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異世界焼肉道  作者: グッチ
4.今日の焼肉こそ、真の贅沢である
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4-13.犯罪奴隷エース、ウーミタン

「よ、よろしくお願いいたします」

 銀髪の女性が深々とお辞儀をしてきた。

 どことなく品のある女性だな。


「リュウ様、彼女たちは最近仕入れた奴隷で、海外から仕入れた者達です」


 犯罪奴隷。

 犯罪を犯したものが罪を償う際、強制労働させられる奴隷たちのことだ。


 奴隷にもいくつか種類があり、まずは大きく合法奴隷と非合法奴隷に分かれるそうだ。

 これらはその名の通り、正式な手続きによって奴隷になったものとそれ以外の奴隷、という風に分かれる。

 人を攫ったりして奴隷として売りさばくなどは非合法奴隷でほとんどは犯罪奴隷や借金奴隷として売られる。

 彼らは発覚次第、解放の対象となるが、一部はそのまま奴隷として主に仕えることもあるそうだ。

 対して合法奴隷の中にもいくつか種類が存在する。

 彼女たちの様に犯罪を犯したものがなる犯罪奴隷。

 借金を負ったものがその返済の為に貸付業者と契約し奴隷になる借金奴隷。

 戦争に負けた者たちのうち、捕虜として残しても賠償金の対象にならない身分の低い兵士たちが労働に従事させられる戦争奴隷。

 生活苦から国に認められた奴隷商に身売りし、契約のもと奴隷になる契約奴隷。

 だいたいはこのどれかのパターンに収まるそうだ。

 これに当てはまらない農奴や丁稚などは一応の家財や財産の所有が認められているため、フィルフィリア王国では正式には奴隷の扱いではない。

 では財産の所有が認められていないものは奴隷なのか?という疑問がでるが、そういうわけではなくフィルフィリア王国、アルサンピーク王国、アルデシア王国の西大陸北方三国と呼ばれる国々では奴隷は契約の元に所持・保有が認められる存在である、ということに尽きるらしい。

 いずれの種類の奴隷でも一応は自らそういう契約をした、という扱いになるらしい。

 また、奴隷の主は奴隷の衣食住を保証せねばならない、という契約も付随する。

 つまり少なくともこのフィルフィリア王国では、奴隷は俺の思っているような食い物にされるだけの存在ではない、ということのようだ。

 俺のイメージだと、男は謎の棒を回させられて、女は強制的に娼婦か主人付きにされてるイメージだったから、ちょっと意外。

 まぁ、それでも権利や自由が他の人間に比べて極端に少ないため、衣食住を保証されても進んでなりたいと思う者はいないようだ。

 そしてそんな奴隷たちの中でも、彼女たちは特別。

 海外の元貴族が犯罪によって国外追放を受け、この地で奴隷になった者たちだそうだ。

 当然、その重要度は他の奴隷たちの比ではなく、下手な人間に売れない、ということなのだろう。

 ……正直、そう重いのはちょっと遠慮したいのだが。


「えっと、この人たち、名前は?」

「エース・アフ・アリルシェーナと申します。こちらは娘のウーミタン・アフ・アリルシェーナでございます」

 二人のうち銀髪のお母さんの方が俺の言葉に返事を返してくれた。

 なんだかこの辺りでは聞かない響きの苗字だけど。

「彼女たちは南東にある軍事国家ロレーヌ大公国から流れてきた者たちでございます」


 軍事国家ロレーヌ大公国。

 歴史ある国家でかつては強大化する帝国に対抗するため、大公国と呼ばれていた三つの国が同盟、婚姻などを繰り返しやがて一つになった国で、その後は周辺の小国を併合しながら大きくなっていったそうだ。

 旧帝国領を除けば、現在西大陸で大きな勢力を誇っており、現在ではさらに南にある旧帝国領の削り取りを狙っていると噂されている国家であるらしい。

 彼女達はその国の元貴族ということなので結構重要人物っぽい。

「こぶ付きですが、元貴族なこともあって計算や教養などの教育は行き届いています。警備などの力仕事には向きませんが、接客や事務仕事など家内仕事をさせるには良いかと思います。また、事前の身体検査では虫歯や身体的欠損は見られませんでした。非常に良い状態の身体だと言えます」

