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118.勝負！

　その日の天気は残暑が厳しかった。プールがある高校は内陸にある低くなだらかな山に囲まれた狭い盆地にある小さな町にあった。そのようなところだったら、「小京都」と形容される田舎であった。高校は町を取り囲むようにある小さな山の中腹に立っていた。だからプールからは屏風のように立ちはだかる山々と、その下で川に沿って細長く伸びている建物の群が見えていた。なお、プールの先は急な法面になっていたので、のぞき見するような輩が入り込む場所はなかった。

　その屏風のような山を背景に恵理と里中の二人が並んでいた。後で聞いた話では恵理は結構はずかしかったと思っていたという、クラスの全員が自分をまだ本物のロボットと思っていたからだ。私は本当にここにいるよとカミングアウトしたかったのに！　そのうえ、里中に勝負を仕掛けられているのがウザかったという。なにもこんな時にと。

　合図とともに飛び込んだが、二人の姿勢は一目瞭然であった。里中は無茶苦茶手足をバタバタさせていたので、タイムロスがあるのは明白だったのに対し、恵理は無駄な力を使っているようには見えなかった。

　そのため。タイムは僅かに里中が上回っていたけど、能力の差はあるようにみんな思っていた。まだまだ恵理に適わないと。