四十一話
「いよいよだね。」
その頃、桃子とミシルは学校の誰もいない裏口に戻ってきていた。
「あの人、どこにいるんだろう。」
ミシルと桃子は校舎裏口のジメジメした所から侵入を試みた。
幸い、誰も人がいない。
2人は目を合わせて頷いた後、徐々に表の方までコソコソと歩いて行く。
「普通だね。」
桃子は女学生達がいつも通り雑談をしている姿を見て、心なしかホッとした。
「ねえ君。」
桃子は近くを通った顔見知りの女の子を捕まえた。
「ねえ。学校のことで変わった事ない?」
「なんですか?」
「どうして敬語なの?」
「え?知り合いでしたっけ?」
その子はキョトンとした顔で桃子の顔をまじまじと見つめた。
「私のこと覚えてないの?」
「いいえ。あなたほどカッコよかったら一度見たら忘れないと思いますけど。」
と、もじもじして彼女をキラキラした目で見つめた。
「嘘だ…。」
「どこのクラスですか?二年生…で見たことないし。」
「ありがとう!ごめんね。」
桃子はミシルの手を引っ張り、その場を後にした。
そして、2人が行き着いたところは下駄箱だった。
「ない。私の上履き入れが違う人のになってる…。」
「私のもない。」
二人のロッカーは忽然と無くなっていた。
「存在を消されたんだ。みんな、操られてるんだ。」
桃子は手を震わせて絶望していた。
「この短い期間にこの学校の不死身やロボットの記憶を操作したって事?」
「そうなりますよね…。」
ミシルは、これから挑む敵がどれだけ壮大なのか理解した。
「…宮桜。」
胸の前でぎゅっと拳を握る桃子は、恋人の名を呟くと、何か硬い決意を心中に収めた。
「桃子さん?」
「行こう。」
「はい。」
2人は手を繋いで、2年の廊下を歩いていた。
「さきゅばすちゃん…。」
ミシルは彼女の姿を探すが、教室にはいなかった。
「今は休み時間だから…。どこかに行ってるのかも。」
ミシルは頭を傾けて検討がつく場所を考え始める。
「一年の教室かもしれないです。」
「きょうりんちゃんとかとかな?」
「そうですね。その可能性が高いです。」
と、2人が談笑していたその時、
「!!」
「ミシルちゃん。」
目の前に、100メートル先からこちらに手を振るさきゅばすがいた。
「どうしたの?」
制服姿の彼女はそう言ってニコッと笑った。
「良かった。無事だったんだね。」
2人が近づこうとしたその時
「ミシルちゃん!!」
「!」
すると、その反対の方向からもう1人のさきゅばすがやってきた。
「ふ、2人!?」
桃子はその恐怖にミシルの肩を掴んだ。
「私が本物よミシルちゃん。」
最初に現れたさきゅばすはいつもと同じように堂々たる立ち振る舞いで彼女の名を呼んだ。
「まさか私がわからないの?こっちよ!」
後から来たさきゅばすもまたいつもと同じ振る舞いを見せる。
「…どっち?」
桃子はミシルに尋ねた。
「体温の流れが2人とも一緒なの…。」
「何か2人の間でわかるものとか無い?」
桃子はミシルにアドバイスをする。
考えた末、ミシルは2人に質問をしてみた。
「私がさきゅばすちゃんに買ってもらった水着の色は何色だったでしょうか!」
ミシルは2人にそう投げかけた。
「「白よ。」」
2人のさきゅばすは一斉に答えた。
「…わからないね。」
桃子も頭を抱えた。
「いいわ、ミシルちゃん。偽物だと思う方を刻みなさいよ。」
後から来たさきゅばすがそう言った。
「で、でも間違ってたら。」
「そうよ。ミシルちゃんが間違えるわけないもの。」
最初に来たさきゅばすもそう答えた。
「バッテリー、まだあるでしょ?」
その片方のさきゅばすのセリフに反応すると、ミシルは自分の意思で右手をノコギリに変えた。
そして、自分でも驚く速さで片方のさきゅばすを切り刻んだ。
バラバラバラ
と、油断していたロボットが細々に刻まれ、床に足だけ残して崩れた。
「ふふ。さすがミシルちゃん。私の策の通り動いたのね。」
と、戻ったミシルの手をぎゅっと握った。




