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「そうだ。うちに娘がもうひとり来たという噂がまわり始めているからな。どんな娘か品定めをするつもりだ。当日は王都の令嬢たちがこぞって集まる。中には婚約者など連れてきている令嬢もいるだろう。失敗はすべて王都中に筒抜けになるぞ」


なるほど。それでわたしに目付け役をということなのね。


「まぁお前がいれば安心だ。なんといってもお前は王太子殿下のお気に入り。世間での評判は上々だからな」


「はっはっは」と機嫌よく笑っている。


「あの時、返事を遅らせたままにしていてよかったものだ。あのままグラント王子の妃になっていたら今頃こうはいかなかっただろうからな。この辺りは俺の目利きのよさだな。はっはっ」


え?


「お父様。それはどういうことですか?」


「お前を迎えに行ってすぐグラント王子から婚約の打診があったのさ。王太子が亡くなったという噂があの頃王都中に広まっていたからな」


なんですって?

亡くなった?


「どこかの療養地で療養なさっていたが、病が悪化して亡くなったという噂だ。セシル王妃はルヴィエ王国から迎えた王妃だ。結婚の際同盟を結んでいるから同盟決裂で戦争になるのではないかという噂が広まった。両国の間でかなりの緊張状態だったんだ」


そんなにもひどい状態だったのね。

知らなかった。


「だがグラント王子は王子のままだった。俺はわが娘は王妃にさせると決めていた。だからしぶっていたら結局ウォルター王太子は生きており、予定通りお前を王太子の婚約者にできた。なかなかの筋書きではないか?」


満足気に笑っている。

まったく本当に自分の利害しか考えない人間だ。


「当のウォルター王太子がお前をそこまで気に入っていただけるとは思わなかったが、本当にお前は大誤算の娘だよ」


また豪快に笑っている。

不愉快を通り越してあきれる。


「エンジェルも公爵家の娘として役に立ってもらわねばならない。お茶会くれぐれも粗相のないように。今日仕立て屋を呼んである。オーロラも一着作らせるように」


「わかりました」


娘は政治の道具でしかない。

公爵家という地位を築いたのはある意味政略結婚の成果の果てだ。

だから文句を言うつもりはない。


だが、本当に空しくなる。


「お父様もああおっしゃているから。仕立て屋が来たらまた呼ぶわね」


「はい」


エンジェルの威勢のよい返事が耳にうるさくこだました。


その後部屋に帰って読んだ手紙にはひたすら謝礼の言葉が述べられていた。

これを見る限り悪い人ではなさそうだ。


だが本心はわからない。

なんと言っても般若の心を隠し持っていたエンジェルの母なのだから。


オーロラは手紙を丁寧に引き出しの中にしまった。

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