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17:『観察日記を付けたりしてます』

【神崎絢香観察日記】



【午前7時30分】

 石上家の前で待機してるのを発見。

 早々に見つかると、捕獲されてそのまま一緒に登校することとなった。

 話してくる話題は、大体が自分の身近で起きた他愛ない出来事。

 とりあえず、右から左に受け流す。


【午前8時】

 学校到着。

 しかし同じクラスなので解放されない。

 そのまま「直也くん直也くん」と、執拗に絡まれる。

 絢香信者の人達に睨まれて「石上の奴、最近調子に乗ってんな。一度締めるか」とかいう物騒な会話が聞こえてくる。

 泣きそうです。


【午前8時30分】

 行き遅れの独身女教師こと、担任様によるHRが始まる。

 さすがに絢香は自分の机に着席している。まあ、隣の席だからあまりさっきと変わらないのですが。

 横目で観察して初めて気づいたのですが、絢香はHR中、手帳に何か書きこんでいた。

 内容を見るためには、頭を丸ごと絢香の方に傾けなければいけないので、内容調査は断念。


「おい、石上。私よりそんなに彼女のことが気になるか? ん?」


「……廊下に立ってます」


「うむ。良い心がけだな」


 観察開始1時間後、心が折れかけてます。



【午前9時】

 1限目、数学。

 絢香が横からこちらをチラチラ見てくる。

 うっとおしい。


【午前9時50分】

 1限終了。

 僕は2限も変わらずこの教室で受けるが、絢香は違うらしく、移動の準備をしている。

 次の授業で絢香の席に座る女子生徒を、なぜか絢香は睨みつけていた。

 なんか、すんません……。




【12時】

 待ちに待った昼休み。

 絢香も教室に戻り、昼食の準備を始めている。

 さて、いつもは絢香に捕まる前に教室から離脱するのだが……観察するために教室に残って弁当を食べる。

 瑛さんと話しながら食べてたら、案の定絢香が乱入してきた。

 絢香の弁当はコンビニ弁当。

 まあ、両親が海外に住んでるんだ。仕方ないことだろう。

 ……そう、絢香の両親は海外に住んでる。

 絢香はここに転校した理由を、「お父さんの仕事の都合で」と言った。

 それはありえない。海外に現在進行形で住んでる両親の都合で、どうしてわざわざここに転校してくる必要があるだろうか?

 だからこそ、僕は絢香に違和感しか感じられない。そして底知れぬ薄気味悪さも。


 それから絢香は弁当を食べ終わった後も特に何をするわけでもなく、これといった行動は起こさなかった。



【午後四時】

 午後の授業に関する観察報告は割愛する。大体が午前と変わらない流れだったからだ。

 その絢香が行動を起こしたのは放課後。

 廊下でのこと。

 通路の物陰に隠れて絢香を尾行していると、水原さんの証言通り、確かに絢香は独り言を始めた。

 いや、正確二は誰かと携帯電話で連絡を取っていた。

 内容に関しては、距離の問題で聞き取れそうにない。距離を詰めればいいだけの話だが、これ以上接近すれば見つかる可能性が濃くなる。

 仕方ないので、絢香の口の動きから、読み取るしかない。いわゆる読唇術というものです。まさかネットの通信教育がこんなところで役立つとは。


「神さま……好感度……戻りたい……ヒロイン…………」


 やはり所詮は通信教育なのか、断片的にしか読み取れませんでしたが。まあ、十分でしょう。

 内容は皆目見当も着きませんがね。

 しかし、彼女はとても興味深いことを言っていた。


――神様――



 僕がたぶん、絢香への嫌悪感よりも勝る憎悪を抱いてる人物。

 まさか絢香の口からその名前が出てくるとは思わなかった。






◆◆◆◆◆◆



「私が本当の私を取り戻すためには、神を引きずり出すしかない」



 生徒会長、佐渡美姫は、生徒会室に取りつけられている鏡を見て、そこに映っている自身の姿を忌々しげに見つめている。

 その後、肌身離さず持ち歩いている手帳を開く。


「神崎絢香は現段階で唯一、神とコンタクトを取れる重要人物」


 『神』とは何か。

 そのことについて美姫は特に語ろうとはしない。

 だが1つ言えることは、その人物は、この世界を覆いつくす『秘密』を知っている、ということだ。



「夢と現実の境目を見分けるというのは、とても難しい。夢だと認識すればそれはただの夢に過ぎないし、逆に現実だと認識すればそれだけのモノに過ぎない」



 そして彼女は踊るようにくるりと回ると、歌うように言う。


「だけど、この正反対な2つの事象を繋ぐ共通点は、どちらも脳が造り出す映像に過ぎないということだけ。だからこそ、人間の認識次第で私達の世界は常に変化し続ける」



 これは永遠に続く囚われの現実(あくむ)

 それとも一夜で消え去る儚い幻実(ゆめ)


 その問いには、誰も答えない。

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