


幽明が答える。


「いや、無いよ。強制する事は、一つとして無い。ニュアンス的には、もし、何か大きな問題が、誰かに起これば、みんなで助け会えたらいいねって感じかな。勿論、戦闘が嫌な人は、する必要なんて全くない。ただ、そこに居てくれればそれでいい。現に、そこにいる響ちゃんは、戦闘とかそういう事に関しては、全く持って関わらないタイプだよ。それでも、彼女は、みんなにとって、かけがえのない仲間に変わりわない。だから、もっと極論で言えば……友達になろうって話さ、縁が合って出会ったんだからね」


新人メンバー三人は、ふーんと言う感じで、やんわりこの組織を理解した。




「じゃあ全然ありだな。正直めんどいのなら、どうしよっかなーって思ってたけど。

ダチになって、お互い助け合おうって感じだろ?いいじゃん、それ。あんたら、なんか楽しそうだし、ミコト達守ってくれてたみたいだから、間違い無く良い奴らだろうし」


キョウは、シェアプリズムの参加に完全同意した。


「キョウちゃんと同じメンバーになれるなんて、私感激です!!!

昔の仲良しさんに戻ったみたいです!!!」


ノウコさんが、普段見せない高いテンションで、嬉しそうに飛び跳ねる。


「やめてよノウコ姉ちゃん恥ずいって」

キョウは頬を少し染めた。


「キョウは勿論、私の後輩だからね」


ミコトちゃんが、ふんっと胸を張って言う。


「はいはーい、ばぶばぶセンパーイ」


キョウは、煽る様なジェスチャーで仕返しする。


「ムカムカー」


と言う、ミコトちゃんの顔は、とても嬉しそうだ。




「私も、全然OKだよー。めっちゃ可愛い子ばっかだし。みんな超優しそうじゃん。

是非、友達なりたいかな?後、陰謀ぶっ潰すみたいな、正義のノリ大好きだし。

呪いとか異形も、家柄関係で結構興味あるんだよねー、って事でよろしくね。なんかあったら言ってね、ほら私……」


そう言って、リョクは左目の眼帯をスルっと外して、みんなを見た。

その瞬間――

店内に異様な気配が充満する。

全照明がブインッと色を変え、店内の雰囲気をガラっと変える。

悪寒すら感じる、膨大な歪な気配。一人残らず鳥肌が立っている気がする。

場を自分のモノにするような、圧倒的な支配的エネルギー。

それら全ては、眼帯の下から現れた、真っ赤ガラス玉みたいな瞳から発せられている。


キョウ以外の全員が、唖然とする――


そして、すぐに眼帯を降ろし、ペロっと舌を出してリョクは言った。

「実は結構強かったりするんだー、たぶん足は引っ張んないよ?なんかあったらマジで協力するね?ふふっ 面白そうだし。私、ちょっとモラルはないけどご愛敬って事で許して。てへ」



