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15:『最近、災難ばかりが続いてます』

 むしゃり

 むしゃり

 さらに、むしゃり


 ひたすら終わりの見えない草むしゃり……ミス、草むしり。

 どうも、石上直也です。


 現在、前回のラストから毎日放課後に草むしりをしています。

 では、なぜ僕は草むしりをしているのか。

 それは回想が必要かどうか微妙な出来事が原因です。



 あ、回想シーンに入ります。


◇◇◇◇◇



 あれは、四日前の出来事だった。

 時系列的には前回の放課後です。


「あれ? 無い……」


「どうしたの、直也?」


 瑛さんに問われた僕は、思わず震える声で言いました。


「反省文を書いた原稿用紙が……無いんです」


 そう、無かったのです。

 放課後に反省文の残り半分を書いて日比谷風紀委員長に提出しようと思い、鞄を漁っていた僕は原稿用紙が無くなっている事に初めて気づいたのです。

 漁り焦りながら、原稿用紙を探します。


「あ、あれ? 昼休みの時は確かにあったのに……って、あっ…」


 その時です。

 過去を振り返っていた僕は、たまらない不安感に襲われたのです。思わずハァハァしてしまったほどです。



――新聞部の部室に置いていってしまったのでは?



 そう思った次の瞬間、僕は走り出しました。


「あ、直也く――」


 丁度、絢香が僕に話しかけようとしていましたが、構わず走り続けました。




「……瑛ちゃん、一緒に帰ろうか」


「…………………」


 瑛さんが犠牲になった事を知ったのは、翌日の朝でした。ごめんなさい。


 まあ、話を戻しますが。


 僕が真っ先に向かったのは新聞部の部室でした。

 どうか水原さんに回収されていない事を祈りながら。



「………やっぱり、無い」


 案の定、原稿はありませんでした。

 思わずガックリと項垂れる僕。

 すると、ある人物が僕に声をかけてきたのです。


「おやおや、誰かと思えば直也じゃないか」


 目的の人物、水原さんだった。


「水原さん……反省文の原稿用紙を知りませんか?」


「うん? ああ、それなら内容を書き足した上でさっき風紀委員長さんに提出しておいたよ」


「あ、どうもありがとうございます……って、内容を書き足した上で?」


「うん。書き足した上で」


 ニッコリ微笑む水原さん。

 なぜだろう、汗が止まらない。


――ピンポンパンポーン――


 校内に響く放送。


〈2年の石上直也。今すぐ生徒指導室に来なさい。今すぐに!!〉



――ピンポンパンポーン――



「あらら。直也、また呼び出しかい? 今度は何をやらかしたんだい?」


 僕は水原さんに逆に問いたい。

 水原さん、何をやらかしてくれたんだい? と。


「……行ってきます」


「うん、行っておいで」


 ま、言ったところで恐ろしい返答が来そうなので問いただしたりはしませんが。

 手をヒラヒラと振る水原さんを横目で見ながら、僕は生徒指導室に向かうのでした。




 生徒指導室に向かうと、日比谷風紀委員長が笑顔で佇んでました。笑顔が逆に怖いです。


「あの……僕は一体、何をやらかしてしまったのでありましょうか?」


「ああ゛?」


 笑顔のまま、ドスの効いた声を出す日比谷風紀委員長。

 思わず頭を下げました。


「はい、すみませんでした!!」


「石上直也。私は、口だけの謝罪には興味ないの」


――バサッ


 日比谷風紀委員長は、僕の足元に紙の束を投げ飛ばした。

 紙の束は、僕の反省文の原稿だった。


「これ、前半はきちんとした反省文なのに、なぜ後半からこんなにふざけているのかしら?」


「……内容を拝見しても、よろしいでしょうか?」


「おかしな事を聞くのね。それは貴方が書いた反省文でしょう?」


「……はい」


 後半は、水原さんが書いたんですがね。

 僕は原稿用紙を手に取り、後半の内容を確認する。


 要約すると、こうだ。


 兄貴と日比谷さん、もう結婚しちゃえよ。



「ああ、納得ですね………………あっ」


 思わず口に出してしまったのがマズかった


「………」


 笑顔が引き吊りまくって顔中に青筋を立てている日比谷風紀委員長。

 無言の威圧が恐ろしい。




「学校中の雑草を草むしりで綺麗にしなさい。ただし、一人で! 素手で! 一週間以内に! 期限が守れなかったらさらにペナルティを追加するから」


「は、はい!!」


 正直、一人で学校中の草むしりはキツいとか思いましたが、文句を言えるような空気じゃなかったので僕はそのまま頷いて生活指導室を走り去りました。




◇◇◇◇◇



 はい、回想おしまい!!

 さあて、草むしりに励もう。

 再び、むしゃりむしゃりと雑草を抜く作業に戻ります。




――キラリッ


 瞬間、なにやら煌めくモノが茂みの中にあったような気がした。

 僕は何事かと思って茂みを左右に掻き分けた。

 すると、


『あっ』


 茂みの中に潜んでいたモノと声が重なった。


「おい、何やってんだよ」


 僕は汗を流し、思わず尋ねてしまった。


「き…………奇遇だね、直也くん!」


 汗をダラダラ流しながら片手にビデオカメラを持った人物――絢香だ。

 絢香は引き吊った笑いを見せていた。


 なにが奇遇だ、馬鹿馬鹿しい。


「もう一度聞く。何やってんだ?」


「い、いや…あのね! これはね! 虫なの、虫を撮影してたんだよ、うん!!」


「よーし、じゃあカメラの中身を見せろ」


「うぇ?!」


 僕がそう言うと、絢香の奴は慌てながら中々ビデオカメラを僕に渡さない。

 埒が明かないし、このままでは今日のノルマが果たせないと予感した僕は、半ば強引に絢香からビデオカメラを奪い取ったのです。


「……」


 カメラの中身は、ブツブツ独り言を言いながら草むしりに励む僕の姿を映したものだった。

 ……僕って、こんなに独り言を呟いていたのか。気を付けなければ。

 まあ、そんなことより。


「へぇ、虫の撮影ですか。なるほど、確かに面倒な虫ですね。主役の周りを彷徨くお邪魔虫と言ったところですか」


「直也くん、上手い!」


「全然上手くとも何ともないわ!!」


 僕は思わずビデオカメラをバキッと破壊してしまった。おやまあ、僕程度の握力で壊れてしまうとは、欠陥品でしょうか?


「うぅ〜……二ヶ月分のお小遣いで買ったのに…」


 絢香の泣き声を無視し、僕は壊れたビデオカメラをゴミ箱に入れておいた。中のメモリーも潰しておく。念入りにね。

 絢香が放心している隙に、僕はさっさと帰ることにしました。

 今日の分は明日に回すことにします。帰って友里ちゃんに癒されるのです。




 …………………………………………そんな事を考えていた時期が、僕にもありました。



「なんなんですか……これは」


 家に着いた僕を待ち構えていたのは、久しぶりの兄貴と友里によるサンドイッチフォーメーションでした。


 だからなんで貴方達は脇役を間に挟むのですか!!

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