決戦 第三幕 幽明 灯の視点
---------------幽明 灯 視点-----------
円環ミレアがギラギラと輝く真紅の鎖を、自己の周囲のあらゆる場所から出現させた。
「秘密結社さんのリーダーちゃんの実力拝見ですね!眼鏡っ子ちゃん、痛くはしないから安心してね」
円環ミレアは、うふふと柔らかな唇を尖らせて瞳を生き生きとさせている。
この子見た目は可愛らしいけど、戦闘大好きっ子だな……そんな感じがひしひしと伝わる。
「リーダーじゃないよ。あと、私は幽明 灯。眼鏡っ子やめて。コンタクトの時もあるんだからね」
私は、円環ミレアと自分の間に霊光を纏った半透明の巨大なお札を出現さした。
それはさながら、大きなモニターの様だ。まさに用途はそうなのだが。
「へー、リーダーじゃないんだー。一番そうっぽいのにー。じゃあ、私が仲間になったらリーダーになっていいかしら?」
円環ミレアは私の巨大なお札を警戒しながら、鎖をどう飛ばすか考えている様だ。
警戒もするはずだ。私は、そのお札のモニターに様々の妖怪の映像を高速で流しているのだから。不気味で極まり無い映像を。
「それは無理だね。君がリーダーならきっと色物チームになっちゃうからね。脱退者続出だ。意外と清楚な子が多いんだよウチは。それにリーダー候補は既にいるからね」
円環ミレアは私の言葉を半ば聞いていない。流れるお札の映像を見逃すまいとかなり警戒で状況を伺っている。魅入っているっと言っても過言では無い。
それもそのはず、ただの映像では無く、それぞれの映る妖魔の気配も彼女の五感にリアルで鮮明に届いているはずなのだから。
彼女のショッキングピンクの髪に入っている、オレンジのメッシュがそれに反応して逆立っているのがその証拠だ。
彼女のグルグル回る瞳の中の文様は、見づらいがよく見れば剣や杖の形になっている。
恐らく、本気の戦闘モードという事だろう。
「ひっどーい!私男の子とはキスした事だってないんだよ!?見た目で決めつけちゃダメ!女の子は派手な子程、経験が少なかったりするのよ?ちゃんと、その賢そうな頭に刻み込んでね!」
そう言って、円環ミレアは前のめりになった。
ほのかなピンク色のTシャツとミニスカート、可愛く揺れるフリル。
これだけ見れば、アイドルがダンスでも始めるのかと思える光景だ。
そろそろ来る気だな……
面倒だから先にいかせて貰おう。
「悪い悪い、恋愛には疎いモノでね。ちゃんと刻み込んどくよ。大人しい子程意外とやり手ってね……って事で出でよ!コピー鵺!」
ちょっと強引だったけど、手を抜いてる暇は無いからね。
結構強い感じがひしひしとするし。
次の瞬間、お札モニターから、半透明なエメラルドグリーンで数字の0と1の形をした小さな物体が大量に出現する。
それが集まって合体し、2メートル程の妖魔が現れた。
数字で出来た妖怪、鵺。
この妖魔は、以前シスイが合成召喚した鵺の映像を私が解析し、そのデジタルデータに、私の能力を掛け合わせて作った存在だ。つまりコピーのコピー。
私は、デジタルに能力を融合させるのが得意だ。
「よほほほーい!変わった能力ね!面白いわ、とても眼鏡っ子ちゃんぽくていい感じよ。それに、まがい物の癖にかなり強力な気配じゃないの!やるわね。
私も遠慮なくいっちゃおうかなーのっちゅっ♡」
円環ミレアは余裕しゃくしゃくで投げキッスをする。
ほんの少しだけど、イラつく。
発言のウザさだけなら大した事はないが、女子力までこう高いと、なんだか微妙に女としてのジェラシーみたいなモノが沸く。
「私が勝ったら、その呼び方マジでやめてよ?イラつくから」
「えぇ、勿論。勝ったらね。ふふっ」
頭は猿、胴は狸、足は虎、尾は蛇、そんな伝説上の妖怪鵺が現代で二進数になり顕現している。あまつさえ、私が操作している。
よく考えれば、変な状況だ。
しかしな……鵺ってどんな攻撃するんだ?ここは無策できてしまった。
