4-9.物納相談
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言葉が足らなかったため訂正。
一軒家の方の下水関連の部分を訂正しました。
下水の引き込み=屋敷内から外に向かうキッチンなどからの排水溝のこと
「持ってこれたのはだいたい金貨30~80くらいの価格帯の物件書類。あとは少し高いけどここかしら?」
そういって出されたのは金貨400枚の物件。
……金貨400枚!?
そんな家、誰が住むんだよ!?
書いてある地図からどこか察しようとしたが、わからない。
というか、この家、確実に上級貴族の邸宅区画にあるよな?
さすがにご遠慮したい。
「超一等地。正面は太守館」
いや、太守館の正面とか。太守、要はこの町で一番偉い人の家の前、というよりあの丘の上に見える屋敷の前だろうか?
絶対いらん。
「そう?残念。まぁ、ここはもう購入希望者がいるからどのみち競争だけど」
じゃぁ、なんで今出したんだよ。
何か試されたような気分だ。
「ギルドの要望にこたえつつ、条件に合致しそうなのはこれとこれ」
出された書類は2枚。
1枚は金貨130枚の物件。ギルドにほど近く4階建て地下1階の縦長物件で1階はテナント用に最低限の柱と壁、水回りしかない。俺の感覚だと1階が飲食店テナントになっているアパートを1棟丸々購入するイメージ。
下水は建屋内に引き込まれておらず、公衆便所を使用。2、3、4階と同じような造りでそれぞれ4部屋が中央の階段を中心としてつながっている構造で、建物自体も大通りに面しているが旧道側。
利点も多いが、欠点として下水の引き込みが不可能で、簡易的な排水溝を通って外部の下水につなげられているため、共用費が必要なことが挙げられている。
また、何度か飲食店が入ったりはしたらしいが、ことごとく出て行ってしまっているそうだ。
1枚は金貨100枚という文字が消されて50枚と改められている物件。こちらは大通りからは少し外れているもののそれなりに大きい2階建て地下有の住宅。俺の感覚だと庭付き一軒家。
下水はすでに引き込み済みで、公衆トイレも道をはさんだ反対側の地下に処理層があるため敷地内に排水溝が設置されている。
残念ながらトイレは設置場所がないため屋敷内部には設置されていないようだ。
欠点は前の住民が庭に東屋を立ててしまったため、1階の一部の日当たりと庭の使用が制限されること。具体的には馬車等を持っていてもおかしくないクラスの家だが、馬車が旋回できる場所も厩舎にする場所もないこと。減額されているのはやはり馬車の旋回場所がない為、購入期待層に不人気であり、長いこと売れ残っているためらしい。
俺は2枚の書類をまじまじと見つめて精査してみた。
個人的な意見でいうと、前者よりも後者が好み、というか俺の家の条件としてはあっている。
前者は確かに不労所得を得るにはいいかもしれないが。
テナントは大通りに面しているためよさそうに見えるが、2階以上には水回りが存在しないため、住居としては使えないだろう。
使うなら1階のテナントの客に上の部屋を使わせるような感じだろう。
そうなるとこの辺りに多い一階が飲み屋、上が宿泊施設というようなスタイルだろうか。
それならば大通りに面したこの物件は非常に立地が良く見えるが、大通りに面しているがゆえに室内にはどうしても砂埃が吹き込む。
恐らくは風の通しが良かった分、砂埃が吹き込んで入っていた飲食店が不人気になっているのではないだろうか。
ここは2階以上をメインのスペースとして1階を水回りと割り切って使うしかないが、階数が多いとやはり掃除が大変だよなぁ……。
後者はほぼ屋敷であることを除けば非常に便利がいい。
馬車の旋回ができないことが欠点だが、そもそも俺は馬車が必要ない。
可能性があるとすれば来客か家財を他人が運び込むときだけだが、別にそこまで必要な設備とは思わない。
