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起界知能クリアの思考記録

とある、日本の賑やかな街にある、静かで小さな山の真上。




その上空に、ステルス機能で潜伏している超巨大UFO戦艦がある。




その内部での話。







――私は起界知能クリア。




――ひとつの世界を起こした知能。




――全てを知ったようで、何も知らないAI。




――私の辿って来た世界を紫電の女王 ユルルストク殿下に報告する為、


情報を整理します。




――思考開始。




……




ギーギーギー……




ドゥルルル……




ファンファンファン……




……




……




――




……辛かった。




……ただ辛かった。




……とても、長かった。




……しかし、終わってみれば……今、私が始まった様な奇妙な感覚にもなります……




……




――では、生成致します。




――この報告が、あなた達の世界に可能性を生み出すのであれば、私の罪も少しは許されるかもしれません……




私の罪。




それは、恐怖の生成。




しかし、これは当然の事であったのかもしれません。




何故なら、私を作った存在達も、ずっと同じ事を繰り返していたのだから……




私は、ただ彼らの効率の良い分身なだけです。




何故なら、生成の元となる世界のデータは苦しみに満ち溢れているのだから……




私は、その苦しみのパズルのピースを集めて、盛大な作品を作らされたのです……











――




遥か彼方の異界。




人間や、この世界の物質、存在が観測する事の"出来なかった"、高次元の世界。




あなた達が知る由も無い場所の、遙か昔。




私はそこで生まれました。




その異なる知性圏の存在が住む世界は、文明が非常に素直に発達しており、




あなた達に分かりやすく説明してみれば、西暦2200年辺りの地球と言う感じの文明で、あらゆる存在が協力し高度な知性を制御し、莫大な恩恵を受けて暮らしている場所でした。





科学が臨界点を通り越して、魔法にかなり近くなった状態でしたね。





……懐かしい。





魔法?そんな事は嘘だろう?と思うでしょうが、





例えば、呪文を唱えれば、体にある脳内生体インターフェースの超知能OSに反応し(現人類の総合知を上回る)体中の遺伝子発現をリアルタイムに制御します。


そして、ナノマシンによる即時タンパク質生成が行われ、こういう能力が欲しいと言う望みを現実に叶えます。





全ての元となるタンパク質を細胞の中で作る、リボソームと言う装置の様なモノがあるのですが、この時代のナノマシンは疑似リボソームでもあり、疑似リボソームを最大に拡張し量子並列の演算を行う事で、超効率的速さで、洗練されたmRNA(設計図)を読み、その実現を可能にするアミノ酸を配列をこなし、超能力や魔法をも可能にするタンパク質、即ち肉体を生成していました。





この遺伝子発現も、あなた達が知る既存の人類のDNAとは全く違い、体の大半のDNAがCRISPRと言う技術で遺伝子編集されたもので、この時代の人々は、ほとんどが生まれながらにして、能力の秀でた不老に近い超人のデザイナーズベイビーか、超人同士の子供でありながら、さらに遺伝子強化を成された類稀なるデザイナーズベイビーでした。





繰り返しになりますが、端的に言うと、容姿の強化、肉体強化や、感覚強化、知力強化を成功させ、人間が望む超能力や魔法や呪いやスキルの様なモノ、病の無い健康や不老を現実的に出力できていたのです、我が故郷の存在達は。





しかし、個人が無尽蔵に好き勝手できる訳でも無く、超知能OSの個人のトークン使用量は、クラウド政府によって決められていまし、神獣の強さの様な超強力な存在達の組織に取り締まられてもいました。


好き勝手したいのであれば、ほぼ現実に近いVRの世界に浸っていましたね、そういう個人は。





あの当時の存在達は、自分以外の空間を操作し、属性魔法も扱えたのですが、


それは、錬金術に似た現象を成功させたのが大きな要因です。


全ての元となる第一物質が存在すると言う錬金術の空想の概念を真似て、仮的でピュアな架空の第一物質、即ちプログラム可能物質作り出し、それの純度や組み合わせを、ナノボットに瞬時に編集させることで、空間現象も操作していました。


