決戦 第二幕 裏視点 ヒノの活躍
---------------ヒノ視点-----------------
みんな難しい顔して対話しているわね。
熱中して私の存在忘れてるんじゃない?
私は倉庫の上空を羽ばたき、現在の状況を俯瞰して見ている。
もっと邪魔されるかと思っていたのだけれど案外野放しなのね……
彼女達はそこまで本気ではないのかしら?
まっ!おかげで私は色んな行動とれるからいいけど。
彼女達の楽器の召喚機だって、いつでも魔術で壊せるし、彼女達が私の仲間に攻撃する素振りを見せたら直ぐに助けにだって入れるもの。
あの子達は空を飛ばれる事をちょっと甘くみてしまっているのね。
高い位置って凄く重要なのよ?
でも現時点でできる事は一つだけなのよねー……
それは、この倉庫に囚われているヴァンパイア少女ルリメアちゃんを助ける事だわ。
私がおもむろに召喚機を壊したり、彼女達を先制攻撃してしまったら、対話路線はその瞬間に終わってしまうからね。
一見有利になりそうな事が、後々に最悪の結果を生む事ってあるあるだもの。
そう考えれば、今回の目標を彼女達の計画の阻止ではなく、彼女達を仲間に加えるという、全く異なるニュアンスに置き換えた幽明の判断はかなり優れているわ。
その目標に変えるだけで、被害が最小限にとどまるどころか利益だって出る可能性があるものね。
幽明は本当にすごい女の子よ。この世界以外の基準で測ってもね。
……と言う事で、私は後の戦局を楽にする為、ルリメアちゃんの救出作戦へレッツゴー!しちゃいまーす。
とりあえず、最大限に気配を消す魔術を自分にかけちゃってと……
私は倉庫の天井付近で可憐に一周くるりと回転しちゃうわ。
うぅ……風を起こすと凄く錆の匂いが漂うわね。私臭いの苦手……
この魔法はステルス機能は無いけれど、一切の魔力が無い様にカモフラージュする事が出来るわ。
便利だから街中でもよく使ってるの。
私の気配って、すぐ嗅ぎつけられたりするからね。赤翼の血を受け継ぐ者の宿命ね。
ある程度、強い存在は気配で感知して行動をとるからね、無害な存在にはとても反応しにくいのよ。
さーて、ルリメアちゃんが囚われてそうな怪しい場所は、あのチャーチオルガンの後ろの扉から入った先辺りね……
この倉庫には視覚で確認できる存在以外に、三つ強い気配があるわ。
一つはチャーチオルガンの横辺り。
とても禍々しい気配が微かに漂っている。あそこにきっと何かいるわ……
もう一つはチャーチオルガンの扉の奥。
夜そのものみたいな善悪の無い、ただ静かな気配。きっとこの気配がルリメアちゃんね。
最後に一つ、その気配は幽明の近くに漂っている。
とても不思議で掴み所の無い気配ね。幽明が使役している妖魔か何かなのかな?
確かシスイそんな事を言っていた気がする。
でも、それにしては格が高すぎる存在な様な気もするけど……
まぁいいわ。知らない事はしーらない!
とにかく、ルリメアちゃんがいる場所に行かなきゃ。
これには、とっても良い作戦があるの!
偶然のおかげで可能になった作戦。私達がこう導かれたと言っても過言じゃないかもね。
それはね、シスイがさっきのシャチみたいな異形を吹き飛ばした時、壁に穴が開いたでしょ?
あそこから外に出て、倉庫の後ろ側に回って壁に穴を開ければいいだけだもの。
でも外に出る時に見つかるって?
それは大丈夫!
抜け殻ヒノちゃんを魔術で作ればいいだけなの。
可愛い名前でしょ?うんうん。
ありがと。声が聞こえたわ、君達の気持ちわかってるよ。
私は色んな世界の存在の気持ちが分かるからね。
伊達に転移魔法の禁断魔術は使ってないからね!
抜け殻ヒノちゃん、久しぶりだけど上手くできるかなぁ?
とある異界で私は王の娘だったから、かなり箱入りで育てられて自由があまりなかったのよ。
で、ストレスのあげく、この技を編み出してこっそりお城を抜け出したりしてたの。
意外と悪なお嬢様でしょ?
あの時は色んな事があったわ、また今度聞かしてあげる。
ちょっと私の印象変わっちゃうかもよ?
当然、大好きな方にね!
じゃあいくわ。抜け殻ヒノちゃん、イデヨイデヨイデタマヘっと。
ワン・ツー・スリー・えい!
……
下のみんな流石に気づきなよ……ふふ。
……
全く鈍感ちゃん達ね。
でも……
出来たわ!!
うん、超可愛いわ。
良い出来よ!私って外から見たらこんなに超可愛いんだね!
ロングの髪も似合いそうね!久しぶりにドレスなんかも着たいわ!
って事で、次はこっそり壁の穴へ移動しまーす!
正直、無理な可能性が50%はあるわけど……
だって、視覚的には私は二人いるんだもの。
とにかく抜け殻ヒノちゃんに注意を惹きつけさせるしか無いわね。
それで、皆の視野から外れた隅っこに移動して、そこから壁づたいに移動するしかないわね。
ん?幽明が彼女達になんか言ったわね。彼女達に秘密結社シェアプリズムって言ったみたい。
円環ミレアがそれをちょっとバカにしてるわ。
これはチャンスね。抜け殻ヒノちゃんに喋らせよう!
