三十八話
「調子はどう?」
彼女は白衣を着たまま3人に聞いた。
「ここのことは黙ってあげるから私たちを解放しなさいよ。」
「さきゅばす。これ。」
と、彼女は持っていた白衣を彼女に渡した。
「お前の作りたいものもここで作ればいいだろ。話を聞いていたけど、その輸血タンクは成功してないんだろ?俺とここで作れば問題ない。」
「…それもそうね。」
「さきゅばすちゃん!」
ミシルは白衣を受け取る彼女に叫んだ。
「最後にいい?」
さきゅばすは白衣を着た後、ミシルに近づいた。
「飽きたわ。あなたといるの。私も性格的に長いものに巻かれるタイプなの。でも、最後にだけ慈悲をくれてやるわ。」
と、ミシルの唇にキスをした。
「ん…!」
桃子が目をそらすほど長めのキスをした後、さきゅばすは彼女を離した。
「行かないでさきゅばすちゃん…。」
「私の目的、本当はもう意味がないから。さっきの話もう白紙にしてあげる。ミシルちゃんが鈍臭すぎたのよ。」
「…。」
「じゃあね。」
さきゅばすは素っ気なく、橙とともに保健室から消えた。
「ミシルちゃん?」
桃子は、さきゅばす達が去っても動かない彼女に近づいた。
「どうしたの?」
ミシルの顔を覗いた瞬間
ガシャ
ウィーン
とミシルの右腕から機械音が鳴った。
すると右腕が変形し、素早く振動するノコギリになった。
「ミシルちゃん…?」
桃子はその様子に驚いていると、次の瞬間室内の扉前でボーッとしていた警備ロボットに襲いかかった。
その子をバラバラにすると、保健室の校庭側の壁をバッテンに破壊した。
「わあ!?」
桃子が強い力に抱き寄せられ、ミシルは安全な左手で彼女を抱き上げ、その壁から外の世界へ出た。
桃子も高速道路の車のスピード並みに走る彼女に必死にしがみつく。
「わああああ!?」
桃子の叫び声に町の人が振り返る。
ミシルがそれをうまくかわしながら、いつの間にかどこかの家の前にいた。
「ミシルちゃん。もうおろしていいよ。」
桃子は早く降りたそうにそう答えた。
「ありがとうミシルちゃん。助かったよ。」
彼女が微笑むと、ミシルの目はいつもと同じく優しくなった。
「…あれ?」
ミシルは辺りをキョロキョロと見渡した。
「ここ、立派な家だね。」
隣の桃子は大きな家を見た。
「ここ、さきゅばすちゃんの家。」
「ええ?そうなの?」
「うん。」
「ミシルちゃん。あんなことできるんだね。」
「あんな事ってなんですか?」
「さっきの、すごい武器があるんだね。」
「私、そんなことした覚えがないです。気づいたらここにいて…。」
「そうなの?じゃあ、さっきのはミシルちゃんじゃなくて彼女がプログラムしたってことかな。あのキスで…。」
「…。」
ミシルは前に上履きを隠されたことを思い出した。あの時も、確かキスをされて記憶が無くなった。それを言えば前に桃子に助けられた時もそうだった。
「全部、さきゅばすちゃんの仕業だったんだ…。」
「助けてくれたんだね。私達の事。」
「…。」
バタッ
「ミシルちゃん!?」
ミシルはその場に崩れた。
「…熱い!」
桃子は彼女の腕に触れると、体が急激に熱くなっていた。
まるでフライパンをガスで熱したような熱さだった。
「ミシルちゃん!」
完全に停止したミシル。
どうやらバッテリーが切れたようだ。
「…駄目だ。」
桃子は、ロボットの緊急センターに連絡しようとしたが一瞬戸惑い、結局やめることにした。
「…。」
桃子はさきゅばすの家のポストに手を突っ込んだ。
「あ…。」
すると、中に彼女の家の鍵が入っていた。
「無用心だな…。」
可愛い悪魔のキーカバーをつけたそれには、なにやら鍵とキーカバーの間に白いゴミが挟まっていた。
桃子はそのゴミを取ろうと引っ張ったが、ゴミではなく、綺麗に折られた小さな正方形の紙が出て来た。
それを開けてみると、メッセージが書かれていた。
「もしもの時用の鍵…?」
桃子がそう読み上げる。
これは、第三者向けの手紙であるには間違いない。
「予感してたのかな…。」
桃子はそれを自分たちへのメッセージだと信じ、鍵を使い、さきゅばすの家の鍵を開けた。




