3-15.対オークキング決着
うん。
意識が戻った。
周りは炎だらけ。
そりゃそうか。
全然熱くもないし痛くもない。
そういえばいろいろ耐性付与したとか言ってたな。
でもちょっと人外っぽくてなんか嫌。
それに熱くはないけど服は燃えそう。
今は革の上着があるからそんなに燃えていないが。
さて。
俺は横っ飛びに炎の中から抜け出す。
腕を使って一回転。
オークキングを始め、オークたちが驚いていた。
そりゃそうだ。
普通、あれだけの炎の中から無事に出てくるとは思わん。
よし!
とる必要はないけど機先を制した。
俺はインベントリから2本包丁を取り出して後ろに居たオークに投げつける。
オークの頭部にそれぞれ包丁が刺さった。
Buhyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?
後ろのオークたちから悲鳴が聞こえる。
これで2匹。
俺は前方に飛び出す。
その方向には残るオークが1匹。
俺はウェルチ包丁を薙いで首を刎ね飛ばす。
良し。流石に生きてないだろ。
俺は首を刎ね飛ばしたオークをインベントリに収めその足で2匹のオークの元へと飛ぶ。
イイ感じに2匹が近くにいる。
俺は1匹目の頭部……包丁の柄目掛けて足から飛び乗る。
オークの頭部に刺さった包丁が俺の体重でさらに深く刺さる。
Buhyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!
断末魔のような悲鳴がオークから聞こえる。
が、今は無視。
俺は再び足に力を籠め飛ぶ。
もう1匹の目の前に飛び降りる時、頭部に刺さった包丁を無理やり引き抜く。
インベントリで手に持った包丁とウェルチ包丁を入れ替えて横なぎに払う。
上半身と下半身がきれいに分かれた。
ドシン。という巨体が倒れる音が聞こえた。
俺は2匹のオークの死骸をインベントリに入れる。
これで、ヤツは食って回復するなんてできなくなったわけだ。
やたらと身体が軽い。
なんだか戦っているときは自然と身体が動く。
これがバアル=ゼアルの言っていた体に馴染ませたって事だろうか?
Buhyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!
オークキングが突進してくる。
相変わらず、単調な直線的動き。
ちょっと芸がない気がするな。
俺はオークキングの腕の振りに合わせて屈みこむ。
オークキングの腕が俺の上方を通り過ぎる。タイミングを合わせてオークキングの膝の裏を蹴り上げる。
これぞ秘儀、膝カックンローキック!
オークキングはそれだけでバランスを崩し、無防備に仰向けに倒れこんだ。
その巨体を支えているなら、足は当然弱点だろ。
実は3週間の訓練でトマスに言われていた。
「リュウ、君の剣術は素人だ。だから、剣術にこだわるな」
「剣術にこだわらない?」
「お前の相手は少なくともしばらくの間は熟練の冒険者や騎士ではない。せいぜい盗賊や兵士崩れ程度だろう。それに基本は魔物相手だ。形式ばった決闘は起こりえない」
あー、まぁ。確かに。
出来れば冒険者や騎士と戦うことなんてそうそうないだろうな。
「だから、使える物はすべて使え。棒切れ、たいまつ、やり、そこら辺の石ころ。知能の低いものなら、それで完封できる」
へぇ。ダーティーファイトってやつかな?
「ちなみに、知能が高いやつには?」
「決闘の形式を勉強しないと戦えないな」
にやにやとトマスが笑う。
それは確かに面倒そう。
「だから、決闘以外だったらどうとでもなる。裏をかけ、死角を突け、弱点を探せ。……最後に生き残った者が勝者になる」
そう、トマスに言われていた。
最後に生き残った者が勝者、か。
まったく。
この世の真理だよ。
俺はトマスの助言に感謝しながらオークキングの喉元にウェルチ包丁を突き立てたのだった。
「ふぅ。何とかなったか」
俺は突き立てたウェルチ包丁とオークキングの死体、それにオークキングが持っていた宝珠をインベントリに収める。
豚は鳴き声以外捨てるところがないって言うしな。
出来る限り綺麗な状態をキープしておきたい。
今後もオークは首を斬り飛ばすか窒息がいいかもな。
そういえば屠畜場でもガスや電気ショックを使うって言うし。
あー、でもそういえば屠殺するときは事前に休みをはさんで肉質を維持するとかも効いたことあるような?
現状、首を切り落とすのが一番きれいに体を残せるし、こればっかりは魔法でも使えないと今はどうしようもないな。
ガスの場合は二酸化炭素とか窒素だっけ?
確か一酸化炭素は使っちゃダメみたいなことを聞いた気がする。
カルボキシミオグロビンとかいう物質が出来て肉が傷んでも真っ赤のまま保たれる現象が起きるんだよな。
食品衛生の観点からダメだったのは覚えている。
それに一酸化炭素自体がヘモグロビンと結びつきやすく、ガス漏れや残渣で作業員が中毒を起こす可能性を考慮されて禁止されていたはずだ。
エルが使っていた魔法は風を操って対象を切る風、ソニックブームのようなものを作り出していたし、二酸化炭素くらいなら操れないかな?
ちょっと今度エルに風魔法を教えてもらえないか確認してみよう。
魔法と言えば、いいかげん火魔法を教えてくれるような人を見つけたいな。
鉄板街灯亭で節約していたとはいえ、ライターやチャッカマンはできれば節約したい。
火魔法なら着火剤としては十分役に立つだろう。
あの魔法道具屋の店長とか、ロスあたりが知らないだろうか?
いや、いっそアルミニウムを探して精錬してマグネシウムライターを作ったほうが早いか?
……だめだな。精錬の仕方がわからないし、そもそもどんな状態で採掘されるのか知らない。
まてよ?確か海水から製塩した際にとれる『にがり』って成分的には塩化マグネシウムだよな?
ということは海から塩を作るときにできるのだろうか?
いずれ、『焼肉のたれ』を作ろうと思うと醤油は絶対必要になってくるから、副産物として『にがり』が入手できるかもしれない。
そして、しょうゆと言えばやはり和風の味付けには不可欠な調味料だ。
『焼肉のたれ』をはじめ、生姜焼きなどのたれにも使えるからやはり醤油づくりは必須だろう。
『にがり』は豆腐の凝固剤としては有名だが、白米を炊くときに甘味やツヤを出すために使うこともできるし、塩麹の様に肉を柔らかくするときにも使えたはずだ。
よし、とりあえず、当面の目標は『にがり』の入手。その次は『大豆』と『白米』だな。
最終的には醤油づくり、みそづくりにチャレンジしたい。
醤油も味噌も焼肉には欠かせない調味料だしな。
ネックは『麹』の入手だが……。たしかアレって日本とか東南アジア限定の気候が必要だったような。
まぁ、とりあえず。今はエルフたちをオリーヴィアの里に連れていくことを優先しよう。
ん?
俺は洞窟の広場の端っこの方にあったモノが目に入った。
なんだ?コレ?
俺はそれを拾い上げる。
石に彫り込まれた、何かの、紋章?
大きな丸と、複数の三角が丸の周りに……。
あぁ、太陽か。
それに、これは細身のドラゴン?
なんか蛇に羽根が生えた感じ。
羽根が異常に大きく見えるし、尻尾が松明みたいに燃えている。
よくよく見ると羽根の上の方は剣のような意匠に見えなくはない。
なんだろ?
まぁ、普通に考えたら元々ここが何かの隠れ家か宗教施設だったって感じか?
洞窟の中だもんな。
俺はそんなことを思いながら、石を適当にインベントリの中に収め、洞窟の入口へと向かっていくのであった。