大雑把な性格がここで災いした。
「じゃあ私の番ね!いくわよ!」
円環ミレアは盛大に空間から真紅の鎖を放出し、それを合体させ巨大でギラツク、カーマインレッドな蛇に変えた。
「さーて、どちらが強いでしょうかね?うふ」
円環ミレアの鎖の蛇は、小さな鎖の舌をピロピロと出して、私の鵺に近寄る。
鵺は蛇の周りを、王者の様にゆっくり、どしりどしりと歩く。
そして――
一瞬の出来事だった。
円環ミレアの鎖蛇がバクっと、鵺の首元に曲線美を描き、鋭い鎌の様に噛みつこうした。
しかし、鵺はバク中の様に背後に一回転しながら飛び跳ね、尾の蛇で、鎖蛇の喉元に嚙みついた。
ガシャン!!!大きな金属音が倉庫に響く。
だが……
その鎖の肉体は驚く程に強固で、牙は簡単に弾かれ、二進数の幾つかが宙に飛び散った。
「わおぉ!二体ともやるわね。これは見モノだわ」
そう言いながらも円環ミレアは、私本体を隙あらば狙っちゃうよと言う眼をしている。
「見世物小屋でも無さそうだね。いっその事、二人でショーの配信でもして儲けよっか?」
「いい案ね!取り分は8、2で良い?勿論、私が8よ?」
「そういう所がちょっとウザいんだって!いけ、鵺。なんかのブレス!」
すると、鵺は大きな口を開け、発光した細かい二進数を、鎖蛇に大量に吐いた。
それは、鎖蛇の内部にウイルスの様に染み込んでいく。
鎖蛇は、体をグネリグネリとよじって、ギシギシと金属音を不快に怒る叫びの様に鳴らしている。
「なんか陰湿なこうげきー……もっと迫力な対決しましょーよ?」
円環ミレアは退屈そうに、足元に転がる二進数を蹴っ飛ばす。
「生憎、私は派手なのは苦手でね。君と正反対なタイプだから」
「そっかなー?意外と似てるわよ、性悪なとことかね。ふふ」
ック――鋭いな、円環ミレア。
久しぶりに言われたわ。
「友達になれそうだね。君と話すときは気を遣わず罵れそうだから」
「それって、凄く重要な事よね。あなたと友達になるの楽しみ!」
恐らく、私の所見では、この鎖は魔力を無効化にする力がある。そして、物理的にも破壊不可能な強度だ。
だから、捕まらない様な形状か、透過できる物体の性質でなければならない。
さっきの内部に浸透した二進数は、自動的に効果属性に変わっているはずだ、私は事前にそうプログラムを組んだから。
そういう点では、ワクチンに近いのかもしれない。
足掻いている真紅の鎖蛇を尻目に、鵺は円環ミレアに一歩ずつ近づく。
「降参する時は、早めに言ってよね?」
「そうね。でも、まだまだ!次どうしょっかなー?そだ、じゃあこれはどう?」
円環ミレアは、鵺の左右の空間からさっきより遙に図太い鎖を出現させた。
それは、鵺の上下の体を同時にむしゃりと高速で搔っ攫う。
ざわめく二進数の塊を咥えたまま、二本の巨大な鎖は、一体目と同じように巨大な鎖蛇になった。
それと同時に、一体目の鎖蛇は足掻くのを辞めて、にょろっと起き上がり二体の蛇と合流した。
場には、三体の狂暴で荒々しい鎖蛇と、妖魔の残骸の大量に散らばった二進数がある。
「っち……」
私は、思わず舌打ちした。
「さて、どうする?あなたのペットはもういないし、今あなたには魔力も物理も効かない屈強な大蛇が三体も向かってるわよ?降参するなら今しかないんじゃない!?」
「そうだね……」
「あら、素直ね?辞める?私もそれは全然賛成よ!?」
「違う違う、円環ミレア、君が降参するんだよ?」
私は、大蛇を前に一歩も動かず、円環ミレアにそう告げた。
「はい?この状況で、どういう理論かなぁ?強がりはちょっとブサイクちゃんよ?素直になっちゃいなさい!」
円環ミレアは眉間に皺を寄せてむーっ理解できないと言うふくれっ面をしている。
私は表情一つ変えず呟く。
「浸食」
次の瞬間、全ての鎖蛇は踵を返し、円環ミレアの方に向かいだした。
残骸として散らばった二進数も、再度、鵺の形を形成し、再び彼女へと、王者の足取りで向かう。