おそらく旋回場所を確保できないのはこの東屋のせいなのだろう。
が、これは屋外調理場として使用すればメリットしかないな。
室内に風呂場がないが庭の空きスペースで十分対応できるはずだ。
むしろ風呂に入りたい俺としては残っている中途半端なスペースを風呂場に改装してしまいたい。
「俺が買うならこっちの屋敷の物件かな。俺にとってはデメリットが少ないし、理想的な物件だ」
「なるほど。じゃぁこっちの物件は押さえておくわ。今日中に入居できるように手続きしておいてあげる。けど、これじゃ目標金額には全然足りないわね」
「何とか200枚くらいは減額できんか?」
「今抱えてる物件じゃ無理ね。1区画丸々追い出して譲ったほうが早いわ」
「おぅふ……」
ギルドマスターがアリュシエールさんの言葉を聞いて変な溜息をつく。
まぁ、だけどこればっかりはな。アリュシエールさんもなるべく高い物件を選んできてくれたんだろうし。
「話は聞かせてもらいました!」
会議室の扉が開かれ、ロスが入ってきた。
「なんじゃい、ロス。来客中じゃ」
「ですから。セブンリング商会も一肌脱ぎます」
そんなことをいきなり言い始めたロス。
「実はエルから友人として相談がありまして。ギルドマスターとリュウが困っているだろうから手を貸してほしい、と」
エルから?
って、あぁ、そうか。
エルの隠している名前はレオナール・ド・オーゴン。
ローズさんの兄、つまりはローズさんと同じ王族だ。
ローズさんを経由して話がいっていてもおかしくない。
エルが直接話をもってくると、ローズさんの面目が立たないからロスを経由してってことかもしれない。
「で、なにかいい策があるのか?」
「ちょうど、セブンリング商会でもいい物件がありまして。すでに当主も了承済みの案件です」
ロス……なんて仕事が早い。
ローズさんを経由したなら知ってても今朝とかだろうに。
「……いいのか?」
書類を見たギルドマスターがロスに尋ねた。
「えぇ、当主もギルドとのつながりをより強固にしたいと考えていたらしく。快諾していただきました」
「うーん。あとが怖いが背に腹は代えられんな。リュウ。この物件も確認してくれ」
ギルドマスターからもう1枚、物件資料がよこされた。
比較的大きな交差点の場所で対角には衛兵詰所、対面には公衆トイレ。
建屋は比較的大きな倉庫風で高床式。
元薬草や穀物を入れる倉庫だったが、現在は空き家で角材や板材の屋内保管を行っている。
内部の角材、板材と抱き合わせになるため金貨200枚。
初めての取引の為、150枚に減額するって、うん?
「これって倉庫の建屋なのか?俺、別に倉庫はいらないんだけど?」
「リュウ、倉庫として別邸を持つことは冒険者でも別におかしなことではありません。この辺りでは確かに少ないですが、王都やもっと南の方では専門の業者がいるくらいです。リュウの今回の討伐の量を鑑みれば牙や革などの長持ちするものがあぶれてもおかしくはありません」
「確かに。アスタランテは討伐から買い取り、流通消費までが比較的早いからあまり倉庫は使わないけど、安定した土地に行けばもっと消費までの時間はゆったりになりやすいわね」
へぇ。
そういえばいつだったか、ロスが俺のジャイアントボアを夜中に運び込んでくれた時は、一緒にオークがあったみたいだけど、早かったもんな。
第二解体所とかも使ってくれてたみたいだし。
やっぱり何か土地柄みたいなのがあるのかもな。
実際、インベントリがあるから倉庫はいらないといえばいらないんだけど、まったくないのも不審がられるかもしれない。
「どうです?とりあえず、内見だけでもしてみませんか?」
内見だけならしとくか。
そう、ロスに勧められて、俺達は荷物をまとめるのであった。
……まぁ、俺、荷物はインベントリの中だからないんだが。




