魔王は買い物に付き合う
2
俺たちは港町ユウサの中を歩いていた。
「ヴェセル様!こっちに可愛いアクセサリーがありますよ!」
「そうか。」
「こっちにも可愛い指輪が!」
「ああ。」
「このネックレスも素敵です!」
「ああ。」
俺は今、クラルテの買い物に付き合っている。
本に「女の子は買い物が長い」などと書いていたが、本当に長い。
そして「しっかりと一緒に悩んであげること」とも書いていたが、何も一緒に悩むことがない。
遠くで交渉しているのを眺める。
「この皮は高級品でね。一つ大銀貨二枚だよ!」
「それは高すぎる。皮はほかの業者からも買える。大銀貨一枚と銀貨四枚。」
「いやいや今年は家畜がまるまると栄養たっぷりでね。ほら、皮もいい匂いがするだろう?」
「む、確かにいい匂いがする。では大銀貨一枚と銀貨八枚でどうだ?」
「毎度あり、それでいいよ。またご贔屓よろしく頼むよ。」
「おう、達者でな。」
商売も甘くないらしい。
俺はクラルテと長い長い買い物をした。
これが俗に言う「悟りを開く」という行いだろうか。
その日は結局買い物だけで終わった。
女の子との買い物は大変である。
かと言って商売する方も大変そうだ。
俺はクラルテに本を買ってもらいながら、そんなことを考えていた。
今日まで港町に泊まり、明日の朝から出発らしい。
そうして俺たちは港町ユウサの宿に泊まった。