「あれれー!みんなどうしたの!?裏切っちゃ駄目じゃない?まさか眼鏡っ子ちゃんと浮気してたのぉ!?しくしくしくー」
円環ミレアはピンクの髪を大きく振り乱して、大袈裟なポーズで悲劇のヒロインみたく嘘泣きをした。
「やっつけるより、味方にした方がいいよね。君の蛇カッコいいし」
私はニコッと円環ミレア笑った。
私の二進数は破壊では無く、相手と同期して増殖する事に長けている。
明らかに乗っ取れる相手であれば、結構便利な能力だ。
幸い、魔術と言うより高度な科学に近い攻撃だったから通用した。
「それはその通りね!私の蛇ちゃん褒めてくれてありがとう!んじゃっそろそろ返して貰うわね」
円環ミレアは、瞳をグルグル回し、ハートマークに変える。
「みーんなぁ!私の事大好きになーれっのちゅー!」
次の瞬間、鵺も蛇達も急に気分が変わったみたいに、私の方へ向かいだす。
やっぱり、魅了みたいな能力があったか……
「みんな私の方が可愛いって!うふふ。罪よねーカワイイって」
「ビッチが好きなんじゃないかなぁ?」
あっ言っちゃった。
「ふははははは!口わっる!でも、嫌いじゃ無いわ!だ・け・ど、お仕置きしちゃうんだからー!ほいっと」
円環ミレアは空間から細い鎖を出し、とうとう、私の体を拘束した。
「うぐ……」
縛り付けられる四肢、体に魔力が全然湧かない……
それでも、例の強靭な王獣達は私に容赦なく牙を見せて近づく。
私は獣達を睨みつけた。
獣達は私の銀色の瞳を見て、少し動揺する。
「意地っ張り!早く降参して。後戻り出来なくなっちゃうよ?」
円環ミレアの声が、少し焦り出す。
自分が押しているのに焦っている矛盾。本当にこの子は"いい子だ"……
仲間になるのは近いのかもしれない。
私が生きていればだが……
「それは出来ないよ」
私はさらりと言う。
「なんでなの?」
彼女は感情を見せ、ほんの少し怒る。
「私、性悪だから、自分が負けるとか受け入れられないんだ」
鎖にがんじがらめになりながらも笑って見せた。
「もぅ……困ったちゃん過ぎるぅー」
円環ミレアはどうしようもないわねっと少しため息をついて言う。
「もうやめよっか?他のみんなの戦い観戦しよ?今回はドローでいいから」
「やっぱりね……君は本当はすごく優しい子なんだね」
「……優しくなんかないわよ」
「いいや……優しいよ」
「……」
「でも、ごめん。……辞めないよ。ここで辞めたら問題は解決しないからね」
「はぁ……てーか!ホント強情!どうやって今から形勢逆転するのよ!?救いの王子様でも来ないと無理よ!?は・や・く降参して!あなたは人としては十分過ぎるほど強かったから!」
「王子様か……いるっちゃいるかも」
「はぁー?なにを……」
次の瞬間――
私の四肢に幾重にも繋がれた真紅の鎖は、ブチンッっと大きな音を立てて粉砕した。
円環ミレアは、その愛らしい瞳を驚愕一色に染め上げて私を見ている。
「どういうこと……」
だが彼女がそれを考える暇も無く、さらに予想外の出来事が起こる。
私達の間にいた王獣達は、突如頭上に現れた、巨大で透明な掌の様な何かに、いとも簡単にバチンと叩き潰されてしまったのだ……
円環ミレアは流石に息を呑んで、怯えた表情をしている。
私には見慣れた光景なんだが……
そして――
私と円環ミレアの間に、黒い空間が出現し、そこから何者かが出て来た。
「なに……?」
円環ミレアは生存本能を極限に引き上げて、戦闘態勢に入っている。
そこから出てきたのは……
背の低い白い少年。
グレーの柔らかな髪を肩までストンと落とし、その髪には星屑の様な斑文様が煌々と輝いている。
顔も体も真っ白で、その上に王族の様な気品ある礼装を身に着け、眩しい程の宝飾を贅沢に纏っている。
瞳は真っ白でホワイトオパールのよう。光の角度でたまに青白く光る。
それは、絵に描いた様な王子様。
