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異世界焼肉道  作者: グッチ
1.森に出ずんば、極上カルビを得ず
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1-4.初めての討伐(※解体)

解体シーンが描写されています。

苦手な方はお気を付けください。

 巨大な猪の前に立つ。

 興奮しているのか、鼻息が荒い。

 ……その鼻息に乗って、強烈な獣臭が俺の鼻を突く。

 興奮した猪って本当に鼻息が湯気みたいになって見えるんだな。

 何となくだが、某アニメスタジオの有名な猪と狼と鹿みたいな神様が出てくるアニメを思い出した。





 やばい。ちびりそう。





 そういえば、ここにきてトイレに行ってなかった。

 まぁ、トイレって言ってもそこらへんでするしかないんだけど。

 って、それどころじゃなかった。

 と、ともかく。逃げることを考えないと!



 PYGHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!



 その大声と共に猪が突進してくる。

 いや、迫力すげぇ!?



「猪は!」

 俺は猪が目の前の焚火を踏んだ瞬間、何とか横に飛び退る。

「急には曲がれな……って!?」

 猪が踏んだ焚火に驚いてその場で暴れまわったせいで暴れた時に飛び散った灰やら炭が飛んできて顔に当たった。



 いってぇ!ってかあっつ!?



 やっぱり、漫画やアニメみたいにうまくはいかないか。

 直進の突撃を食らわなかっただけマシか……。

 なんか、いきなり動いたせいで足痛いし。



 PYGHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!



 いや、なんかめちゃくちゃ怒ってらっしゃる!?

 いやいや、そりゃ熱かったかもしれんが、お前それ勝手に踏んだんじゃねぇか!?

 俺にキレるのはお門違いだろ!?

 てか、そんなこと猪に言ってもダメですか、そうですか!



 とりあえず、逃げる!



 俺が背を向けて走り出そうとしたとき、足に何かが当たる。

 ん?これは……。


 剣だ。さっき死体から拾ったもの。

 しまった!さっきの馬車も手じゃなくてこの剣で解体すれば……。

 とか言ってる場合じゃねぇ!!

 とりあえず、これで何とかするしかない!

 俺は剣を構える。

 剣なんて使ったことないから見様見真似だが。

 切っ先が折れているのが何とも頼りないが。



 チリチリチリ……。



 まぁ、無いよりは圧倒的にマシなはずだ。

 チリチリチリ……。

 これがないと、あとは同じく死体から拝借したナイフだけ。

 チリチリチリ……。

 ナイフよりは有利に戦えると信じた……。

 チリチリチリ……。


 ん?なんだ?さっきから?

 チリチリチリチリと音がするんだが。


 あぁ、猪の足元の火が足の毛に燃え移ってるのか。

 なんだか、微妙に肉の焼ける匂いが……。





























 …………うまそうだな。

 この匂いは荒々しいが俺の好きな焼肉の匂いだ。






 なんだか、絶対肉が焼けてるはずがないのに、肉の焼ける匂いを感じる。

 幻覚なのだろうか?

 なんだか口の中に仄かな肉の旨味と脂の甘みを足したような味がする気がする。

 何だろうこの感覚。





 PYGHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!





 考え込んでいた俺に大声を上げながら猪が突っ込んできた!

 不思議と、さっきまでの恐怖心はない。

 気付けば俺は猪をいなし、空中で体を捻っていた。

 まるで、自分の身体じゃないみたいだ。

 そのまま右手に持った剣を振り下ろす。

 振り下ろす瞬間に、猪がバラバラになったようなヴィジョンが見えた気がした。

 俺の右手はそこに吸い込まれていくように振り下ろされる。

 遠心力のたっぷりと乗った剣は猪の首を深く傷つけ、猪が悲鳴を上げた。


 申し訳ないが、俺の腹に収まる食材になってもらおう。


 そんな考えが俺の頭をよぎる。

 いやいや、いくらなんでもそんな思考にはなったこと……。

 そう考えているうちに、俺の持った剣は巨大な猪にとどめの一撃を首に加えていたのだった。



 ドシン、という音と共に、その巨体が倒れ伏せた。











 え、まじ?

 倒せた?

 なんだか自分の意志じゃないというかなんというか。

 俺だけだとこんなの絶対倒せないと思うんだけど。

 これはあれか。転生チート的な奴。

 能力値が抜群に高いとか、チート的なスキルを持ってるとか。

 まぁ、ステータスが見れないからわからんのだが。

 つんつん。

 剣でつついてみるが反応がない。

 まぁ、だろうな。

 だって首が半分くらいちぎれてるもの。



 ……とりあえず、飯だ。

 しかしどうしよう。解体の仕方なんて知らんぞ。

 しかもこの巨体。

 動かせそうもない。

 どうしたもんかな……。とりあえず、このナイフの刃が通ればいいんだが。

 腹が柔らかそうだな……。

 俺は持っていたナイフを腹に刺してみる。


 ドバっと血があふれ出した。


 ひぃ。

 けどこれを我慢しないと飯にありつけないからな。

 ……ちょっと血が流れきるまで待ってみようか。

 血抜きの知識がないのが悔やまれる。

 ただ、首も落ちてるから血は勝手に流れていくだろう。

 そういえばテレビ番組かなんかで吊るしたりした肉を切り分けてるのを見たことある気がする。

 あれってひょっとして血抜きをしてたのかな?