幽明は苦笑いし、トドリとミレアは腰を抜かしそうだ。


「あっはーーー……これはまた、騒がしくなりそうだね。歓迎するよリョクちゃん」


「キョウ……この子何者?」

ミコトちゃんが、キョウを睨む。


「ダチー。呪われたダチ」


「……なにそれ。類は友を呼ぶって本当ね」





クオリアちゃんが立ち上がる――


「私はこのシェアプリズムに骨をうずめる覚悟です!(キラッ)」


みんながなんで!!!とずっこける。


「すごいやる気だね……なんで?」

幽明は、笑いながら聞く。


「それは……秘密です!」


秘密なのかよ!!!と再びずっこけるみんな。


クオリアちゃんは、持ち前のジト目で、やけに幽明をチラチラ見ている。


「でも、本気です!ちなみに、戦闘は得意な方です。主に魔術ですが」


「へー……魔法少女ちゃんは何ができるのかしら?」

ミコトちゃんが、ちょっと先輩マウントをとりながら言う。


「ミコト、見くびんなよ?これでもクオリアは、原初の炎や禁忌の魔術も扱えるんだぜ?」


「……ふーん」

ミコトちゃんは、まずまずねと言う顔をして、つまんなさそうにする。


「おっほー!原初の炎ですか!!?クオリアちゃん、ホントにホントなの!!?」


ミレアは珍しく、身を乗り出す。そう言えば、ミレアは大魔術師らしい。


「はい。原初の闇と光以外の基本的属性なら可能です。禁忌の魔術は幾つか。古いタイプですが」


「ぎょっへーーーん!!!正真正銘のバケモノさんじゃないのーーー!!!トドリィ、新人ちゃん達ヤバ過ぎますよ!!?」

ミレアは、自分で勝手に吹っ飛びそうに驚く。


「あぁ……うん。ストライキ起こされないようにしないとね。起きれば、私達は終わるから……へへ」

トドリも、疲れた店長みたく、鼻で笑う。




「ルリメアちゃん、原初の炎ってなんですか?」


響が、こっそり聞いてる。


「ガスボンベみたいなものよ」


うん、知らない私でも、それは違うと思う。


「はえーーー、それは怖いですね」


え?





「はーい、じゃあ、新メンバーの三人の加入が確定したところで、次の話行っていいかなー?細かい自己紹介は各々でしてね」


みんなは、幽明に向けて頷く。



「じゃあ、ちょっと私から前置きを……シスイ、気に触ったらごめんね。でも、重要な事なんだ……」


幽明は、私を真剣な表情で貫いた。探偵が証拠を探るみたいな目だ。


「ねぇ、シスイ。君は魔族組織に追われているんだよね?」


唐突なその質問に戸惑ったが、私は答えた。

幾人かは初耳なので驚いた顔をしている。


「あぁ、うん。実はね。能力が使えるようになって、異形霊媒を初めてた、ちょっと後ぐらいかな……?私が倒した異形の同胞から恨みを買っちゃって……自業自得なんだけどね」


みんなは、神妙な顔で聞いてる。

言い訳はしない、結局のところ、私は異形であれ、他の存在を傷つけて、その代償を負う羽目になっただけだ……

命を狙われたから必死だったのは本当だが。


「では、君は何故、魔族組織に追われていると思うんだ?」


「何故って……明らかに私を狙ったり、追ってくる異形が増えて来たから……かな?」


ふん、と頷き、幽明は続ける。


「では、質問の仕方を変えよう?君が魔族組織に追われてると初めて気づいたのはいつだ?そして一体何に追われてるんだ?組織全体か?組織なら当然、指揮する存在がいるよね?」


改めて質問されると、説明しづらいな。

私はヒノを見たが、ヒノは隣で意気消沈している。


「魔族組織に追われてるって知ったのは、ヒノと初めて出会った時かな?

私とヒノが、廃マンションの屋上で出会って、その時ヒノが、私が異形の鎌を手に入れた時に倒した紫の魔獣は、魔族組織の幹部だって教えてくれたから……

追っているのはたぶん魔王だと思う……ヒノと初めてのデートの時、ゲーセンで、ヒノにその魔族組織には魔王がいるって聞いたから……ヒノもその正体は知らないって言ってたけど」


……


「何故ヒノは、君の前に突然現れたり、紫の魔獣の異形が魔族組織の幹部だったり、その組織には魔王がいるって事まで知っていたんだと思う?」


幽明は容赦無く私に問い詰める。

まるで、私でも、ヒノでも無く、自分が悪者になって全てを皆の前で明かそうとする、自己犠牲の様な質問。

探偵らしからぬ優しい質問。



「それは、ヒノは賢いし、なんでも知ってるから……」



ごめん……


でも、そろそろ、それぐらいにして。


本当は、君が言う通り、もう分かってたんだよ。


分かってたんだけど、疑ってもいなかったんだよ。


ただ、今の関係をちょっとでも伸ばしたいの連続だったんだ。


きっと、幽明は、私が知っていながら、ヒノと一緒に居る事を選んでいると、もう理解してるんだろ?


白状しても、君達の関係は崩れないだろ?って言ってくれてるんだろ?