性別を超えた美しさを持つ何か。
私はこの存在がなんなのかを知っている。
答えは単純。
私の使役する妖魔だ。
名はルオク――
最強の妖魔だ――
「あ……え……」
円環ミレアはさき程までの恐怖から一転して、
圧倒的な美の前で、まるでアイドルを前にした少女の様に、恥ずかしそうにどぎまぎする。
倉庫内は、他のみんなも戦闘を繰り広げている途中なのだが、一斉にちらっとこっちを見た。
特にノウコさん。
彼女は一瞬、食い入る様に猛烈に見ていた。ミコトちゃん曰く彼女は重度のオタクらしい。今の状況から考えると、きっとショタコンだろう……
口に出しては絶対言えないが。
全てが一旦止まる程の美。
こうなるから、私はなるべく姿を見せるなと、ルオクに言っているのだ。
それはさておき、出てきてしまったものはしょうがない。実際、それで私は窮地を救われたのだから。
勝手にさせてやろう。
ルオクは、くるみ割り人形の花のワルツを鼻歌で歌いながら、姿勢を正し、何も無い空間をエスコートして、ワルツ調のダンスをこの味気ない倉庫でくるくると繰り広げている。
「マイペースなやつだ……」
円環ミレアはそれに、ふわぁっと見惚れてしまっている。まるでさっきまでの戦闘なんて全く無かったかの様に……
次第に、ルオクは円環ミレアに近付く。
「ルンタッタルンタッタ……」
眼を閉じ、微笑みながら、円環ミレアの手を取った。
彼女は、一瞬手を放そうとするが、ルオクが彼女を大胆に抱き寄せる。
びっくりして目を見開く円環ミレア。
そして彼女は、つまづきながらも、ルオクの優しいエスコートを受けて、一緒にワルツを踊り出す。
……
段々と円環ミレアは緊迫した表情が無くなっていく。
少し恥じらいながらも笑みを零している。
その顔はただの一人の女の子だった。
そして二人は、まるでこの世界に自分達だけしかいないみたいに楽しそうに踊る。
しかも、私の周囲を……
「……なんだこれ」
そして、ルオクは円環ミレアを丁寧に強く抱え、盛大にターンを決めた。
フィナーレみたく、美しい曲線でのけ反る、円環ミレア。
何も無い空間から拍手喝采が聞こえる。
ルオクは、自分より背が高い彼女を胸に引き戻す。
円環ミレアは、虹彩を揺らし茫然とルオクを見る。
……
そして、ルオクが一言。
「おいたはダメですよ?かわいいお嬢さん」
そして、あろう事か、背伸びをし円環ミレアの唇にそっと口づけをした……
「ちょっ……おまっ!」
私は止めるには一歩遅かった。
円環ミレアは雷が落ちた様な表情になってカチカチに固まっている。
それを見たルオクは、ふふっと笑い、私に振り返ってウインクをし、スッと消えた。
――
今の誰も見て無いよな……?
私は周囲をキョロキョロ見渡す。
幸い、大丈夫なようだ。
各々激しい戦闘をしているから当たり前か。
ちょっと目に入ったけど、シスイやっぱやばいな。あれは最強だ。マジで最強。
てか、ミコトちゃんの所に知らない女の子いるんだけど。しかも不良少女みたい……てか、木材武器にしてるじゃん。どういう状況だよ……
まぁいいや……任せよう。
私はこっちをどうにかしないと……
私は円環ミレアに視線を戻す。
「あのぉ……大丈夫?」
私は、恐る恐る円環ミレアに尋ねた。
円環ミレアは放心状態で、ピンクの瞳がうるうるしている。
あぁ、これは重症だ。この目なんか見た事ある……
私の声に遅れて気づき、やっと我に帰る。
「ふっ!ふっ!ふっ!ふざけないで!!!!!初キッスだったのよ!!!」
円環ミレアは真っ赤な顔で、沸騰したみたいに私に叫ぶ。
えぇー……激怒ポイントそこー……
激怒と言うより、激照れを誤魔化しているな。
「でも……私のせいじゃ……」
少し無責任かな……?
「あ・な・たの妖魔でしょ!!!」
「はい、そうでした。すみません」
素直に謝ろう。
「絶対許さないんだから!!!あの子の名前教えて!!!」
え?名前?なんで?
