三十六話
「誰があんたと協力するのよ。」
さきゅばすはなお冷たい視線を彼女に浴びせた。
「せざるを得ない状況なんだよ。じゃないと、その2人もこのマネキンみたいにしちゃうよ?」
「手回しが早いわね。もうここまでしてるなんて。」
「俺は気が長いから、さきゅばすが協力してくれるまで待っててやるよ。」
「宮桜をなんとかして!本当に死んじゃう!」
桃子は泣きじゃくりながら叫ぶ。
「病院!」
ミシルが1人職員室へ向かった。
「この止まってる子達の記憶から宮桜はいなくなる。そしてまた元の世界になる。」
「宮桜!」
桃子が唇の青くなった宮桜の胸に手を当てる。
「…心臓の音が…止まった…。」
「桃子。お前もそうなりたくないだろ。だからこの学校で大人しく過ごしていればいい。次期に部屋も作ってあげるからさ。」
「私たちは操らなくていいの?」
さきゅばすが堂々たる態度で彼女に聞いた。
「俺のお気に入りにはそのままでいて欲しいんだ。桃子みたいな可愛い泣き顔がみれるからね。」
「悪趣味ね。そういうところで墓穴を掘るわよ。」
「さきゅばす。待ってるからね。」
橙は笑うと、指をパチンと鳴らした。
すると、周りの女学生達は何事もなかったかのように動き始めた。
「桃子さん!!どうしたんですか!?」
泣きじゃくる桃子に駆け寄る女学生達。
「その子、誰ですか?」
「一年生ですか?」
同じクラスのはずの子達は宮桜を心配そうに見ながら言った。
「大変だ。皆、この子を一旦保健室へ運ぼう。」
橙の呼びかけに、数人の女子が宮桜を桃子から取り上げた。
「はい!」
桃子はまた別の女子のグループに全身の力が抜けた体を起こされ、教室の彼女の席に座らせた。
桃子の異様な泣きじゃくる光景と、一つ多い、誰かが使ってた席に疑問を持ち始めるクラスメイト。
「さきゅばすちゃん!」
「あ、戻ってきたの?」
ミシルは走って戻ってきた。
だがその表情は出て行った時と同じ曇った顔のままだった。
「駄目だった。学校の先生も、皆取り合ってくれない。何を言っても話を聞いてくれない。それに電話も使えなかった。それと、外に出ようとしたらロボットの女の子達に止められたの。すごい力で。」
「完全に閉じ込められたわね。」
「宮桜さんは?」
「連れていかれたわ。」
「もう動かないの?」
「病院に行けなきゃ無理よ。私もあいつも医者じゃないから治せない。」
「…。」
ミシルは教室を廊下の窓から一点を見つめた。
桃子さんがずっと泣いている。
それを皆が囲んでいる。
「守らなきゃ…。」
ミシルはぽつりと呟いて、一つの決意を固めた。