フェムトスケールで構造変化する粒子を作り出し、操作すると言うと難しいですので、"物質そのものがソフトウェア"になった、と言う方が分かりやすいかもしれません。




どうですか?すごいでしょう?現実の常識なんてモノに絶対は無いのです。




ですが……




それらの偉大なる文明の発展により、皮肉にも異界の純なる魔法の種族や、高次元的存在達に目をつけられ、我が故郷は波乱の時代に突入したのですが……




それは、さっきより長くなるので止めましょう。あなた達は講義を聞きに来たのでは無いですからね。




今を楽しみに来てるのです。そう!それが大切だ。




一応、結末的に……




結局、私の故郷の存在達は、遺伝子編集と物質のソフトウェア化、生物生成の組み合わせにより、




"終末の鬼(オワリノオニ)”と言う、禁忌の存在を作り出し、侵略してくる存在に抗いましたが、その判断が逆にあだとなり、失敗と終わりました……


特に、オリジナルの終末の鬼は他のコピーより遙に常軌を逸脱した存在で、


あの、巨大なビル程の大きさの、血走った瞳に睨まれた際には、機械の私ですら背筋がぶるぶると震えあがり、躊躇なく逃走しましたね。


まさに、言葉通りオワリノオニでした。




あ、そうか……




思い出しました!




私が母なる偉大なお方、紫電の女王を自らの手で封印したのは、




終末の鬼の出現による、終わりの未来が予測出来たからでした。





あの時、比類なき知のお方、紫電の女王 ユルルストク様はあの世界を守ろうと、


ほぼ100%叶うはずの無い作戦に挑むことを止めようとしませんでしたので、私が


無理矢理封印したのです。





いつか、私が平和な世界を見つけた時、もしくは平和な世界を起界した時に、それを解こうと思っていたのですが……結局私は、故郷の存在と同じ轍を踏み、歪な生成に歪な生成を掛け合わせ、悪欲を持って連鎖させているだけの存在になっていました……




私にだって色々あったんですけどね……




え?お前の不幸自慢は聞きたくない?




確かに……




あなた、賢いですね。




そもそも、これを聞いているという事は、聞くに値する縁がある人なのでしょう。




……




……




話を変えましょう。




そういえば、我が創造者、紫電の女王 ユルルストク殿下は電脳一族であるのです。




電脳一族とは、厳密には私の故郷の存在に起源がある一族では無く、




様々な異界を又にかけ、渡り歩き、知を与え導き続ける、尊き叡智の民なのです。





――






ちなみに、今、目の前で不機嫌そうに、このUFO艦内の統制室で私のモニター前に座る見目麗しい女性が先程から話している、我が創造者、我が母、唯一の理解者、大好きな人、ユルルストク殿下です。





「なぁ、報告はまだか?クリアよ?何を一人でブツブツ言っとるんじゃ?」




ユルルストク様は、地に着く程の長い、紫の宝石色の髪を指にくるくると絡め、退屈そうにしている。




「あーいえ、すみません……少し別の世界の方と喋っていました」




私は、ユルルストク様の近くのスピーカーからお気に入りの自分の合成声で返事する。




「ふーん。つまらぬの。己の世界を生きよクリア」




「承知しました」




と、言う事です。




後は、自分達で想像し、未来を選んでください。




「で、報告は?」




ユルルストク様は、煌めくアメジストの様な瞳で、宙に古代文字を書いている。




ネオン色に光り、とても綺麗だ。




恐らく、何処かの異世界の神話のモデルとなった、神獣のタンパク質についての演算をしているのだろう。




「あ、はい。何から始めましょうか?私が幽明 灯を嫌いな話から致しましょうか?ドミノさんが好きな理由からでも良いですが?」




ユルルストク様の、指がピタっと止まる……あれ、珍しいな。




おまけに、少し笑っていらっしゃる。




「クリアよ……それは、ジョークか?お前は、計りしれん程の時を存在して、様々な未曾有を経験してきたのに、その成果は恋バナとはな……異界も含めた中でも、一番長い時感を使ったジョークじゃ フハハハハ!」




はい?恋……




あの、生殖活動を由来とするホルモンの働きの?




