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闇魔術は通称であり、本来は黒魔術と呼ぶ。

この色の魔術は白と対角にあり、白が再生を司り、黒は死を司る。

要は何でも殺せる魔術なのだ。

だから人々は恐れる。

白魔術の使い手をヒーラー(聖女や聖人)と呼び、崇めるのに対し、黒魔術の使い手は闇魔術師と呼ばれ恐怖の対象とされる。


だがそんな黒魔術でも病気を治せるなんて……。

要は体の中にいるウイルスや菌を殺すのだ。

患者の体を、殺さぬよう慎重に。

そうすれば病を治せる。

ただし、それは病気だけ。怪我は完全に治せない。

怪我をした場所に菌が侵入してきたらそれを殺すことはできるが傷自体は治せない。

だからひとりではどうすることもできないが医師とセットなら百人力になれるのだ。


生き物を殺すことしかできないと思って絶望していたオーロラは必死でこの技術を磨いた。

黒魔術を使って身体から悪いものだけを殺す技術。


かわいい我が子イヴァンを育てながら必死で。


そしてようやくその技術をマスターした頃にはイヴァンは三歳になり、かわいいさかりになっていた。


「おかあたまー」


綺麗な金色の髪と碧い瞳。

かわいらしいその顔はオーロラとそっくりでオーロラの自慢の息子だ。

金色に輝く太陽みたいに綺麗な髪。

亡き母の髪は金色だった。だからきっとそれに似たのだ。

夫であったウォルター王太子は碧い瞳だったが、灰色の髪だった。

両親は持ちえないこの綺麗な髪は、黒い闇魔術しか使えない自分にとっては唯一の希望の光に見えた。

絶対にこの子を守らなきゃ。

この子のためにわたしは生きる。


そう思って必死に生きていた。


そう。それが前世の自分。


ふかふかの上質のベッドの上で目覚めた今、オーロラは全ての記憶を受け入れていた。


自分は回帰したのだ。

今まで忘れていたけれど、二度目の人生を生きている。


「まぁ。目覚めたのね?」


目の前であのはかない女性が心配そうに見つめている。


ああ、この人も覚えている。

あの日、クロワッサンを届けた時もやさしく微笑んでいた。


「あ、あの……」


オーロラは身を起こした。

静かな部屋の豪華なベッドの上寝かされていたようだ。


「よかったわ。あなたのお母様に連絡を入れたからもうすぐいらっしゃるわ。ごめんなさいね」


改めて見ると、この女性、とても高貴な身分ではないのか?

今まで子どもの知識だからお金持ちの家くらいにしか思っていなかったが、前世を思い出した今大人の知識で見てみるとこの立ち居振る舞いは間違いなく貴族だ。

しかもかなり高位の。

あの男の子もそうに違いない。

ここはルヴィエ王国だから、ルヴィエの高位貴族で間違いないだろう。


その女性がオーロラの手を取る。


白く透き通るような指。


その手がオーロラに触れた瞬間、オーロラははっとした。


この人からも同じものを感じる。

そうだ。あの男の子は……。


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