ヒノが隠し続ける気持ちにも、なってあげろって感じでね……


受け取ったよ、幽明。


ただ、私達は勇気が無かっただけなんだ。

目の前の眩しい愛に、少しも目を離す勇気が……


――



みんなも、何かを察知した様に、ヒノを見ている。

ヒノの今までの発言や、凄まじい能力、今の話の流れなら、答えは一つしかない。


ヒノは、ポロポロと涙を流している。


……


一人の優しき探偵が立ち、みんなが犯人を心配する。


自白を待つ、優しい沈黙。



そして――




「ダーリン……許して……」


「私が、あなたの命を狙う魔王なの」



――



私が、死ぬ程愛した瞳から、湧き水のように涙をたらたらと流し、

悲しみと言うより、今まで楽しかったよ……と言う、諦めの笑みを浮かべるヒノ。



……


「……そんな……しないで」


私は、涙が堪えきれなくなり、俯いた。。


「……え?」


ヒノが聞き返してきた。


「……そんな顔しないで」


「……」


ヒノは、私の声を聞き、唇を噛み締めながら、泣き声が出てしまうのを我慢している。彼女の頭にはきっと、今までの私達の愛しい想い出が、ぐるぐると古い映画のフィルムの様に、流れているんだろう……


……


私は心のままに叫んだ――



「そんな、お別れみたいな顔勝手にしないで!!!!!」



ヒノの瞳がハッと変わる――




「君が魔王かもしれないなんて、とっくの昔から思ってたよ!!!でもさぁ、

どう考えても私の味方じゃん!!!今までどんなけ二人で一緒に過ごして、どんなけ助け合ってきたんだよ!!!それを知ってる私には、どんな事実が出てきても、どうでもいいんだよ!!!今までの私達を信じてるんだよ!!!君の魔術がどんな危険でも、君に受け継がれてきた血がどんな恐ろしくても、私は君が悪者なんて1mmも思えないんだよ!!!でも、一つ、君が、私にそれを受け入れて貰えないだろうって、勝手に思って、勝手に別れを告げようとしてるのが、とても気に食わないんだよ!!!!!ずっと一緒に居てくれるっていったじゃないか馬鹿野郎!!!!!今更、君無しじゃ生きてけないんだよこの野郎!!!!!」




我に帰ると、私はみんなの前で立ち、大声で怒鳴り、思いの淵を全てぶちまけていた――




みんなは、私を見て、映画の名シーンでも見ているかのような表情をしている。


そんな観客席を傍らに、


ヒノは、スクリーン上のヒロインのように、私しか見えていないかのように飛びつき、フィルムが焼け切れる程に、思いの限り強く強く、私を抱き締めた。


全てがどうでもよく、今、あなただけを抱き締めたいと言う様に。


二人で、スクリーンからも、作品からも抜け出したいと言う様に。


そして、ヒノは私の耳元でこう言った。

「お願い。私をずっと離さないで」



――そのまま私達は、しばらく抱き締めあった。



……



「えっへん。とりあえず……よかったよかった。愛は素晴らしいね全く」


探偵幽明は、私達の物語を俯瞰して見る、他作品の映画監督のように締めくくった。

全く大した、探偵だ。



「ダメ!私、前が見えない」

ルリメアちゃんが涙を垂れ流す。


「よほほー!!!本物の愛だわ!ふわふわーするーのー」

ミレアは宙を見て恍惚に浸っている。


「私はこうなるって分かってましたよ!目の前でずっと惚気られてますからね!二人の愛は知っています」

響が言う。


「シスイちゃんみたいな彼氏欲しいなー」

怪丘さんは、自分の現実の恋に溜息をついた。


「真っすぐな気持ちってすごくいいよね!」

トドリは、うふふっと嬉しそうに笑う。


「へーーーかっけーじゃん。シスイ。お前、滅茶熱い奴じゃん」

キョウがやるじゃんと言う顔で見ている。


「愛の先輩です!シスイさん、ヒノさん。勉強させて下さい」

クオリアちゃんは、まじまじと私達を観察している。


「やっばーい!二人共、超尊いんですけどーーー!!!愛やばーい。恋したーい!」

リョクちゃんは、ずるずると泣いてる。


「いいな……」

ミコトちゃんは、ボソリと呟く。


「お二人の愛の炎を止める事は、何にも出来なそうですね。いつか混ぜて下さい、友達枠で良いですから ふふっ」

ノウコさんは、冗談めいたように可愛らしく言った。


私とヒノはみんなの、優しい言葉にお互いの額をくっつけながら、まつ毛を濡らし笑い合った。


――


数分後――



「うん、丁度良いタイミングだから、この先は私が手っ取り早く説明するよ。全く意味がわからなかったり、色々思う所があるだろうが、とりあえず、ざっくり雰囲気だけ読み取って、最後まで聞いてくれ」