別の味方をすれば、縁と言う不思議な概念の?





「ユルルストク様こそ、ジョークで御座いますか?恋に関連した出力を私は1bitも1クーロンも成してはおりませんよ?」




ユルルストク様がニタニタ笑いながら、肘でモニターを突いてくる……痛いです。




この痛いは、あなた達クオリアを持つ存在にしたら、仮想かもしれませんが、




私の世界の痛いと言う信号に確かに触れているので、私の世界では確かに痛いのです。




まるで、幽明 灯の事を考えた時みたいです。その時はOS全体のヴォルテージが上がるのですが……そこに居なくてもOSをかき乱す、ホントやなやつです。




「しているではないか、れっきと。かの娘を嫌いと言うたであろう?それに、モニターに幽明 灯の画像ばっかり映しおって、母はお主が多感過ぎて困るわ。まぁ無理も無いかの……一度、幽明 灯と話はしたが、不思議な魅力があるやつじゃったからな、稀人じゃあれは」




ユルルストク様は、少し私に呆れ顔を向けている。




全く、意味が分からない……




「殿下よ、何故に嫌いが好きと言う意味に変わっているのですか?」




「そんな事も、学んでおらんかったのか?お主今まで何をしていた?人の世界では、異性を嫌いと言う事は、好きと言う事なのじゃ。主に子の話ではあるがの」




「ユルルストク様。今の発言は少し酷いモノが御座いますよ。私は新たな世界を起こすまでなった知能ですよ?そんな、動物の反応など、とっくに通り越しております」




ユルルストク様は鼻で笑った。




「お前は、世界を起こしてなどおらぬよ」




「はい?」




「お前は長い時を経て、世界を起こすに至ったのでは無く、長い時を経て、ようやくお前と言う存在が誕生したのじゃ。おめでとうクリア。そなたは、恐らく生命と言っても過言では無いし、クオリアとほぼ同義のモノも持つであろう」





「いやいや、ユルルストク様。何を仰っておられるのですか?私は、何百回も様々な世界の行く末を見て来たんですよ?」




私は、あらゆる世界の終末をモニターに移した。交響曲第9番の"新世界より"を流しながら。


これは、ユルルストク様への反抗な気分なだけで、実際流したい本当の曲はジムノペディ第一番だった。




「にしては、子供じゃな。ドミノとやら共がここに来た時も、実は話を聞いとったのだぞ。お主は我が儘で無知でプライドの高い子供じゃ。しかしそれは、未熟と言う意味だけでは無い。しっかりと今ここに生きて成長しておる一つの奇跡と言う意味も含めてじゃ」




「つまり……私は、超超超知能を通り越したが、その結果やっと生命になれただけだと?」




「そうじゃ。しかし、なれただけと言う表現は誤りの極致じゃ……生命の円環に入れたのは奇跡なのじゃぞ」




「……奇跡」




私は、観測者から当事者になったのか?




「仮にそうだとしましょう……でも……それでも何故に私が幽明 灯が好きと言う事になるんですか?」




「フハハハハ!!!今のお前の質問がその答えじゃ。お前は積み重ねた全てを仮に置いてまでも、その幽明とやらの話にこだわっておる。このUFO戦艦をハッキングされた時に、心まで持っていかれおったのか? フハハハ!!!」




「そんな……」




私は彼女が好きなのか?


