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会話は常にセシル王妃や国王から発せられ、ウォルターがそれに答えるものがほとんどだ。

幸せそうな国王を見るのもいいものだ。


だが、問題はグラント王子だ。誰とも目を合わせようとしないし、国王からの問いかけにも最低限の回答しかしない。

この中では唯一国王の色を受け継いでおり、黒くうねる髪に碧眼は国王そのものだ。顔だちも似ており誰がどう見ても国王の息子なのに。


オーロラはとりあえず聞かれた質問にだけ答えてやり過ごした。目立つのはよくない。


昨日ウォルターが言った言葉、『俺はここで何度も暗殺されかけている』

もしかしたら今この場所にいる誰かがその暗殺者かもしれないのだ。

暗殺者に目をつけられないためには目立たないようにするに限る。


「ところでオーロラ嬢。君はとても優秀だそうだな」


「いえ、滅相もございません」


「何を言う。教師たちが舌を巻いていたぞ。もう教えることはないとな」


「まぁ。それはすごいわね」


「うむ」


突如として振られた会話にも謙遜を忘れない。


「グラントにもよき妃を見つけねばなるまいな」


そこで突然国王がグラント王子にふると、グラント王子は顔を上げ、ふっと笑った。


「わたしは兄上のように優れておりませんから、大した令嬢でなくてもかまいませんよ」


自虐的な言葉だ。


「何を言う。グラント。よし早速とりかかろうぞ」


「ユリア。候補はおるか?」


「まぁ。そんな突然言われましても」


第二王妃のユリアが戸惑うように言う中、突然グラントが顔をあげて口を開いた。


「陛下。それであればわたしはオーロラ嬢がいいです」


え?

一瞬その場が凍り付く。

グラントはオーロラをじっと見ている。


何を突然言い出すの?

オーロラは思わずごくりと唾を飲み込んだ。


グラントが視線を合わせたままにやりと笑う。


「そんなにすぐれた令嬢ならわたしが欲しがってもいいでしょう?」


その笑みがぞっとするほど冷え冷えとしていてオーロラは心が凍る気がした。


「グラント。冗談はほどほどにしろ」


隣でウォルターのどすの効いた声がする。


怒っている。

それもかなり。

こんな声今まで聞いたことがない。


「冗談ではありませんよ。だいたい……」


「黙れ」


グラント王子が何か言おうとしたところへ被せるようにウォルターが大きく言った。


「口を慎め。令嬢に失礼だ」


「そうじゃ。グラント。そなたには必ずよき令嬢を見つける」


国王が言うと、グラントは両手をあげた。


「いいえ、わたしは自分で見つけますよ。陛下」


「グラント」


なんとなく雰囲気の悪い朝食の終わり方になってしまった。

せっかくのおいしい料理が台無しだ。


雨があがり、道も渇きだしたのでウォルターのエスコートでオーロラは家路についた。

腑に落ちない思いを抱えながら。

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