「あぁ……うん。ルオクだよ」
「ルオク君……ルオク!!!絶対また会って直接謝らせるんだからね!!!」
「許して。もう二度と出てくんなってきつく言っとくから。ホントごめんね。せっかくの初キッス妖魔に奪われるってきついよね……」
そりゃ、私だって女心わかるよ。あのバカ、マジでクビだな。
「いいえ!!!直接会って言うんだから!!!それに、愛とかキッスに妖魔も何も関係ない!!!心が通えば関係無いわ!!!」
いや、全然分かってなかった。
これ、ガチ恋のやつじゃん。
一応聞こう。
不明な事がほっとけない性分だからな、仕方ない。
「ねぇ……絶対怒らないでね?」
「何よ!?」
円環ミレアの興奮はまだ収まらない。プンスカプンスカ怒っている。
「ガチ恋……しちゃったりしてないよね?まさかね、あり得ないよね。はは、ごめん。妖魔には無いよね。妄想乙だよねー。ごめーんただのきょうみほんいー」
「……」
円環ミレアは泣きそうな顔で下を向き、頬を赤くして黙り込む。
そして、細い指先を唇に当てる……
あっ……これ恋だ。
ガチ恋とか茶化すレベルでは無く、本気の恋だ。
「カウント」
「え?」
すると円環ミレアは照れた表情の名残を残したまま、唇を噛み締め私を睨んだ。
グルグル瞳が回り、数字の10が浮かぶ。
「あー、まさかこんな形で君が必殺を使うとは予想できなかったよ」
私は頭を抱えて言う。
円環ミレアの瞳は、ゆっくり変わり9になる。
この必殺は、動画で見た。ヴァンパイア少女ルリメアの魔術無効化攻撃すらも
無効化にした謎の技だ。
一切私の体は動かない。
魔術や使役を使おうにも、彼女の番が終わらないとそれは許されないと言わんばかりのターン制に入ったみたいだ……
「私の女心もてあそんで」
8だ。
「絶対に許さないんだから……」
7。
「責任とってもらうからね!」
6。
クソ……声もほぼ出ない。
5。
彼女は私にどんどんにじり寄る。
4。
「でも……私にはトドリがいるし……」
3
妄想が膨らんでるな、この子。
いや、そんな事考えている場合じゃない。
「禁断の恋……あーんもう!」
2
完全な乙女モードじゃん。
いよいよ、手に彼女が届く範囲だ。
円環ミレアは、真っ直ぐ私を見ている。
可愛らしい咎の無い花の匂いがする……
「じゃあ、これでおあいこね」
円環ミレアは私の顔に唇をそっと近づけようとする。
触れられたイコール負けだ……
そして嫌だ、ルオクと間接キッスは絶対嫌だ。
この子となら……その……全然ありだけど。
あー葛藤する!!!
って!!!そんな事言っている場合か私!!!
1。
そして――
円環ミレアは私の唇寸前で固まる。
「ん……これは……」
「ごめんね。私の勝ちだ」
私は、にたりと彼女に微笑む。
「どういう事?」
「最初さー、君は私のお札の映像、すごく見てたでしょ?」
「ええ、あの不気味なやつね」
「あれにはね、実は私オリジナルの強力なサブリミナルを仕込んでおいたんだ。
君が動画で配信してた、カウント能力はかなり厄介だと思ってたからね。その能力が発動したら、私の任意の時に自己に向ける様なプログラムでね」
「……そっか」
「うん。ちなみに君が動画配信でサブリミナルを利用していた所から着想を得たよ」
「盗んでばっかね」
呆れた様に幽かに笑う、円環ミレア。
「ごめんねホント……」
「いいわ。別に」
そして私は、動く事の出来ない、円環ミレアの頭をそっと撫でて言った。
「私の勝ちだね。君と戦えて良かったよ。これからは出会えて良かったって言っていきたいけど」
「完敗だわ……あーあ、なんか変な感じ」
円環ミレアはふふっと鼻で笑って、私を見た。
そして空間から声が聞こえる。
「今度は三人で踊りしょうか?ミレアさん?アカリサマ?」
ルオクだ。
「お断りだよ。変態」
私は呆れた声で言い放つ。
「さっさっさっ、誘うなら、どっちかを選んで誘ってよねっ!ふんっだ!」
円環ミレアはそう言って、再び顔を真っ赤にして、首を横に振った。
決して動くはずが無い体が、何故動いたんだろう?と、私は不思議で不思議で仕方が無かった。
とにもかくにも、この戦いは終わったのだ。
他のみんなも上手くやってくれているといいが……




