四十話
「おはよう。コロラド。」
「おはようきょうりん。」
2人は仲良く手を繋ぎ、ロッカーで靴を履き替えた。
「ふふ。今日お姉さまにも報告するわ。」
「うん…。まさか、私がきょうりんの事好きになるなんてね。」
「私すごく惚れっぽいの。」
「ダメ。きょりんは私の血だけ飲んでいればいいの。私もきょうりんの血を飲むから。」
「飲みすぎなんじゃない?なんか性格私に似てきた?やめてよ。私コロラドのふわふわした性格が好きなんだから。」
「飲まないときょうりんと愛し合えないもの。」
「何言ってんのよ!あ!お姉さまー!」
きょうりんはコロラドの手を引っ張って、廊下を歩くさきゅばすの背中を追いかけた。
「おはようお姉さま!ねえ聞いて!私達付き合い始めたの!」
「そう。それは良かったわ。」
「なんかテンション低くない?」
きょうりんは首を傾げた。
「ねえきょうりん、私ってあんた達以外に誰と仲よかったか覚えてる?」
「えー?お姉さまはいつも橙さんと仲良くしてるじゃん!他にいないでしょ?」
「そう。」
「あの人気ナンバーワンのイケメンでしょ?」
「そうね。」
「お姉さまも素直になって橙さんとお付き合いしたら?似合うと思うけどなー!」
「気持ち悪いこと言わないで。あんたと話してると頭に虫が湧きそう。じゃあお幸せにくたばれ。」
さきゅばすはそう言い放ち、一人足早に行ってしまった。
「もー、素直じゃないなー。」
「きっと機嫌が悪いのよ。ねえ、きょうりん。今日終わったらお買い物いこう。私ペアルックがしたいの!」
「ペアルック!いいわね!どこにする?」
「おはよう。さきゅばす。」
廊下を歩いていると、角でバッタリ橙と会ってしまった。
さきゅばすは露骨に挨拶を無視した。
「まさか直前で逃げられるとはね。君のお気に入りのロボットを侮ってた。性悪で有名な君があの2人を逃すなんてさ、美しい友情物語だよねぇ。桃子の血を飲まずともあの頃に戻ってきたのかな?」
「勝手に言ってなさいよ。そんな煽りで私が馬鹿みたいに怒ると思ってんの?」
「お前がやる気を出してくれる方法って何だろうなぁ。あのミシルってロボットを量産してハーレムを作るか?」
「あの子じゃなきゃ他はガラクタだわ。」
「それとも、宮桜の方がいいか?」
「黙りなさいよ!!あんたが何しても一緒よ!あの2人はもう戻ってこないわ。人質作戦で私を協力させようなんて甘いこと考えたのがいけないのよ。」
「さきゅばす。俺の血をもっと飲みたくないか?」
橙はさきゅばすに近づくとニヤッと笑った。
「悪魔にもなれるかもな。」
「これ以上私の体を毒まみれにするのはやめてくれる。私が逃げないだけありがたいと思いなさいよ。」
「その気持ちに疲れたらいくらでも俺を好きになってくれて構わないからな。キスだっていくらでもしてやる。」
と、橙はさきゅばすの顎を掴みキスをしようとした。
バシッ!
さきゅばすはそれを解くと彼女の頬を平手で殴った。
「私を本気で好きにもなれないくせに。私の才能はあんたのものにならないわ。」
「才能からお前を愛することにしたんだ。今日お前の体に血を流してやるからな。」
「同族嫌悪。あなたの好きなタイプが私と一緒なら、一日とも持たないわよ。」
「宮桜みたいな地味すぎる女よりは魅力的だよ。」
「あらそう。私の魅力にあなたは釣り合わないけどね。あと、保健室にシャワー室くらい作りなさいよ。替えの服も下着も。私がコケ塗れになるじゃない。」
「保健室を修理した金で資金がないから我慢しろ。作ってほしいなら俺に忠誠を誓う事だな。」
「ふん。そんな事言うからアンタが嫌いなの。おバカな後輩に買わせるわ。」
さきゅばすはそう言うと、その場を去った。
「めんどくせえな。平和的に言えば偉そうに。」
橙は舌打ちをしながら、彼女の背中を睨みつけた。
「…。」
さきゅばすが教室に行くと、彼女の隣の席には知らない女の子が座っていた。
そこの席は確かにその子のものだ。
ミシルの私有物は何もない。
奥の席にも、かつての人気者の席はない。
あのお下げの女の子の席も。
「…つまらない。」
さきゅばすは一人ため息をついた。




