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新章入ります。
「エミリア。今日はディナーをひとり分多めに作らせよ」
朝食の席で父のグッドフェロー公爵が義母に命じているのを聞いてオーロラは今日だったのかと気を引き締めた。
前世でも同じ頃、オーロラが王太子ウォルターと初お目見えしたその日の数日後にエンジェルがグッドフェロー公爵家にやってきた記憶があったのだ。
「ひとり分ですか?どなたかご客人が?」
前世より確実にこの夫婦ふたりの関係性はいい。政略結婚で結婚した間柄で愛など最初からなかったのだろうが、前世ではオーロラが来た時点でかなり険悪だったが、今世ではオーロラが義母を救ったおかげで義母がオーロラに心を許し、かなりふたりの関係も良好なはずだ。
だが、今日父がエンジェルを連れ帰るとまたふたりの関係はこじれるだろう。
なぜなら、エンジェルはかつての義母の侍女だった女性の子どもだからだ。
父が見目のよい侍女に手を出し産ませた子ども。それがエンジェルだ。
妊娠した時点で侍女をやめさせ、どこかに匿っていたようでそれがまた義母の怒りに触れたのだ。
兄のシーヴァとの関係もせっかくいいのに、家全体が拗れてしまうことになりかねない。
それは困る。
なんとかしたいけれど……。
「娘を連れ帰る」
「娘?」
義母の顔が鬼のように変わったのをオーロラは心の中でため息をつきながら見ていた。
そうなるわよね。
父の行いはあまりにひどすぎるもの。
自分の侍女に手を出した挙句、その侍女が辞めたと思ったら裏で父がどこかに匿っていて女児を出産し、今になって連れ帰りさらにその女児が公爵家の象徴である赤い髪とゴールドの瞳を持っていたのだから。
前世では怒りにまかせて義母はその侍女が匿われていた屋敷から追い出してしまった。その後噂では義母の護衛騎士がとどめ刺したという。父も助けなかった。父にとっては手を出した侍女などどうでもいいのだ。ただ女の子が生まれた。それだけが大切なことなのだ。政略結婚に使える駒だからだ。
だがその義母の所業のせいでそれから義母とエンジェルの間には誰がどうすることもできない溝が生まれてしまった。
義母の精神状態は前世ではかなり悪かったから侍女を殺すような所業をしても不思議ではない。だが、今の義母の精神状態はいい。
しばらく見守るしかないだろうか。だが、侍女の方はなんとかしたいところではある。義母が手をかける前に謝罪してもらうよう仕向ける方がいいのだろうか。それとも……。
うーんどうするのが一番いい解決になるのか……。
オーロラはその日、夕方までずっとこのことばかりを考えていたが答えは結局見つからなかった。
とにかく義母とシーヴァの味方になろう。
それだけは決めていた。
前世の最期に見たエンジェルの顔が忘れられなかったからかもしれない。