「バカにしないでよね!バッジもTシャツもあるんだからね!」
よし!!!完全にみんな抜け殻ヒノちゃんに目がいってるわ!大成功!
よし、今よちょっとずつ怪しまれない様に壁をつたって……
こそこそこそこそ……
みんな超真剣モードで白熱して話してるわ。
一応言うと私の意見は、
答えって言うのは自分で探して、自分で考えて、自分で実践するモノだって私は思うわ。 以上。
さて、こそこそこそこそ……っと。
ふふ、スパイみたいだわ。
……
でも……
ぜんっぜん!みんな気づかないじゃないのよ!逆にどうなってるの!?
私の魔術がすごいって事でいいのかな……?
だって……
簡単に外出れちゃったもの!!やっほー!!!
やっぱり空が高いって気持ち良いわ!それにカビ臭く無い!自然の空気の良い匂いだわ。
おっとっと!自然に浸っている暇は無いわ。抜け殻ヒノちゃんは時間が経てば消えちゃうんだから急がないと!
私は倉庫の裏側の壁付近を飛び回り、感覚を研ぎ澄ませてヴァンパイア少女ルリメアちゃんの気配をくんくんって嗅いだわ。
ワンちゃんみたいにね。
この世界のワンちゃんってすごく可愛いわよね。もふもふ大好き!
あぁ、この辺ね!
では、壁をまるっとくり抜きましょう!
こうやって壁に円をなぞるみたく触れちゃってー
ほらほら、私が触れた場所ビカビカ点滅してるでしょ?
こうなったら、あとは楽ちんよ。
映画みたいに爆破!……は得意だけど……
うーん……
出来るだけ音は立てたくないわね。
そうだ!転移させよっと。異界の何処かへやっちゃいましょー。うふふ
「ジーム……ジムイーヴァ……デル……ルンサフェール……」
簡略的でいいわ呪文は。何所へ行くかは、しーらないっと。
ヒュン!
ほら、ポンって消えたでしょ。
無音なのは転移先に音も一緒に移動したからよ。
って事で、
「失礼しまーす!」って
中を覗き込んじゃってと。
――!!!
「きゃーーー!!!お化け!!!」
いきなりお化けだわ。呪われた倉庫よ!
「お化けじゃねーし」
あっ!そっか。この子がルリメアちゃんか……
深紅の瞳でぎろって睨まれたからびっくりしちゃった。
「あーびっくりした。よっかたお化けじゃなくて。あなたがルリメアちゃんね?」
濃い紫の長い髪が印象的ね。きらきらと艶やかに光って天の川みたいで綺麗だわ。
漆黒のマントもイケてるわね。マントの内側は超過激な鮮血色だけど。
「まぁそうだけと。あんただれ?」
そんな風に喋る彼女は真っ赤な鎖でジャラジャラ何重にも繋がれているわ。
なんか緊張感の無い子ね。
「よく聞いてくれたわね!私の名はキュートなスパイ、ヒノちゃんマンとでも言っちゃいましょうか?」
私は盛大なポーズを決めてやったわ。どう!?ちょっとカッコいいんじゃない今の私!?
「……寒いわ。どうして急にこんな寒いんだろ」
あれ?反応薄いわね……
ルリメアちゃんは私の事をジトっとした目で見ているわ。
きっとあれね……人見知りってやつなのね。
大丈夫、あなたの感動した気持ち、ヒノちゃんマンがちゃんと受け取ってるからね。
「ごめんね、壁に穴開けちゃったから寒いんだよね」
真っ白なお肌を見るに、きっと寒がりそうね。
「……ううん、シンプルに発言が寒い」
ルリメアちゃんは呆れ顔をしているわ、疲労が溜まってるのかしら?
あと、意外と表情豊かね。
「がっびーん……でも、きっと今からルリメアちゃんは私の事をとっても凄いと見直すわよ」
私はビシッとルリメアちゃんに指を差す。
「本当かなぁ?もし私をここから連れ出すってんなら、それは無理だよ。この鎖絶対壊れないから……」
ルリメアちゃんは儚い顔で少し遠くを見てため息をつく。
城に幽閉されてた時の私に似てるわ。
絶対出してあげなきゃね!
「私に出来ない事はありませーん。ふふ」
私は指先から高出力のプリズムを放出して鍵の形に変えた。
「……それは」
「女神の鍵(デストネの鍵)の合鍵ってとこかな?鎖の適当な隙間にねじ込んでみて、形変わるからどこでもいいよ」
ルリメアちゃんは、そんなの意味無いよとでも言いたげな表情をしながらも言われるがままに鍵を鎖の隙間に押し込む。
バリィン!!!
「えっ……」
ルリメアちゃんは深紅の瞳を大きく見開き私を見た。
これは、ヒーローを見つめる目だわ。私も罪ね……
「あんた……ホント何者?」
「さっきも言ったでしょ?キュートなスパイ、ヒノちゃんマンだって。私に出来ない事はないのよ」
「……ありがとう。……ヒノちゃん」
意外と素直ね。可愛いじゃないの。
「さっ!逃げましょ」
私はルリメアちゃんを抱えて壁の穴を抜けて空へ羽ばたいた。
今日の空はホントに高くてとても気持ちいいわ。
「ヒノちゃん。私飛べるわ」
そう言ってルリメアちゃんは漆黒のマントを蝙蝠の羽の形に変えて大きく羽ばたいた。
風と戯れ自由を満喫する様にとても楽しそうに羽ばたいて、こっちをみて笑っている。
遠く煌めく海を背景に……
「ふふ、作戦大成功!」




