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【オーロラ・ジェニファー・グッドフェロー公女様

すっかりえらくなっちゃって驚いております。上流階級の手紙の書き方は知らないので赦してね。

頼まれた女性ですが、キノックス領にあるホスピタルに入れて今は順調に回復しているので安心してください。あと少し遅かったらもう助かっていなかったかもしれないわ。よくホスピタルに入れることを決意してくれたわね。訳アリの女性だというのはわかっているつもりです。

それと、ベラのパン屋はますます盛況です。あなたの母は今や街の有名人よ。あなたも食べたいだろうから日持ちのするクッキーを送るわね。

ベラには会っていないんでしょう?彼女も弱音ひとつ言わないけれど、あなたのことを気にしているはずよ。もし何か送りたいものがあるなら私に送ってくれたら渡すことは可能よ。

それくらいしかしてあげられないけれど。では、このくらいにしておくわね。

マーガレット・リーン】


そして手紙と一緒に入っていたのは母のクッキーだった。

懐かしい匂いだ。


「クティ。いる?」


「なあに?」


すーっと姿を表す。


「食べる?」


「え?これベラ母さんのクッキー?」


「そうよ」


「わーい」


クティといっしょに食べるとやっぱりおいしい。


クティはむしゃむしゃと食べている。


「精霊って何でも食べられるの?」


クティは前世から何でも食べていた記憶があるが、前世では生活に余裕があったわけではないのでそんなに食べ物をあげていたわけではない。ということは何も食べていないか、自分でどこかで食べてきているかどちらかだ。


「ほんとは食べなくても生きていけるんだ」


「そうなの?」


「うん。精霊の中には決して食べないものもいる。人間くさくなるって嫌うやつもいるよ」


「へぇ」


「僕は人間が好きだからオーロラがいいっていったら食べるんだ」


「人間が好きかぁ」


確かにクティはそうなのかもしれない。クティは魔力のない人間には見えないみたいでときどきオーロラのまわりをうろついているが誰にも何も言われたことはない。

でもいつも人間をおもしろそうに観察しているのだ。


「クティが人間くさくなるってこと?」


「かもね。他の精霊と会ったら嫌がるやつもいるから」


「それはいいの?」


「だって僕たちは人間のいろんな感情と自然との間で生まれたんだから人間がいないと生まれてなかったんだよ。だから僕は人間が好きだ」


「そうなの?」


「だから人間くさくなりたいんだ」


精霊についてはよくわかっていない。前世では生きるのに精いっぱいで暇がなかったが、今世になってからいろいろ調べてみたが、詳しい資料は何もなかった。人間を超えた存在なのであまり情報はないのだろう。

人間の感情と自然の間で生まれたものだなんて知らなかった。

そもそも精霊と交流している人間の方が少ないのだ。

オーロラがめずらしいのだ。

それにしても今の話からすると人間が好きな精霊はあまりいないらしい。

クティはめずらしい種類の精霊ということになる。


「僕はもともと夜の闇とか影とかのような黒い自然と人間の黒い感情から生まれてるんだ。精霊の世界でも黒い感情から生まれた僕は嫌われてる。だからどうせ嫌われてるからいいんだ」


「そっか」


黒い感情をもとに……。

精霊界でも黒い感情は嫌われるのね。

クティもわたしと同じ立場か。


「まぁいいんだ。僕にはオーロラがいるからね」


「そうね。ふたりで黒を背負って人を救うわよ」


「うん。望むところだ」


人を救うのが好きなんてまったく変な精霊だ。クティは。


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