2-13EX.こだわり者たちの集い
今期はEXです。
転移前のお話。
主人公と友人たちの話です。
「HEY!リュウ!これまでで一番Fireな味醂を持ってきたよ!」
「カイ、お疲れ。優斗と久志ももうきてるよ。それはそれとして、荷物預かろう」
「Oh!kindred spirits!日本も久しぶりだからネ~!会えてうれしいヨ!」
「……普通にしゃべっていいぞ。その付け焼き刃のエセ外人風、なんかおかしくなってるし」
「……あら、そう?そりゃ失礼」
俺は部屋にガタイの良い外国人を招き入れる。
まぁ、こいつは見た目は外人だがある意味日本人より日本人している男だからな。
「前から思ってたけど、そのエセ外人風なんなんだ?」
「いやなに、ふと話しかけられたときにこうしとかないとボロが出ちまうからな」
「ボロ?」
「実は日本語喋れるってさ」
「前から思ってたが、それの何がいけないんだ?」
「え?だって日本人は日本語通じないと話しかけてこないじゃん?面倒なことは少ないに限る」
「あ、そう」
たしかに、こいつはそんなところがあるな。
俺達はそれぞれがそれぞれの分野で変態レベルな自覚はある。
中でもこいつは日本の味醂に魅せられて味醂を自作する変態だ。
こいつはカイ・ジェームス・ミラー。
故郷はニュージーランド。
ニュージーランドでは自家製の酒造りは合法だ。
両親の都合で高校から10年程、日本で暮らしており、そのころ魅せられた味醂をどうしても再現したくて実家で色々試している。
もちろん俺達も協力している。
こいつは日本でできないそれを実家のあるニュージーランドで実験しているのだ。そんなやつを変態と呼ばず何と呼ぶのだろう。
実はニュージーランドは自家製の酒が造れる国の中で米が手に入れやすく、米麹や焼酎を作りやすい環境下にある。
難点は水の調達だが、こいつの家では水利権を買っているらしく、実験区画程度なら問題なく運用できるらしい。
ちなみに、下水道がないから、水をじゃぶじゃぶ使う日本人には慣れが必要だから注意だ。
「今回の味醂は何から作ったんだ?」
「品質の高いジャポニカ米が向こうで手に入ってな。これと他に仕入れたり作った米を俺なりにブレンドしてみた」
俺はもらった味醂の蓋を開いて、香りを嗅いでみる。
今までより甘く、芳醇な香り。
嗅いだ感じだと少し酒精が強いのかもしれない。
味醂は大雑把に言えば、もち米を麹菌で分解して甘みを米焼酎に溶かし込んだ調味料だ。
甘みと酒精のバランスを保つのが大変で素材の味にモロに影響を受ける難しい調味料だ。
タレや味付けに使う際も実は結構気を遣う調味料でもある。
焼肉のたれを作るには絶対に欠かせない調味料で、焼肉のたれの深みと甘みを出すには必須の調味料と言える。
「長めに寝かしたから香りが強いだろう?多少使い方にコツはいるかもしれないが、良い味に仕上がってると思うぞ」
「ありがとう、後でいろいろ試してみよう」
「頼むよ。俺が知っている中ではお前は最高の料理にn……焼肉師だからな」
今料理人って言おうとしなかったか?
悪いが、俺は料理人じゃなくて焼肉が好きなだけの男だぞ?
「おー!来たな、カイ!」
「先、始めてるにゃ~、カイ~」
「優斗!久志!1年ぶりだな!」
俺達が部屋に入るとそこには筋肉質と細目の二人の男。
菅原優斗と吉川久志だ。
優斗はカイと高校が一緒で、漬物マニアだ。
漬物、というのは俺たちのイメージだと浅漬けやたくあんなんかをイメージしてしまうが、それだけではなく梅酒や梅干し、醤油、味噌、甘酒、魚醤など様々なものが含まれる。
こいつの部屋はそれらの瓶や壺が所狭しと並べられ、特に魚醤が並べられたエリアは苦手な人にとっては恐怖エリアらしい。
ちなみに、味噌や醤油などはわざわざ別の環境を作っているほどこだわっている。
久志は先の二人に倣うなら、干物マニア。
鰹節や高野豆腐、乾燥昆布、干瓢や燻製機とか、とにかく色々。
出汁の目利きならこいつが一番ってやつだ。
実は利き出汁選手権で準優勝したガチの実力者。
干物の出汁であれば完璧に利き出汁してしまう乾物の変態。それが彼だ。
なお、語尾がにゃーとかいう、ふざけた感じをしてるが、それ以外は研究熱心ないたって普通の男だ。
ちなみに筋肉質な方が優斗で細目の方が久志だ。
「HAHAHA!優斗!相変わらずすごい筋肉だな!」
「ばっきゃろぅ!人の事言えるか!その体脂肪率を見せてみろ!」
優斗とカイが組み合う。
相変わらず、この筋肉組は仲がいい。
まぁ、二人とも高校からの知り合いらしいからウマが合うのだろう。
「はは~、相変わらず暑っ苦しい二人だなぁ!リュウ!ビール追加で~」
「ばかたれ。相変わらず酒に弱いな、お前は」
俺は酒の代わりにグラスに入れたミネラルウォーターを渡してやる。
久志は顔の色が変わらないからわかりづらいが、ビールは二口で酔っぱらってしまうタイプだ。まぁ、こいつの場合は酔っぱらってからが長いから実は酒に強いんじゃないのかとは思っているが。
乾物を食べると嫌でも酒が欲しくなるだろうに。
難儀な奴だ。
「ほれ、つまみだ。久志の生節に優斗のもろみ味噌を付けたものと、葉ワサビの醤油漬けと鹿のジビエの干し肉の和え物。カイはビールでいいか?」
「ディーゼルをくれ」
「はいはい、ビールとコーラね」
俺は冷蔵庫からヴァイツェングラスとラガービール、コーラを出して渡してやる。
ディーゼルというのはビールとコーラのカクテルの事だ。
こいつがよく飲んでいる酒の一つだ。
「さて、じゃぁ、久々に全員揃ったことだし、改めて……」
俺達は各々グラスを持ち好きな酒を注ぐ。
「「「「乾杯!!!!!!!!!!!」」」」
各々のグラスが小気味よい音を鳴らした。
「さて、さっそく各々研究の成果を発表するとしよう」
「はいは~い。今回は誰から行くにゃ?」
「今回は俺からだな!」
優斗が立ち上がり荷物から瓶を取り出す。
「今回は配合を新しくしてみたんだが……」
そう、俺達はこうして時折集まって、それぞれの研究成果を発表している。
互いの研究はいい刺激になるし、意外な面から新しい方法を思いつくこともある。
なのでこういった会はすごく楽しい。
いつまでもとはいわないけど、こうやって刺激を与えあっていきたいと思っている。
ま、異世界にでも行かない限り解消することはないだろうけどな。