幽明が、みんなに現状を解説し出した――



「ヒノは魔王だ。しかし、当然ながらシスイを狙ってなんかいない。

シスイを狙っているのは、ヒノのお兄さんの、フィジャナークと言う異界の王だ。

魔族組織全体では、シスイ単体に目をつけるというより、この世界全体を狙っているだろう。問題は、そのフィジャナーク王で、ヒノ曰くかなりの強敵らしい。ヒノが言うぐらいだから、まず尋常ではない理外の存在だろう」


「じゃーなんで、お兄ちゃんじゃなく、ヒノちゃんが魔王なの?」

リョクがハーイと、ギャルの様に手を上げて言った。


「そこなんだよ。何故その兄をおいて、ヒノが魔王なのかと言うと、実はヒノは二種類の禁断魔法が扱える。大規模な集団転移魔法と、ゾアリアと言う異界の女神の復活の卵の召喚だ」


その時、ミコトちゃんの目の色が変わった――


幽明は、ミコトちゃんをチラッと見て、落ち着けよと言う表情をしながら続ける。



「確かにヒノは数十日に一体、この世界に異形を召喚していた。

しかし、それは兄の強要であり、ヒノはそれに抗い、なるべく害の無い異形を転移させていた。フィジャナーク王自体も転移魔法が扱えるらしいので彼がそうしてた場合、もっとひどい事になっていたかもしれない。

ヒノがその役目を承っていた事で、恐らく、その事態が避けられた可能性がある。

それにヒノが転移させた異形の数は、この世界に存在する異形の極々わずかだ。

つまり、ヒノが異形の転移をしても、しなくても、あまり変わらないと言う話だ。

だが問題は、禁忌の魔術、大規模な集団転移魔法で、それは誰が見てもこの世界には厄介なシロモノだ。しかし、逆を言えば、それを扱えるヒノがこちら側にいると言う事は、とても幸いな事なんだ。送れると言う事は、返す事もできるし、行く事もできるのだから。それに際しては、きっと様々な条件があるのだろうけど……」



幽明は、アイスティーを一口含み続ける――



「もう一つは、異界の女神ゾアリアに関してだが……私自身、全容がまだまだ把握できていない。それに、この件を全て話してしまうと、君達までフィジャナーク王に狙われる可能性があるから飛ばさせてもらう。覚悟ができた人から個人的に聞いてくれ」


ルリメアちゃんは、耳を塞いで。響がそれを剝がそうとした。

何人かが、クスっと笑う。



「私からみんなに言えるのは、ヒノは完全に味方だという事だ。

何故なら、ヒノは自分の命を犠牲にして、そのフィジャナーク王や魔術組織の計画を止める気だったんだ、たった一人で自分の故郷を全て敵に回し、自分の故郷でも無いこの世界を守るために……」


みんなは、ヒノに尊敬の顔を向けた――


「さらに言えば、ヒノの禁忌の術で無くとも、この世界は他の異界に狙われる事案が多数存在している。むしろ、ヒノと言う強大な存在が私達にある事が、本当に幸いだろう。ここまで、言ったらなんとなく察して欲しい。私は今後も、ヒノと協力し、フィジャナーク王や他の異界の侵略を阻止して行きたいと思っている……以上だ。ご清聴ありがとう」


幽明は司令官のようにスパっと締めくくった。

それは、とても凛々しく、チラホラ拍手が上がる程に。


「よほほ!!!大賛成マルだよー。ヒノが敵の手に渡っちゃう事が、地球にとって一番アウト―!だからねっ!友達は多い方が良い!っのちゅー」

ミレアが、沈黙を切り裂くように言った。


「私も、ミレアと同じかな。守りたいのに、反対の事をしないといけない辛さ、わかるし」

トドリは、腕組みをしながら、理解を示す顔をしてる。


「私は、なんでもいいわ。ヒノちゃんが好き。それだけよ」

ルリメアちゃんは最初から決まってるわよ!と言う顔だ。


「私はヒノさんが、怪獣になっても、UFOに攫われそうになっても、決して手は離しませんよ?離してなんかあげません。だって、親友なんですから!後、魔王の親友は、ちょっとアガります!」

