3-11.襲撃犯
途中で視点が変わります。
ご了承ください。
「さて。カルバラ、現状は?」
「家屋が三軒燃えたみたいだ。後はさっき切った木だな。ちょっと里が広くなっちまった」
あ、戻すの忘れてたわ。
「すまん。俺が収めた家全部戻しとくよ」
俺は家を元あった場所に戻す。
「……もうやりたい放題だな、おまえ」
ん?あ、やっぱり?
ちょっとやり過ぎた感はあったけどさ。
次からは自重しよう。
「あの、皆様。この度はありがとうございます」
え?あ、うん。
俺達の目の前に現れたのはエルフの……青年?
「この里の里長をしております、レヴィアラ・ロア・アローネ・ウェル・オリーヴィアと申します。この度は何とお礼を言ってよいか……」
見た感じは若い感じなんだが、里長なのか。
見た目から受ける印象よりも落ち着いて見えるが。
「里長、礼は後でいい。被害状況は?」
エルが被害状況を確認し始めた。
「幸い、皆様のおかげで火の手は落ち着きました。民家が三軒焼けはしましたが、これらは解体予定のものだったので問題ありません」
「人的被害は?」
「男が42、女が26。死亡したり行方不明になっています。……その内、14名は連れ去られたようです」
「連れ去っただと?」
周囲がザワッとした。
「なぁ、エル。連れ去ったってどういうことだ?」
分からなかったので素直に聞いてみた。
食料としてだろうか。
「繁殖のためだ」
繁殖……繁殖?
「……そうだな。リュウ、なぜ強さとしてはそれほど強くない、知能も高くない魔物であるオークが、Cランクに分類され、一級討伐対象となっているか知っているか?」
「いや?」
すまん、というか一級討伐対象ってなんだ?
「見つけ次第討伐。オークをはじめとした一部の魔物は人間、エルフ、ドワーフ、獣人の女性を繁殖に利用することがあるのだ」
うへぇ。
それって、つまりあれか。
成人向けゲーム産のオーク。
「もちろん、同種同士の繁殖が基本だが、まれにキャラバンから攫ったりしてその相手を繁殖に使用することがある」
最悪の相手じゃないか。
被害を受けた女性は勿論だが、聞いていてあまり気分のいいものじゃない。
エルの説明ではこうだ。
オークは群れで生活しており、彼ら自体は多産の傾向がある。
これは人間を利用した際も同じだ。
1回の出産で5~10匹出産するため、群れはあっという間に大きくなる。
しかし、それはオークならともかく、人間はそんな出産にはそう何度も耐えられない。
結果として使いつぶされるのが常だ。
そもそも、人類と明確に違う点として、人間、エルフ、ドワーフ、獣人を含めた人類は異種同士……、例えば鉄板街灯亭の亭主さんとおかみさんのように、ドワーフと人間のペアであれば、生まれてきた子供は必ず母方の種族と同じ種族になる、という法則がある。
オークはこの理に反し、どういう訳か生まれた子供は全てオークになる。
しかも、出産時はオークと同じように5~10匹出産となるそうだ。
このような特性を持つ魔物はいくつかいるらしいが、特に出産数の多いオークはその繁殖力から危険視される一種類とされており、一級討伐対象つまり見つけ次第討伐。常にギルドで買い取り報酬、とされているそうだ。
そうなってくると素材の買取価格が落ちそうなものだが、そこはギルドが調整し、冒険者にはそれなりの金額払う事で討伐数を稼いでいるそうだ。
もっとも、その肉は食料になり、革は椅子などの素材としてそれなりに重宝されているらしいが。
……食料?
え、食料?
人型の豚を?
