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異世界焼肉道  作者: グッチ
2.初めに肉ありき。友は火と共に来たりて
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2-11.冒険の始まり、詰所と薬草採取

 大通りを進んで門の近くまでやってきた。

 大通りはやっぱり広くて掃除が行き届いているな。

 流石、ロスが自慢するだけはある。


 うん?

 なんだあの人だかり。

 ちらっと上に目をやると、ここは他の絵だけの看板と違ってしっかり文字が書いてあるな。

 えっと……、衛兵詰所?

 え、詰所?

 なんでこんな人だかりに……。

 何か問題でもあったのか?


「次のパンの焼きあがりはどこだ?」

「北八番通りが焼成中だな、あそこのパン、美味いんだよな」

「鍛冶ギルド所属で余裕がありそうなところはあったか?」

「うんにゃ。どこもかしこも受注上限超えてら。こりゃ来週には間に合わねぇぞ」

「商隊の編成状況はどうだ?」

「あー、明後日発の商隊があるな。東行きって事はアルサンピーク向けか。交渉してみるか」


 うん?どういうことだ?

 ここは衛兵の詰所だよな?

 俺の知識が正しいなら衛兵ってのは町の警察とかそんな組織だよな?

 パンとか鍛冶とかそんな単語が聞こえるのはなんでだ?

「すまない、これは何の集団だ?」

「なんだ?あんた。アスタランテは初めてか?ありゃ詰所だ」

 すぐ目の前で始まった会話に俺は耳をそばだてた。

 せっかくなら便乗させてもらおう。

「詰所ってこんなに人が集まるようなところじゃないだろ?」

「アスタランテの詰所は、近所のギルド所属の店がああやって詰所の一画に木札で店の状態を表示してるのさ」

「なんで詰所に?」

「なんでって、そりゃ詰所は一日中開いてるじゃねぇか。店や職種によっては朝早かったり夜遅かったりするだろ?そういった情報を一日中開いてる詰所で管理してもらってるのさ」

「へぇ。面白い工夫だな」

(へぇ。面白い工夫だな……)

 ……しまった。感想が被ってしまった。

 声に出なくてよかった。ちょっとだけだが恥ずかしい。

 要はこういう事か。

 近所の店が自分の店の宣伝や情報出すのにいつでも開いていて、だれでも確認できる詰所が最適だったって話か。

 確かに確実に24時間開いているだろうし、良いシステムだと思う。

「それで、どんなギルドの情報があるんだ?」

「詰所によって違うが、大体はパン窯ギルド、鍛冶ギルド、食事処、馬屋付き宿屋の空き馬房なんかが多いな。ここはそれに加えて行商隊の出立予定なんかもある」

「商会の商品とかの情報はないのか?」

「個別の商品の入荷情報とか全部のせるなんて現実的じゃねぇよ」

 確かに。

 せいぜい大雑把にパンが焼きあがったよー。とか、後これだけ空き部屋があるよーとかそれが限界か。

 にしても、どうやってその情報をここに届けているんだ?

