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「オーロラ。少し付き合えよ」


「どうされたんですか?お兄様」


王太子妃の教育は週に一度だが、いろいろと宿題を出されるため家でこなしていたら兄のシーヴァが部屋に現れた。


「ダノンシャークに新しいケーキ店がオープンしたんだ。行かないか?」


ダノンシャークというのは王都ダノンソードの一番高級な貴族ご用達のお店ばかりがが立ち並ぶ一角だ。グッドフェロー公爵邸の王都タウンハウスのすぐ近くにある。

馬車に乗るまでもない距離だから歩いて行くということだろう。


「めずらしいですわね。ケーキなんて」


シーヴァはあまり甘いものが好きではない。なのに甘いものなんて。


「俺が食べるわけじゃない。仲直りさせるのさ」


「は?」


「父と母だよ」


「え?」


「おふたりは甘いものが好きだろう?」


そうなのだ。めずらしいことにふたりともお酒をいっさい飲まず甘いものを好む。


「では買ってきてお茶会でもするのですか?」


「まぁそういうことだ」


驚いた。シーヴァがそんなことを考えるなんて。

前世でのシーヴァはいつも卑屈に自分だけ公爵家特有の赤髪と金色の瞳を引き継げなかったことを嘆き、オーロラに対抗心を燃やし、嫌味ばかりを言っていたイメージがある。そんな人が両親の中を取り持つですって?


確かにふたりはエンジェルの一件以来、ほとんど会話をしているのを見たことがない。

食事の時はいつもブリザードが吹き荒れているかのようで、おいしく味わって食べることすらできないでいる。


「もうあれから二か月だ。さすがに長いだろう。仲直りしてもらわないとな」


「まぁ。それは」


「いいだろう?俺ひとりではああいう店は並びづらいからな。頼む、一緒に来てくれ」


手を合わせて頼まれると断ることもできず仕方なく一緒に行った。


その結果が今屋敷の中にある。

オープンしたてのそのお店はそれなりに繁盛していたが、グッドフェロー公爵家の、それも王太子の婚約者とその兄の公子がやってきたということで大騒ぎ。シェフ自ら挨拶してくれ、シーヴァが『家族のために特上のケーキをつくってくれ』と言ってしまったことで、シェフのひとりが出張してくれることになったのだ。


「シーヴァ。これはどうしたことだ」


半ば強引にお茶会だと称してシーヴァが呼びつけた。

家族全員ということでもちろんエンジェルもだ。

執務が暇な時期でよかったと思う。


「あなたが呼んだの?」


「はい。そうです。今話題の『ミルティ』の職人ですよ。わざわざおふたりのために足を運んでくれたんです」


「そ、そうなのね」


父と義母がちらっとお互いを見た。

おっ。もしかしてこれはいい傾向?

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