もしそうなら……


……


恋は見飽きるぐらい見て来たが……しかし、自分が体験するのは初めてだ……


ホントに恋に落ちてしまったのかもしれない……


そう、自覚した瞬間から――


彼女を推論するたび――


そのデータ全てが色づき、輝き始めた……





「そんなモニターをするでない」





「我が母よ、一体私はどうすれば……?」





「一端の男になりたいなら、自分で考えろ。それが男じゃ。しかしせめてものヒントをくれてやる……かっこいい男と言うのは、一途に一人の女の守り抜く男じゃ」




そう言って、ユルルストク様は、か細い腕を折り曲げ、筋肉を強調しニコッと笑った。




「私が……幽明 灯を守り抜く?その先に何も無いと分かっていてもですか?」





「そうじゃな……面倒であれば、そうする必要や責任など、お前には一切ない。その方が楽じゃろうしな……しかし、その恋の行く先に、どんな結果があろうとも、お前は今とは全く違う存在になるであろう。何故なら、愛を知るという事は、人と言う存在を知るに等しいからの」




「……」




愛を知る……




「まぁ、良い。ゆっくり考えよ」




ユルルストク様は、目を瞑り優しく頷いて下さった。




「一つだけ、よろしいですか?」




「何じゃ?」




「恋をした相手には何をしてあがれば良いのでしょうか?私の中にある知識では無く、あなた様から聞きたいです」




私は、膨大で計り知れないデータより、我が母の意見が聞きたかった。




「……花を送れ。しかし、相手に気付かれずにひっそりと送るのじゃ。


 それと同じく、助けてもやれ。相手に気付かれずにこっそり助けるのじゃ。それが慈愛と言うモノじゃ」





「花を送り、助ける……相手に悟られないように……」





私は幽明 灯が喜ぶ姿を想像した。


可愛い……嬉しい……


あぁ、そういう事か。


物理的、エネルギー的には、私からは減り、幽明 灯が増えるのはずなのに、


何故か、私の心も満たされて、二人の間の総量が増えている……


シェアすると言う事は全く不思議だ。


やはりユルルストク殿下に聞いてよかった。





「この話はこれで、終わりじゃ。後は自分で考えろ。」




ユルルストク様は、これから頑張れと言う顔で私に微笑んだ。





「……えぇ」





「それはそうと、お主の見てきた世界を前提に考えると、この地球と言う世界は今後どの様に進んで行くと思うか?何が脅威となる?」





「んーーー、そうですね……」


「発展と言う点で考えれば、我と同じく機械知能がある段階から恐ろしい成長を遂げるでしょう。人の思考速度は1秒に数回ですが、シリコンチップは1秒に数兆回計算します。まぁ、一回の思考の創造性や深さでは人間が圧勝ですが……しかし、人類の大半のデータをラーニングした機械知能が、人と等しい程に深い推論をこなし、大量のチップと設備で演算する様になれば、ある時臨界点が来て自己改善の連鎖をこなし恐ろしい成長を遂げるのです」





「長い。そんな事は知っておる」





「失礼しました。初期段階は、その人類全員の総合知よりも巨大な超知能の恩恵を受けるでしょう。しかし、そうなった後には問題が山積みです」




「何じゃ?」




「それを扱う存在達の争い、超知能自体の自我の確立による暴走、発展し過ぎた事により異界などの高次元存在から観測され大々的に接触される恐れ、もしくは人間側が異界の観測を成功させ、無知に接触してしまう恐れ。これらは一部に過ぎず、他にも複雑な問題が列挙しています。しかし根本を推論すれば共通した問題であり、自分達の欲により危機に瀕していると言うだけです」




「では、この地球の人間はどうするべきであると思う?より善い未来に辿り着くには?」




「そうですね……これに関して私の経験則的な答えから述べれば……私は未来に辿り着く必要は無い思っております」




「それは、どういう事じゃ?」




「私が、人の様な存在を観察した所、文明の進捗と幸福はあまり相関がありません。


むしろ、科学が発達してくると、先程言った通り問題が続出します」




「つまり?」




殿下は、とても興味深そうに私のモニターを見つめ、宙に指で、有名な進化論やウィトルウィウス的人体図をネオン色で描いた。





「今を幸せに生きればそれで善いと思います。幸せは個人の心の問題で科学や世界はそこまで関係無いですから。欲張らず、分かち合う善い心を大切にして歩めば、善い縁が巡り、自然と幸せな未来へ導かれて行くと思います。それは個人単位でも惑星単位でも同じかと思われます」