響はマイペースだが、とても深い愛をヒノに差し伸べている。


「よくわかんねーけど、シスコンっぽい兄貴をぶっ飛ばせばいいんだろ?簡単じゃねーか」

キョウがそんな難しい話か?と言う。


「女神ゾアリアは理外の強大な存在です。慎重に事を考える必要があります。

そのキーとなるヒノさんが、味方である事が、あらゆる選択肢を上回ります」


みんなは、驚きの表情でクオリアちゃんを見る。


「クオリアちゃん?なんでそんな事知ってるの?」

幽明が聞く。


「……異界の魔術書で読みましたから」


なんとなく、みんなは納得する。


「私はー、呪われた力扱いされる気持ち分かっちゃうなー、だから、ヒノちゃんの味方かな。それが、積もり積もると、その力を持った存在がどうなるかも知ってるし。ヒノちゃんは結構幸運だよ」

リョクは、軽い感じで言うが、言葉に重みがある。



「私は……政府の人間なんだけど……その前に、もうあなた達のお姉ちゃんになっちゃったから、ただ助けたいわ。これが母性って言うのかしらね」


すばるさんが、笑いを混ぜながら話す。あんなに、仕事一筋だったのに、私達を選んでくれたんだ……


「私は異界の侵略から、この国を守る事に、命を懸けてますが、最近では、異形を一括りになんて到底できないと理解しています。住む場所が違うだけで、私達と変わらない存在も間違いなくいますよね?それを、皆さんから学びました。

だから、これからは、その複雑な線引きを感情に任せようと思います。

ヒノちゃん、辛かったでしょ?私が貴方を守ります!

私自身、一度、ヒノちゃんに命を救われているのですから、それを返すのが道理です。異形、人、血、そんな事関係ありません」


驚いた。いつもはミコトちゃんの排他的意見が第一のノウコさんが、こうも我を出すなんて……


みんなの視線が、ミコトちゃんに集まる。


「……」


ミコトちゃんは黙っている。


そして……唐突に言い出した。


「私の奇跡の力や、それに眠る受け継がれてきた意思達が、どうしてもヒノを祓えって言うわ……」


みんなは、硬直する。


しかし……


「でも、私自身は、そうじゃない。私は、そうじゃない私でいたいの、私の意思で動きたいの」


ミコトちゃんは自分が分からないという苦悩の表情を浮かべている。


「ミコト、良いと思うぜ?お前はお前だ。家や血がなんて言おうとも、結局はお前に決める権利があるんだ。その判断が、何よりも正しい答えになる可能性だって全然あるんだぜ。自由に生きろ。元々ワガママな性格じゃねーか。思うが儘好きに生きてやれ、誰かが邪魔すんなら、俺がぶん殴ってやっから」

キョウが、ミコトちゃんに、同じ道を歩いた者としての言葉を放った。


「キョウちゃん……」

ノウコさんの目がとても潤んでいる。


「私の意思は……」


ミコトちゃんは、一呼吸置いて、自分の殻を割る様に言った。


「ヒノ。この国や、世界を守ろうとしてくれてありがとう……」


「……ううん。この世界がホントに好きだから当前よ……」

ヒノは、俯きながらも、確かな気持ちを吐いた。


「私と同じね……生まれた世界は違うけれど、私とあなたは同じ……

ヒノ……私、あなたを守るわ」


そう言った、ミコトちゃんの瞳は、どこか大人になったような、

以前の虚ろな感じが消えた様な気がした。


「ありがとう……ミコトちゃん」

ヒノは、溶けるような優しい瞳で、ミコトちゃんを見つめ返した。


みんなは、最後に私を見た――


「ずっと一緒にいるよヒノ……私はそれだけ。不器用なんだ許して。

それと、みんなとも、出来ればずっと友達でいたいな……

難しい未来の事とか価値観は、あんまり分からないだ。

私は、今この瞬間、既に、凄く幸せって事しか分からない。

それはもう、未来に、何も探さないで良いんじゃないか?って思うくらいに幸せなんだよ。ホントにただ、それだけなんだ。よくわからないよね、みんなごめん」


少し、かっこつけ過ぎたかな?

でも、これでいい。みんな笑ってるから。

ホントにこれでいい。

今が幸せだから。

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