三十七話
この後普通に授業が始まり、放課後になった。
操られたクラスの女子達と、何も知らない生徒達は全員帰宅した。さきゅばすとミシルと桃子は、橙の側近のロボットに、保健室に監禁された。
「気付きなさいよあのバカ!!」
さきゅばすはそのロボットの目を盗んで保健室から見えるきょうりんに小さくジェスチャーをする。
コロラドと歩く彼女は、さきゅばすのジェスチャーに気づくとニッコニコの笑顔でこちらに手を振っている。
「チッ。」
ガンッ!
大きな舌打ちをしたさきゅばすは、物が何もない戸棚の壁を蹴った。
「桃子さん。」
「…。」
ミシルが呼びかけても、彼女の応答はない。隣の彼女は力が抜けたようにベッドに倒れ込んでいた。
「私、宮桜さんから桃子さんを守るよう言われました。宮桜さんは、この事を予感していたみたいです…。」
「…。」
「私はあなたを守りたいです。今回のような悲しい事、もう二度と起きて欲しくないです。」
「何が何だか分からない。」
桃子は倒れたままそう答えた。
「さきゅばすちゃん…。」
ミシルは3個目のベットで腕を組んでイライラしているさきゅばすに話しかけた。
「話してもいいの?」
「いいわよ。」
彼女はこちらを見ずに、誰も通らなくなった手前の道を窓から見つめている。
「実は、さきゅばすちゃんと、宮桜さんと橙さんは昔から繋がりがあったんです。その、研究所にいたとかって…。」
ミシルは首を傾げた。
そういえば曖昧な部分は知らない。
「えっと…。」
「大きな所だったのよ。この学校くらいあったかも。」
見かねたさきゅばすが続きを話し出した。
「なんの研究所?」
桃子は起き上がり、さきゅばすに質問した。
「ミシルちゃんみたいなロボットを開発していく所。研究員の私とかあの女とか、事務の宮桜がいたの。」
「宮桜、そんな仕事してたんだ…。」
「それ関係なの。今のやつは。その研究所であったいざこざを学校に持って来たわけ。」
「宮桜さんが言ってたんです。私があの人をここに呼んでしまったせいだって。」
ミシルは胸に手を当てながら眉を八の字にしながら言った。
「宮桜が?」
「私やさきゅばすちゃんが桃子さんに悪い事するんじゃないかって。」
「悪い事?」
「私がミシルちゃんを使って桃子さんの血をもらおうとしたから?」
「え?」
桃子の腫れた目が大きくなった。
「そ、そんなこと考えていたの?ミシルちゃん…。」
「え?あ、いや…。」
ミシルははっきり否定したかったが、出来なかった。
「酷い。私に近づいたのもそれ目的だったんだ。」
「違います!私は本当に…。」
「そうよ。あなたの血だけしか見てないわ。」
さきゅばすはミシルの言葉を遮って桃子に言い放った。
「私の心をもてあそんだんだね。」
「そんなんじゃない…。」
ミシルは悲しそうに俯いた。
「私の血をどうしようとしてたの?」
「食用。」
と、さきゅばすは彼女を上から見て笑った。
「ふふ。このままなら私の野望だけでも叶えとこうかな。」
さきゅばすはニヤニヤしながら桃子に近づく。
「さきゅばすちゃん…私、そんな事したくない。」
「何よ今更。今がチャンスじゃない。邪魔者もいなくなったし、今が飲み放題じゃない。」
「宮桜さんと約束したの。桃子さんを守るって。私、桃子さんをこれ以上悲しませたくない…。」
「私が橙に寝返ったらどうなると思ってんの?輸血タンクよりひどい運命たどるかもしれないじゃない!」
「輸血タンク?」
桃子はまた首を傾げた。
「ええ。桃子さんをミシルちゃんの中に入れて全てを私の物にするって事よ。桃子さんとの想い出も全部ミシルちゃんから消して私との記憶だけ残せばミシルちゃんは悲しまなくて済むわけ。」
「さきゅばすちゃん…そんなこと考えてたの?」
ミシルはまさか桃子との想い出を消されるとは思っていなかった。
ミシルもまたさきゅばすの発言に大きく傷ついた。
「君は、自分の目的のためにミシルちゃんの心も操っていたの?」
「そうよ。ふふ。素直で可愛いでしょ?桃子さんが好きになるくらい。」
「…私もミシルちゃんも、君の手玉だったんだね。」
「ごめんなさい…私が桃子さんに近づいたから、さきゅばすちゃんの言う通り近づいたから…こんな事になってしまった…。」
「…。」
「でも、私は誠心誠意桃子さんの事が好きです…。」
「ミシルちゃん…。」
「ふふ。今は楽しめばいいわ。」
さきゅばすは余裕そうにベットで足を組んだ。
「しかし、この状況をどうしようかしら。いくらその野望があってもね。」
「私達はどうなるの?」
桃子は不安そうに彼女を聞いた。
「知らないわ。私があいつに協力の姿勢をみせない限り、ここからは出られないと思う。」
ガラッ!
すると、保健室の扉が開いた。
全員目を扉に向けると、そこには白衣を着た橙が立っていた。