 良い状態の身体って。

 いやまぁ、そうなんだろうけど。

 奴隷の身体ねぇ。

 何か意味があるわけではないがなんとなく視線が落ちて胸部で止まる。

 お母さんの方、エースの豊満な身体をガン見しているおっさんの構図である。

 深い意味があるわけではない。

 意味があるわけではないが。

 ……男としての本能的な部分だから多少は許してほしい。

 俺だって寝る間を惜しんで研究したりしているが食欲以外の欲が全くないわけではないのだ。

 びくり、とエースの体が震えたように見えた。

 しまった。見すぎてしまったか?警戒させたかもしれない。

「子供の方は、今はまだ開花前ですが、さすが元貴族の子供として生を受けたこともあり、初期教育は良質なものを受けられていたようで、簡単な作法や計算なら可能です。……さぁ、あなたも挨拶なさい」

 オルデウスがウーミタンに挨拶を促す。

 その声は俺やロスに向けるようなものとは違い、威圧的なものだ。

「……ウーミタン、です」

 絞り出すようなか細い声が聞こえた。

 おそらくオルデウスが怖いのだろう。母親であるエースの裾を掴んで放す様子は無い。

「聞こえませんよ。貴方のご主人様になるかもしれないお方です。挨拶位はきちんとなさい」

 オルデウスがさらに高圧的にそう告げる。

「ウーミタン、です!よろしくお願いします!」

 オルデウスの言葉にビクビクとしつつも、しっかりとオルデウスの言葉に応え、ウーミタンが俺へ挨拶をする。

「あと、いつまで母親の後ろにいるのですか?1年の猶予を親が勝ち取ったとはいえ、親と離れ離れになる可能性もあります。その時、親は守ってくれませんよ」

 そう言うオルデウスの言葉を聞いて、ウーミタンが少し逡巡したあと、エースの裾を離して涙目ながらもその隣に並んだ。

 真っ直ぐな目で俺を見つめてくる。

 純粋な、濁りのない目。

 弱々しいのにそこにはっきりとした強い意志を感じる目だ。

 なんと言うか、健気だなとは感じる。まぁとは言え何かしてやれるわけじゃないのだが。

 それにしてもオルデウスめ。

「もう少し優しく言ってやればいいのに」

 そう思わず口に出すとオルデウスが小声で答えてくれた。

「お見苦しいところをお見せしました。ですが、やさしくして教育できるならいくらでも。ですが、その先に待つのはより辛い現実だけですので」

 そんなものかね。

 まぁ確かに彼女達奴隷は買われなければ最後にはきつい肉体労働か処分とか待っているのだろうし、礼儀ができていればそれだけ引き取ってもらえる可能性は高くなる。

 これも彼なりのやさしさのうちって奴なのか?

「さて、リュウ様。いかがでしょう?家人としては申し分ないかと思います」

 そうだなぁ。

「金額は?」

「そうですね、国外の人間という事もあり母親だけであれば金貨7枚。ただ、子供がいますので養育諸経費として金貨2枚を減額して金貨5枚でしょうか?」

 人間一人金貨7枚って。

 俺のオークの討伐料金の半分くらいとは。

 なんだか価値観が変わってしまいそうな話だ。

「あの!精一杯働きますのでどうか」

「働きます!」

 二人からも先手を取られてそう言われてしまった。

 オルデウスの目尻のあたりがピクリと動いた気がしたが。まぁ、何も言っていないところを見るとギリギリ許容範囲だったのだろうか?

「わかった。この二人を雇……、買おう。手続きをしてくれ」

「畏まりました。早速」

 オルデウスがメイドに手をあげて合図する。

 メイドが恭しく礼をして退出した。

 多分、手続き書類を取りに行ったんだろうな。

 何となくロスの方を見ると頷いていたのでおそらく金額としても妥当なところなのだろう。

「お買い上げ、ありがとうございます。二人は身支度を整えさせますのでしばらくお待ちください。準備してきなさい」

 オルデウスが二人を準備のために退出を促す。

 そして二人が退出した後は俺に着席を促してきた。

「金貨5枚を即決とは。恐れ入りました」

 まぁ、そうだよな。その前に果実を金貨2枚分買っているわけだし。

 ここだけで金貨7枚の出費。

 毎日宿屋泊まりでちょっと贅沢をしても十分に生活できる金額だし。


「それで、一つ。お伝えしたいことがございまして」

「うん?」


 そうオルデウスが切り出したのだった。

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