 ただこのサイズじゃ吊るせないよな。

 せめてロープが新品だったら挑戦していたかもだけど。


 ……。

 流れきったかな?

 とりあえず、内臓を捨てとくか。

 多分洗浄しないと食べれないし。

 っと腹を捌くならこのサイズだから剣の方が良いよな。

 うーん。ナイフの方が切れ味は良いが剣の方が開くにはよさそうだ。

 試してみると、剣は切れ味が悪くなっているとはいえ、長いのでてこの原理でなんとか行けそうだ。

 刃こぼれした剣を、鋸のようにギコギコと押したり引いたり。

 硬い毛皮に阻まれて、脂汗が止まらないし、どうも腹の脂が付いているのか、だんだんと切れ味が悪くなってきた気がする。

 半分くらい開けたところで内臓がボロッと出て来た。


 うげっ。

 ちょっとこれはグロい。

 スコップでもあれば掘って埋められるんだが。

 ヤバいな。何も考えてなかった。

 幸いにも俺のキャンプ地から少しだけ離れているので一日くらい何とかなるだろう。

 ……川にでも捨てるか?

 いや、でも町の水源だったりしたら汚染が怖いしな。

 町に迷惑をかけるのもそれはそれで違う気がする。

 あぁ、あの門番さんが片づけられる人を呼んでくれたりしないかな。

 明日聞いてみるか。

 それより、何より今できることをしよう。


 ある程度内臓を出していって、多分食道と思われるものを引っ張り出して切ってみる。

 猪って雑食だったはずだから胃酸も強力だろうし十分に注意。

 口を下にしない様に取り出して身体の外側に向けて降ろす。

 これで液体が逆流しても地面に流れ出るはずだ。

 手袋とかエプロンが欲しいなぁ。

 そうだ。幌の前面部分が余ってたよな。

 とりあえず、幌を確認してみると前面部分が丸々残っていた。

 ラッキーだったな。

 とりあえず長めの布だったから、肩から下げて前側を広げる。

 後ろは腰から前に通して腰に巻く。

 ロープもちょっとだけ余ってるな。

 股下の部分の固定に使わせてもらおう。

 若干、不安ではあるが。まぁ、無いよりはましだろう。


 良し。改めて解体をしてみる。

 食道を引っ張り出してナイフで切ってしまう。

 するとその先にある内臓はズルズルと引っ張られて出て来た。

 うん。良い感じ。

 後は腹を開いたときに支えにしていた剣をもう少し引っ張って開いてみる。

 よしよし。

 結構でてきたな。

 ちょっと見た目がグロいが、やってやれないことはないはずだ。


 ん?


 突然、強烈な匂いに顔をしかめる。

 なんか、内臓傷つけて液体が溢れてきたっぽい。

 この匂いは……、もしかして尿の匂いか。

 いや、やばい。これはヤバい。とんでもない匂いだ。

 とりあえず、匂いが広がらない様に、小さな穴を掘ってそこに尿がたまるようにした。

 その辺の草とか枯葉を詰めとけば多少は緩和されるだろう。

 まぁ、肉は洗えば何とかなるかも。





 とりあえず、内臓とかその辺はなんとかなった。

 あとは飯に出来る場所の選定だな。

 確か、カルビってあばらの肉だよな。ここは絶対確保。

 ロースって背中に近い肉だよな?

 ナイフを通すと意外にも簡単に刃が通った。

 右側に倒れているので右半身は一旦無視。

 左半身を中心に切り出していく。……骨には流石に刃が通らないな。

 よし。毛皮を避けて開いていくが俺が素人のせいか、なかなかうまくいかない。

 大変だなぁ。こりゃ。




 俺達が当たり前のように食ってた、カルビやらロースやら、ヒレなんて部位はこんな大変な作業をしてくれる人がいてこそだったんだなぁ。感謝しないと。


 ふと、俺は猪の顔を見ると目が合った気がする。

 もう絶命しているから確実に見えていないはずだけど。

 なんだか、猪が俺に何かを訴えかけている気がした。


 現代じゃ、こんなこと感じるなんて絶対になかっただろうし。

 俺の知り合いの子供は肉はパックで生産されると思っている子もいたしな。




 俺は今日の糧になってくれた猪に感謝しつつ、解体を進めていったのだった。

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