いや、そういえば市場でも売られていたな。
呼び込みの声も聞いた気がする。
この世界の住民ってしたたかだよな。やっぱり。
それはさておき。
「それで、里長。オークの襲撃で里が破壊されてるのはわかりますが、なぜ火事が起きていたのだ?」
エルが説明を切り上げて、そう里長と話をつづけた。
「実は……、襲ってきたオークの中に、一匹強大なものが居ました」
里長が深刻に答えた。
「強大なもの?……!まさか、オークキングか!?」
「オークキング?」
俺の質問にエルが答えてくれる。
「オークキングはオークの中から群れの長となる個体、その中でも特に強力な個体でな。普通のオークが2m程度に対して、オークキングは2.5m近くなる。体重も肉の量も格段に増えてな。その危険度は跳ね上がる」
「オークキング。確かにアレはオークキングと呼ぶにふさわしい体格でした……、しかし、ヤツは普通のソレとはわけが違います」
エルの言葉を里長が否定した。
「どういうことだ?」
「ヤツは、火の魔道具を使っていました」
「魔道具を……使っていただと?」
「おいおい、そんなのアリかよ……」
里長の言葉にエルとカルバラが驚愕の言葉を漏らす。
魔道具といえば俺がエステルアリト商会で使ったステータスを見る道具とかがそれだな。
アレを使えるって事は、結構知恵が回るのかな?
いや、待てよ?もしかして魔法のない世界から来た俺でも使えたって事は意外とこの世界にいる奴なら使えたりとか……。
いや、エルとカルバラの反応から、それはないか。
「火の魔道具を扱えるほどのオークとなると……いよいよ脅威だな。依頼外の仕事になるが……いや、ここは国の兵に知らせるべきか?」
依頼。そうだ。依頼だ。すっかり忘れていた。
「すみません、里長。依頼で思い出しました。レモン女史はどちらに?先にこちらに向かったはずなのですが」
「……レモンは、」
里長が大きく一呼吸置く。
「連れ去られました。オークキングに」
……マジかよ。
--- オリーヴィア近くの洞窟 ~オークの巣~ ---
「ん?……ここは?」
私は暗い場所で目が覚めた。
空気の澱み方や暗さから考えると……ここは洞窟の奥の方、それもかなりの湿気を含んだ場所みたい。
Buhya!……Buhya!Buhya!
アレは、オーク。
私達はオークに連れ去られたのかしら。
それにしても、身体が動かせない。
もしかして縛られているの?
どういうこと?オークがこん棒以外の道具を使うなんて聞いたことがない。
それに……。
私は辺りを見回してみる。
私と一緒に連れ去られた14人の女性、全員がその場にいた。
……おかしい。
オークは知能の低い魔物。
確かに私達女性にとって脅威度は高い、でも私の知る限り、彼らはこうやって獲物を持ち帰って巣に転がしておく、なんてことはしないはず。
どういうこと?
1つ、嫌な予感が頭をよぎる。
オークはもしかして、知恵をつける方向で進化し始めているのではないか、と。
そう考えなければこの襲撃から、私達を監禁している行動は理性的過ぎる。
出来れば、その考えは現実のものになってほしくないですね。
私はすこし、身じろぎする。
その瞬間。
Buhya!……Buhya!Buhya!
檻の前にいるオーク一匹と目が合った気がした。
ニヤリと、目のあったオークが笑った気がする。
下卑たオスの目だ。
といっても意思疎通のできない魔物。私の気のせいかもしれない。
オークが立ち上がり、こちらに向かってくる。
よだれが檻の向こう側でオークの口の端からこぼれた。
餌か、苗床として認識したのか。
本当に、こいつらは人族と相いれない。
生理的嫌悪感すら感じる。
Buhya!……Buhya!Buhyalala!!
Buhya!……Buhya!Buhya!
奥の方から別のオークがやってくる。身の丈が他のオークより遥かに大きい。
なにか、口論しているようね。
オークたちの意思疎通に言葉のような鳴き方をするとは思いませんでした。
下卑た視線を私の方へと向ける大きなオーク。
その視線だけで吐き気を催すほど不快さと心の底からの恐怖を植え付けてくる視線。
私の反応に満足したのか、オークは檻の前から立ち去って行った。
……誰か。誰でもいい。
お願い。
早く助けに来て。
……私達の心が絶望に染まる前に。




