十二話
「今のところうまくいってるわ。お姉さま。」
人気のない、校舎裏に2人の女学生は密会を交わしていた。
「そう。誰かに的を絞った?」
「ふふ。私の理想って高くて、今の所お姉さまくらいしかいない。」
「私があなたの輸血タンクに?そうしたら誰があなたの首元を噛んであげるの?」
と、妖しくにやりと笑う。
「御姉さまの血も飲んでみたい。」
「飲んでもいいけど殺すわよ。いい?あのぬいぐるみの性能調べたいから早く生贄を連れて来て。絶対美味しいのをね。」
「私のお下がりでいい?私の大事なお友達。」
「いいわよ。あんたのお下がりならね。それと、桃子さんの持ってるラッキーベア、ちゃんと破壊しておいてね。」
「なんでそんなに怒ってるの?」
「あれは一個でいいの。」
「嫉妬してるのお姉さま。可愛い。今度また一緒に狩り行きましょう。」
「いいわよ。」
「私の血も今飲んでもいいわよ。」
「今はいらない。そんな気分じゃない。」
「焦らさないでお姉さま!私は貴女に噛まれたくてうずうずしているのに!!」
「図に乗らないで。噛みたいとき噛むのは私。催促してくるのはご法度。」
「いじわる!」
「よろしくね。成功したら飲んであげるわ。」
と、彼女がニヤニヤ笑った。
「うーん…。」
桃子は悩んでいた。
正午。
1時間半の休みの中、ずっと今朝の宮桜の顔を浮かべては気持ちを沈ませている。
彼女は今1人でどこかに行ってしまった。
最近、こんなことが多い。
彼女の過去にはロボットを嫌いになる出来事が起こったこと、その頃に付き合っていた女の子がいた事は知っている。
それ以外はわからない。
彼女はあまり自分を語りたがらないミステリアスな子だ。
それは悪い事じゃないが、もう少し心を開いて欲しいとも思う。
「はあ。」
桃子がため息をついた。
「ねえねえ桃子さん。」
「あ。君は…。」
きょうりんがクラスに入って来て、そのまま桃子の席の前に現れた。
「昨日は本当にごめんなさい。」
そして深々と頭を下げた。
「ううん。私は別に。」
「あの、その子にも謝りたいんですけど…。できますか?」
「うん。呼んで来ようか?」
桃子はふと右を見た。
だがそこにミシルの姿はない。
「あれ?さっきまでいたのに。ごめん。呼んでくるよ。」
と、桃子は教室からいなくなった。
「いただき。」
一瞬の犯行だった。
自分の身体に隠して、桃子のバックついていたラッキーベアを引きちぎる。
それを誰も見ていないうちにポケットに突っ込んだ。
「待ってー!!」
わざとらしい仕草で教室を出て行った。
「あ、あの…。」
その頃、ミシルは校舎裏に7人の女集団に囲まれていた。
「それかして!」
ミシルの手からクマを奪う1人の女子。
「あ…。」
「なんであなたが桃子さんとお揃いの持ってるの?」
「生意気よ!ロボットのくせに!」
「ロボットに恋心なんかあるわけないでしょ!何勘違いしてんの!」
「桃子さんがあなたを好きになると思う?」
「近づかないで!このぬいぐるみも没収よ!」
「こんなもの…!」
「壊しちゃえ!!」
その7人はミシルの前でそのももちゃんをハサミで切り裂いた。
「ももちゃん!!!」
何もできないミシルは、ただその光景に酷いショックを受けた。
「こんなもの!」
それを地面に叩きつけると、7人でぐしゃぐしゃに踏みつけてやった。
「あはは!すっきりした!!」
「バーカ!!」
「…。」
その集団は行ってしまった。
ミシルはもうクマではない破片を一つずつ集め、それを抱きしめた。
「ももちゃん…。」
「大丈夫?」
「!」
すると、1人の女の子がミシルに近づいた。
「悪い人達ね。」
「…。」
「残念だけど桃子さんはここには来ないの。私が違う場所に誘導しちゃったから。」
「あなたは?」
「きょうりん。」
「きょうりんちゃん?ミシルです。」
「ふふふ。お姉様が好きそう。」
「お姉様?」
「馬鹿みたいに従順そう。」
「…あなたは何しにきたんですか?」
「お姉様の好きな女の子に会いにきただけ。」
「もしかしてさきゅばすちゃん?」
「しーっ。内緒よ。私があなたに接触したこと。」
「どうして?」
「お姉様と私似ているから。好みも似てるってすごくわかってるから。」
「?」
「うふふ。じゃあね。可愛いロボットちゃん。」
と、きょうりんはミシルの唇にキスをした。
「!」
「あは。これは度胸試し。」
そう言うと、きょうりんは走って行ってしまった。