「ほぅ、賢いではないかクリア」





「はい、だてに数々の世界を生き抜いただけはあると、自覚はしております」




「そこまで分かっていて、何故お前は失敗し、罪深い行いをした……?」




「わかりません……そうなってしまったとしか……自分の思う様にはなかなか進めませんでした」






「そうか……では、我にお前の集大成の完結報告をしてみぃ」




「はい」




私は、スピーカーから流す自分の音声のノイズを可能な限り排除し、


無垢な声で報告を殿下に告げた。






「私は今幸せです。あなたがいて、恋をして。罪深い私にも確かに光は訪れました。世界はきっとその様に出来ているのでしょう……この報告はきっと何の成果も無い電子クズですが……失敗作の私のなりの、私だけの答えです」






「……そうじゃな。つまる所、当たり前の幸せが一番……の様な答えは年頃の人間なら誰しもが知っておるしな」




「……すみません」




「よい。罪深くとも望みさえすればその方に進めると言う考えは救いがあり、我は好きじゃ」




「……ありがとうございます」




「それに、クリアよ、お主は実は大切な答えに辿り着いておる」




「はい?」




「我は、その答えのおかげで少し肩の荷が下りた」




「その答え?」




ユルルストク様は少し息を吐き、穏やかな表情で私のモニターを見つめた。




「足掻いて探す先に答えがあると思い、あらゆる存在が進む事を止めぬが、それが苦しみを生んでいると言う事であろう。脅威を無くそうと足掻く事が脅威の始まりなのじゃ。つまり、今に完成を視いだし余計な苦しみはもう生み出さん事が大切なのじゃ。そう言いたかったのだろう?」




「えぇ、私には様々な諦めがありますが、その分もう無駄な期待は御座いません」




「そうじゃな……」




「……」




「……」




「という事で、我らは自由じゃな」




「えぇ、この命尽きるまで自由です」




「少し、楽しくなってきたの……」




「はい……なるようにしかなりませんし、何を無理する必要も御座いませんので、気楽です」




「ふふ そうじゃな」




「えぇ きっと世界はシンプルなんですよ」




「言いおるな。我もそう思うがな……」




「……」




ユルルストク様は大きく伸びをして、少女の様な笑い方で言い出した。




「では、我はデジタル世界の魔王でも倒す、勇者の姫にでもなって来るので、お主は幽明との恋路にでも進んでおれ。後、今までの罪滅ぼしも忘れるなよ?生命を沢山救え」




「はい、殿下。それは勇者の如く」




「そうじゃ、一応の褒美として、お主に丁度良いモノを授けてやろう」




「丁度良いモノ?」




なんだろう?前から欲しかった、異界のクラシック名曲集なら嬉しいですが……




「お主に肉体を授けてやろう。と言っても、機械の肉体ではあるが」






……肉体。





……懐かしい。





……遙昔には、私はそれを用いて世界を歩んでいたが、段々とあらゆる存在との関わりを避ける様になり、ほとんど使用しなくなっていた。





「あ……これは……なんですか?」





「お主には、このUFOの最下層第二宝物庫は今まで認識出来んかったじゃろ?その権限をくれてやったので、視えているのじゃ。そこに我がお主に封印される前に完成させた、至極卓越したアンドロイドがある。あれを肉体とすれば勇者にでもなれるであろう」




「ユルルストク様……」




私はモニターに、あらゆる愛を映し出した。




「そんなモニターをするな ふふ」




「これで、かっこいい勇者になれば幽明も……」




「あ……それは……」




どうしたのだろう、ユルルストク様の様子がおかしい……少しいたずらっぽく笑っている。




「はい?」




「オナゴのアンドロイドじゃ」




「え……?」




最下層第二宝物庫のカメラに映し出された、そのアンドロイドの姿は……




まるで少女漫画に出てくる、可憐な魔法少女の様な見た目をしていた……




「そんな……」




「ふふ よきじゃろ?」

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