表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

後編

1年後


私は父に呼ばれ、父の執務室へと出向いた。


とうとう、あの自称勇者と結婚をさせられるのかもしれない。


自称勇者はあれからしつこく私との婚姻を望んだ。


私への恋愛感情などこれっぽちも持っていない事は明らかだったのに。


しぶしぶ執務室の扉を叩いた。


中から父の声がし扉が開かれた。


こちらを向いている父を見つければ、その向かいには銀の髪をもつ者が座っていた。


銀・・・・?


自称勇者の髪は枯葉の様なくすんだ茶色。


では、あれは・・・・・


急いで傍に駆け寄り表に回る。


その瞬間私は息を飲んだ。



「・・・・久しいな。改めてそなたを嫁にする」



そっと私の前に立ち肩に両手を置くアイツ。


1年前よりも逞しくなった身体。


でも、変わらない困ったように笑うその笑顔。


会いたくて会いたくて、でももう諦めてた。


二度と会えないと思ったアイツが今私の目の前にいる。



「今度はちゃんと捕まえておきなさい!!」



そう言って私は彼の胸に飛び込んだ。






















パタン。


ペンを置き、ノートを閉じる。

これで、きっとこのノートの役目も終わるだろう。

そっと、目を伏せたその時、扉からノックの音とともにドアが開いて彼女が入ってくる。


「姫様!急いで下さい!!遅れますよ!!」


「・・・わかったわ」


真っ白なドレスの裾をつまんで会場に向かう。


「あーあ・・・。こんな時私も飛べたら楽なのに」


少し距離のある会場までドレスが汚れないか心配だ。


「そんなドレス着てたら誰も飛べませんよ!それともそのドレスが台無しになってもよろしいんですか?」


彼女はそんな事を云いながらも私のドレスの裾を一緒に持ってくれる。


「・・・・よかった。りりも皆も無事でいて・・・・」


ぽつりと零れる言葉にりりもにっこりと笑う。


「・・・えぇ。あの時は人間を殺してはいけないとおっしゃられていましたから厳しい戦いになりました。だからあの方の力も弱まり一旦引かざるを得ませんでした」


「うん・・・。私の為にアイツは人間を殺さないでいてくれたんだね。それなのに、私・・・ひどい事言って・・・」


「・・・いいえ。決して姫様の為だけではございません。結局、いつまでも同じ事を繰り返してはお互い犠牲しか生みません。これは、皆の為だったのです。それに、それはあの方におっしゃって上げて下さい」


「そっか・・・・。うん、そうだよね・・・・」


りりの笑顔に私は頷いた。

まずは私たちが見本になろう。

魔族も人間も一緒に暮らせる世界になる為に・・・・。


「さあ!姫様、あの方がお待ちですよ!」


目の前の扉を開くと人間と魔族が半々に並んでいる。

もちろん、その中にはお父様もお母様も笑ってこちらを見ている。

そして、その向こうには愛しい私の魔王の姿があった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