 そう思っていると俺の背後の方から子供が1人走って来て俺たちのそばを走り抜けていった。

「おっと!ごめんよ!」

 少年が人ごみをかき分けて詰所の中に入っていく。

「あれはアバンチのところのパン屋の子弟だな。ああやって店の状態が変わるたびに子弟が走ってくるのはアスタランテの名物だよ」

「へぇ。なんていうか、処変われば。って感じだな」

「そういや、あんちゃん。どっから来たんだ?」

「ん?あぁ、コンフォート諸侯同盟のポティランドからだな。兎肉好きの偏屈なおっさんと行商を組んでてな」

 そこから前の人たち、何とかの商隊男と、いかにも町民といった風体の男の雑談が始まってしまったので、俺は気づかれる前に門の方へ行くことにした。

 掲示板の件は後で帰ってきたときにでも確認しよう。

 今は人が多いし、確認していたら時間がかかるだろうからな。


 俺は門のところまでくると門兵に手を上げてあいさつする。

 この人は昨日門をくぐったときにもいたな。

 カルバラは……いないか。

 まぁ、流石に毎日毎日仕事はしてないだろうし、こういう仕事って多分、三勤制だろうから、今はいない時間なのかもしれないな。

 俺は今日の門番から外出の注意点をいくつか受ける。

 まぁ、重要になりそうなのは入市税は門をくぐるたびにかかること。あとは夜間だと門が開いている時間と閉まっている時間があることか。

 とはいえ、日が落ちてからもしばらくは開けてくれているようだ。

 本当は閉めた方が良いんだろうけど、駆け込める時間は少しでも長く開いておきたいらしい。

 リミットは日が落ちてから門番小屋の中にある竈の火が消えるまで、だそうだ。

 つまり、彼らが夕食を食ってから竈の火を落として、中の薪や炭が消えるまでは開けてくれているとのこと。

 ちょっとわかりにくいかもしれないが門番たちが駐留している部屋に窓があるそうなのでそこの火が付いているか消えているかで判断できるそうだ。

 そういえば一昨日何度か行き来している間にそんな窓があったかもしれない。

 俺は教えてくれた門番に礼を言うと門をくぐって外へと出て行った。


 さぁ、俺の冒険者生活の始まりだ!
























 とはいったものの。

 別段何の山場もなく、初めての依頼は終わろうとしていた。

 薬草採取とは言ったものの、要は森に生えている草を取ってくることが依頼内容。

 事前にギルドで姿かたちを確認していたものの、目的の草さえ見つけてしまえばそこまで苦労する依頼でもない。

 逆にこれでお金をもらって良いのかという気分にすらなってくる。

 来るときは気づかなかったが、この薬草は結構いろんなところに生えていた。

 群生しているような場所は見つけられなかったが、背の高い草のあるところには大体あるような印象だった。

 なので獣道から少しでも入っていくとすぐに見つけることができたのだ。

 俺が簡単に見つけられることができるって事は、俺以外のプロたちはもっと簡単に見つけられるんだろうけど。

 それにこの匂い。

 俺は別段苦手でも得意でもないのだが、パクチーの匂いを少しマイルドにしたような印象を受けた。

 背の高い草はイネ科の植物なのか、鋭い葉をしていたが、革手袋のおかげで草に手を突っ込んでもケガしないのは良いな。

 少し草の汁で汚れるけど、まぁ、手袋はまた買えばいいか。

 これが本当にパクチーであれば肉を焼くにはいい相棒だし、種……いや果実だっけ?は香辛料でいうところのコリアンダーシードになるはず。

 とはいえ、育て方とか知らんしなぁ。

 ふむ。

『焼肉のたれ』を自作するためにいくつかの種類の植物を家庭菜園で育てたことはあるけど、流石にパクチーをピンポイントで育てたことはない。

 コリアンダーのパウダーはスーパーで手に入ったしわざわざ育ててまで採取はする必要はなかったからな。

 恐るべし、現代日本。

 離れてわかる有難みよ。

 別にそんなに使う事はないけど、無いと分かって手に入ると思うと無性にやってみたくなるな。

 あ、そうだ。あの魔道具屋確かバラとかハーブみたいなものが多かったよな。

 今度聞いてみようか。

 俺は手ごろな石を使ってアマネ草を2~3株ほど根っこの土ごと採取しておく。

 あんまり取り過ぎるとギルドに言われたように罰金にされるかもしれないから今日はこのくらいで良いだろう。

 時間は……まだ、1時間くらいしか経ってないな。……よし。

 外飯でもするか。

 今日は七輪もあるし。

 炭はないけど薪は周りにいくらでもある。

 俺は土ごと採取したアマネ草をインベントリに入れて、代わりに七輪を取り出す。

 丸形の蓋と網が一体化した奴だ。


 網がある、火種がある、肉がある。


 これは焼肉するしかないだろ!






 BAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!





「ファ!?」

 突然の咆哮が周囲に響き渡る。

 驚いて変な声が出てしまった。

 慌てて取り落としそうになった七輪をインベントリに収めた。

 な、ななななななんだ!?

 何の声だ!?


 がさがさっ!!


 音の聞こえた方を反射的に向く。

 するとその草むらのある方から。


 BAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!


 巨大なゴリラ、いやゴリラ型の魔物が姿を現したのだった。

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